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129. マンコー·サンアリ
しおりを挟む「ゴトウ様、PM11:30から、『犬の尻尾』のギルドランキング4位確定おめでとうパーティーと、カウントダウンパーティーが始まります。
それまでは、自由時間ですので、中央広場で、自由に食事を取って下さい!
今日は、大盤振舞いです!
食事と飲物は、モフウフの街とモフウフ冒険者ギルドの奢りになっております!
それから、もう一つ。
私は、一応、中立の立場のモフウフ冒険者ギルド長です。
人前では、ゴトウ様に対して敬語は使えませんのでご了承くださいませ。
あくまで、モフウフ冒険者ギルド長として、モフウフに所属しているギルド員に対しての応対になってしまいます」
「それは、構わない!
こちらとしても、その方が良いと思う。
先程のヤンヤンの驚いた様子を見ても、冒険者ギルド長が、俺に対してヘコヘコしてたら、他の冒険者達も変に思うだろう!
これから冒険者ギルド内で会う時は、普通のモフウフの冒険者ギルドに所属している冒険者として接してくれ!」
「ハッ! 解りました。
今からゴトウ様を、モフウフの冒険者ギルドに所属している普通の冒険者として接します」
「おお! そうしてくれ!」
「サイト、それが冒険者ギルド長に対する言葉使いか!」
急に、マンコー·サンアリの言葉使いが変わった。
「へっ?」
「へっ? じゃない! ハイだ!」
「アッハイ! ギルド長!」
「よし! それでいい!
それではPM11:30に、中央広場の冒険者ギルド会館前に設置してある壇上の前に、『犬の尻尾』ギルド員全員で集まるように!」
「ハイ! ギルド長!」
ーーー
ギルド長室を出て、中央広場に降りてみると、いつの間にか、牛魔王や牛神さん、牛魔王軍の面々や、『カワウソの牙』のお馬鹿トリオなど、牛田さん以外の見知った人々も続々と集まってきていた。
牛田さんはというと、新築のお家が壊されて以来、ぼんやりと朝から晩まで蜂の巣にされたお家を眺めながら、塞ぎ込んでいるらしい。
「オウ! 来たな! 大ボス!」
牛魔王が、ほろ酔い気分で近づいてきた。
バキッ!!
身長2メートルはあろう巨体の牛魔王が、姫のローキックを食らって、綺麗に一回転する。
「来たな! じゃなくて、『いらっしゃいましたか』なのです!」
姫の天誅が、牛魔王に与えられた。
「うおぉぉぉ……姫様凄いぞぉぉぉ……」
「何で、あんなに小さな体なのに、牛魔王をひっくり返せるんだ……」
「牛魔王は、『シルバーウルフ』の剣帝ガリクソンを倒したんだぞ!
姫様の強さは、剣帝も超えてると言う事なのか!」
「流石は、我等の姫様だ!」
「姫様ぁぁぁ!」
「姫様、バンザイ!」
中央広場にいるギャラリー達が、なにやら盛り上がっている。
姫は何気に、素手でも強い。
常時、体中に高密度の闘気を纏っている為、普通に攻撃しても効かなし、魔法も弾く、スピードも目にも留まらぬ速さで動く事ができる。
普通、1つの種類の闘気を使えば、それ以外は同時に使えないものなのだが、姫の闘気は同時に使う事ができる。
そもそもの闘気の質が違うのだ。
普通に、ブリトニーと素手で戦っても太刀打ちできたりもする。
あれ程強く、唯我独尊のブリトニーが姫に忠誠を誓っているのも、この化物じみた禍々しい闘気に惚れているからだ。
ブリトニーが姫と初めて会ったのは、まだ姫が生まれて間もない時だったらしい。
その時の姫は生まれたばかりだった為、あまりに巨大な禍々しい闘気のコントロールを、全く行っていない状態だった。
その為、姫の半径30メートルから先には、普通の者では近づく事さえできなかったらしい。
それまで怖いもの知らずで、自由気ままに生きてきたブリトニーは、禍々しい闘気を撒き散らす、まだ赤ん坊だった姫に対して、生まれて初めてオシッコをチビってイッてしまう程の恐怖を抱き、姫に対して一生涯の忠誠を誓ったと言っていた。
生まれたばかりの幼子に、イキナリ一生涯の忠誠を誓うというのは、少しぶっ飛んでいると思うが、ブリトニーらしいといえばブリトニーらしい。
強い者に従うのは、自然の摂理なのだろう。
しかし実際の姫は、魔法は使えなかったし、使い魔も使役できない、落ちこぼれだった。
それでも、忠誠を誓い続けたのには、何か感じる物があったのだろう。
今、思えば、あまりに巨大で禍々しい魔素を抑えるのが精一杯で、魔法の制御所ではなかったのかもしれないし、使い魔に嫌われていたというのも、本当は嫌われていたのではなく、姫の魔素があまりに禍々し過ぎる魔素だったので、使い魔になりうる魔物が耐えられないというのが、本当の所だったのであろう。
「イテテテ……
ガブリエル様、すみませんでした」
牛魔王が、2メートルの巨体を小さくして姫に謝る。
「解れば良いのです!」
姫は背伸びをして、牛魔王の頭をモフウフ撫でる。
「姫様は、なんてお優しいんだ!」
「流石は、我等の姫様だ!
あの牛魔王を、手懐けているぞ!」
「姫様による漆黒の森の奪還は、遠くないぞ!」
「姫様万歳!! 万歳!! 万歳!!」
モフウフでの姫の人気は、凄まじいものがある。
姫の行動の一挙手一投足に反応しているようだ……
ーーー
「マスター! このたこ焼きという食べ物、外はカリカリ、中はトロトロアツアツでとても美味しいのです!」
姫が大阪名物たこ焼きを、美味しそうにフウフウしながら頬張っている。
中央広場に出ている無料屋台には、ガリクソン総料理長率いる、アジトの大食堂のシェフ達が駆り出されているようだ。
総料理長ガリクソンが、たこ焼きや、お好み焼きなど、元の世界でお馴染みの屋台料理の屋台を出している。
中央広場に集まった人達は、食べた事のない不思議な料理にメロメロ状態だ。
無理もない、この世界の料理は大味なのだ。
大味な料理しか食べた事がない人々が、日本の料理を食べれば目ん玉が飛び出るくらいの衝撃を受けるだろう。
しかし、ガリクソンの料理は、日本食以上の旨さなのだ。
なので、ガリクソンのブースに長蛇の列ができている。
フフフフ……やはり、ガリクソンの料理はこちらの世界の人々が食べても美味しいのだな。
『ミノ1番』のチェーン展開以外にも、ガリクソンに監修させて、ラーメン屋や、オムライス屋、イタリアンのお店なんかをやったら儲かるかもしれないぞ!
早速、この案件もサンアリに相談しておこう。
「サイト君! 何、ニヤニヤしてるの!
目が、お金の形になってるよ!
それより、もうすぐPM11:30だから、そろそろギルド会館前に移動しないと!」
よからぬ儲け話を妄想してると、アンちゃんが、集合の時間だと呼びに来た。
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