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028話
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♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
闇夜に浮かぶ1つの影。その影は剣を持ちニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべている。
「誰か…誰か助けて…」
「無駄だ。素直に死を受け入れろ」
「お母さんっ!!!」
「来ちゃダメっ!!--は逃げなさい!!早くっ!!」
「安心しろ。すぐに子供もあの世に送ってやる」
「おかぁさーーーーーーーんっ!!!!」
少女の声が届く前に、母親に剣が突き刺さるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「ポーロさん、荷物はこれで全部ですか?」
「ええ、それで全部です。いやぁー、本当アルスさん達には助かりましたよ」
「急に言われてビックリしましたけど、丁度暇でしたし」
病気の後、大事を取って1週間ほど休みを取った。宿屋には俺の事を心配してくれた人達が顔を見に来てくれた。中でも、ドーンとヘレナからは大量の感謝の言葉を貰った。カーバインやフィンも様子見に来て、俺が元気になった事を喜んでくれた。
昨日の晩にコンラッドが宿屋にやって来て、俺の状態を確認すると、依頼の話をしてきた。断ろうかと思っていたが、依頼主がポーロさんだったので受ける事にした。
それで今、俺達はポーロさんと一緒に正門前にいる。荷馬車は1台。ポーロさんが俺達の分を借りると言ってくれたが断った。だって、普通に魔法使った方が早いからね。
「それでは、王都『ジュエリア』に向かいましょうか!」
門番の兵士に見送られ、俺達は王都目指して進む。日程は行きだけで、4日ほどかかるとの事だった。
「病み上がりで申し訳ないです。けれど、どうしても道中の護衛はアルスさん達にお願いしたくて」
「大丈夫ですよ。病み上がりと言っても治ってから時間が経ってますから。…それに、俺達も王都に行ってみたかったですし」
「そう言ってもらえると助かりますな。…では、護衛をお願いしますよ」
「任せてください。…おーい、みんな警護よろしくな!」
「「「はぁーい!!!」」」
ちなみに、チカ達は後ろに乗せて貰っている。索敵も感知も使って貰ってるし、魔物が出て来るまではのんびりしてもらいたいからね。
「それにしても、この道は本当歩きやすいですね。オアシスまでも作ればいいのに…」
サガンから王都『ジュエリア』までは整備されている。前世の道路みたいな立派なものではないが、砂地を歩くよりかはかなりマシだ。
「ハッハッハ!確かにそうですな!……ですが、残念ながらオアシスとサガンを繋げようとするには莫大な金がかかるのですよ」
「国が出したりとかはしてくれないんですか?」
「街と街を繋ぐのであれば、多少なりは出してくれるのですが…。オアシスは街ではないですから、サガンからお金を出さなければならないんです」
「なるほど…。それに回すほどの余裕が無いというわけですね」
「多分…。ですが、辺境伯様の事ですから地道に貯めていると思いますよ。オアシスまで道が出来れば、他の街からも来れるでしょうし」
「ははぁー。やっぱ辺境伯様ってのはやり手なんですね。良い噂しか聞いた事がないですよ」
「彼の方は頭も良いですからね。サガンが一律の戦力を保てるのも辺境伯様のお陰でしょう。……おや?アルスさんはお会いになった事は?」
「んー…実は1度も会ったことないんですよね。まぁ、そんな上の人に呼ばれない限り、会う事は無いと思いますけどね」
「もしかしたら、お会いしているかも知れませんね。辺境伯様はよく変装して街を散策されますから」
「…パトロール的な感じでですか?」
「そんなしっかりとしたものでは無いですよ。ただ、フラフラと歩いて、どこを整備した方が良いとか憩いの場所を作ろうかと考えているみたいですよ」
そう言うポーロの顔を伺ってみるが、馬鹿にした様子は無い。辺境伯って言われると、貴族のイメージが強く我儘な奴だと想像していたが、そんな事は無いようだ。
「本当に出来た人なんですね」
「…まぁ、昔はヤンチャだったらしいですけどね。ここに戻ってきてから、人が変わったように住民を第一に考えるようになったとか。ま、私は前の辺境伯様を知りませんけどね」
「ふーん…。でも、そういう人が治めているなら安心ですよね」
「流通もだいぶ改善されましたからね。本当に辺境伯様様ですよ」
ポーロと会話をしながら、道をひたすら進んで行く。この世界について疎い俺は、ポーロさんに色々な事を聞く。途中でチカ達も呼び、一緒になって聞いていた。
ポーロさんの話は流石商売人とあって、とても話が上手だった。各地の名産品や特徴など知る限りを教えてもらった。周辺の地理について教えてもらっていると、ちょうど小さな町が見えてきた。
「おや?もう着いたのか…。アルスさん、あそこで少し休憩していきましょうか」
「わかりました」
簡素な門を抜けると、田舎町のような風景が広がる。ただ、ここは宿場町として賑わっているようだ。あたりを見渡して見れば、商人や冒険者の姿が見える。
「アルスさん、ここの店の『草団子』は絶品ですよ。よければ、食べていきませんか?」
「え!!団子があるんですか!?ぜひ、食べましょう!」
ポーロに連れられ、こじんまりとした店に辿り着く。…時代劇とかだったら、看板娘とかがいるんだろうなぁ。
「あら!ポーロさん!お久しぶりですね!」
「こんにちはサヨちゃん。あ、いつものを5人分よろしく!」
ポーロさんに声をかけたのは黒髪ショートの活発そうな女性だ。歳は、多分16歳ぐらいだろうか。少々幼く見える。
「いつものですねっ!飲み物すぐお持ちしまーす!」
サヨと呼ばれた女性は俺達を座席へと案内すると、厨房に引っ込んだ。
「すげぇな…。中は和風だ」
案内された席に座り辺りを見渡す。障子に提灯、座布団によく分からない熊の木彫りなどがある。
「この店の店主は『ジパング』という国の出身なんですよ」
「ジパング?…それって黄金の都とか言われるやつですか?」
「はて?黄金などは分かりませんが、独特の習わしなどがあるそうです。海に囲まれているので、行くのには手間がかかりますけどね」
俺の記憶が正しければ、ジパングとやらは多分日本の事だと思う。アニメかなんかで見たような気がする。
「この店の食べ物は殆どがジパングで作られているものなのですよ。『抹茶』という飲み物と団子の組み合わせが何とも言えないものでしてね!」
ポーロさんはいつも物凄く美味しそうに語ってくれる。その口調に俺達は唾を飲み込んでしまう程だ。
「お待たせしましたー!当店自慢の『よもぎ団子』と『抹茶』です!中には『粒餡』が入っていますので、甘いものが苦手でしたらおっしゃって下さいねっ!餡子抜きをお持ちしますので!」
「おほーっ!来ましたよアルスさん!さぁさぁ、ぜひお食べください!」
「それじゃいただきます!」
俺達が食べるのをポーロさんはニコニコと見つめる。
「ん!うんまぁーい!!」
「ポーロさん!これとっても美味しいです!」
「餡子が粒餡なのがまた良い」
「甘くて美味しーー!!」
「そうでしょう、そうでしょう!同時に抹茶を飲むのもまた最高なんですよ!」
「……はぁー。この苦いのがちょうどいいな」
「餡子とのバランスが最高ですっ!」
「……ッ!ちょっと熱い」
「うひゃああああ!これ苦いけど美味しーー!!」
ポーロさんがオススメするのもわかる。俺にとっては凄く懐かしく感じる味だ。
「ポーロさん、これお持ち帰りとか出来るんですか?」
「出来ますよ。…ただ、日にちが持たないのですよ。美味しく食べれるのはその日まででしょうね」
ふっふっふ。そこは大丈夫なのさ。俺にはアイテムボックスというとても便利なものがあるからな!
「よし、それじゃお持ち帰りしよーっと。チカ達は何個ずつ食べたい?」
「「「10個っ!!!」」」
「即答だな…。ポーロさんは何個食べます?」
「いいんですか…?なら、私は2個ほどで」
「そんだけで足ります?俺のアイテム使えば行きの間は腐らないですよ?」
「あー、収納袋ですか…。でも、アルスさん。あれは食べ物の保存には向きませんよ?」
「大丈夫ですよ?それに、収納袋よりも良いアイテムですから!……とりあえず、50個ほど頼んどきますね!」
サヨさんにお持ち帰りの個数を頼むと、驚愕されつつも準備してもらう事になった。俺のワガママで出来立てを持って行きたいと伝えると、少し時間が欲しいとの事だった。快く了承し、席へ戻る。
「あと30分ほど欲しいって。ポーロさん、良いですかね?」
「構いませんよ。…ところで、おいくらでしたか?お支払いしますよ」
「良いですよ!これは俺が買いたい物でしたから。それに、ポーロさんには色々教えてもらいましたから。そのお礼です!」
「いやはや…。アルスさんはやはり不思議な方ですねぇ。…ま、そんな所も気に入っているんですがね」
ポーロさんと雑談しながら、出来上がるのを待つ。その間に、チカ達は10個ほどお代わりしていた。…本当にどこに入ってるんだろ。
「お待たせしましたー!!注文の品出来ましたよー!」
「ありがとうございます!代金いくらです?」
「えーっと……4000Gになります!」
「はいはいっと。…はい、お勘定」
「ご、5000Gもですか!?」
「多少無理言いましたからね。俺からのお礼の気持ちです」
「は、はぁ…。では、有り難く頂戴しますね!」
「ひゅー!!ご主人様男前ーっ!!」
…どこで覚えたのー?それ?
サヨさんから品物を受け取り、ボックスに入れる。
…うん、ちゃんと入ってるね。
「お待たせしました。それじゃ、出発しましょうか」
道中の楽しみが出来たので、ウキウキしながら出発する。ポーロさんが「予定より早く着いたので、2つ先の町まで進みましょうか」と言っていた。ポーロさんの考えでは、次の町で宿泊する予定だったのだが、俺達が馬車のスピードに普通に着いて行っているので予定が早まったと微妙な顔で言っていた。
最初の町を抜けてからは、人通りも少しずつ増えていった。割合的には商人が多い。ポーロさんの知り合いもいるそうで、ちょこちょこと話しながら進んでいった。
「アルスさん、ちょっとこの町で馬を休ませたいんです。寄りましょう」
「もちろん。俺達はポーロさんに従いますよ」
話を聞くと、この町は馬を休ませる休憩所があるらしい。商人が集まる場所なので、情報も多いそうだ。
休憩所に着き、水と餌を与える。ブラッシングもさせてもらった。蹴られるかとビクビクしていたが、人懐っこく気持ち良さそうにしていた。
「凄く可愛いですね!」
「ええ、本当に小さい頃から可愛がってますから人に危害は加えないですよ」
「乗ってみたい」
「ナナさん乗りますか?…なら、乗り方を教えましょう」
休憩であるはずだが、馬は喜んでナナを乗せてくれた。ローリィ達も乗りたそうにしていたので、ポーロさんが乗せてくれた。
「すっごい楽しかったー!」
「馬に乗るのは凄く気持ちいいですね!」
「マスターは乗らないのか?」
「俺はいいよ。馬にもしっかり休憩させてあげなきゃだし」
芝生の上で寝転がっている馬に近寄ると、顔を上げる。
「ありがとな。チカ達喜んでたぞ。…ほら、これはお礼だ、食べてくれ」
干し草と野菜が入ったバケツを馬にあげる。手渡しで食べさせようとすると、ヒヒンと鳴いてからモグモグと食べ始めた。
「…可愛いなぁ。馬に乗って旅するのもカッコいいよな…。機会があったら買うか考えようっと」
ある程度食べ終わると、眠くなったのか馬は完全に横になった。
「ポーロさん、馬をもうちょい休ませましょう。その間、俺達も休憩しませんか?」
「いいですね。まだ時間的には余裕ありますし、休憩しましょうか」
闇夜に浮かぶ1つの影。その影は剣を持ちニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべている。
「誰か…誰か助けて…」
「無駄だ。素直に死を受け入れろ」
「お母さんっ!!!」
「来ちゃダメっ!!--は逃げなさい!!早くっ!!」
「安心しろ。すぐに子供もあの世に送ってやる」
「おかぁさーーーーーーーんっ!!!!」
少女の声が届く前に、母親に剣が突き刺さるのであった。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
「ポーロさん、荷物はこれで全部ですか?」
「ええ、それで全部です。いやぁー、本当アルスさん達には助かりましたよ」
「急に言われてビックリしましたけど、丁度暇でしたし」
病気の後、大事を取って1週間ほど休みを取った。宿屋には俺の事を心配してくれた人達が顔を見に来てくれた。中でも、ドーンとヘレナからは大量の感謝の言葉を貰った。カーバインやフィンも様子見に来て、俺が元気になった事を喜んでくれた。
昨日の晩にコンラッドが宿屋にやって来て、俺の状態を確認すると、依頼の話をしてきた。断ろうかと思っていたが、依頼主がポーロさんだったので受ける事にした。
それで今、俺達はポーロさんと一緒に正門前にいる。荷馬車は1台。ポーロさんが俺達の分を借りると言ってくれたが断った。だって、普通に魔法使った方が早いからね。
「それでは、王都『ジュエリア』に向かいましょうか!」
門番の兵士に見送られ、俺達は王都目指して進む。日程は行きだけで、4日ほどかかるとの事だった。
「病み上がりで申し訳ないです。けれど、どうしても道中の護衛はアルスさん達にお願いしたくて」
「大丈夫ですよ。病み上がりと言っても治ってから時間が経ってますから。…それに、俺達も王都に行ってみたかったですし」
「そう言ってもらえると助かりますな。…では、護衛をお願いしますよ」
「任せてください。…おーい、みんな警護よろしくな!」
「「「はぁーい!!!」」」
ちなみに、チカ達は後ろに乗せて貰っている。索敵も感知も使って貰ってるし、魔物が出て来るまではのんびりしてもらいたいからね。
「それにしても、この道は本当歩きやすいですね。オアシスまでも作ればいいのに…」
サガンから王都『ジュエリア』までは整備されている。前世の道路みたいな立派なものではないが、砂地を歩くよりかはかなりマシだ。
「ハッハッハ!確かにそうですな!……ですが、残念ながらオアシスとサガンを繋げようとするには莫大な金がかかるのですよ」
「国が出したりとかはしてくれないんですか?」
「街と街を繋ぐのであれば、多少なりは出してくれるのですが…。オアシスは街ではないですから、サガンからお金を出さなければならないんです」
「なるほど…。それに回すほどの余裕が無いというわけですね」
「多分…。ですが、辺境伯様の事ですから地道に貯めていると思いますよ。オアシスまで道が出来れば、他の街からも来れるでしょうし」
「ははぁー。やっぱ辺境伯様ってのはやり手なんですね。良い噂しか聞いた事がないですよ」
「彼の方は頭も良いですからね。サガンが一律の戦力を保てるのも辺境伯様のお陰でしょう。……おや?アルスさんはお会いになった事は?」
「んー…実は1度も会ったことないんですよね。まぁ、そんな上の人に呼ばれない限り、会う事は無いと思いますけどね」
「もしかしたら、お会いしているかも知れませんね。辺境伯様はよく変装して街を散策されますから」
「…パトロール的な感じでですか?」
「そんなしっかりとしたものでは無いですよ。ただ、フラフラと歩いて、どこを整備した方が良いとか憩いの場所を作ろうかと考えているみたいですよ」
そう言うポーロの顔を伺ってみるが、馬鹿にした様子は無い。辺境伯って言われると、貴族のイメージが強く我儘な奴だと想像していたが、そんな事は無いようだ。
「本当に出来た人なんですね」
「…まぁ、昔はヤンチャだったらしいですけどね。ここに戻ってきてから、人が変わったように住民を第一に考えるようになったとか。ま、私は前の辺境伯様を知りませんけどね」
「ふーん…。でも、そういう人が治めているなら安心ですよね」
「流通もだいぶ改善されましたからね。本当に辺境伯様様ですよ」
ポーロと会話をしながら、道をひたすら進んで行く。この世界について疎い俺は、ポーロさんに色々な事を聞く。途中でチカ達も呼び、一緒になって聞いていた。
ポーロさんの話は流石商売人とあって、とても話が上手だった。各地の名産品や特徴など知る限りを教えてもらった。周辺の地理について教えてもらっていると、ちょうど小さな町が見えてきた。
「おや?もう着いたのか…。アルスさん、あそこで少し休憩していきましょうか」
「わかりました」
簡素な門を抜けると、田舎町のような風景が広がる。ただ、ここは宿場町として賑わっているようだ。あたりを見渡して見れば、商人や冒険者の姿が見える。
「アルスさん、ここの店の『草団子』は絶品ですよ。よければ、食べていきませんか?」
「え!!団子があるんですか!?ぜひ、食べましょう!」
ポーロに連れられ、こじんまりとした店に辿り着く。…時代劇とかだったら、看板娘とかがいるんだろうなぁ。
「あら!ポーロさん!お久しぶりですね!」
「こんにちはサヨちゃん。あ、いつものを5人分よろしく!」
ポーロさんに声をかけたのは黒髪ショートの活発そうな女性だ。歳は、多分16歳ぐらいだろうか。少々幼く見える。
「いつものですねっ!飲み物すぐお持ちしまーす!」
サヨと呼ばれた女性は俺達を座席へと案内すると、厨房に引っ込んだ。
「すげぇな…。中は和風だ」
案内された席に座り辺りを見渡す。障子に提灯、座布団によく分からない熊の木彫りなどがある。
「この店の店主は『ジパング』という国の出身なんですよ」
「ジパング?…それって黄金の都とか言われるやつですか?」
「はて?黄金などは分かりませんが、独特の習わしなどがあるそうです。海に囲まれているので、行くのには手間がかかりますけどね」
俺の記憶が正しければ、ジパングとやらは多分日本の事だと思う。アニメかなんかで見たような気がする。
「この店の食べ物は殆どがジパングで作られているものなのですよ。『抹茶』という飲み物と団子の組み合わせが何とも言えないものでしてね!」
ポーロさんはいつも物凄く美味しそうに語ってくれる。その口調に俺達は唾を飲み込んでしまう程だ。
「お待たせしましたー!当店自慢の『よもぎ団子』と『抹茶』です!中には『粒餡』が入っていますので、甘いものが苦手でしたらおっしゃって下さいねっ!餡子抜きをお持ちしますので!」
「おほーっ!来ましたよアルスさん!さぁさぁ、ぜひお食べください!」
「それじゃいただきます!」
俺達が食べるのをポーロさんはニコニコと見つめる。
「ん!うんまぁーい!!」
「ポーロさん!これとっても美味しいです!」
「餡子が粒餡なのがまた良い」
「甘くて美味しーー!!」
「そうでしょう、そうでしょう!同時に抹茶を飲むのもまた最高なんですよ!」
「……はぁー。この苦いのがちょうどいいな」
「餡子とのバランスが最高ですっ!」
「……ッ!ちょっと熱い」
「うひゃああああ!これ苦いけど美味しーー!!」
ポーロさんがオススメするのもわかる。俺にとっては凄く懐かしく感じる味だ。
「ポーロさん、これお持ち帰りとか出来るんですか?」
「出来ますよ。…ただ、日にちが持たないのですよ。美味しく食べれるのはその日まででしょうね」
ふっふっふ。そこは大丈夫なのさ。俺にはアイテムボックスというとても便利なものがあるからな!
「よし、それじゃお持ち帰りしよーっと。チカ達は何個ずつ食べたい?」
「「「10個っ!!!」」」
「即答だな…。ポーロさんは何個食べます?」
「いいんですか…?なら、私は2個ほどで」
「そんだけで足ります?俺のアイテム使えば行きの間は腐らないですよ?」
「あー、収納袋ですか…。でも、アルスさん。あれは食べ物の保存には向きませんよ?」
「大丈夫ですよ?それに、収納袋よりも良いアイテムですから!……とりあえず、50個ほど頼んどきますね!」
サヨさんにお持ち帰りの個数を頼むと、驚愕されつつも準備してもらう事になった。俺のワガママで出来立てを持って行きたいと伝えると、少し時間が欲しいとの事だった。快く了承し、席へ戻る。
「あと30分ほど欲しいって。ポーロさん、良いですかね?」
「構いませんよ。…ところで、おいくらでしたか?お支払いしますよ」
「良いですよ!これは俺が買いたい物でしたから。それに、ポーロさんには色々教えてもらいましたから。そのお礼です!」
「いやはや…。アルスさんはやはり不思議な方ですねぇ。…ま、そんな所も気に入っているんですがね」
ポーロさんと雑談しながら、出来上がるのを待つ。その間に、チカ達は10個ほどお代わりしていた。…本当にどこに入ってるんだろ。
「お待たせしましたー!!注文の品出来ましたよー!」
「ありがとうございます!代金いくらです?」
「えーっと……4000Gになります!」
「はいはいっと。…はい、お勘定」
「ご、5000Gもですか!?」
「多少無理言いましたからね。俺からのお礼の気持ちです」
「は、はぁ…。では、有り難く頂戴しますね!」
「ひゅー!!ご主人様男前ーっ!!」
…どこで覚えたのー?それ?
サヨさんから品物を受け取り、ボックスに入れる。
…うん、ちゃんと入ってるね。
「お待たせしました。それじゃ、出発しましょうか」
道中の楽しみが出来たので、ウキウキしながら出発する。ポーロさんが「予定より早く着いたので、2つ先の町まで進みましょうか」と言っていた。ポーロさんの考えでは、次の町で宿泊する予定だったのだが、俺達が馬車のスピードに普通に着いて行っているので予定が早まったと微妙な顔で言っていた。
最初の町を抜けてからは、人通りも少しずつ増えていった。割合的には商人が多い。ポーロさんの知り合いもいるそうで、ちょこちょこと話しながら進んでいった。
「アルスさん、ちょっとこの町で馬を休ませたいんです。寄りましょう」
「もちろん。俺達はポーロさんに従いますよ」
話を聞くと、この町は馬を休ませる休憩所があるらしい。商人が集まる場所なので、情報も多いそうだ。
休憩所に着き、水と餌を与える。ブラッシングもさせてもらった。蹴られるかとビクビクしていたが、人懐っこく気持ち良さそうにしていた。
「凄く可愛いですね!」
「ええ、本当に小さい頃から可愛がってますから人に危害は加えないですよ」
「乗ってみたい」
「ナナさん乗りますか?…なら、乗り方を教えましょう」
休憩であるはずだが、馬は喜んでナナを乗せてくれた。ローリィ達も乗りたそうにしていたので、ポーロさんが乗せてくれた。
「すっごい楽しかったー!」
「馬に乗るのは凄く気持ちいいですね!」
「マスターは乗らないのか?」
「俺はいいよ。馬にもしっかり休憩させてあげなきゃだし」
芝生の上で寝転がっている馬に近寄ると、顔を上げる。
「ありがとな。チカ達喜んでたぞ。…ほら、これはお礼だ、食べてくれ」
干し草と野菜が入ったバケツを馬にあげる。手渡しで食べさせようとすると、ヒヒンと鳴いてからモグモグと食べ始めた。
「…可愛いなぁ。馬に乗って旅するのもカッコいいよな…。機会があったら買うか考えようっと」
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