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269. 決戦の狼煙
しおりを挟むサンアリが、作戦の概要を説明し終わると、300人のデーモン部隊が、次々にアマイモンが時間稼ぎしてくれている中央戦線に向けて出発した。
「それじゃあ、そろそろ俺達も出撃するか!」
「ハイなのです!」
「ハイニャ!」
「了解!」
「ワン! ワン! ワン!」
皆、元気に返事をする。
まず最初に、ブリトニーが影の中に消える。
俺達はそれを確認した後、ブリトニーの影に【影渡り】で移動する。
ブリトニーの影から出ると、最初に出陣した第一陣の集団の中央付近に出てきた。
目の前には第一陣大将のガルム·ロマンチックが控えている。
俺はこのオッサンが苦手だ。
ブリトニーを性奴隷にしている手前、罪悪感に蝕まれるのだ。
「ゴトウ殿、姫様、お待ちしておりました。
計画通り【聖級結界】をお張り下さいませ」
ガルムは、淡々と作戦を実行するように督促する。
俺はガルムに言われるまま、第一陣歩兵部隊2万人を覆うように味方だけは出入り自由、魔法透過設定した、味方にだけ都合が良い【聖級結界】を張った。
空を見上げと、そこにはアマイモン率いるデーモン軍団と、北の大魔王率いる悪魔軍団が空中で睨みあっている。
数だけ見れば、アマイモン率いるデーモン軍団の方が多いように感じるので、『このまま戦って、北の大魔王ベルフェゴールを倒してくれれば助かるのに』と、心の中で思ったりする。
「ゴトウ様! お待ちしていましたよ!
ベルフェゴールを止めておくの大変だったんですからね!」
アマイモンが俺が到着したのに気付いて、上空から声をかけてきた。
「悪かったな! もう少しだけ準備をするので、そのまま待機しといてくれ!」
「え~もう少しだけですよ!」
アマイモンは軽い感じなのだが、イヤイヤ感も少しだけ出して了承する。
まだアジトから出発したデーモン部隊300人が、中央戦線に到着していないのだ。
まだ戦力も揃ってないのに、戦える訳がない。
暇だ……
【聖級移転】でも設置しておこうかな。
カレン·ロマンチックやヤナト達『カワウソの牙』は、漆黒の森西側で北の大魔王に統治されている城塞都市の奪還任務についている。
もし俺達がヤバくなったら、援軍に来てもらわないといけない。
ゴトウ族であるヤナト達は【影渡り】が使えるので、すぐここに来れるのだが、カレンは【影渡り】が使えないのだ。
剣姫カレン·ロマンチックは、戦力になるからな。
俺は念の為に【聖級移転】を設置した。
【聖級移転】を設置してから暫くすると、モフウフからの300人のデーモン部隊が到着した。
ここで一応言っておくが、デーモンと悪魔は同じ種族だ。
しかし、敵も同じデーモンというか悪魔なので、俺達の軍勢はデーモン、北の大魔王の軍勢は悪魔と呼んで区別する事にする。
因みに、俺達の軍勢のデーモンは、男は燕尾服、女はメイド服を着ている。
敵であるベルフェゴールの悪魔軍団は、全員男性で、尚且つ、素っ裸である。
そしてその全員が巨根なので、俺のような祖チンの男は、巨根悪魔軍団に無意識に萎縮してしまうのだ。
モフウフのナニが小さい兵士、何百人、何千人かの人々も巨根悪魔軍団に、戦う前から精神的に負けてしまっているかもしれない。
多分、悪魔軍団が全員男で巨根なのは、間違いなく、ベルフェゴールの性癖を現しているのであろう。
北の大魔王ベルフェゴールは、姫が女というだけで戦争を仕掛けてくるようなイカレホモ野郎なのだ。
アマイモンによると、前の世界に居た時、魔界で「幸福な結婚というものは果たして存在するのか?」という議論が巻き起こり、実際にそれを見てくるためにベルフェゴールは人間界に行き、様々な人間の結婚生活を観察しまくったらしい。
その結果、女性の不道徳な性的な行いを繰り返し繰り返し、嫌というほど見続けたベルフェゴールは、女性に対して非常に不信感を持つようになってしまったとの事だ。
「ハァ……」
ハッキリ言って、そんな理由で戦争に巻き込まないで欲しい。
後世、今回の戦争についの歴史書が書かれた時、北の大魔王ベルフェゴールは女性不信のホモ野郎で、王の資質があったガブリエル·ツェペシュが女性だったので戦争を起こしたと書かれたら、とても恥ずかしんじゃないのか……
俺達が戦争に勝ったら歴史書に、ベルフェゴールは変態ホモ野郎だったと間違いなく書かせるが、ベルフェゴールが勝ったらその辺は、改変するのだろう。
勝てば官軍と言うしな。
「ゴトウ君! デーモン部隊も到着したようだし、僕達はもう帰るよ!」
俺が妄想していると、アマイモンが上空から声をかけてきた。
「エッ! アマイモンは、見ていかないのか?」
「僕達のやれる事は、もう無さそうだからね!
異界の悪魔同士では戦えないし!
アッ! そうそう、そう言えばベルフェゴールの主《あるじ》が最近目覚めたようだから気を付けなよ!
ベルフェゴールの主は、僕なんかより全然格上の大悪魔だから!
アッ! でも、あの人は天使やエルフ以外には全く興味ないからゴトウ君は大丈夫かな!」
「ベルフェゴールの主《あるじ》って誰?」
「それは、後々 教えてあげるよ!」
アマイモンが気になる話の答えをはぐらかし、自分の軍団を連れて何処かに飛んで行ってしまった。
「回避!!」
突然、【聖級結界】の外で、デーモン部隊を率いていたメリルの声が響き渡る。
ドッカーン!!
俺や第一陣歩兵部隊を覆っていた【聖級結界】に巨大な隕石のような物体が激突した。
「カッカッカッカッカッ!
儂の魔法を弾くとは、魔女の【聖級結界】か!
儂も、舐められたものじゃな!
確かに【聖級結界】は、儂1人での魔法では破壊できないが、理論上、魔女以上の魔力の魔法をぶつければ破壊出来ると知っておるのか?」
何処からともなく、ベルフェゴールと思われる男の声が聞こえてきた。
暫くすると、空中に佇んでいる50万の悪魔軍団の至る所に、青白く光り輝く巨大な魔法陣が、たくさん出現する。
「サイト君! 集団巨大魔法の詠唱が始まったよ!
牛魔王さん! 牛田さん!
【聖級結界】の上に登るよ!」
「「オオー!!」」
アンちゃんと牛魔王と牛田さんが、作戦通り【聖級結界】の上に登り、神級アーキテクチャーの大盾を3人がかりで構える。
「それでは、ワシらも行くとするかのう!」
大吉爺さんが重い腰をあげる。
「腕が鳴るのニャ!」
「ジゲン流の真髄を見せる時がきましたね」
ブリトニーとハラ·キリさんも、空中を走り出す。
300人のデーモン部隊は、3部隊に別れるみたいだ。
メリルとメイドさんが、1隊ずつ、ブリトニー付きのメイドとアンちゃんのメイドが2人で1隊を率いるようだ。
3隊に別れたデーモン部隊は、集団巨大魔法をリジェクトする為に、それぞれ別の巨大魔法陣に決死の特攻をしかける。
そうこうしているうちに、北の大魔王の悪魔軍団が、いつの間にか藁藁と【聖級結界】の周りに集まってきていた。
【聖級結界】の上にいるアンちゃん達が標的にされて、怒涛の攻撃を受けている。
流石のアンちゃんの防御力でも、横からの攻撃は対処出来ない。
牛魔王と牛田さんが、必死に悪魔達の攻撃を弾いている。
殺られてしまうのは、時間の問題だ。
やはり圧倒的な数の暴力の前には、抗う事もできないのか……
「第1、第2、第3魔法部隊! 大盾防御遊隊に援護攻撃魔法、撃ち方始め!」
第一陣歩兵部隊大将、ガルム·ロマンチックが、渋く通る声で号令を発した。
ズダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダダ………ン!!
耳をつんざく凄まじい攻撃魔法の爆音が響き渡り、遂に決戦の狼煙が上がったのだった。
10
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