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175. 百戦錬磨
しおりを挟む「シローよ。その辺で、勘弁してやってはどうじゃ。
ルーキー共がビビっておるではないか。
あまりビビらせ過ぎると、会議に支障をきたすと思うのじゃが?」
「申し訳ございません。
ブリジア様。私も少しやり過ぎてしまった様です。」
進行役の元『拳神』シロー·ムスタカが、ブリジアに深々と頭を下げる。
どうやら、このシローとかいう爺さんは、ブリジアには頭が上がらないようだ。
こんな恐ろしい、狂犬爺さんを手懐けているなんて。
ブリジアを仲間に引き入れておいて、本当に正解だったと思うサイトであった。
「議長。 話を進めても良いですかな?」
サンアリは何事も無かったように、話を進めようとする。
やはり、この男も只者ではない。
流石は姫の親戚筋、あの爺さんの闘気をまじかに喰らっても顔色1つ変えていない。
「申し訳ございません。
進行役の私が不甲斐ないばかりに、サンアリ様の話の腰を折ってしまいました。
何も問題ございませんので、どうか話を続けて下さいませ」
進行役のシロー爺さんが、サンアリにも頭を下げ、続きを話すようにと、お願いする。
「それでは、続きを話します。
姫様がゴトウ様に助けられ、冒険者になられ、暫くした後、私のお店『ミノ一番』に、たまたまお食事をしに来られました。
姫様は、己の巨大過ぎる魔素を制御する事ができず、ダークエルフでありながら使い魔も召喚することも出来ない、出来損ないと噂で聞いておりましたが、
姫様は、始まり魔女のお弟子様であられるゴトウ様によって鍛えられ、見違える程、変わられて、神獣のケルベロスまで使い魔する程の実力を身につけておりました。
それを見て私は、確信しました。
姫様。
そう。ガブリエル·ツェペシュ様なら、再び『漆黒の森』を統一する事ができると!
現在、漆黒の森の殆どの土地は、魔王、大魔王、に奪われてしまっている現状です!
ですが、今の姫様には、実力も、『漆黒の森』の覇王になりうる魅力も、全て持ち合わせております。
私ども、旧漆黒の森の家臣団は、そんな姫様の魅力と可能性に賭けて、続々と、姫様の元に『漆黒の森』統一の旗を掲げ、集まってきている次第でございます!」
サンアリは、話している内に感極まったのか、瞳に涙を溜めているように見える。
「それでは、そちらにおられる、漆黒の森の正統継承者のガブリエル·ツェペシュ様が、これから『漆黒の森』全土を支配するつもりという事ですかな?」
進行役のシローが、サンアリに尋ねる。
「そういう事です」
サンアリは静かに答える。
「オイ。 魔王、大魔王は領地を表向きは、3つまでしか治められないという暗黙のルールがあるのではないのか?」
今まで、目を瞑り、無言を貫き通してきた『鷹の爪』団長が、突然、発言した。
『鷹の爪』団長の発言に答えるように、進行役のシロー爺さんが、今回の要点を説明する。
「確かに、そのような暗黙のルールは存在します。
ですが、今回の件は、元々『漆黒の森』全土が、ダークエルフの領土だったと言う事が問題なのです。
南の大陸で、人の領土を奪い取る場合は、その暗黙のルールである1領主3領地ルールが発動し、それ以上の領地を奪い取ると、冒険者ギルドが、ルールを破った領主に討伐クエストをかけますが、今回の場合は、元々持っていた領地を取り返すだけですから1領主3領地ルールが適用されるかは、曖昧な所なのです。
今までこのような事案は、無かった訳ではございませんが、領土を取り返す行為も、今までは100年前に奪われた領土を奪い返したという事案がございましたが、今回の事案はいつ奪われたかも昔過ぎて解っておりませぬので」
「1000年前からじゃな。
1000年前までは、確かに全ての『漆黒の森』の領土はダークエルフが治めておった。
始まりの魔女様が1000年前に突然お隠れになり、魔女様の御加護が得られなくなったダークエルフは、じわりじわりと『漆黒の森』の領土を減らしていったのじゃ」
ブリジアが1000年前までは、『漆黒の森』がダークエルフの領土だったと証言する。
「アホらしい! 1000年前の話を持ち出して、どうしろと言うのだ!
そもそも1000年前から成立してた国など、我が神聖フレシア王国も含めて、数える程しか無い筈だ!
その理論で言うと、この世界の全ての土地は、『始まり魔女』ら、この世界を創造されたと伝承されている『世界創成の神人』の領土という事になってしまうではないか!」
神聖フレシア王国王子、ナナル·バン·フレシアが発言する。
「そういう事じゃな。実際に『漆黒の森』は、始まりの魔女様の直轄領であった。
それを『漆黒の森』の住人であったダークエルフに統治を任せたのじゃ!」
「そんな大昔の事を証明する事など、誰にも出来ないだろ!」
神聖フレシア王国王子、ナナル·バン·フレシアが、語尾を強めてブリジアに反論する。
「妾は3000年前から始まりの魔女様に仕えておったので、始まりの魔女様が、ダークエルフの王に、『漆黒の森』の統治を任せた2000年前も、勿論、妾はそこに居合わせておった。
お主は、その場に居合わせた妾の証言でも、証明出来ぬと申すのか?
それとも、妾が嘘を付いているとでも言うのか?」
ブリジアが、ナナル·バン·フレシアを、冷たい目で睨みつける。
ナナル·バン·フレシアも、神聖フレシア王国という、西の大陸で1番大きな大国の王子で、それなりに貫禄はあるのだが、3000年以上存在しており、『ウルフ·デパート』という大企業のCEOでもあり、人数だけなら1番だった大手ギルド『シルバーウルフ』の団長までもこなしていた、百戦錬磨の不死の魔女ブリジアに、太刀打ちする事など所詮、不可能な話である。
「い……いや……ブリジアさんが嘘を付いてるとは、思いませんが……し……しかし……」
クソ生意気な王子。
ナナル·バン·フレシアは、不死の魔女ブリジアに論破されて、しどろもどろになっている。
「フム。話し合いでは簡単には解決しなさそうなので、この議題は多数決で決着をつけた方が宜しそうですな。」
進行役のシロー·ムスタカが、そう宣言した。
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