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275. 真打ち登場
しおりを挟む北の大魔王ベルフェゴールの悪魔軍団による無慈悲な光のレールガンが、【聖級結界】に三度《みたび》落とされた。
【聖級結界】に、今までない、たくさんの穴が空いてしまった。
「穴に向けて攻撃魔法を放て!
敵の侵入を許すな!」
第一陣歩兵部隊大将ガルム·ロマンチックの怒声が響く。
「デーモン部隊! それぞれ別れて、第一陣歩兵部隊の援護をしろ!」
デーモン部隊を率いるブリトニー付きメイドも続いて指示を出す。
魔法部隊とデーモン部隊が合同で【聖級結界】に空いた穴に向かい、魔法を連射する。
「ん?」
ズドン!!
【聖級結界】の穴の外側から、巨大な火の玉が落ちてきて、穴の正面付近で魔法攻撃をしていた魔法部隊とデーモン部隊の一部が一瞬で溶け去った。
「クッ!! 集団魔法か!」
そして、こちらの攻撃が止まった瞬間、敵の悪魔軍団が一斉に【聖級結界】の内側になだれ込んできた。
「今の攻撃で、魔法部隊の半数が消え去ってしまったのか……
クソ! 骨も残らず、溶けてしまったので生き返す事もできない……」
「マスター……」
姫が涙目になって、俺のジャージの上着の裾をギュッと握り締める。
「姫! 涙は後だ! 今は悪魔軍団の侵入を防ぐのが先だ!
溶けてしまったデーモン達を再召喚しろ!」
俺は心を鬼にして姫に命令する。
「ハイなのです!」
姫は涙を拭い、死んでしまったデーモン達を再び召喚する。
今回は、80人程が召喚された。
先程の攻撃でデーモン部隊は30ぐらいしか死んでない筈なのに数が多すぎる。
巨大魔法陣をリジェクトしている、メリル達の部隊のデーモンも混ざっているのか……
味方のデーモン部隊は総勢300人、その内の150人が現在【聖級結界】の内側にいる事になってしまう。
このままでは不味い。
巨大魔法陣をリジェクトする部隊が、余りに少なすぎる。
かといって、【聖級結界】の内側に侵入してきている敵の悪魔軍団も殲滅しなくてはならない……
悪魔軍団は次々に【聖級結界】に侵入してきて、もう400匹は下らない。
上空を見上げると、またまた多数の巨大魔法陣が青白く輝き始めた。
「終わった……」
今度こそ、限界だ。
50万人対2万300人。
相手は精鋭50万人の悪魔軍団。
新漆黒の森軍は、相手に傷を負わす事もできない2万人の歩兵部隊と、300人のデーモン部隊。それから、俺や姫や大吉さんなどの精鋭約10人の合計310人しかマトモに戦える者がいないのだ。
最初から無理だったのだ。
姫は必死になって、何度も殺されてしまうデーモン達を再召喚し続ける。
戦争は数で決きまる。
一騎当千の英雄が、万の敵を斬り刻むなんて夢物語だったのだ。
俺達は、無我夢中で抗い続ける。
スダダダダダダダダダーーン!!
四度目の光のレールガンが【聖級結界】に降り注ぐ。
完全に終わった。
俺は手を止めた。
もう何をやっても無駄だ。
出来れば痛みなく死にたい。
光のレールガンの直撃とかが良いかもしれない。
アレなら痛みなど感じず、一瞬で死ぬ事ができる。
「マスター! しっかりするのです!
マスターが私を守ってくれるのではなかったのですか!」
姫が、手の止まった俺を必死に守りながら泣き叫ぶ。
そうだった……
俺は何をしているんだ。
先程、姫を守り抜くと宣言したばかりじゃないか!
今回は1人じゃないんだ。
自暴自棄になってる場合じゃないぞ!
「守る! 守ってやる!
スマン! 姫! 俺は弱過ぎて、直ぐに下を向いてしまう。
だが、もう心配いらない!
姫の喝のお陰で吹っ切れた!
姫を守るのは、俺だ!」
「いや! 姫様を守るのは、モフウフのキラキラ王子の2つ名を持つ、このスイセイに任せて下さい!」
「違うな! 『カワウソの牙』のイケてる団長ヤナト様だ!」
「バカをおっしゃい! 姫様を愛でるのは、このクリスティーヌにおいて、他に居ないわ!」
「ゴトウ·サイト! 剣姫カレン·ロマンチック。サンアリ殿に言われ、助太刀に参ったぞ!」
突然、【聖級結界】内に設置しておいた【聖級移転】から、『カワウソの牙』おバカ3人組と、剣姫カレン·ロマンチックが登場してきた。
カレンとヤナトとスイセイは、そのまま空中を駆け上がる。
どうやら、3人ともいつの間にか、空中闊歩をマスターしていたようである。
「今から皆にエンチァンターをかけるわよ!
取り敢えず、魔法効果3倍! 攻撃力3倍! 防御力3倍! HP3倍! MP3倍! 素早さ3倍! 運3倍!いくわよ!
アッ! と……姫様…… 私に回復魔法をかけ続けて下さいませ。
途中で魔素切れが10回程度起こる予定ですので……」
クリスティーヌは姫に魔素を回復して欲しいと軽く言っているが、短時間で魔素を10回連続、空になるまで使い切るという行為は、常人では考えられない行為であったりする。
1回でも魔素をスッカラカンにすれば、立っているのも辛くなるというのに、10回連続、魔素を空にする行為など正気の沙汰ではない。
クリスティーヌは毎夜、大奥に侵入を試みては、メリル達シスターズに返り討ちにあっていた。
メリル達シスターズは、クリスティーヌと比べれば、完全なる格上の相手だ。
それなのにめげずに、早朝まで毎日毎日挑み続けたのだ。
真性M女にしか成せない所業だ。
そんなクリスティーヌにとって、魔素切れ10連発など、苦行の内にも入らないのだ。
「ハイなのです!」
姫は少し嬉しそうだ。
「それじやぁー、いくわよ!」
クリスティーヌは何度もへたりながらも、【聖級結界】内にいる味方に、エンチァンターを掛け続ける。
次第にクリスティーヌのエンチァンターが効いてきたのか、今まで全く敵にダメージを与える事ができなかった魔法部隊の魔法でも、敵の悪魔達にダメージを負わせる事ができるようになってきた。
カレンとヤナトとスイセイ、そしてクリスティーヌが参戦した事によって、【聖級結界】内の戦いでは、劣勢を跳ねのける事に成功した。
次は【聖級結界】の外側の巨大魔法陣を、どうやってリジェクトするかだな。
「ニャハハハハハハ!真打ち登場なのニャ!」
突然、西の空の方角から、どこかで聞いた事のある声が聞こえてきた。
声が聞こえてきた西の空を眺めると、鳥のような謎の物体50羽が、猛スピードで此方に向かって、真っ直ぐに飛んで来るのだった。
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