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第一章 ヨナン・グラスホッパー編
54. レッドドラゴン
しおりを挟む「それでは、主様、ひとっ走りして、主様が倒したレッドドラゴンを取りに行ってきます!」
エリスは、ヨナンに、超絶美形クールビューティーの顔のまま、鼻と鼻がぶつかる距離で言ってくる。
「ああ。俺はレッドドラゴン倒したか見えないから、取り敢えず、お願いな……」
「ちょっと! ヨナン、絶対ダメだって! あんな遠く! どう考えても、冒険者が誰も到達した事ない、大森林の奥の方よ!
例え、S級冒険者のエリスお姉様でも、一人で行くのは危険よ!」
いつも無茶な事を言うカレンが、初めてマトモな事を言ってきた。
「大丈夫ですカレンさん。元々私は、イーグル冒険者ギルド所属のS級冒険者で、大森林は私の庭のようなものですから、何とかなります!」
と言うと、エリスは物凄いスピードで、走り去っていったのだった。
「えっと、どうする? エリスが帰って来るの長そうだから、狩りでもする?」
『ご主人様! それより聖剣ムラサメをしまって下さい! そんなの持ってたらまた事故が起こりますよ!
今回は、大森林の中心に向かって素振りをしたので良かったですけど、これがイーグル辺境伯領の領都イグノーブルとかの方向だったら、大惨事だったんですからね!』
ヨナンは、こっぴどく鑑定スキルに怒られたのだった。
ーーー
「ヨナン、お前、凄すぎるな……俺の想像を遥かに超えちまってるよ……」
セントが、まるで怪物でも見てるかのように話掛けてくる。
「まあこれは、武器を持ったとき限定な。
俺、武器持って無かったら、めちゃくちゃ弱いから」
ヨナンは、しっかりと付け加えておく。これが本来の力だと思われるのも嫌だし、武器を持ってない時に、強いと勘違いされて頼られても困るしね。
「それが、大工スキルの恩恵なのか?」
「ああ。俺が持てば、どんなしょぼい道具でも最大限の力を発揮できてしまうらしい。
だから、さっきの刀は、最高級の大森林の材料で、俺が敵から身を守る為に、死ぬ気で打った刀なので、とんでもない刀になっちゃったんだよね!」
「そ……そうなのか?」
セントは、まだよく理解できていなそうである。
『はい! なので、ご主人様には、絶対に自分で作った武器とかは持たせないで下さい!
軽い気持ちで作った武器でも、とんでもない性能になって、尚且つ、その武器をご主人様が使うと、更に、トンデモない事になってしまいますので!』
鑑定スキルが、更に付け加える。
「なるほどな」
ようやくセントが理解できたようだ。
『なので、大森林の浅層ぐらいなら、ご主人様には、その辺の小枝で十分なんですよ!』
「だってさ」
ヨナンは、返事をしながら、その辺に落ちてた小枝を拾う。
『ちょっと、待って下さい! ポテンシャルが高過ぎる大森林の小枝はいけませんって! ご主人様には強力過ぎます! 前にカレンさんを倒した、本当にそこら辺に落ちてた小枝に持ち替えて下さい!』
「分かったって!」
こうして、カレンとセントの攻撃力より、少しだけ強いぐらいに調整されたヨナンは、やっとこさ、異世界転生主人公らしく、魔物狩りを楽しむ事が出来たのだった。
ーーー
「大丈夫ですか?」
大森林の奥の奥、エリスが傷付いたレッドドラゴンに話し掛ける。
「ああ。何とかな……だが、アレは何者だ? まさか、世界樹目掛けてあのような神級魔法の複合斬撃を放つ戯け者が、この世に存在しようとは……
グフッ! 我がもう少し気付くのが遅かったら、世界樹が消滅して、この世は闇の世界に覆われて、滅亡する所だったぞ……」
レッドドラゴンは、口から血を垂らしながら、エリスに語る。
「あの方は、女神ナルナー様のお気に入りです」
「なんと、女神ナルナー様の!」
巨大なレッドドラゴンは、驚愕してる。
「なるほど、ならばあの力も頷ける。
しかし、女神ナルナー様が選んだ者なら間違いはないと思うが、巨大な力は使い方を間違えればとんでもない事となる。
今回の世界樹破壊未遂のようにな……」
「はい。それで私が、ヨナン様が間違った力の使い方をしないようにと、傍で監視しているのでございます」
「なるほどのう……それで、監視していた結果が、このような惨状になる訳だな……」
レッドドラゴンは、自分の身体にポッカリ開いた風穴と、少しだけ焦げ付いた世界樹の葉っぱを見やり、エリスに質問する。
「ですね!」
エリスは、クールビューティーな顔を崩さず、何事でもないように頷いたのだった。
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