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167. 天使さん
しおりを挟む「所で、アンちゃん達は、なんで冒険者ギルド本部にいるの?」
エリスさんが、不思議そうな顔をして聞いてきた。
「ええとですね。僕達のギルド『犬の尻尾』がギルトランキング10位入りしたんです!」
「えぇー! アンちゃん、冒険者になっていたのぉ?
そしたら、『犬の肉球』に入ってくれれば良かったのにぃー!
今、『犬の肉球』はメンバーが足りないんだよ!
来年には、ギルドの更新があるのに!
団長は行方不明だし、副団長のアンちゃんのお父さんは、最近忙しすぎて、ダンジョン攻略する時間が無いとか言ってるし!
来年までに、新メンバーを1人加入させないと、『犬の肉球』が無くなっちゃう危機なのに……」
エリスさんが涙目で、というか、泣き出しながら話している。
「すみません、エリスさん。
僕は、お父さんの力を頼らずに、エリスさんみたいに1人で南の大陸に出て、仲間を見つけ、冒険してみたかったんです!」
何故か、アンちゃんも泣きそうな顔をしながらも、自分の思いの丈をエリスにぶつける。
「そうだったよね! アンちゃんは昔から、そう言ってたか!
『僕は大きくなったら、1人で南の大陸に行き、仲間を見つけて、冒険するんだ!』って、言ってたもんね!
私こそ、ごめんね!
すっかり忘れてたよ……」
「エリスさんは悪くないです!
僕はエリスさんの『犬の肉球』に入れませんけど、新しいメンバー探しは、応援します!」
「んっ?何で、新メンバーを入れないとギルドが無くなるんだ?」
「サイト君、『犬の尻尾』を作る時、団長と副団長の2人を決めて、冒険者ギルドに提出した筈だよね!」
「ああ、あの時は、アンちゃんがまだいなかったから、俺が団長で姫を副団長にしたんだ」
「ギルドを作るには、ルールとして最低2人のメンバーが居ないと承認されないんだよ。
現在、『犬の肉球』は実質、エリスさんとお父さんで運営してるけど、今の段階で、既にお父さんはドロップアウトしてるような感じなので、人数が足りて無いんだよ!」
「そんな事なら、大丈夫だ!
俺が『犬の肉球』に移籍するぞ!」
何という事だ!
エリスさんにお近づきになれるチャンスが、向こうからやって来た。
これは絶対にものにせねば!
「ダ……ダメなのです! マスターはずっと『犬の尻尾』の団長で、私のマスターなのです!」
姫が、俺のマントの裾をギュッと握りしめ、目をウルウルさせながらも、俺の目をしっかりと見据えて、自分の傍から何処にもいかないでと訴えている。
可愛い。
可愛すぎる。
天使だ。
天使さんだ。
俺の息子が、はち切れんばかりに、ビンビンに反り返り、そのまま射精した。
ドビュッ!! ドビュッ!! ドビュッ!! ドビュッ!!
すかさず、マントの中の影からバハオウが現れ、誰にも悟られずに、お口でスペルマをキャッチする。
ほんのコンマ0.2秒位で、射精するのを感知し、0.4秒でパンツを脱がし、0.5秒には、既に俺のチンコをお口に咥えて、スペルマが射精されるのを待っているのだ。
その為、俺はパンツを汚す事なく、射精できてしまう。
流石は、男の気持ちが解る『くノ一』、バハオウだ。
ドンドン、技を極めていく。
多分、最初の頃は、スペルマを口でキャッチするのに遅れてしまい、顔中がスペルマ穢されてしまう事もあっただろう。
しかし、バハオウは精進を続け、射精の兆候を察知してから、わずか0.5秒後には、俺のチンコを咥える事が可能になっているのだ。
俺はマントの中で、バハオウがチンコを咥えた瞬間を感じる事ができるので、安心して、勢い良く射精する事ができるのである。
「マスター……」
姫が唇を噛みしめながら、こぼれ落ちそうな涙を瞳にいっぱい貯めて、俺の顔を真っ直ぐにじっと見つめ続けている。
姫は、必死なのだ。
また、家族がいなくなってしまうのが嫌なのだ。
俺は姫に、ゴトウ族という新しい家族を与えた。
姫は異常な程に、ゴトウ族になった者に慈愛を与える。
ついさっきまで、お互い殺し合いをしていた者でさえ、ゴトウ族になった者に対しては、コロッと態度が変り、優しく面倒をみようとするのだ。
余談だが、姫が自然とやっているこの行為は、ヤクザが人を脅して怖い思いをさせてから、急に優しくなって、緊張から解き放ち、この人は実は良い人かもしれないと勘違いさせて、人を思い通りに操る技術と、丸っきり一緒なのだが……
少し、脱線してしまったが、兎に角 姫は、家族、ゴトウ族をとても大事に思っている。
姫的には、その要である俺が居なくなるのが嫌なのだ。
いつもの姫の行動原理の場合、俺がエリスさんのいる『犬の肉球』に移籍すると言えば、必ず自分も一緒に付いて行くと言う所だが、今回は、はっきりと「ダメなのです! マスターはずっと『犬の尻尾』の団長で、私のマスターなのです!」と、拒否反応を示した。
こんな事は、今までなかった。
今の姫は、俺も大事だが、ゴトウ族もとても大事なのだ。
やはり、俺はエリスさんの所属する『犬の肉球』には行けない……
俺は、姫にゴトウ族という家族を与えてしまった。
姫は、俺の事を『自分を助けてくれた白馬の王子様』だと言っていたが、現在は、本当の父親の様にも思っているのだろう。
与えるだけ、与えて去っていくのは、無責任というものだ。
俺が『犬の尻尾』を去る行為は、姫的には、家族が崩壊してしまう事と同じ事なのだ。
姫は、自分の両親が北の大魔王に殺された事を、南の大陸ではよくある事なので、気にしていないと言っていたが、多分嘘だ。
架空の家族のゴトウ族を、これだけ大事にしてるのに、本当の家族を蔑ろにする事などありえる筈がない。
俺はこれ以上、姫の家族を、姫の思いを奪う訳にはいかない。
「エリスさん! さっき俺が言った、『犬の肉球』に移籍する! という話は忘れて下さい!
俺には、姫を、『犬の尻尾』を護り続けるという義務がありました!」
「マスター!!」
姫の顔が、パッ!! と、明るくなる。
瞳に溜まっていた涙も、安堵の為か、一斉に溢れ出す。
俺に自分の意思を正しく伝える為に、泣くのをグッと我慢していたのだろう。
それ程まで、俺と離れたくなかったのか……
俺にとって、理想的で完璧な女性のエリスさんの気を引くのも大事な事だが、
そもそも、俺の事を本当の家族、
本当の父親みたいに思っている姫を見捨てる事など、小心な俺には出来よう筈もなかったのだ。
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