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167. 予選(2)

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 カトリーヌが居る会場では、元『熊の鉄槌』のゴンザレスも残っていた。

「ガッハッハッハッ! 流石は、エリザベスの姪っ子やりおるわい!
 じゃがしかし、ワシのこの大盾には、その棍棒にしか見えない、おかしな魔法の杖は通用せん!」

 ゴンザレスは、持ってた巨大ハンマーから、自らが作った大盾に持ち替え、豪語する。

「さあ、何処からでもかかってくるがよい!」

 なんかよく分からないが、カトリーヌとゴンザレスの戦いは、ホコタテ勝負になってしまったようだ。

 まあ、カトリーヌの得物は、魔法用の杖で、鉾と言うには、あまりにも語弊があるのだけど。

「受けて立ちますわ!」

 だけれども、カトリーヌはノリノリ。
 普段は、お嬢様然としているが、実際は、闘争大好きなイーグル辺境伯の血筋なのだ。
 ホコタテ勝負のような脳筋しかやらないような勝負に、何故か、血が滾ってしまうのである。

 でもって、ドッシリと大盾を構えてるゴンザレスの前に、カトリーヌが、もう、棍棒でいいんじゃないの?と、思える無骨な魔法の杖を振りかぶる。

 そして、

「うおりゃー!」

 思いっきり、野球選手のようなフルスイング。

 ド~ン!!

 会場中に、まるでドラの音のような重低音が響き渡る。
 ハッキリ言って、何の勝負か分からない。

「ガッハッハッハッハッ! この程度か!
 エリザベスの姪っ子! この程度なら、エリザベスのゴリラパンチの方が、余っ程、威力があるわい!」

 ゴンザレスは、余裕綽々で高笑い。
 だけれども、

「フフフフフ。今のは、ただの挨拶がわりですわ!
 これから、徐々に力を込めて打ち込みますので、ゴンザレス様は、気合いを入れて大盾を構えていて下さいませ!」

 返す、カトリーヌも余裕綽々。
 確かに、俺が知ってるカトリーヌは、こんなものじゃない。
 いつも、ホーンラビットを破裂させてたし。

「ぬかせ!この『熊の鉄槌』に、この人ありと言われた、世界一のタンク、ゴンザレスの硬さを見せてやるわい!」

 ゴンザレスは、闘気を発して大盾を強化し、ドッシリと大盾を構える。

「それでは、遠慮なく行きますわよ!」

 ゴ~ン!! ゴ~ン!! ゴ~ン!! ゴ~ン!! ゴ~ン!! ゴ~ン!!

 会場中に、なんとも言えぬドラの音?が響き渡る。

 最初は、それ程でも無かったが、徐々に音が大きくなっていき、
 そして、ゴンザレスも、少しづつ、少しづつ、耐えきれずに、後ろにズリズリと後退していく。

「チッ! 想像以上にやりおるわい。このワシをパワーだけで、後退させよるとは……」

 ゴンザレスも、ドンドン力強くなってるバッテング?に、冷や汗をかいて焦り出す。

「それでは、もっとギアを入れいきますわ!」

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン……!

 カトリーヌは、まるで100本ノックでもしているみたいに、連続でゴンザレスの大盾を叩きまくる。
 というか、ゴンザレスの自慢のアダマンタイト製の大盾は、いつの間にかボコボコになっているし。

「それでは、最後に本気の1発!」

「いや! ちょっと待て!」

 ゴンザレスは、カトリーヌに待ったをかけるが、カトリーヌはお構い無しに、杖にありったけの魔力を注ぎ込む。

 そして、カトリーヌは、大きく杖?バット?を振りかぶって、腰が入ったフルスイング。

 カッキーン!

 ゴンザレスは大盾ごと、会場の外の、遥か遠くまで吹っ飛ばされて行ったのだった。

「フゥ~。か・い・か・ん」

 今日も無事、カトリーヌはストレス発散に成功し、本戦出場を決めたのであった。

 ーーー

 そんでもって、その隣の会場。
 コナンとリサリサの戦い。

「グフフフフ。流石、エリザベスとエドソンの息子。可愛らしいわね!」

 ショタコンのリサリサが、コナンを見て涎を垂らしている。

「あの……オバサン。見てるだけじゃなくて、ちゃんと戦ってよ!」

 コナンが、ずっと、他の選手と戦ってる間、舐めるようにコナンを凝視してたリサリサに文句を言う。

「オ……オバサン……」

 リサリサは、コナンにオバサンと言われて
 ショックを受けている。
 まあ、見た目は、コナンと同じような年齢にしか見えないのだけど。

「ねえ? オバサンって、本当に強いの?」

 どうやら、コナンは、リサリサの強さを疑ってるようだ。
 無理もない。基本、リサリサは、グラスホッパー男爵領で、ぐ~たらしてるだけだし。

「あのね! 私は、最強冒険者パーティー『熊の鉄槌』で、緑の癒し手と言われた、最強の緑魔法使いなのよ!」

「ロリババアじゃなくて?」

「絶対に、ちがーう!」

 子供の戯言だというのに、リサリサは大人気なく絶叫する。

「でも、父ちゃんや、ゴンザレスのオッチャンが、いつも、リサリサオバサンの事、影でロリババアと言ってたんだもん!」

「何ーー!!」

 リサリサが、決勝トーナメント進出を決め、客席に戻り、呑気に鼻糞をほじってるエドソンの方を睨み付ける。
 ゴンザレスも、一応、探したけど、この時すでに、カトリーヌに吹っ飛ばされてたので見つけれなかったのはお約束。

「まあ、そんなのどうでもいいから、早くやろ!
 もう、他の会場は、どんどん勝負がついて来てるし!」

 グラスホッパー男爵家で、一番、イーグル辺境伯の血が色濃く出て、戦闘狂であるコナンが木刀を構える。

「アンタは、グラスホッパー家の中で、一番エリザベスに顔が似て好きだったけど、撤回するわ!
 口の悪さは、どうも、エドソンに似てるみたいだから!」

 どうやら、リサリサもヤル気になってきたようだ。
 コナンにロリババアと言われた事を、相当根に持ってるみたいである。

「じゃあ、いくよ!」

 コナンが、木刀を構える。

「いつでもいらっしゃい! アンタに、緑魔法の恐ろしさを教えてやるんだから!」

 コナンが、動き出すと同時に、アダマンタイトミスリル合金の床から、どういう訳か、緑の蔦がたくさん出てきて、コナンを襲う。

「うおぅっと!これが、緑魔法か! 初めて見た!」

 コナンが絡みつこうとする蔦を避けながら、無邪気に驚いている。

「余裕かかましてるのも、今のうちよ!
 ギッタンギッタンにして、アンタにゴメンなさいって、謝らせるんだから!」

 リサリサが、何故か涎を垂らす。
 コナンに、どんな謝らせ方をさせようと考えてるのだろう。

「フン!それはどうかな!」

 避けてるだけだったコナンが、突然加速する。
 そして、超高速芝刈り機のように、あれよあれよといううちに、リサリサが出していた大量の蔦を微塵切りにしてしまった。

「嘘でしょ……私の蔦の成長スピードより速く、全ての蔦を斬りさいちゃったの……」

 リサリサは、コナンのスピードに唖然としてる。
 詳しく説明すると、コナンの速さは、俺が木刀を持った時と、同等の速さ。
 ん?わからん?それならマッハ3ぐらいの速さね。

「まだやる?」

 コナンは、マッハ3の速さで、リサリサの喉元に木刀を突き付けてる。

「参りました……」

 リサリサは、両手を上げ、コナンに降参した。
 まあ、リサリサは、ヒーラーなので、この結果は当然と言えば当然だろう。

 だけれども、この戦いが、大森林で行われたのであれば、多分、結果は違ったかもしれない。

 成長スピードが物凄い大森林で緑魔法を使うと、本当にトンデモない事となるのだ。

 俺でも、ちょっとだけ手こずるレベル。

 だけれども、ハサミを持ってれば勝てちゃうレベルなんだけど。それも、小さな鼻毛を切るハサミでね。
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