大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ

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第一章 ヨナン・グラスホッパー編

138. ナルナー道中膝栗毛

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 最近、空中浮遊を覚えたのに、何で、のんびりキャンピングキッチン荷馬車で移動してるかというと、それは、東ナルナー街道の視察をする為である。

 俺が、夏休みに、東ナルナー街道を作ってから、エリザベスと鑑定スキルが協力し、東海道五十三次をモチーフにした、東ナルナー五十三次を整備したのだ。

 そんでもって、それにビクトリア婆ちゃんも一枚噛ませろと、しゃしゃり出て来て、第1の宿場町が、グリズリー公爵領になってたりする。

 まあ、たまたまグリズリー支店の、ロードグラスホッパーホテルや、安価な宿屋を、日本様式で建設してたので、丁度良いと言えば、丁度良かったんだけど。

「結構、すげえな……人の往来も盛んだし」

 俺は、思わず感嘆する。

『エリザベスさんが、メチャクチャ宣伝してましたからね!
 お陰で、現在、ナルナー神宮参りが、空前のブームになってますから!
 一生に一度は、女神ナルナー神宮にお参りに行こう!って!』

 鑑定スキルが、事の経緯を端折って説明する。

「宣伝って……廃れた女神ナルナー教に、お参りする奴なんて、本当に居たんだな」

『あの、ご主人様。本家のお伊勢さんだって、南北朝時代や室町時代は、物凄く落ちぶれて荒廃してたんですからね。
 伊勢神宮が復活したのって、織田信長が援助してからです!
 それから、お伊勢参りが流行りだしたのって、参勤交代で街道が整備されて、しかも生活に余裕が出てきた江戸時代からですから!』

 鑑定スキルが、ドヤ顔で、豆知識を披露する。まあ、スキルなので、本当にドヤ顔してるか分かんないけど。

「あの、いつも混んでる伊勢神宮にも、廃れた時期があったのかよ!」

『そりゃあ、そうですよ! だから、宣伝が大事なんですよ!
 エリザベスさん、東海道中膝栗毛をもじって、ナルナー道中膝栗毛とかいう本まで、出版しちゃいましたからね!
 その本で、各宿場町の名物やらを、面白おかしく紹介してるんです!』

「弥次さん喜多さんの奴な!  やっぱり、エリザベスに丸投げして正解だったって事だな」

『ですね。それから今度、稲荷神社を作って下さいと言ってましたよ!
 折角、九尾のココノエさんを手中に収めたんだから、この世界にお稲荷さんを拡めたいって、言ってました!』

 何故か、エリザベスのリクエストを、鑑定スキルから聞かされる。
 というか、俺の鑑定スキルだというのに、念話機能をフル活用して、エリザベスと密談するなんて、本当に許せない。
 というか、俺より、エリザベスの方が、鑑定スキルを上手く使いこなせていて、悔し過ぎる。

「お稲荷さんって、ココノエは、アンガス教の教皇なんだぞ!」

 ちょっと悔しかったので、ダメ出しをしてやる。ココノエが訳の分からん宗教の手を貸すかよ。

『大丈夫ですって! ココノエさん、ご主人様に心酔してますから!
 狐の神様になってとお願いしたら、二つ返事でOKしてくれますよ!
 この世界には、元々、九尾を信仰する風習も有るみたいですし、それとお稲荷さんを合体させてしまうんです!』

「お前、言ってることメチャクチャだぞ?」

『というか、この計画は既に進んでますから!
 しかも、ビクトリアさんまで、一枚噛ませてくれと言ってきて、結局、グリズリー公爵領に、お稲荷さんの総本山を建てる事が、つい先日決定してたりします!
 多分、ご主人様が、カララム王都に戻って来たら、エリザベスさんとビクトリアさんが、お稲荷さんの総本山の建築を頼みに来ると思いますよ!』

 意味が分からな過ぎる。
 何で、異世界でお稲荷さんを普及させないといけないのだ?
 というか、絶対に金儲けだし。九尾と、狐の神様は、そもそも別モンだし。

 とか、宿場町の視察を兼ねた馬車旅をすること3日目。
 久しぶりの、トップバリュー男爵領、改め、グラスホッパー伯爵領に到着したのだった。

「なんか、凄い事になってるな」

 そう。ヨナンは夏休みに箱物を作っただけなのだ。それなのに、

『凄い、人混みですね……下手すると、王都より活気がありますよ!』

「ナルナー神宮の参拝客が、物凄すぎるんだな。というか、やたらと土産物屋があるんだが……」

『なんか、赤福ぽい、餅まで売ってますよ!』

「これは、いくらなんでもパクリ過ぎだろ!というか、知識をエリザベスとシスに与えたのは、お前だろうが!」

『僕は、ただ見せただけで、それを実行したのは、エリザベスさんとシスさんですから!』

 そうなのだ。エリザベスもビクトリア婆ちゃんもシスも、商売が大好きなのである。

「何で、こんなにイーグル辺境伯の血筋の女達って、アグレッシブに金儲けするんだろうな……」

『まあ、いいじゃないですか! 勝手に稼いでくれてるんですから!
 お金に全く困らないのって、最高ですよ!
 ご主人様も、貧乏暮らしの辛さは、身に染みてるでしょ!』

「確かに。地球の記憶を思い出した今の俺に、死に戻り前にみたいに、毎日、パサパサの男爵芋ばかり食べる生活は無理だな……」

『兎に角、金儲けはエリザベスさん達に任せて、ご主人様は、デン!と、構えてたらいいんですよ!』

「だけど、今の俺って、やってる事、ヒモと変わんねーぞ?」

『ヒモ上等ですよ!ご主人様は、女達に働かせて、遊び回ってたらいいんですよ!
 女を支配するご主人様って、最高に格好良いですから!』

 よく分からんが、俺はヒモの帝王として生きる事となった。
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