大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

第二章 ハウエバー系 第901辺境惑星 編

25. ビクトリア・グリズリー

　
　カレンと道場破りの旅を始めて1年が経った。

　そして、もうすぐ、カララム王都で剣術大会が開かれるという情報を得て、
　俺達は、カララム王都に向かったのだが、その途中、カララム王都の隣にある、イーグル辺境伯とは親戚筋にあたる、グリズリー公爵領に寄り道する事にしたのであった。

　そう、言わずとしれた、伝説のS級冒険者パーティー『熊の鉄槌』の団長エリザベス・グリズリーの実家である。

　カレンは、グリズリー領都に着くと、すぐさま、グリズリー公爵家の屋敷に、フリーパスで、ズカズカと入って行く。

　何故、グリズリー公爵家の者は、警備兵も、使用人も、無警戒にカレンを屋敷に入れてしまうのか、本当に謎である。

　でもね。
　屋敷に入って、イーグル辺境伯の妹であるビクトリア・グリズリーを見て、一目で解った。

　そう、ビクトリア・グリズリーの顔がカレンにそっくりだからだ。
　多分だが、カレンが歳を重ねたら、ビクトリア・グリズリーの顔になるのが、普通に目が浮かぶ。

　そして、それ以上にビックリしたのが、『恋愛イチャイチャキングダム』での悪役令嬢役である、ビクトリア・グリズリーの孫、カトリーヌ・グリズリーに関しては、カレンの顔と瓜二つ。
　カレンとの違いは、ホワイトブロンドの髪に、悪役令嬢お約束の縦ロールという髪型の違いだけ。

　ここまで似るとか、どんだけイーグル辺境伯の血って濃いんだよ？って、思うよね。

「カトリーヌ久しぶりね！」

　カレンは、無遠慮に、カトリーヌに話し掛ける。

「お久しぶりです。カレン様」

　カトリーヌは、カレンと顔は似てるが、性格は全く違うお嬢様であるようだ。
　というか、『恋愛イチャイチャキングダム』やってたから、そんな事は初めから知ってるのだけど。

　でも、この辺は『恋愛イチャイチャキングダム』には、全く出てこない場面だから、全く知らないのだけどね。
　というか、カレンとカトリーヌが親戚筋だという事なんか、そもそも知らなかったし。

　顔は似てるなとは思ってたけど、金髪縦ロールと、燃えるような赤髪って、相当違うから、流石に親戚筋だとは思わないし！

「ここが、『熊の鉄槌』リーダー、ゴリラパンチのエリザベスの実家かよ！」

　なので、俺は知らずに、口走ってしまったのである。

「ん？『熊の鉄槌』のリーダー、エリザベス様の実家？」

　カレンが、不思議そうな顔をして、俺の顔を見る。

「えっ？ 『熊の鉄槌』のリーダー、ゴリラパンチのエリザベスは、カレンの叔母さんだろ？」


　俺は、普通に『イチャイチャ恋愛キングダム』公式ガイドブックに乗ってるらしいという話をしただけなのだけど。
　エリスも普通に、そう言ってたし。
　まあ、エリスの場合は、極端に誰とも喋らないから、この事実を誰にも言ってない節もある。

「ヨツバ、あんた何言ってんのよ？確かに、行方不明のエリザベス叔母様と、『熊の鉄槌』のエリザベス様は、同じ名前だけど、同一人物じゃないわよ？」

「えっ？でも、エリザベス叔母様って人も、イーグル辺境伯の血筋だから強かったんだろ？」

「確かに、エリザベス叔母様は、幼少期から火拳のエリザベスという二つ名を持つほど、有名人だったと言われてるわ！
　だけれども、公爵家のお嬢様であるエリザベス叔母様が、ゴリラパンチのエリザベスとか、貴族に有るまじき二つ名持ちの訳ないじゃない！
　だって、ゴリラよ？！ それに、知らないの？ヨツバ。
　エリザベス叔母様は、カトリーヌのような淑女の鏡と言われる程の正真正銘のお嬢様だったのよ！
　それが、ゴリラパンチって……アンタ、エリザベス叔母様の事を、もしかしてディスってる？」

　なんか、カレンの言い方だと、逆に、カレンの憧れの人である、『熊の鉄槌』のエリザベスさんをディスってるような……

「でも、俺は、エリスから直接聞いたんだけど……エリザベスさんが13歳の時に、イーグル辺境伯領に遊びに来て、その時、イーグル冒険者ギルドで、エリスはエリザベスと出会って、最強の冒険者パーティーを作ろうと誘われたって……」

「な……なんなの、その話は。初耳なんだけど！」

　なんか知らんが、カレンがワナワナ震えて、今迄に見た事ないほど動揺してる。

　そして、一緒に居たカトリーヌが、お祖母様呼んで来ると、リビングから走り去ってしまった。

「私の憧れの『熊の鉄槌』のリーダーエリザベス様が、まさか行方不明のエリザベス叔母様と同一人物だっていうの……
　でも、『熊の鉄槌』のオリジナルメンバーである、エリス様が言うなら、間違いないか……エリス様って、そもそも嘘とか言えなそうだし……」

　まさか、エリザベス・グリズリーと、『熊の鉄槌』のリーダー、ゴリラパンチのエリザベスが、同一人物と、この世界で認識されていないとは思わなかった……

　だって、サヤも普通に話してたし、エリスも普通に話してた。
　まあ、サヤは、『恋愛イチャイチャキングダム』の公式な細かいストーリーや設定を熟知してるし、エリスは『熊の鉄槌』のオリジナルメンバーだから、言わずものがな。

「ちょっと、ヨツバ君でしたっけ？ 君の言ってる事は、本当の事なの！？」

　エリザベスのお母さんであるビクトリア・グリズリーが、慌ててリビングにやって来て、俺に詰め寄る。
　というか、どんなバカ力？！

　肩を掴まれてるんだけど、ミシミシ鳴ってるし。
　イーグル辺境伯の血筋、ヤバ過ぎる。
　これ、絶対にエリザベスが、ゴリラパンチのエリザベスと同一人物だろ。
　だって、エリザベスの母親がゴリラ並のパワー持ってんだもん。

「えっと……エリス婆ちゃん本人が言ってたので、間違い無いと思います。
　エリザベスさんが、イーグル辺境伯領に遊びに来た時、イーグル冒険者ギルドで、最強の冒険者パーティーを作ろうと、直接誘われたと言ってました！
　その後、エリザベスさんが王都のカララム王国学園に入学するのと合わせて、エリスも王都に行って、そこで『熊の鉄槌』を結成したと言ってましたから！」

　俺は、エリスや、サヤに聞いた話をそのまました。
　実際、俺自身は、『恋愛イチャイチャキングダム』の長ったらしい公式設定なんか呼んでないからね。

「確かに、イーグル辺境伯領には、エリザベスがカララム王国学園に入学する直前に遊びに行ったわ。そして、エリザベスも、イーグル冒険者ギルドに入り浸ってたわ！
　どうやら、本当に辻褄が合うわね……」

　なんか知らんが、ビクトリアさんが考え込んでいる。

「エリザベス叔母様と、『熊の鉄槌』のリーダーエリザベスが、同一人物だなんて信じられない！」

　カレンは、やっと納得したのか、興奮しちゃってるし。
　まあ、憧れの人が、自分の親戚だったら、そりゃあ興奮するよね。
　俺だって、突然、自分が大好きなアイドルが、親戚だったと知らされたら、興奮しちゃうもん。

「成程ね。確かにエリザベスが勝手に学園を辞めた時期と、『熊の鉄槌』が、精力的に活躍し出す時期は一致してるわ！」

　なんか、ビクトリアさんの推理が冴え渡っている。

「どう致しましょう奥様」

　出来そうな顔の執事が、ビクトリアさんにお伺いを立てる。

「本当に、これは盲点だったわ！ 急いで、元『熊の鉄槌』のメンバーを探して、エリザベスの行方の聞き取り調査しなさい！」

　こうして、ビクトリア・グリズリーの号令の元、行方不明だった元『熊の鉄槌』のリーダーで、グリズリー公爵家のお嬢様エリザベス・グリズリーの大捜索が始まったのだった。

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