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186. イヌ科
しおりを挟むブリトニーとペロが飛び出して行った後、アンちゃんが続いた。
アンちゃんは、いつもは殿なのだが、今回は真ん中を受け持つようだ。
それ程、このダンジョンはいつもより、厄介なのかもしれない。
今まで攻略してきたダンジョンは、アンちゃんやブリトニーには、多分楽勝だったのだろう。
2人とも、ソロでダンジョンを攻略していた強者だ。
普通、1人きりでS級以上のダンジョンを攻略する事など有り得ない。
ダンジョンでは、何が起こるか解らないのだ。
それを1人きりで対処する事など、普通は無理な話なのだが、実際にこの2人はソロで死なずにやってきたのだ。
アンちゃんは、俺を守るように、ブリトニーとペロの後に続く。
姫は、いつもだったら闘気を撒き散らし、魔物を寄せ付けなくするのだが、今回はテストも兼ねているようなので、威圧の闘気は抑えている。
俺達に気付いたジャイアントピョンピョン3匹が襲いかかってきた。
ペロが火球を放つ。
頭が3つなので、当然3発放たれる。
ドッカン!! ドッカン!! ドッカン!!
ジャイアントピョンピョンが吹っ飛ばされる。
『三日月旅団』の大賢者ザーマンの火球の3倍の威力は軽くある。
続けてタコ侍マスターが4匹現れる。
ブリトニーが、最早、見えない速度でタコ侍マスターをタコ殴りにする。
相手は、ブリトニーに気付いた時点で体が欠損する程の打撃を受けて、息絶えてしまう。
ペロは物凄い勢いで、魔法を連続で放ちながら、スピードを落とさず突進して行く。
それも、全て相手の属性に合わせた、適性の魔法を放つのだ。
生まれながらの神級の魔物に分類されるペロにとっては、SSSS級の魔物など相手ではない。
と、言うのは冗談で、流石に3歳のケロベロスには、例え神級であっても、これだけの数のSSSS級の相手は無理な筈なのだが、ペロは既に普通の3歳のケロベロスの実力ではない。
サイトにより、全ての属性の魔法を使えるようにしてもらい、姫の高純度の良質な魔素を与え続けられているのだ。
姫の魔素は、別格だ。
自然とペロの肉体は強化されていき、姫と同じような特殊な闘気を常時放つようになっている。
尚且つ、アジトにいる時は、毎日、牛神パウロに散歩をしてもらっている。
基本、散歩コースは、ダンジョンの中を走り回る。
ひたすら、飽きるまで走り続け、邪魔な魔物は体当たりで吹っ飛ばしていく。
それを牛神パウロが、必死にコントロールするというか、引きずられながら、必死になって手網を握りつづけるのだ。
ペロにとっは、アジトのダンジョンは散歩コースだ。
邪魔な奴は、いつものようにぶっ飛ばす。
ブリトニーはというと、ペロが倒し損ねた魔物を次々と狩っていく。
最早、ブリトニーの動きはA級冒険者レベルでは視認する事はできないであろう。
ペロは、フロアーボスの部屋に脇目も振らず真っ直ぐに突き進み、ブリトニーは、ペロが進む道の周りを立体的に動きながら次々に魔物を狩って行くのだ。
アンちゃんの役目はと言うと、ペロとブリトニーによってミンチされた魔物が、空からたくさん降ってくるので、それが俺や姫に当たらないように、大盾で防御する役目のようだ。
いつの間にか、バハオウが俺の影から出て来て、コアとドロップアイテムの回収を始めている。
俺と姫は、はっきり言ってやる事がない。
5Sダンジョンでも、いつものダンジョン攻略と変わらないみたいだ。
て、言うか、ここのダンジョンの主は俺達だ。
そもそも主の俺達が、そこに生息する魔物などに負ける筈はないのだ。
『三日月旅団』のメンバーは、口をポッカリ開けて眺めている。
無理もない、自分達には手に負えなかった魔物の大軍を、たった1人と1匹だけで倒してしまっているのだ。
それも、有り得ないスピードで。
『三日月旅団』は階段フロアーの扉の前から、1歩も前に進む事なく、全滅したのだが、『犬の尻尾』はまるで、フロアーボスが何処にいるのか分かっているように、脇目も振らず進んでいく。
「これは、私が思ってた以上に凄いわね……
猫耳娘、格闘術も完全に『拳王』レベルじゃないわね。
私が知ってる『拳帝』の軽く上をいってるわ。
多分、もうすぐ、『拳王』から『拳帝』に、冒険者ブレスレットが書き換えられる筈ね。
それから、ケルベロスも私の知ってるケロベロスとは、もう別種ね。
氷魔法を使うケロベロスなんて、見た事ないわ!
て、言うか、あの子飛んでるわね……
あの歳で、浮遊術まてマスターしているというの?」
流石のシャンティーさんも驚いているようだ。
ペロとブリトニーは猛スピードで突き進み、10分程で、フロアーボスの部屋に到着した。
「一体何が起こったと言うの?
私達の知ってるダンジョン攻略とは、全く違ってるよ?!
地図もないのに、マッピングも何もしないで、フロアーボスの部屋に迷いもせずに到着するなんて聞いた事ないわ!」
『三日月旅団』の団長ミカサが、驚愕している。
「あの小さなケロベロスのおかげね。
犬耳族も、鼻が効くのでダンジョン攻略に重宝されるけど、イヌ科の頂点であるケルベロスの鼻は、犬耳族とは比べようもない程、凄いのね。
まあ、今まで、ケルベロスを使い魔にした者など存在しなかったので、誰も解らなかったのだけど、あのケロベロスは未攻略ダンジョンの攻略では、とてつもないアドバンテージになるわね」
シャンティーさんが、納得しながら呟いた。
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