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176. S6?
しおりを挟む「我々『漆黒の森』としては、元々の領土を、ただ取り返すだけの事。
なので、冒険者ギルドは、『漆黒の森』の領土問題に関しては、不干渉でお願いしてもらいたい」
サンアリが、冒険者会議の参加ギルドにお願いする。
「今回の多数決は、『漆黒の森』が領土を取り返すのを認めるか、それとも、今までの慣例の様に、1領主3領土ルールを適用するかどうかになります!」
進行役のシロー爺さんが、多数決を取り仕切る。
「それでは、『漆黒の森』の領土奪還を認めないギルドは挙手して下さい!」
「『鷹の爪』は拒否権を行使する!
正直、俺達『鷹の爪』は未攻略ダンジョンの攻略しか興味がないのでな。」
「『三日月旅団』も以下同文です!
私達も拒否権を行使します!」
「『神聖フレシア』は、『漆黒の森』が力を持ちすぎるのには反対だ!」
ギルド『神聖フレシア』団長ナナル·バン·フレシアはそう言って、手を挙げた。
ギルド『雷』も、何も言わずに手を挙げている。
「他のギルドの皆さんは、『漆黒の森』が、元の領土を奪還しても良いという考えで宜しいですかな?」
進行役のシロー爺さんが、挙手をしなかったギルドの者達に聞く。
「元々『漆黒の森』は、ダークエルフさん達の領土だったんだから、取り戻す事の何がいけないの?」
エリスさんが、頭を横に倒し、不思議そうな顔をしている。
「私達はあまり関係がないから、本当はどうでも良いけど、子供の頃から知ってるアンの所属しているギルドの案件だから、取り敢えず賛成しておくわ!」
シャンティーさんも、一応賛同してくれている。
「先程のブリジアさんの話を聞いて、『漆黒の森』の正統な統治者は、そこのダークエルフの姫様において他にない事が解った!
俺達『天空の翼』も、同じくサンアリさんを支持する!」
「『肉好き同盟』も同じく、サンアリ殿を支持するぞ!」
「妾は、元より始まりの魔女様とダークエルフの盟約を見守る立場であるのでな!
当然、ダークエルフによる『漆黒の森』の支配を望む」
「『プッシーキャット』も当然、姫様による『漆黒の森』統一を望むのニャ!
『漆黒の森』の出身として当然なのニャ!」
『プッシーキャット』のブリトニーの話し方にそっくりな、隻眼のエロそうな団長も俺達に支持してくれた。
「支持は、『犬の尻尾』も含めて6票。
不支持は2票。
拒否権を行使したギルドが2票。
という事で、『漆黒の森』の件に関しては、冒険者ギルドとしては、不干渉とする事に決まりました」
進行役のシロー爺さんが、そう宣言した。
終わってみれば、上手くいった。
サンアリが『肉好き同盟』を引き込まなくても、ブリジアを仲間にした時点で、勝敗は決まっていたように思える。
しかし、俺達が冒険者ギルド会議のメンバーになっていなければ、どうなっていた事やら。
『神聖フレシア』は絶対に反対したろうし、『雷』も今回と同じように反対するだろう。
他のギルドは興味がないので拒否権を行使しするとして、賛成するのは『漆黒の森』の出身者が多い『プッシーキャット』だけで、俺達に対して討伐クエストが発動されていた可能性が高い。
そう思うと、冒険者ギルド会議のメンバーになった事は正解だった。
ムササビ自治国家に来て思ったのだが、やはり、こちらには化物が、やたらにいる。
元『拳神』シロー·ムスタカもそうだし、エリスさんにも歯が立たない。
というか、攻撃自体が効かないし、全て跳ね返ってくる。
他の上位ギルドの実力も解らないし、俺達への討伐クエストが発動されていたら、多分ひとたまりもなかっただろう。
チラッとサンアリの方を見ると、感無量といった感じで、ウルウルしている。
まだ、何も終わってないのだがな。
北の大魔王を倒した訳でもないのに……
「これで、今回の会議の重要な案件は全て終わりましたが、他に何かございますか?」
進行役のシロー爺さんが、会議のメンバーを見渡す。
「1ついいですか?」
三日月旅団の団長のエルフっぽい女性が発言した。
「何ですかな?」
「今回、ここに来る途中で、新しく出現したばかりの未攻略ダンジョンを発見したのですが、そこから溢れ出していた魔物が、全てSS級だったのです。
取り敢えず、ダンジョンから出て来ていた魔物は全て討伐して、ダンジョンの入口に、冒険者ブレスレットで上級結界をかけておいたのですが、多分、あのダンジョンは5S級か、それ以上と思われますよ」
「5S級以上だと!
そ……それは本当なのか!
今までに発見されているダンジョンは5S級までだ。もしそれ以上だったら、大発見だぞ!」
さっきまで無口だったギルドランキング第1位「鷹の爪」の団長が、目を輝かせて興奮している。
「フム。1階層からSS級の魔物ですか。
今まで発見されている8つある5S級のダンジョンでさえ、1階層ではS級の魔物しか出現しませんからな。
もっと下の階層から出てきた可能性はありますが、取り敢えずそのダンジョンを調査した方が宜しいですな!」
何やらシローがブツブツ言っている。
「それなら、その役目『鷹の爪』が引き受けよう!」
『鷹の爪』の団長が立ち上がると、他のメンバー達も同時に立ち上がった。
どうやら『鷹の爪』はダンジョン攻略中毒の軍団らしい。
「私も参加する!」
エリスさんも立ち上がり、何故かめちゃくちゃヤル気になっている。
そういえば、アンちゃんがエリスさんは三度の飯より冒険大好きだと言ってたな……
しかし、これはエリスさんと、行動を共にするチャンスだ。
俺はエリスさん達に嫌われてるようだが、冒険者ギルド会議のメンバーとしてのダンジョンの調査なら自然と近付ける筈だ!
「ハイ! 俺も参加します!」
「わ……私も参加するのです!」
会議中、興味がなかったのか一言も喋らなかった姫が、久しぶりに俺に賛同した。
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