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023話
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「いや、とりあえずこの剣の事を聞きたかっただけじゃな。それと、まだこの剣を詳しく調べて見たいのじゃが…また1週間程良いか?」
「いいよー。俺もこの剣貰ったし、1週間くらいなら」
「ありがたい。…ああ、それとなギルドに『鉱石収集』の依頼を出しておる。暇だったら受けてくれないかのぅ?」
「おっけー、気が向いたら受注しとくよ。……それじゃ俺達帰るね!」
「わざわざすまんな!またなんかあったらよろしく頼むぞ!」
ガンテツに別れを告げ、俺達は宿屋へと戻る。長話に疲れたのか、チカ達は裏庭で横になっている。
ドーンとの約束の時間まで約2時間くらい。昼寝でもしたいけど、起きれなかったらヤバイよなぁ…。
起きれるか心配になった俺はこの宿の従業員に1時間後に起こしてくれと保険をかけた。ハンモック使いますか?と聞かれたが、またの機会にしておく。そのまま、俺は庭の木に寄りかかるとすぐに眠りに落ちるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「アルス様、お時間ですよ。…アルス様!!」
「んぁ……?もう時間?」
「ええ、気持ち良く寝てたみたいですけど、お時間です」
「んぁっ………。すげー寝れた気がする」
背伸びをすると欠伸が出る。しかし、眠気は全く無く、頭はクリアだ。
「チカ様達も起こして大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫。あいつらはもう少し寝かせておくよ」
従業員は一礼するとその場から離れていく。それを見送った後、アイテムリストを開き入念にチェックしていく。
(あったあった。やっぱり鉱石系も沢山持ってるわ。…うわ、『虹の結晶』とか懐かしいわ。最初の頃は取るの苦戦したんだよなぁ…)
鉱石リストを見ながら、『Destiny』での記憶を思い出す。
(あー…この『魔水晶の塊』とかも懐かしい。でも、『エルフの涙』が鉱石に含まれているのかがわかんねーな。うおっ!『琥珀』も懐かしい…。最初のランクアップで死ぬほど使うもんな…。今じゃ要らないけど)
その中で初めて見るアイテム名を見つけた。
(『蜘蛛の魔核』?なんだこれ?個数も1個しか無いし、どこで手に入れたんだろう)
取り出して見ると、ただの真っ赤な丸い玉であった。どこで手に入れたのか思い出していると、1つの記憶に辿り着いた。
(あっ!最初に戦った大蜘蛛かな?けど、あの時何もドロップしてないし、他にも蠍とか狼とかと戦った筈なんだけど……。それらしきものは見当たらないしなぁ)
リストを入念に調べるが、魔核という文字は見当たらなかった。しばらく、魔核を撫でたり陽にかざしたりしていると反射した光が眩しかったのか、ナナがゆっくりと起き上がった。
「んっ………」
「あ、起こしちまったか?悪い」
「大丈夫…。何しているの?」
「ああ、これ?初めて見たアイテムだからじっくり見てたんだよ」
「そう…。今何時?」
「今は……やべっ!そろそろ時間じゃねーか!ナナ、チカ達起こしてくれ!!」
室内の時計を見ると約束の時間まで後15分程となっていた。慌ててチカ達を起こして貰い、集合場所へと急いで行くのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「ギリギリ間に合った…。まだドーン達は来てないみたいだな。…よかった」
ギルド前に着くと、まだドーンの姿は無かった。息を整えていると、何やらギルドから沢山の人達の声が聞こえる。
その声の量が気になった俺はこっそりギルドを覗いてみると、冒険者達が大勢掲示板の前に集まっていた。
「あっ、アルスさん!ちょうど良いところに!」
俺がドアから覗いているのを見つけたレニーが慌てたように近づいてくる。
「こんばんはレニーさん。何かあったの?」
「それが、今裏門の兵士から魔物の大群が出現したと連絡がありまして…。緊急依頼として、冒険者達を集めているんです!」
「え?ヤバいじゃんか!」
「そうなんです…けど、『砂漠の大蠍』の大群でして、受けたがる冒険者が居ないんです…」
「大群ってどれくらいなの?」
「報告では少なく見積もっても100匹以上と…」
うげぇ……。あいつらがうじゃうじゃ出現しているのか…。そんなに強く無いと思うけど、質より量って言うもんな。
「すげー多いな。それで?今どのくらいの数が受注してんの?」
「それが……まだ0なんです」
オワタ。使えねーな他の冒険者共は。
「えー……。全員で受注すればいいのにな」
「討伐には連携が必要ですし、Cランクの冒険者も居ないもので誰も統率出来ないんですよね…」
…うん。これは詰んでるわ。実力者が居ないと、そりゃ不安にもなるものだし仕方ないものか。
他人事のように考えていると、意を決したようにレニーが口を開く。
「…アルスさん、貴方の実力を見込んでお願いしたいのですが、この依頼を受けてくれませんか?」
うん、そう来ると思ったよ。俺が早々にランクアップしてるのも知っているだろうしね。
「…別に俺は良いけど、チカ達の意見もーー
「私達は大丈夫ですよ。アルス様の意向通りに」
「人助けはしないといけない」
「腕がなるねー!早く行こうよ!」
えぇ…?なんでそんなに好戦的なのさ。まぁ、それはいいんだけどさ。
「…チカ達も良いって言ってるし、さっさと討伐しに行ってくるよ。手続きとか面倒だから、任せても良い?」
レニーに確認を取ると満面の笑みで頷く。そして、重要な事を告げる。
「ありがとうございます!!手続きはこちらでしておきます。それよりも、早く裏門へ!ドーンさん達が今日は当番なんです!!」
「っ!!お前ら転移するぞ!早く近くに寄れ!!」
ドーンが危ないと暗に告げられ、俺は危機感を覚える。チカ達もすぐさま行動に移し、俺達は裏門へと転移するのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「冒険者達はまだか!!」
迫り来る魔物の濁流を前に、兵士の声が響く。
「もう少し踏ん張れお前ら!!きっと今向かってるはずだ!」
ドーンの言葉に兵士達は最後の気力を出す。しかし、数の暴力によって、ほぼほぼ壊滅的な状況となっている。
「チッ!!なんで今日に限ってこんなにもでてくるんだかねぇ!?」
特技を使い、近くの兵士へと爪を向けていた魔物へ攻撃する。
「大丈夫か!?回復薬あるなら飲んでおけ!それと、決して一対一で戦おうとするなよ!!」
こちらの兵士達の数は30程度。門に固まる事によって防衛戦を行なっている。しかし、敵の方が多い為、もはや時間の問題であった。
「ドーンさん!!危ないっ!」
同僚の援護をした時、後ろから魔物の尻尾がドーンを捉えていた。ドーンは攻撃を繰り出していた為、回避あるいは迎撃することが出来ない。
「ッ!!」
ドーンの脳裏に走馬灯が浮かぶ。同僚、親、そしてヘレナの顔。数々の幸せの風景がゆっくりと流れていく。
「う、うわああああああああ!!」
背中に衝撃が走る。それを死の一撃だと感じたドーンは意識を飛ばそうとする。しかし、意識が飛ぶ前に聞き慣れた声が届く。
「ドーン!大丈夫だ!俺が来た!」
「ア、アルスさん…か…?」
「おう!俺だ!…安心しろ、すぐに助けてやる!」
頼りになる人の登場でドーンは深く安堵する。そして意識が薄まる中、アルスの背中を熱く見つめるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
--間一髪、間に合った。
裏門に転移した後、すぐさま俺達は状況を確認していた。戦況はほぼ悪い。その時、俺の目に尻尾の一撃を喰らいそうになっているドーンの姿が映った。
「ッ!!」
スキルを使い、ドーンの背後に立つ。剣で受け止める余裕が無かったので、鎧で受け止める。
(ダメージは無いのは確認済み!それよりもドーンは!?)
後ろを振り返ると、変な硬直のまま倒れかけているドーンが目に入る。
(怪我…は無さそうだな。良かった)
熱い眼差しを受けたが、気にしている暇はない。すぐさまチカ達に指示を飛ばす。
「ナナとチカは回復を!終わり次第、目の前を殲滅しろ!!」
「了解」
「はいっ!!」
「ローリィはヤバそうな所から救助に向かえ!そして、兵士達を街に連れて行け!」
「わかった!!ご主人様は!?」
「俺は一気に殲滅する!終わり次第、援護を!」
指示を飛ばした後、目の前の大群をざっと見渡す。レニーは100匹程度と言ったが、それ倍以上はいるだろう。
「ま、いくら多くても雑魚には変わりないけどね!」
広範囲用の大剣を持ち、スキルを発動する。
「--喰らえッ!『青龍の息吹』!!」
大剣を薙ぎ払うと、目の前の魔物達が両断される。追従効果で衝撃波が魔物だった塊にぶつかり吹き飛ぶ。
「『精霊の逆鱗』!!」
「『煉獄の焔』!」
同じタイミングで、赤と緑の魔法が魔物へとぶつかる。緑にぶつかった魔物は木っ端微塵となり、赤にぶつかった魔物はその場で炭と化す。
「ご主人様ぁー!!おまたせぇー!--『巨人の鉄槌』!!」
上空からローリィの声が聞こえたと思うと、籠手に7色のエフェクトを纏っているのが見える。
「ちょっ!!ローリィ、それは--
「『耐震障壁』!!」
「『浮遊結界』!!」
俺が言う間も無く、チカ達が広範囲を対象とした結界を張る。それと同時に、ローリィの拳が地面へと墜落する。
--舞い散る砂と魔物の体、そして俺達に迫り来る衝撃波。チカ達のお陰で、俺達と兵士達、そして街の外壁は無傷であった。
「やったぁ!!ぜぇーんぶぶっ殺したよっ!!あたしが1番の成果をあげたねーっ!」
腕を組み、誇らしげに1人頷いている。…普通なら褒めてやるとこだけど、少し注意が必要だな。
「おい…ローリィ。ちょっとこっちに来なさい」
「はいっ!!」
ローリィに尻尾が付いていたら、間違いなく振っているだろう。満面の笑みを浮かべ、俺の元へとやって来る。
「えへへっ!ご主人様ぁー、あたし偉い?撫で撫でしてくれる??」
うっ。そんな純粋な目で俺を見るなよ…。心が痛むだろ?
「ローリィ、やり過ぎ」
「私達が魔法を張らなければ、被害が大きくなっていましたよ?」
ローリィになんと言えばいいか迷っていると、ナナ達が先に言ってくれた。
「そ、そうだぞ?確かに殲滅はしたけれども、あれはやり過ぎだ!」
「ええー?ご主人様が殲滅しろって言ったから、スキル使ったんだよー?なんで怒られるのー?」
「…俺お前に殲滅しろって言ったっけ?」
「言ってない」
「私達にだけです」
「えー?言われた気がするんだけどなー」
「勘違い」
「良い所を見せようとしただけじゃないの?」
「ムカッ。……ふーん、チカちゃん達はあんまり良い所をご主人様に見てもらえなかったから、嫉妬してるんだー。そりゃ、あんなちゃっちい魔法じゃ目立たないもんねー」
…ん?なんか雲行きが……。
「…どういう意味かしら?」
「誰がちゃっちい魔法だって?」
「言葉通りの意味ですー!高名な魔法使いとあらば、そんくらい分かると思いますけどねー?…あっ、お子ちゃま向けに言った方が良かった?ごめぇーん!」
「…調子に乗るなよ露出魔」
「チカ、無理もない。ローリィは頭の栄養が全て胸にいっている」
「はぁ?…頭ばっかりに栄養がいっている貧相な人達には言われたくないなー」
「「ぶっこ--
「はいはいはい!!ストーップ!!!」
ヤベェ。止めに入ったのは良いけど、オーラが黒い。耐性あるはずなのに足が震える…。
「何で喧嘩なんかするの!」
「チカちゃん達が--
「「ローリィが--
「はい!もうお終い!まだ喧嘩するんだったら、今日のお食事会には連れて行きません!!」
「「「ごめんなさいっ!!!」」」
ふぅ……。なんとか収まったみたいだな。『喧嘩するほど仲がいい』って言うけど、流石に殺意が出るのはおかしいよな?
仲裁を終え、俺は兵士達か無事かを確認する。幸い、死者はおらず、チカ達の回復魔法のお陰で全員無事みたいだ。…まぁ、見た目の回復だけであって精神的な物は癒せないけどね。
「なぁ、そこの兵士さん。他に怪我している奴とか居ないか?」
「は、はひぃ!い、今すぐ確認しましゅ!」
近くにいた兵士に怪我人が居ないかを確認する。兵士はおどおどとしながらも、周囲を見渡し報告してくれた。
「け、怪我人は無し!死傷者もいませんっ!!」
…なんでそんなにビビってんだろ?俺なんかしたっけ?
「お、おう。なら俺達は街に戻るとするよ」
意識を無くし倒れ伏しているドーンを見ながら、街へと帰る。
…ドーンが元気になるまでは、お食事会は延期だな。
ちょっぴり残念な気持ちになりながら、俺達はギルドへと戻るのであった。
「いいよー。俺もこの剣貰ったし、1週間くらいなら」
「ありがたい。…ああ、それとなギルドに『鉱石収集』の依頼を出しておる。暇だったら受けてくれないかのぅ?」
「おっけー、気が向いたら受注しとくよ。……それじゃ俺達帰るね!」
「わざわざすまんな!またなんかあったらよろしく頼むぞ!」
ガンテツに別れを告げ、俺達は宿屋へと戻る。長話に疲れたのか、チカ達は裏庭で横になっている。
ドーンとの約束の時間まで約2時間くらい。昼寝でもしたいけど、起きれなかったらヤバイよなぁ…。
起きれるか心配になった俺はこの宿の従業員に1時間後に起こしてくれと保険をかけた。ハンモック使いますか?と聞かれたが、またの機会にしておく。そのまま、俺は庭の木に寄りかかるとすぐに眠りに落ちるのであった。
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「アルス様、お時間ですよ。…アルス様!!」
「んぁ……?もう時間?」
「ええ、気持ち良く寝てたみたいですけど、お時間です」
「んぁっ………。すげー寝れた気がする」
背伸びをすると欠伸が出る。しかし、眠気は全く無く、頭はクリアだ。
「チカ様達も起こして大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫。あいつらはもう少し寝かせておくよ」
従業員は一礼するとその場から離れていく。それを見送った後、アイテムリストを開き入念にチェックしていく。
(あったあった。やっぱり鉱石系も沢山持ってるわ。…うわ、『虹の結晶』とか懐かしいわ。最初の頃は取るの苦戦したんだよなぁ…)
鉱石リストを見ながら、『Destiny』での記憶を思い出す。
(あー…この『魔水晶の塊』とかも懐かしい。でも、『エルフの涙』が鉱石に含まれているのかがわかんねーな。うおっ!『琥珀』も懐かしい…。最初のランクアップで死ぬほど使うもんな…。今じゃ要らないけど)
その中で初めて見るアイテム名を見つけた。
(『蜘蛛の魔核』?なんだこれ?個数も1個しか無いし、どこで手に入れたんだろう)
取り出して見ると、ただの真っ赤な丸い玉であった。どこで手に入れたのか思い出していると、1つの記憶に辿り着いた。
(あっ!最初に戦った大蜘蛛かな?けど、あの時何もドロップしてないし、他にも蠍とか狼とかと戦った筈なんだけど……。それらしきものは見当たらないしなぁ)
リストを入念に調べるが、魔核という文字は見当たらなかった。しばらく、魔核を撫でたり陽にかざしたりしていると反射した光が眩しかったのか、ナナがゆっくりと起き上がった。
「んっ………」
「あ、起こしちまったか?悪い」
「大丈夫…。何しているの?」
「ああ、これ?初めて見たアイテムだからじっくり見てたんだよ」
「そう…。今何時?」
「今は……やべっ!そろそろ時間じゃねーか!ナナ、チカ達起こしてくれ!!」
室内の時計を見ると約束の時間まで後15分程となっていた。慌ててチカ達を起こして貰い、集合場所へと急いで行くのであった。
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「ギリギリ間に合った…。まだドーン達は来てないみたいだな。…よかった」
ギルド前に着くと、まだドーンの姿は無かった。息を整えていると、何やらギルドから沢山の人達の声が聞こえる。
その声の量が気になった俺はこっそりギルドを覗いてみると、冒険者達が大勢掲示板の前に集まっていた。
「あっ、アルスさん!ちょうど良いところに!」
俺がドアから覗いているのを見つけたレニーが慌てたように近づいてくる。
「こんばんはレニーさん。何かあったの?」
「それが、今裏門の兵士から魔物の大群が出現したと連絡がありまして…。緊急依頼として、冒険者達を集めているんです!」
「え?ヤバいじゃんか!」
「そうなんです…けど、『砂漠の大蠍』の大群でして、受けたがる冒険者が居ないんです…」
「大群ってどれくらいなの?」
「報告では少なく見積もっても100匹以上と…」
うげぇ……。あいつらがうじゃうじゃ出現しているのか…。そんなに強く無いと思うけど、質より量って言うもんな。
「すげー多いな。それで?今どのくらいの数が受注してんの?」
「それが……まだ0なんです」
オワタ。使えねーな他の冒険者共は。
「えー……。全員で受注すればいいのにな」
「討伐には連携が必要ですし、Cランクの冒険者も居ないもので誰も統率出来ないんですよね…」
…うん。これは詰んでるわ。実力者が居ないと、そりゃ不安にもなるものだし仕方ないものか。
他人事のように考えていると、意を決したようにレニーが口を開く。
「…アルスさん、貴方の実力を見込んでお願いしたいのですが、この依頼を受けてくれませんか?」
うん、そう来ると思ったよ。俺が早々にランクアップしてるのも知っているだろうしね。
「…別に俺は良いけど、チカ達の意見もーー
「私達は大丈夫ですよ。アルス様の意向通りに」
「人助けはしないといけない」
「腕がなるねー!早く行こうよ!」
えぇ…?なんでそんなに好戦的なのさ。まぁ、それはいいんだけどさ。
「…チカ達も良いって言ってるし、さっさと討伐しに行ってくるよ。手続きとか面倒だから、任せても良い?」
レニーに確認を取ると満面の笑みで頷く。そして、重要な事を告げる。
「ありがとうございます!!手続きはこちらでしておきます。それよりも、早く裏門へ!ドーンさん達が今日は当番なんです!!」
「っ!!お前ら転移するぞ!早く近くに寄れ!!」
ドーンが危ないと暗に告げられ、俺は危機感を覚える。チカ達もすぐさま行動に移し、俺達は裏門へと転移するのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「冒険者達はまだか!!」
迫り来る魔物の濁流を前に、兵士の声が響く。
「もう少し踏ん張れお前ら!!きっと今向かってるはずだ!」
ドーンの言葉に兵士達は最後の気力を出す。しかし、数の暴力によって、ほぼほぼ壊滅的な状況となっている。
「チッ!!なんで今日に限ってこんなにもでてくるんだかねぇ!?」
特技を使い、近くの兵士へと爪を向けていた魔物へ攻撃する。
「大丈夫か!?回復薬あるなら飲んでおけ!それと、決して一対一で戦おうとするなよ!!」
こちらの兵士達の数は30程度。門に固まる事によって防衛戦を行なっている。しかし、敵の方が多い為、もはや時間の問題であった。
「ドーンさん!!危ないっ!」
同僚の援護をした時、後ろから魔物の尻尾がドーンを捉えていた。ドーンは攻撃を繰り出していた為、回避あるいは迎撃することが出来ない。
「ッ!!」
ドーンの脳裏に走馬灯が浮かぶ。同僚、親、そしてヘレナの顔。数々の幸せの風景がゆっくりと流れていく。
「う、うわああああああああ!!」
背中に衝撃が走る。それを死の一撃だと感じたドーンは意識を飛ばそうとする。しかし、意識が飛ぶ前に聞き慣れた声が届く。
「ドーン!大丈夫だ!俺が来た!」
「ア、アルスさん…か…?」
「おう!俺だ!…安心しろ、すぐに助けてやる!」
頼りになる人の登場でドーンは深く安堵する。そして意識が薄まる中、アルスの背中を熱く見つめるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
--間一髪、間に合った。
裏門に転移した後、すぐさま俺達は状況を確認していた。戦況はほぼ悪い。その時、俺の目に尻尾の一撃を喰らいそうになっているドーンの姿が映った。
「ッ!!」
スキルを使い、ドーンの背後に立つ。剣で受け止める余裕が無かったので、鎧で受け止める。
(ダメージは無いのは確認済み!それよりもドーンは!?)
後ろを振り返ると、変な硬直のまま倒れかけているドーンが目に入る。
(怪我…は無さそうだな。良かった)
熱い眼差しを受けたが、気にしている暇はない。すぐさまチカ達に指示を飛ばす。
「ナナとチカは回復を!終わり次第、目の前を殲滅しろ!!」
「了解」
「はいっ!!」
「ローリィはヤバそうな所から救助に向かえ!そして、兵士達を街に連れて行け!」
「わかった!!ご主人様は!?」
「俺は一気に殲滅する!終わり次第、援護を!」
指示を飛ばした後、目の前の大群をざっと見渡す。レニーは100匹程度と言ったが、それ倍以上はいるだろう。
「ま、いくら多くても雑魚には変わりないけどね!」
広範囲用の大剣を持ち、スキルを発動する。
「--喰らえッ!『青龍の息吹』!!」
大剣を薙ぎ払うと、目の前の魔物達が両断される。追従効果で衝撃波が魔物だった塊にぶつかり吹き飛ぶ。
「『精霊の逆鱗』!!」
「『煉獄の焔』!」
同じタイミングで、赤と緑の魔法が魔物へとぶつかる。緑にぶつかった魔物は木っ端微塵となり、赤にぶつかった魔物はその場で炭と化す。
「ご主人様ぁー!!おまたせぇー!--『巨人の鉄槌』!!」
上空からローリィの声が聞こえたと思うと、籠手に7色のエフェクトを纏っているのが見える。
「ちょっ!!ローリィ、それは--
「『耐震障壁』!!」
「『浮遊結界』!!」
俺が言う間も無く、チカ達が広範囲を対象とした結界を張る。それと同時に、ローリィの拳が地面へと墜落する。
--舞い散る砂と魔物の体、そして俺達に迫り来る衝撃波。チカ達のお陰で、俺達と兵士達、そして街の外壁は無傷であった。
「やったぁ!!ぜぇーんぶぶっ殺したよっ!!あたしが1番の成果をあげたねーっ!」
腕を組み、誇らしげに1人頷いている。…普通なら褒めてやるとこだけど、少し注意が必要だな。
「おい…ローリィ。ちょっとこっちに来なさい」
「はいっ!!」
ローリィに尻尾が付いていたら、間違いなく振っているだろう。満面の笑みを浮かべ、俺の元へとやって来る。
「えへへっ!ご主人様ぁー、あたし偉い?撫で撫でしてくれる??」
うっ。そんな純粋な目で俺を見るなよ…。心が痛むだろ?
「ローリィ、やり過ぎ」
「私達が魔法を張らなければ、被害が大きくなっていましたよ?」
ローリィになんと言えばいいか迷っていると、ナナ達が先に言ってくれた。
「そ、そうだぞ?確かに殲滅はしたけれども、あれはやり過ぎだ!」
「ええー?ご主人様が殲滅しろって言ったから、スキル使ったんだよー?なんで怒られるのー?」
「…俺お前に殲滅しろって言ったっけ?」
「言ってない」
「私達にだけです」
「えー?言われた気がするんだけどなー」
「勘違い」
「良い所を見せようとしただけじゃないの?」
「ムカッ。……ふーん、チカちゃん達はあんまり良い所をご主人様に見てもらえなかったから、嫉妬してるんだー。そりゃ、あんなちゃっちい魔法じゃ目立たないもんねー」
…ん?なんか雲行きが……。
「…どういう意味かしら?」
「誰がちゃっちい魔法だって?」
「言葉通りの意味ですー!高名な魔法使いとあらば、そんくらい分かると思いますけどねー?…あっ、お子ちゃま向けに言った方が良かった?ごめぇーん!」
「…調子に乗るなよ露出魔」
「チカ、無理もない。ローリィは頭の栄養が全て胸にいっている」
「はぁ?…頭ばっかりに栄養がいっている貧相な人達には言われたくないなー」
「「ぶっこ--
「はいはいはい!!ストーップ!!!」
ヤベェ。止めに入ったのは良いけど、オーラが黒い。耐性あるはずなのに足が震える…。
「何で喧嘩なんかするの!」
「チカちゃん達が--
「「ローリィが--
「はい!もうお終い!まだ喧嘩するんだったら、今日のお食事会には連れて行きません!!」
「「「ごめんなさいっ!!!」」」
ふぅ……。なんとか収まったみたいだな。『喧嘩するほど仲がいい』って言うけど、流石に殺意が出るのはおかしいよな?
仲裁を終え、俺は兵士達か無事かを確認する。幸い、死者はおらず、チカ達の回復魔法のお陰で全員無事みたいだ。…まぁ、見た目の回復だけであって精神的な物は癒せないけどね。
「なぁ、そこの兵士さん。他に怪我している奴とか居ないか?」
「は、はひぃ!い、今すぐ確認しましゅ!」
近くにいた兵士に怪我人が居ないかを確認する。兵士はおどおどとしながらも、周囲を見渡し報告してくれた。
「け、怪我人は無し!死傷者もいませんっ!!」
…なんでそんなにビビってんだろ?俺なんかしたっけ?
「お、おう。なら俺達は街に戻るとするよ」
意識を無くし倒れ伏しているドーンを見ながら、街へと帰る。
…ドーンが元気になるまでは、お食事会は延期だな。
ちょっぴり残念な気持ちになりながら、俺達はギルドへと戻るのであった。
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王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
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