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55. 凱旋

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 エリスは、瀕死の重症のレッドドラゴンを、取り敢えず、万能薬である世界樹の雫で治療し、その辺に落ちてたレッドドラゴンの鱗5枚を拾い、まだ何か、ちょっと足りないなと思い、レッドドラゴンの尻尾を氷の刃で、ザクッ!と、斬り裂き、レッドドラゴンが、「ギエェェェーー!」と、叫んでるのを何事でもなかったように無視し、そのまま、ヨナンの元に走る事、30分。

 既に、ヨナンによって消滅された木々は再生し、ある程度、ヨナンとカレンも狩りを楽しみ終わった頃、エリスは、ヨナン達一行と合流したのだった。

「主様、只今戻りました!」

 エリスが、ヨナンに報告する。

「で、レッドドラゴンは本当に居たのか?」

 ヨナンは、一応、確認する。
 だって、全く、老眼でないヨナンには、100キロ先など見える筈ないから。

「すみません。私が到着した時には、どうやらレッドドラゴンは命からがら逃げた後だったようで、ご主人様が放った剣激が、レッドドラゴンに当たったと思われる現場で、レッドドラゴンの鱗5枚と、それからレッドドラゴンの尻尾を回収してきました」

 エリスは、クールビューティーの顔を崩さず、真顔で嘘をつく。

「えっ! 本当に俺が何気に振るった素振りが、レッドドラゴンにヒットしてたのかよ!」

「はい。これが、証拠の鱗と尻尾です」

 エリスは、自分の魔法の鞄の中から、レッドドラゴンの血が大量にベッタリ付いた巨大な鱗5枚と、斬れ味よく切断された、これまた10メートルはあろう巨大な尻尾を取り出す。

「ドラゴンって、伝説上の神獣だと思ってたんだけど、本当に居たんだな……」

 ヨナンは、その巨大な鱗と、尻尾を見てワナワナ驚愕する。

 しかし、それ以上に、

「 普通のワイバーンの鱗と尻尾でも相当な値段で取引されるのに、こんな状態のいいレッドドラゴンの鱗と尻尾なんて、多分、天文学的な値段になるぞ!」

 何故か、ヨナン以上にセントの方が興奮してる。

「ヨナン! これは凄いわよ! 早く、お爺様に自慢しに行きましょ!
 きっと、滅茶苦茶褒めてくれるわよ!
 大森林にレッドドラゴンが居る事は、昔から確認されてたけど、目撃証言は、もう100年以上も前で、伝説の神獣って言われてるんだから!
 そして、そんな伝説の神獣レッドドラゴンの尻尾と、鱗を持って持ち帰ったりなんかしたら、そりゃあもう、イーグル辺境伯領史上最大の大事件になるんだから!」

 なんか、カレンが物凄く興奮してる。

「だけど、何で尻尾まであるんだろうな? 俺の攻撃って、雷やら、炎やら、風やら、氷がトルネードの渦巻きなみたいに飛んでったから、こんなに綺麗に切断されないと思うんだけど?」

 ヨナンは、どうでも良い事が気になってしまう。

「あの、主様。所詮、レッドドラゴンも、トカゲの仲間ですから。突然、有り得ない程の攻撃を受けて、ビックリしたあまり、自ら尻尾を切って逃げていったのではありませんか!」

 エリスは、必死に言い訳をする。決してクールビューティーの表情は崩さずに。

「なるほど、伝説の神獣レッドドラゴンも、トカゲの仲間か。まあ、言われてみたらそうだな。結局、攻撃を受けて逃げてった訳だし!」

 ヨナンは、レッドドラゴンは、トカゲの仲間と聞いて妙に納得してしまい、もう、トカゲの尻尾の余りに綺麗過ぎる切り口については、それ以上、何も追求しなかったのであった。

 でもって、イーグル辺境伯領、領都イグノーブルに凱旋。

 鑑定スキルによると、物凄く貴重だという鱗にベッタリついた血を瓶に回収した後、
 何故か、カレンは巨大な10メートルはあろうレッドドラゴンの尻尾を担ぎ、ヨナンとエリスとセントにも、レッドドラゴンの巨大な鱗を持たせ、城壁の正門からイグノーブル城塞都市に入る。

 そして、

「私の未来の旦那様が、レッドドラゴンを討ち取ったわよ! 」

 と、カレンは巨大なレッドドラゴンの尻尾を引きずりながら、大声で叫ぶ。
 既に、ヨナンが大魔法?を放つのを目撃してた冒険者や、レッドドラゴンを倒したという情報が出回ってたのか、もうイーグル辺境伯領、領都イグノーブルはお祭り騒ぎ。

「カレン様ーー!万歳!」

「誰か知らないけど、カレン様の未来の旦那様、万歳!」

 カレンは、どうやら、イグノーブルで、とても人気が有るのか、街の人々が盛大に祝福してくれる。

 そして、レッドドラゴンの巨大な尻尾と鱗を自慢するように、城下町をゆっくり練り歩き、城に到着する頃には、既にレッドドラゴンを討伐?した事を聞き付けていた、イーグル辺境伯が城の門の前で、興奮の面持ちで待っていた。

 そして、カレンとヨナンが、門の前まで到着するやいなや、カレンとヨナンを軽々く持ち上げ、2人を自分の肩に乗せ、

「良くやったぞ! 流石は、カレンの婚約者、大戦の英雄エドソン・グラスホッパーの息子、ヨナン・グラスホッパーだ!」

 と、たまたま寄子会議や、ワイン品評会に集まってた上級貴族達に、ヨナンの物凄さを猛烈にアピールしたのだった。
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