大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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第一章 ヨナン・グラスホッパー編

39. セバスチャン

 
 ヨナンは、流通本部長のナスさんに、グラスホッパー商会本店と、カナワン支店の定期便を始めるように頼んだ後、トップバリュー商会に攻め込まれた時の防衛の為に、グラスホッパー騎士爵領の城塞化計画を、エリザベスに任された。

「というか、エリザベスの奴……トップバリュー男爵家と戦争でもするつもりなのか?」

 ヨナンは、得意の独り言を言いながら、グラスホッパー領を見渡している。

『それ程、トップバリュー男爵家にムカついてるんじゃないですか?
 僕、直接脳に、エリザベスさんと、コナンちゃんと、シスちゃんに、ご主人様が経験した事を全部映像にして見せましたから、しかも100倍速で! 多分、相当、脳に負荷が掛かって実際よりもご主人様の苦しみが、より苦痛に感じたと思います!』

「お前、エリザベスは別にして、なんてものを、子供に見せてるんだよ!」

 そう、ヨナンが経験した苦しみや痛みや恥辱は、子供に見せれるような代物ではないのである。
 だって、ヨナンは、アスカの足の指の間をペロペロしたり、オナペットにされたり、肉椅子にとかにされていて、完全に18禁の映像であるのだ。

『見たいと言われたら、見せただけなんですけど……僕は鑑定スキルなんで、嘘の情報は見せれないんですよね』

「もう、俺の情報は誰にも見せるなよ」

『分かってますって! エリザベスさんと、コナン君と、シスちゃん以外には、絶対に情報は漏らしまさんから!』

 ヨナンは、鑑定スキルに念押しして、早速、グラスホッパー領の城塞化を始める。

「やっぱり、籠城したりする時の食料問題とかも考えると、大森林の畑も全部、城壁で囲った方がいいよな?」

『ですね!』

 鑑定スキルは、軽い感じで答える。

「それだと、前にトップバリュー男爵家の領都を作った時より、もっと大きくなっちゃうな」

『今回は、国防に重点を置いて城壁を建築するので、あの時みたいに過度な装飾しなくてもいいんじゃないですか?
 確か、あの時、ご主人様、城壁の全てに彫刻を彫らされていましたもんね!』

「五月蝿い!あの時の俺はどうかしてたんだよ!」

 とか、何気ない会話を鑑定スキルとしつつ、ヨナンは黙々と城壁工事を続ける。
 そして、工事を続ける事、4日間。
 やっとこさ、大森林の畑も含むグラスホッパー全領土を囲む城壁を完成させたのであった。

 ーーー

『やりましたね! ご主人様!』

「ああ。畑部分の方が多かったけどな! 元々のグラスホッパー領って狭かったから、カララム王国学園で寮生活してる兄貴達が、久しぶりにグラスホッパー領を見たら、きっと、腰抜かして驚くぞ!」

『ですね!というか、ご主人様。のんびり話してる時間はもう無いですよ! もう少しで、カナワン支店行きの定期便の出発の時間だから、それに乗ってカナワン支店に行くんだったんですよね!』

「ああ! エリザベスに従業員の面接の時は来てくれと言われたからな!
 確か、俺の鑑定スキルを使って、人を調べるとかなんとか言ってたし!」

『成程、僕の活躍の機会ですね!』

「だな!」

 そして、グラスホッパー領とカナワン城塞都市を結ぶ定期便に飛び乗ってから6時間。久しぶりに、カナワン城塞都市の正門前に到着した。

「なんか、カナワン城塞都市、活気が昔より有るんじゃないか?」

『ですね! 正門で街に入る為に並んでる人も、いつもより多いです!』

 そんな行列してる横を素通りして、グラスホッパー商会の定期便は、フリーパスでカナワン城塞都市の中に入って行く。

「ん?  検問受けなくていいのか?」

「はい。エリザベス様が、カナワン伯爵様と交渉して、グラスホッパー商会の荷馬車は、列に並ばなくてフリーパスに入れるようになりました」

 定期便の御者が教えてくれる。

 そして、そのままカナワン城塞都市の城壁内に入る。

「て?えっ! 何で、庶民用の宿屋とお食事所が開店してるんだ?」

「それは、エリザベス様が、カナワン城塞都市で潰れそうだった宿屋の従業員を全員スカウトして、グラスホッパー商会の宿屋に移籍させたからですね。
 しかも、エリザベス様自らが教育して、グラスホッパー商会のブランドに恥じないように、社員教育も徹底しています!」

 定期便の御者が教えてくれる。

「エリザベスは、どんだけ有能なんだよ……」

 ヨナンは定期便から下りて、グラスホッパー商会カナワン支店に入ると、コナンとシスが、たった2人きりで、必死に公爵芋の石焼き芋と、新商品のスゥイートポテトを売り捌いていた。

「あっ! ヨナン兄ちゃん! お母さんが、ヨナン兄ちゃんが来たら、紹介したい人が居るから、お母さんの部屋に来てって言ってたよ!」

「そうか」

 ヨナンは、忙しそうに仕事してるコナンに言われて、2階のエリザベスの部屋に行く。

 トントン。

「どうぞ!」

 ドアをノックすると、中からエリザベスの声が聞こえて、勝手にドアが開く。

 というか、誰?

 そう。忙しそうに書類をチェックするエリザベスの代わりに、初老の執事服を着た男が、ドアを開けてくれたのだ。

「どうぞ。ヨナン坊っちゃま。そちらのソファにお座り下さいませ。すぐにお茶の用意をさせますので」

 初老の執事は、これまた見た事ないメイドのような格好をした女性にお茶を持ってくるように指示を出す。

「あの……エリザベスさん……こちらの方々は、誰ですか?」

 ヨナンは、取り敢えず、エリザベスに聞いてみる。

「ああ。そっちの執事は、グリズリー公爵家の筆頭執事のセバスチャン。そして、今、お茶を入れにいってるメイドは、確かアンナちゃんだったかな?
 セバスチャンが、公爵家から連れて来てくれたメイドよ!」

「何で、公爵家の筆頭執事がグラスホッパー商会に居るんですか!」

 ヨナンは、思わずエリザベスに突っ込みを入れる。

「ほら! 私、ずっと家出してたでしょ! そして、前にカナワン伯爵に、私の素性を教えちゃったから、イーグル叔父様を通して、グリズリー公爵家に伝わっちゃったのね!
 それで、お父様が心配して、筆頭執事のセバスチャンと、公爵家のメイドを寄越したわけ!
 まあ、二人ともグラスホッパー商会で雇う形にしたから、商会長のヨナンちゃんが顎で使っていいわよ!」

 エリザベスは、軽い感じで説明する。

「ちょっと、そんな事言われても、セバスチャンさんは俺より大分歳上だし、執事なのにカナワン伯爵より威厳が有るし、俺がセバスチャンさんを顎で使うとか絶対に無理でしょ!」

「ヨナン坊っちゃま。このセバスチャン。もう老い先短い身でありますが、ヨナン坊っちゃまと、エリザベスお嬢様に一生涯忠誠を誓う事をここに宣言します!」

「あの? 公爵家の筆頭執事じゃなかったんですか?」

「はい。エリザベスお嬢様に、グラスホッパー商会に入るように言われてすぐに、グリズリー公爵家には辞表を送りましたので、何も問題ございません!」

 セバスチャンさんは、サラッと恐ろしい事を答える。

「何なんですか! その忠誠心!」

「ヨナン君、取り敢えず、セバスチャンには、社員教育と、グラスホッパー商会の高級ホテルの支配人を任そうと思ってるの!
 それで、問題無いわよね!」

 エリザベスは、ヨナンの突っ込みを、サラッと無視して話を続ける。

「まあ、俺には高級ホテルのサービスなんか分からないですから、公爵家の筆頭執事を任されていた人物が支配人になるなら、心配する事は何もなくなりますね」

 ヨナンは、エリザベスの提案を了承する。
 だって、エリザベスの仕事は完璧だしね。

「それから、今、公爵家で仕えてる若手料理人を、グラスホッパーホテルに貸し出して貰う手筈も進んでるから、セバスチャンの社員教育も済んで、料理人がカナワン城塞都市に到着する予定の2週間後から、グラスホッパーホテルの営業を始めるわよ!」

「なんか、俺が知らないうちに、ドンドン、話が進んじゃっているんですね……」

 ちょっと、ヨナンは拗ねながらエリザベスに言う。

「何、言ってんのよ! これも、ヨナン君が、勝手に、高級ホテルやら、お食事所やら、温泉施設やら勝手に作っちゃったからじゃないの!
 それを何とか軌道に乗せる為に、私が持ってる全てのコネを使って、頑張ってるの!
 本当だったら、公爵家の威光とか使いたくないんだから!
 兎に角、私も、ヨナン君の建築スピードに負けないように頑張ってるの!
 全ては、にっくきトップバリュー男爵家にザマーする為にね!」

 どうやら、全ての原動力は、トップバリュー男爵家にザマーする為のようだった。
 最初は、俺やコナンやシスを学校に入れる為だとか言ってたのに。

 多分、今の段階で、当初の目的は余裕で達成してしまったので、新たな目標が必要だったのだろう。

 だがしかし、これ程の商才を持ってるエリザベスが、今迄、何故、グラスホッパー領で本領を発揮できなかったのか謎である。

 まあ、エリザベスの商才以上にグラスホッパー領が不毛で、尚且つ、エドソンが全く、甲斐無しだっただけかも知れないけどね。
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