大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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第二章 ハウエバー系 第901辺境惑星 編

4. 日本人の朝食

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「兎に角、日本の固形物の朝食を出しやがれ!」

 俺は、もうヤケクソになり、サヤに無茶な命令をする。

「本当にもう、マスターは人類の記憶を思い出し、欲にまみれてしまったんですね!
 ですが、そんなマスターでも、辺境惑星観察宇宙船であるこのサヤは、完璧に寄り添ってみせますから!
 ちょっとお待ち下さい! この宇宙船にはエネルギー水以外のエネルギー摂取用の食事を用意しておりませんので、ちょっくら901惑星に降りて、食事の材料を狩ってまいります!」

 サヤは、そう言うと、早速、惑星観察用の小型船で、901惑星に降りて行ってしまった。

「アイツって、あんなに行動力がある奴だったっけ……」

 性別とか性格設定とか、俺がコールドスリープする度に変えてたから、まあ、行動力はあるのだろう。
 そして、今回は、メタルボディを作っちゃったから、本当に行動出来るようになっちゃったんだと思われる。

 まあ、俺はというと、サヤの様子を、サヤのメタルボディの目を通して、モニター越しに、サヤの行動を監視してるのだけど。

 それにしても、サヤは半端ない。
 手刀で、野ウサギを瞬殺し、そして、何故か、海に行って魚を取るかと思ったら、海水を集めて沸騰させて、塩まで採取してる。
 そうかと思ったら、どこから手に入れたのか、胡椒の種を大地に植えて、栽培始めてるし……

「ていうか、何年帰って来ないんだよ! 最新鋭自立AI自由過ぎ!」

 結局、サヤは、俺が朝食食べたいと言ってから10年後に、塩と胡椒と、それから鶏を育てて新鮮な卵を手に入れ、それでも飽き足らず、現地の人に麦の栽培を教えて生産した麦を使って、食パンを焼き、宇宙船に戻って来たのであった。

 ついでに言うと、野ウサギでハムを作り、勿論、乳牛も育てて、新鮮なミルクも持ち帰ってきている。

「お前、アホか! なんで朝食食べるだけで、俺は10年も待たないといけないんだよ!」

「え?1000年生きるグレイ種族にとって、たった10年など、一瞬なのでは?」

 サヤは、本当に不思議そうな顔をして聞いてくる。
 というか、メタルボディなので、実際は表情変わってないのだけど。

「俺は、よくあるファンタジーのエルフ的な思考じゃないんだよ!
 人類の記憶を思い出してから、俺は完全に人類脳になってるの!
 誰しも、ただ朝食食べるだけで、10年待たされたら怒るんだよ!
 お前、俺が朝食食べたいと言った時、10歳だったとしてみろ?
 そして、10年後朝食が出た時、俺は二十歳の成人になってる訳!
 お前は、俺に成人式のお祝いとして、食パンのトーストと、目玉焼きと、牛乳の朝食を食べさせる気かよ! 普通、成人式のお祝いなら赤飯だろうがよ!」

 俺は、頭にきすぎて、サヤに正論をぶちまける。

「成程、確かにそうですね!人類の、それも日本人なら、赤飯でした!
 それでは、直ぐに901惑星に降りて、赤飯の素材を採取してきます!」

 サヤは、再び、小型船に乗って地上に降りようとする。

「ちょっと、待てい! お前、また10年近く、絶対に戻ってこないだろ!」

「そのつもりですが、何か問題でも?」

 サヤは、不思議そうに首を傾げる。

「だから、俺はもう、人類的思考になってると言ってるだろ! マスターに寄り添う最新鋭自立AIなら、俺の思考と合わせろよ!」

 もう、俺は怒り過ぎて、頭が痛くなってきた。サヤは無駄に知識もあり優秀なのだが、所詮は、人類の気持ちなど分からないAIなのである。

「確かに、それも一理ありますね。私は、何百万年もずっとマスターに寄り添って来ましたので、いきなりマスターが人類の人格を手に入れたと言われても、少しばかりはグレイ種族の感覚も残っていると誤認してしました。
 では早速、最新鋭AIをフル稼働して、現在のマスターの思考を2秒でインプットしましたので、今から、私の行動方針を変えてみます!」

 そう言うと、サヤは急いで朝食を用意して、俺の前に出してくれた。
 そう、サヤは実は出来る奴なのである。
 普通は、初見で日本のよくある朝食など作れないし。

 そして、それを早速、食べてみたのだが……

「歯がないので、食べれん……」

 解ってたんだよ。でも固形物の濃い味付けの朝食を食べたかったんだよ。
 この、しょうもないくだりをやりたくて、俺は、10年もの時間を無駄にしたのである。
 まあ、ずっと901惑星でのサヤの行動をモニター越しで観察してたから、それにりには楽しかったけのだけど……

「そりゃあ、そうですよね……」

 サヤも解ってて、付き合ってくれてたので、俺に同意してくれる。
 こういう所で、無駄に寄り添ってくれるのがサヤなのである。

「でも、目玉焼きにかかった塩胡椒は美味しい!」

 何故だか分からないが、久しぶりの濃い塩気の味に、俺は瞳から涙が溢れてる。
 多分、人類時代を思い出して、感慨にふけってしまったのかもと思ったが……
 良く考えたら、グレイ種族にとって、塩気の多い味付けは、ただ体が受け付けなく、辛くて涙が出ただけだったようである。

 だって、口の中が焼けるように熱くなってるし!

「ですよね。普通のグレイ種族は、食事の塩分濃度を気にして、エネルギー水も、必要以上の塩分は入ってませんからね!」

「だよな……エネルギー水って、めちゃんこ薄い塩味しかしないもんな……」

 俺も、サヤの意見に納得する。身をもって、口の中が痛くなってるから、嫌でも分かるというもの。

「ですが、エネルギー水は理に叶った万能食で、マスターのような辺境惑星観察官にとっても、宇宙船に乗せる物資を極限まで減らせるので、重宝してます!
 というか、マスター何してるんですか!噛まないで、パンを飲み込まないで下さい!」

 サヤは、俺がパンを喉に詰らせて死にそうになってるのに気付いて、助けてくれた。
 今日ほど、サヤにメタルボディがあって良かったと思った事ない。

「だって、久しぶりの人類ぽい食事だったんだぞ……そんなの無理してでも食べたいに決まってるだろ!」

 俺は、どうしても人類の食事を取りたいのだ。
 味を知らなければ、人類が食べるような原始的な食事など取りたいとも思わなかったが、日本人時代の記憶を取り出してからというもの、もう、欲求を押さえ付けられなくなってしまってるのである。

 しかも、サヤのせいで10年間も朝食を待たされたので、尚更、我慢など出来なくなってるのだ。

「ですよね……私も、マスターに寄り添う筈の惑星観察宇宙船だというのに、本当の意味で、マスターに寄り添う事が出来ていませんでした……これからは、より一層、ご主人様に寄り添うように行動しますので、期待しておいて下さいませ!」

「俺的には、お前の今後の行動が不安でしかないのだが……」

「何を仰る兎さん。全て大船に乗ったつもりで、私に任せて下され!」

 なんか知らんが、猛スピードで帝国データベースを検索して、日本語や、日本の文化や歴史などをインプットしたせいなのか、日本語がなんか変になってるし……

 というか、サヤは無駄に優秀なので、いつの間にか、日本語で俺と喋ってたりする。

 まあ、言葉使いを俺に合わせようと、一生懸命努力しようとしてる事は分かるのだが、全く違う方向に努力してるんじゃないかと、ヨツバ少尉は少しばかり心配するのであった。

 ーーー

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