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80. 悪徳宗教

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『ご主人様、なんか凄い事になってますよ!』

 鑑定スキルが、興奮気味に話し掛けてくる。
 そう。女子達が偉いこっちゃになっているのだ。

「ああ。想像以上に今まで眠ってたユニークスキルが伸びてるみたいだよな」

『なんか、ユニークスキルを意識させて、使いこなせるようにしようとしただけなのに、みんな凄くレベルが上がってますよ!
 スーザンさんなんて、索敵Lv.4ですよ!
 これは、前人未到ですよ!
 多分、僕が鑑定Lv.3になった、次ぐらいに凄い事ですからね!』

 鑑定スキルは、暗に自分の凄さをアピールしながらも、スーザンを褒める。

「ああ。確か、俺と同じイーグル辺境伯家の寄子の家の子だったよな?」

『そうです! あの子のご主人様を見る目。アレは完全に崇拝しちゃってる目ですよ!
 ご主人様、一体何したんですか?
 もう、特訓も完全に常軌を逸してますからね! だって、未だに一睡も寝ずに、索敵続けてるんですから、一体、どんな集中力してるんですか!
 メイドさんとか、マッサージさんとか、滅茶苦茶大変そうでしたよ!
 どれだけ、「睡眠とりましょ!」と言っても聞き入れなくて、「ヨナン様の為、ヨナン様の為」と、ブツブツ念仏のように唱えてたと、情報が入ってきてましたからね!』

「オイオイ……睡眠取らなくて大丈夫なのか?」

『その辺は抜かりないです。グラスホッパー領の食べ物は栄養満点なので、毎日食べてたら、睡眠など取らなくても生きていけますからね!』

 なんか、グラスホッパー領の食べ物にも驚きだが、やっぱり、同じ寄子のスーザンがヤバ過ぎる。
 なんか、ただのレベル上げの特訓の筈なのだが、ヤバイ宗教にも入ってるような熱の入れようである。

 やはり、ドラゴン肉の効果だな。アレをやってから、同じイーグル辺境伯の寄子の中でも、特に貧乏だった家の子達は、俺をやたらと崇拝してくるような気がしてたのだ。

 まあ、俺だって、ポン!と何億マーブルものお金をくれる人が居たら、ケツの穴ぐらいなら差し出しても良いと思えるし。

「兎に角アレだな。スーザンは信用してもいいかもな」

『ですね! あの目は、悪徳新興宗教にハマってる人の目ですから。洗脳されてるうちは、絶対にご主人様を裏切る事はないと思います!』

 そう。スーザンの索敵スキルは、ハヤブサが率いるグラスホッパー商会の忍者部隊の役に立てそうな気がしてたのだ。
 なので、グラスホッパー商会に就職を誘ってみたのだが、二つ返事でOKしてくれた。

 忍者部隊は、必ず守秘義務が求められる。
 まあ、スーザンほど忠誠心を持ってたら、全く心配する必要などないかもしれないけどね!

 でもって、その時、すぐにでもグラスホッパー商会に入れてくれと言って来たけど、取り敢えず学園を卒業してからと言っておいた。

 そしたら、「私の能力が足りないからですか?」とか聞いてきたので、「いやいやいや。十分だから」と、言った筈なのに、思い詰めた顔してたので、もしかしたらそれが原因で、睡眠時間無しで特訓してたのかもしれない……。

 とか、思ってたら、次の日。

「ヨナン様! 私の索敵能力を見て下さい!」

 と、いきなりスーザンが言ってきて、そして、索敵Lv.4の凄さを、俺に見せつけて来たのだ。

「どうですか! これで今直ぐ、グラスホッパー商会に就職させてくれますか!」

 圧が強過ぎる……これは、断る選択肢なんかないよね……駄目とか言ったら、このまま寝ずにまた、索敵のレベル上げし続けちゃいそうだし……

「ああ。スーザンの実力は分かったよ。そしたら、特別に、カララム王国学園に入学したまま、グラスホッパー商会に入れてあげよう!
 グラスホッパー商会も、一応、学歴社会だからね。やはり、スーザンのような優秀な幹部候補生には、しっかりと学園で学んで貰いたいしね。
 本当に、これは特別な事なんだ。こんな事、本当に優秀なスーザンさんにしか言わなんだからね! そこんとこ、よ~く考えてくれ!」

 ヨナンは、メチャクチャ念を押す。
 これ以上、徹夜で索敵の修行をされて、倒れられでもしたら、責任感じてしまうし。

「分かりました! ありがとうございます! 私はヨナン様の特別なんですね!
 しっかり、学園で学問を学びながらも、グラスホッパー商会の為にお役に立ってみせます!」

 なんか、スーザンは喜び勇んで、走ってどこかに言ってしまった。

『凄かったですね……』

 鑑定スキルが、話し掛けてくる。

「ああ。アレが新興宗教にハマった人のトランス状態なんだな……」

『やっぱり、合宿という形態が駄目だったんじゃないですか?
 洗脳する時って、他の社会から隔離して、洗脳するとか言うじゃないですか……』

「アノ子、勝手に自分自身で極限状態に追い込んでいったんだぞ?」

『もう、ご主人様が、自分を導く教祖様にでも見えてたんじゃないですか?』

「そうなのか?」

『きっと、そうですよ!』

 とか、話してた数分後。

 グラスホッパー商会王都店に居るエリザベスから、鑑定スキルの念話を通して連絡が来た。

 どうやら、スーザンが、グラスホッパー商会王都店に、入社の挨拶に来たらしい。

 取り敢えず、エリザベスには、鑑定スキルに説明させて、ハヤブサの元で学ばせる事に決定した。
 話によると、俺の元にもハヤブサの部下が常時、護衛役として見張ってるらしく、その部下を、取り敢えずのスーザンの教育係にするようである。

 でもって、夏休みとか長期休暇を利用して、ハヤブサ本人が、スーザンを直接みっちりと教育して、一人前の忍者に育てるとの事。

「あの子の行動力スゲーな……」

『これも、ご主人様の人徳のなせる業じゃないですか?』

「俺って、人徳あったの?」

『すみません。お金の力だったかもしれません……』

「だよな……」

 世間では、ヨナンの人徳を結構評価されてるのだが、損得勘定だけで動いてるつもりのヨナンと、死に戻り前の駄目ヨナンを見てる鑑定スキルだけは、どうしても、金の力としか思えないのであった。
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