大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

第二章 ハウエバー系 第901辺境惑星 編

70. グラスホッパー支店に温泉スパが出来た！

　
　俺がグラスホッパー騎士爵領に帰って来てからのエリザベスさんの仕事は、とんでもなく早い。

　俺をそっちのけで、サヤと連携して、どんどんウッドペッカー商会グラスホッパー支店を発展させて行くのだ。

　でもって、世界樹の地下基地とも近い事もあって、エルダードワーフ達も鼻先で使えちゃうから、本当にとんでもないのだ。

　いつの間にか、従業員の保養施設の温泉スパまで出来てるし。

　カラオケ、ボーリング場、ビリヤード、ダーツ、居酒屋まであるんだよ！
　全てこの世界には無いものなのに、エリザベスさんもサヤの知識を得て、そのまま普通に作ってるし。

「なるほどね！本当に、地球って所は発展した場所なのね！」

　なんか知らんが、エリザベスさんも、俺が地球からの転生者という事を、前提に話し掛けてくるし。

「サヤ、お前、俺が元地球人って、エリザベスさんに話ちゃったのかよ！」

　これには俺も、サヤに文句を言う。

「だって仕方が無いでしょ！そうしないと、温泉スパなんか作れないんですよ！
　そもそも、カラオケも、ボーリング場も、ビリヤードも、ダーツも！居酒屋も、この世界に無いものばかりだから、どうやって思いついたの？て、聞かれたら、答えるしかないじゃないですか！」

「それでもだよ！」

「それでもだよ！て、僕、ご主人様が元グレイ星人という秘密だけは守ってるんですから！
　ご主人様も、頭デッカチで、ひょろひょろで、生殖器も退化した元グレイ星人だったとバラされるよりは、マシでしょ！」

「それはそうだけれども……」

　そう、グレイ星人の姿は、この世界の住民にとっては、インパクトが強すぎるのだ。
　下手すると、この、魔物とか居る世界では、グレイ星人は魔物と間違われてしまうかもしれないし。

「だったら元地球人とばらされるぐらい、良いじゃないですか！
　エリザベスさんなら、今の姿のご主人様なら、全て受け入れてくれますよ！
　だって、エリザベスさんもイーグル辺境伯の血筋の女の人ですから、エリザベスさんもご主人様に惚れてるって気付いてますか？」

「お前、何言ってんだ？エリザベスさんは人妻で、エドソンが居るんだぞ！」

「そんなの関係ありませんよ！イーグル辺境伯の血筋の女の子達は、強くて甲斐がある男子を見ると、自然とお股を開いてしまう性質ですからね！
　それより、エドソンさんの事を、エドソンって、呼び捨てにする方が問題だと思いますけど？
　ご主人様って、そんなにエドソンさんと親しかったですか？」

　何故か知らんが、サヤが、ニヤニヤしながら聞いてくる。

「それはだな……よく分からんけど、エドソンさんは、エドソンなんだよ。
　まあ、自然に口から出てきちゃんだからしょうがないだろ！
　エドソンが居る場所では、ちゃんとエドソンさんて言うから、良いんだよ！」

　なんか知らんが、俺はとても恥ずかしくなって逆ギレする。
　恥ずかしいという感情も、どうかと思うけど、まあ、気恥しいんだよね。エドソンさんと呼ぶのは……
　なんか心の奥底も奥底。心の深淵の部分で、エドソンさんとか言うと、気持ち悪くて、なんか、ゾワゾワッてっする気分になってしまうのだ。

「ですです。僕もそれで良いと思います！」

　何故か知らないが、とても満足そうなサヤが、本当に不気味である。
　そんなに、俺が、エドソンさんの事を、エドソンと呼び捨てにするだけで嬉しいなんて、流石はバグった最新鋭AI。普通とは完全に感性が違うのだろう。

　まあ、そんな感じなのだが、なんだろうね。
　俺、このグラスホッパー領が、なんだか居心地が良いんだよね。

　エドソンもエリザベスさんも、まるで本当の両親のように接してくるし、コナンとシスも、俺の事をお兄ちゃん、お兄ちゃんと言って懐いてくるし。
　ナナに至っては、本当に他人のような気がしないのである。

　まあ、コナンやシスのように俺に懐いていないが、エリザベスに、俺の事をお兄ちゃんと呼ぶように言われて、恥ずかしそうに、俺の事を「お兄ちゃん」と、呼んでくれた時、俺は、ビリビリっと、なんか体中に電気が流れるような衝撃を受けたのである。

「ナナ……」

　俺も、思わず、本当のお兄ちゃんのように、ナナと呼び捨てに呼んじゃったし。

「ううぅぅ……本当に良かったです」

　なんか知らんが、サヤが涙ぐんでるし。
　本当に、意味が分からない。
　俺が、ナナの事を呼び捨てに呼んだだけで、何が嬉しいのやら……

　まあ、兎に角言いたいのは、俺は、このグラスホッパー家の人々が大好きなのだ。
　アッ！？ジミーだけは除いてね！

　アイツだけは、どうしても好きになれないのだ。
　それも心の奥底の奥底の、心の深淵の部分で、絶対に！

　本当に、何でだろうと思うほど、大嫌いなのである。

「それは、ジミーがジミーだからじゃないですか？」

　俺は、言葉に出してもないのに、サヤが回答してきた。

「なんでお前、俺の心の中で思ってた事を、回答出来るんだよ！」

「それは、僕のように、ずっとご主人様の事だけを考えてる最新鋭AIともなると、ご主人様の心ぐらい読めるようになるんです！」

　なんか知らんが、サヤは、鼻高々に無い胸を張る。

「そんな訳あるかい！どうせ、俺の体の中に仕込んでる特別製のナノマシンかなんかで、解るんだろ！」

「それでは、それで良いです」

　サヤは、ムフフと、含み笑いをして答えるのだった。