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103. 子爵位授与

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「それでは、グラスホッパー準男爵が、逆賊トップバリュー元男爵から国を守った功績を称え、子爵位授与の式典を始める!」

 カララム王国学園の中庭で、国のお偉いさんだと思われる司会者が、式典の始まりを告げる。

 何故か、エリザベスやグリズリー公爵家も参加していて、貴族社会のしがらみが大嫌いなエドソンまで、グラスホッパー男爵領からわざわざやって来てるし。
 しかも式典始まる前から大号泣。
 余っ程、俺が、領地持ちの子爵になる事が嬉しいらしい。

 本来なら、息子に自分の爵位を抜かされる事が悔しいと思うが、そこは貴族社会に全く馴染んでないエドソン。エドソン自身が貴族になんてなりたくないと思ってるので、悔しいとかいう気持ちは全くなさそうだ。

 逆に、末席で参加してる次男のジミーが、歯ぎしりして悔しがっている。

「おのれ……無能のヨナンの癖に……」

 もう、悔し過ぎて、言葉に出ちゃってるし。

 まあ、ジミーはほかっといて、またまた一段の若返った王様が、壇上に上がる。
 歳は、ヨナンと同じくらいの14歳ぐらいに若返ってるか?どう見ても、息子のルイ王子より歳下に見えるし。

 これは、絶対にルイ王子が王様になる事はないと断言できる。

「グラスホッパー準男爵ヨナン・グラスホッパー!前に出よ!」

 司会者に言われて、ヨナンは前に出て、壇上に立つ若くなった王様の前まで歩いて行き、そこで王様に向かって礼をする。

「ウム。久しいな。ヨナン・グラスホッパーよ。バカ息子のルイの件では、世話になった。まあ、彼奴のせいで、トップバリュー男爵を国から追放できたのが唯一の救いじゃな」

 見た目、メチャクチャ若いのに、とても偉そうな王様が、ヨナンに話し掛ける。
 というか、何て返事をすればいいのか分からない。
 ここで、そうですねとか言ってしまうと、王様の息子のルイ王子をディスる事になっちゃうし、意外と、自分は貶していても、人に自分の息子を貶されると、嫌なタイプもいるし。

 取り敢えず、俺は苦笑いする事しかできない。

「さて、それでは、ヨナン。貴様に子爵の爵位と、元トップバリュー領をくれてやる!
 大いにワシに感謝し、カララム王国に忠誠を誓うように」

「ははあーー!」

 俺は大層仰々しく頭を下げた。
 貴族社会に疎いので、どうすれば良いか分かんないし、取り敢えず、頭さえ下げとけば間違いないだろうし。

 前に、準男爵貰った時は、エリザベスやグリズリー公爵、イーグル辺境伯と王様だけの密室会議だったので、作法とか関係無かったんだもん。

「ウム。そして、今日、ワシがカララム王国学園に訪れたのは、ヨナン・グラスホッパーに爵位を与える為だけにやって来たわけじゃない。
 新学期から、ワシも、カララム王国学園の1年生に編入する為に訪れたのじゃ!」

 カララム王のまさかの発言に、生徒は疎か、先生も、王様の側近の取り巻きまで驚いている。多分、誰にも言わずに秘密にしていたのだろう。

「陛下! 何を仰られてるんですか!」

 側近達が、カララム王に詰め寄ってワイワイ騒ぎ出す。
 生徒と先生達は、呆然と見守るしかない。

「折角、若返ったんだから、また学生気分を味わいたいじゃろ!」

「そしたら、誰が国を統治するんですか!」

「そんなのワシが居なくても出来るじゃろうて! 結局、ワシが居なくても国は、いつも回っとるじゃろうが!」

「しかしですね! それでは国民に示しがつきませぬ!」

「じゃったら、ルイの奴に、王代理でもやらせとけ!
 そして、女に現を抜かして己を見失った事の愚かさと、自身が真にやるべき事を学ばせるのじゃ!
 ルイの補佐は、全て、ホエール、お前に任せる!」

 カララム王は、髭面の大男のホエール侯爵に、尊大に言い放つ。

「「えぇぇぇぇ~!!」」

 まさかのルイ王子に、王代理?これは失態したルイ王子に、敢えてチャンスを与える為の大芝居?なんとでも考えようがあるが、俺的には、ただ、王様自身が学生をやり直したいに一票。

 何故か、腹心であろうホエール侯爵は、感涙してしまってるし。
 まあ、アスカの魅了のせいで、AV男優に成り下がってしまったルイ王子に同情する部分もあったのだろう。

 なんか知らんが、エドソンまで号泣してるし、どんだけ涙脆いんだよ……。

 なんか、こうなってしまったら、どうする事も出来ない。
 王様が苦心の末悩んだ結果に考えついた、ルイ王子の再生計画かもしれないし、ルイ王子も王様代理だから、ずっと王様を続ける訳ではなさそうだし、ただ王様が学園生活を楽しむ4年間だけの代理王。

 それだったら、カララム王の腹心達もいいんじゃないかと思えてきてるようである。
 まあ、一番の腹心のホエール侯爵が王様の英断に感動してしまってるので、カララム王が、カララム王国学園に編入する事で、全ては丸く収まるのであろう。

「陛下! 私がしっかりとルイ王子を、公正させて立派な王代理に育ててみせます!」

 カララム王の腹心、ホエール侯爵は、胸に手を当て、カララム王に誓ってみせたのだった。どんだけ忠臣……絶対に若返った王様が、若い女の子と遊びたいだけだろ……。

 トラブルメーカーのアスカが居なくなったと思ったら、それ以上のトラブルメーカーになりうるカララム王の編入。

 一体、ヨナンの学園生活はどうなる事やら。
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