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276. エロチック

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「主役は、遅れてやってくるのニャ!」

 グリフォンに跨った猫耳族を中心にした50名の集団が、西の空から【聖級結界】の上空に現れた。

「誰?」

「誰?」

「誰なの?」

「エッ?! わ……私を知らないのニャ?」

 猫耳族のエロそうなお姉さんは、驚愕の表情を浮かべた。

「だから誰なの?」

「自分では、かなりの有名人ニャと思ってたのに……」

「だから誰?」

「クッ! 知らないなら聞いて驚け!
 私はギルドランキング第9位。
 ニャンゴン所属『プッシーキャット』の団長、エリザベス·エロチックなのニャ!」

 エリザベス·エロチックと名乗るエロそうな猫耳族のお姉さんは、たわわな胸を振るわせ、エッヘンと胸を張った。

「エロチック? 本名?」

「いや違うだろ。エロチックだぞ。
 芸名か源氏名だろ」

「自分でエロチックって名乗るって、相当ヤバい人に違いないぞ」

【聖級結界】内にいる兵士達が、残念な人を見るように小声でヒソヒソ話している。

「みんな聞こえているのね!
 エロチックは、本名ニャ!
 芸名じゃないのニャ!
 エロチック姓は、猫耳族ではよくある普通の苗字なのニャ!」

 猫耳族のエロチックさんは、顔を真っ赤にさせてプンプンに怒りだした。

「本当なのか?」

「本当だ。エロチック姓は、猫耳族ではポピュラーな苗字だな」

 俺は近くにいたガルム·ロマンチックに聞いてみた。

 確かにエロチック姓は、ガルムやブリトニーのロマンチック姓に似てるしな……

 それによくよく考えたら、ロマンチックという苗字も相当恥ずかしい苗字だ。

 ブリトニーやカレンは、まだロマンチックという苗字で許せるが、ゴッツイ中年オッサンのガルムがロマンチック姓を名乗るのは、少し気持ちが悪い。

 しかし、エロチックよりはマシか……

 ガルム·エロチック。

 ヤバすぎだな。

 あの渋いダンディーなオッサンが、エロチックとかいう苗字なんて有り得ない。

 殆どギャグだ。

『第一陣歩兵部隊大将ガルム·エロチックだ!』なんて言ったら、多分敵から失笑が漏れるであろう。

 敵が失笑している内に倒すのか?
 それも戦術として良いかもしれない。

「オイ! お前! 何クスクス笑っているのニャ!」

 俺が妄想してニヤけてるいると、エロチックさんが気付いて怒りだした。

 ピューン!

 エロチックさんの顔のすぐ横を氷の槍がすり抜けて、髪の毛が数本パラパラ落ちる。

「口を慎みなさい」

 姫が禍々しい闘気を漂いさせながら、いつもと違うドスの効いた声で、エロチックさんを威圧する。

 エロチックさんは、ブルブル震えながら失禁してしまい、下のグリフォンはエロチックさんに背中の上にオシッコを漏らされ、クェクェ鳴きながらとても立腹なご様子だ。

「で、エロチックさんは、俺達の援軍でいいんだな?
 しかし、確か冒険者ギルドは今回の漆黒の森の件については、不干渉だった筈だが?」

「エロチック言うな!
 名前のエリザベスの方で呼ぶのニャ!
 その苗字を連呼されると恥ずかしのニャ!」

 どうやら、エロチックという苗字は、エリザベス·エロチック的にも少し恥ずかしかったようだ。

「で、エロザベスさん、実際にどうなんだ?」

「エロザベスじゃないのニャ!
 エリザベスなのニャ!
 お前、ワザと言ってるだろ!」

 ピューン!

 また、エロチックさんの顔の横を氷の槍が通過したようだ。

 エロチックさんの額に、冷たい汗が流れ落ちる。

「すみませんでした!
 もうエロチックでも、エロザベスでも何でもいいです!
 質問の答えですが、援軍で間違いないです!
 それと私達『プッシーキャット』は、漆黒の森のニャンゴン所属のニャンゴン出身者ばかりのギルドなので、ギルドと関係なく、新漆黒の森に味方しても問題ないのです!」

 エロチックさんが、グリフォンに跨りながら、ピンっと背筋を伸ばし、語尾にニャを付けず、丁寧に説明してくれた。

 正直、おバカそうなので少し心配なのだが、多分、実力は問題ないだろう。

 実際、エロチックさんがおバカな漫才を1人でやっている間、『プッシーキャット』のギルド員達は、余裕で襲ってくる敵の悪魔軍団を退けていた。

 やはり、ギルドランキング第9位は伊達ではない。

「ヨシ! 解った! それでは巨大魔法陣のリジェクトを頼めるか?」

「「「イエッサー」」」

『プッシーキャット』の面々は、揃った声で返答し、巨大魔法陣のリジェクトに向かった。

「オイ! ブリトニー付きのメイド!
 お前達も本来の任務に戻っていいぞ!
 こちらは、ヤナト達と、カレンが来てくれたので何とかなりそうだ!
 それより巨大魔法陣を何とかしてくれ!」

「畏まりました! それでは巨大魔法陣のリジェクトに向かいます!」

 ワオーーン!!

 遠くの方で、ペロの雄叫びが聞こえた。
 どうやら、空中浮遊に成功したようだ。

 ズダダダダダダーン!

 ペロの雄叫びが聞こえた方角の、巨大魔法陣の光が消えた。
 早速ペロは、巨大魔法陣のリジェクトに成功したようだ。

 色んな場所に出現している巨大魔法陣が次々に消滅していく。

 現在、目視できる巨大魔法陣は5つだけだ。
 その魔法陣から光のレールガンが発射される。

 パピューン!!

 第1射目の光のレールガンをアンちゃん達、大盾防御遊隊が弾き返す。

 ズドーン! ズドーン! ズドーン! ズドーン!

【聖級結界】に4つの穴が開けられたが、カレン、牛神さん、バハオウ、ヤナト達で、なんとか対応できている。

 まだまだ北の大魔王軍の方が優勢だが、みんなの力を合わせれば、ギリギリなんとか対処出来るようになった。

 まあ、俺はそれほど役には立ってないのだが……
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