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158. ウルフデパート
しおりを挟む「見えてきたワン!
あれが冒険者が作った国、ムササビ自治国家の首都モモンガだワン!」
昨日の昼に休憩した城塞都市を出てから、何度か休憩しつつ1泊して、朝から4時間程飛んだ所で、大きな街が見えてきた。
今まで見た城塞都市とは比べようもないくらい大きく、人で溢れかえり、街の造りも全く違う感じに見える。
流石は、南の大陸最大の街といったところか。
ムササビ自治国家の首都のモモンガは、港街だ。
他の大陸に渡る為の連絡船が出ている。
飛べない者は、この連絡船を使うしかない。何故なら、海には強力な魔物がいる為、普通の船では渡る事ができないのだ。
それと、他の城塞都市とは一線を期する所がある。
モモンガは、そもそも城塞都市ではないのだ。
ムササビ自治国家は冒険者が作った国家だ。
殆どの王手ギルドの本拠地は、ムササビの首都であるモモンガに集中している。
モモンガには化物級の冒険者が、わんさかいるので魔物が街に紛れ混んだとしても、すぐに駆除されてしまうのだ。
「漆黒の森の元首都より大きいのニャ!」
ブリトニーが、目を輝かせながら興奮して話す。
「モモンガは、冒険者と商人の街です。世界中の人々が集まる世界で1番活気のある街なんですよ!
僕も西の大陸から連絡船を使って、最初に南の大陸に降り立ったのも、このムササビ自治国家の首都モモンガなんですよ!」
アンちゃんも、何かを思い出しながら、感慨深げに話している。
「所で、アンちゃんは何故、西の大陸から南の大陸に渡ってきたんだ?」
「それは冒険者に憧れていたんです!
私のお父さんや、エリスさんからワクワクする冒険の話を小さい時から聞かされ、どうしても冒険者になりたくてエリスさんの真似をして、家を飛び出してきたんです!
エリスさんも静寂の森のお姫様でありながら、6歳の誕生日の初めての召還の儀式で赤龍を召還し、そのままお友達契約をして、次の日には家出をして南の大陸に飛んで行き、冒険者になったんですよ!
僕も、エリスさんよりも大分 遅れましたが、南の大陸で仲間を作って、お父さんやエリスさんみたいに冒険したてみたかったんです!」
たまに、アンちゃんの話に出てくる勇者パーティーのエリスさんって人、かなりぶっ飛んでるな……
6歳で、1人で大陸を渡って冒険者になろうなんて、常軌を逸している。
ブリトニーだって12歳から冒険者になったんだぞ!
アレ? ブリトニーが冒険者になった時、ブリトニーが最年少A級冒険者の記録を作ったんじゃなかったっけ?
「アンちゃん、その話、おかしくないか? 姫が冒険者になるまで、ブリトニーが最年少でA級冒険者になった記録をもってたんじゃなかったのか?」
「エリスさんがA級冒険者になったのは最近の話ですよ。
前にも少し話した事があると思いますけど、エリスさんは殆ど魔法が使えません。
唯、契約している精霊が凄いだけで、本人には攻撃力が全くないのです。
なので、冒険者試験を受けても中々、A級冒険者になれなかったのです。
最近、冒険者試験で、使い魔を使っても良いという事に気付き、A級冒険者になれたと喜んでいました」
天然なのか……
兎に角、エリスさんという人が少し解ってきた。
要約すると天然で、ぶっ飛んでいるのだ。
「冒険者ギルド本部が見えてきたワン!
あそこが、ムササビ自治国家の中枢で、冒険者の聖地だワン!」
冒険者ギルド本部は、今まで見た冒険者ギルド会館とは全く違う。
見た目が、ベルサイユ宮殿なのだ。
三階建ての巨大な宮殿に、広大な手の行き届いた豪華な庭、そこにいかにも冒険者の格好をした宮殿に似つかわしくないイカつい人々が歩いている。
中々、シュールな感じだ。
「冒険者ギルド本部の隣の建物が『シルバーウルフ』の本拠地ワン!」
ベルサイユ宮殿の広大な敷地の隣に、ベルサイユ宮殿とは全くもって似つかわしくない現在的な長方形の巨大な建造物が建っている。
見た目が、まんまイ○ン·ショッピングモールだ。
ブリジアはそのイ○ンの屋上にあるペントハウスの庭に降り立つ。
金持ちの人々が暮らす、マンションの屋上にある庭付きの億ションのような感じだ。
しかし、規模が違う。
場所がマンションの屋上ではなくて、イ○ン·ショッピングモールの屋上なのだ。
手の行き届いた庭に、巨大なプールまであるのだ。
「凄いですね! この建物って『シルバーウルフ』の所有物だったんですか?
ここって、ウルフデパートですよね!」
アンちゃんが、興奮気味に話す。
ん? デパート? ここは『シルバーウルフ』のアジトではないのか?
「そうだワン! ここは『シルバーウルフ』が経営するデパートだワン!
1、2階は貸店舗で、3階が『シルバーウルフ』の本拠地になってるワン!
そして屋上のペントハウスが、妾のプライベートルームだワン!
2階のフードコートにある『シルバーウルフ』用の食堂兼、デパートに来る人誰でも入れるレストランを『ミノ一番』にすればよいのだワン!
モフウフの人気店をオープンさせれば、お客が大勢来る事、間違いないのだワン!」
「サイト君! これは凄い事だよ!
ウルフデパートは、一流店しか出店できないモモンガで1番有名なデパートなんだよ!
ウルフデパートでお店を出す事自体が、商人や料理人の目標になってる程なんだからね!」
『シルバーウルフ』は、一体何をしているんだ……
最王手のギルドなのは知ってたが、商売までしているのか。
「ブリジア、何で『シルバーウルフ』はデパートをやってるんだ?」
「魔女様の痕跡を探す為には、人と資金力が必要だったのだワン!
最初は、ギルド運営するついでに、資金を調達する為に、ガリクソンに食堂をやらせていたのだワン!
そのうちの、食堂が評判になり、あれよあれよという内に、食堂もギルドも大きくなっていき、気付いた時には、モモンガの一等地にデパートを建てていたのだワン!」
確かに、ガリクソンの料理の腕前なら、繁盛するのは目に見えている。
しかし、これ程とは……
ガリクソンは、リアル金の成る木なのではないのか。
俺は、どうやらとんでもない料理人を仲間に引き込んでいたようだ。
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