放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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029話

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「おーい!みんな、休憩するぞー!」

俺の声が聞こえたチカ達が走って俺の元に来る。ボックスから草団子を取り出し、飲み物の準備をする。

「おお!出来立ての味がします!!…これはなんていう道具なんですか?」

草団子を食べたポーロさんが驚いて俺に問いかけてくる。

「これは魔法ですよ。詳細はうまく言えないんですが、俺の街ではみんな普通に使ってました」

「おお!ということは、伝説の魔法ですな??…いやー、初めて体験しましたがかなり便利ですなぁ!」

ちょっとだけ、商売人の目になっていたポーロさんだったがすぐに元に戻っていた。

「そうですね。料理も作り立てが食べれますから重宝してますよ」

「これが商品化すれば莫大な利益になりそうですなぁ!…ま、あり得ないことですけどね」

ぶふふふっと笑いながら、ポーロさんは何個も食べていく。飲み物--お茶--をぐいっと飲み干すと、深い溜息をついた。

「ふぅー…。ご馳走様です。とても美味しかったですよ」

「チカ達も満足したか?」

「はいっ!残りはまた今度に取っておきます!」

「おっけー。なら、ボックスに入れとくね」

残りをしまっていると、ポーロさんが神妙な顔つきで話しかけてきた。

「アルスさん…先程、仲の良い商人から聞いたのですが次の町近くにある村が壊滅したと聞きました」

「…魔物とかですか?」

「さぁ…?まだ詳しい事は分かってないみたいなので、私にも分かりません。ただ…、魔物だった場合十分に警戒して欲しいと思いまして」

「わかりました。いつも以上に警戒をしておきます」

「お願いしますね。…では、そろそろ出発しましょうか」

町を出てすぐに人集りに遭遇した。ポーロさんの知り合いがいたらしく、話を聞きに行った。

「おお、ポーロさん!貴方も王都へ?」

「ええ、仕入れに行くつもりでしてね。…ところで何かあったんですか?」

「いえね、この先で魔物と戦闘中だとかで足止めを食らってるんですよ。冒険者グループが戦っているみたいらしいのですが、数が多く手こずってるみたいなんですよ」

「そうですか…。その冒険者は誰かの護衛ですかな?」

「依頼を受けた只の冒険者らしいですよ。…全く、ここで戦闘しなくても良いものを」

「ポーロさん、俺達が殲滅してきましょうか?」

ポーロさんとの話を聞いていた俺は提案してみた。しかし、意外な事に返事は予期しているものでは無かった。

「…ダメですよアルスさん。貴方達は私の護衛なんですから出向くのはダメです。それに…冒険者の仕事を奪うのはタブーですから」

「…そうですね。変なこと言ってしまってすいません」

「いえ。それは当たり前の反応だと思いますよ。…ただ、今回は違うというのを覚えておいてください」

ポーロさんの言う事は正しい。今回の依頼はポーロさんの護衛なのだから、進んで危険な場所に行く必要は無い。あくまでも、依頼主の安全を考えなければならないのだ。…まぁ、依頼主の指示があるならば話は変わるけど。

30分ほどその場で立ち往生していたが、一向に進む気配は無い。ポーロさんも時間を気にしているのか、少しそわそわし始めている。

「長いですね…。一旦街へ戻りますか?」

「ううーん…。あまり言いたく無いのですが、あの街の宿屋は値段と質が釣り合っていないんですよねぇ。…最悪の場合は野営するしか無いかもしれませんね」

「…ポーロさん、提案があるんですが…」

「提案…ですか?戦うというのなら却下ですよ?」

「いえ、戦闘はしないです。ただ、ナナの魔法を使ってここを抜け出そうかなぁと思っているんです」

「魔法…ですか?どんな風に?」

「ナナ、俺に『インビジブル』かけてくれ」

「わかった」

ナナにお願いし、インビジブルをかけてもらう。

「……消えた。ナナさん、アルスさんはどこに??」

「ここにいますよ。足元みてください」

ポーロさんが俺の足元を見たのを確認し、音を鳴らす。カンカンッという音が聞こえ、ポーロさんが驚いたのが分かった。

「こ、これは!?」

「不可視化の魔法なんですけど、簡単に言えば透明になるんですよ。けど、完全に透明って訳では無いんですけどね」

めんどくさい敵と遭遇する時には便利な魔法。『Destiny』の時には、ボーナスなんかが旨くない敵をやり過ごす時に使っていた。

「不可視化ですか…。それを使ってどうするんですか?」

「全体にかけてもらって、この先を抜けようかなと。不可視化がかけられているメンバー同士は見えるのでそこら辺は大丈夫ですよ。…んで、魔物にも気付かれないように色々と魔法を使おうと思ってます」

「…それで大丈夫という証拠は?」

「魔物の強さも関係しますけど、ここに出てくる魔物は俺達より弱いですからほぼ100%大丈夫かと」

「…わかりました。アルスさんの強さを信じましょう。…あ、それとアルスさん、私達商人と話す時は確実な証拠を出した方がいいですよ。私達は『ほぼ』や『大体』などの曖昧な言葉は信じませんから」

「…勉強になります。ありがとうございます」

「ま、アルスさんは信用出来る人ですから私は信じますけどね」

俺もCランクになったし、これからは商売人相手に交渉する可能性はあるもんな。そういうのは、ポーロさんに色々と教えてもらう必要があるな。

「さて、それじゃこの渋滞を抜けるとするか。ナナ、よろしく」

「任せて。他の魔法も使っておくか?」

「ああ、特にポーロさんにはかけといてくれ」

人が少ない所に移動し、魔法をかける。全員がかかっている事を確認してから進む。

「これが『インビジブル』という魔法ですか…。いやはや、凄い魔法もあるもんですねぇ…」

感慨深い声を出しながら、ポーロさんはゆっくりと進んでいく。遠目に戦闘中と分かる塊が見えたが、ポーロさんの指示に従い、鉢合わせないように気をつけて進む。

「チカ、もし魔物が気づいた場合には早急に殺してくれ。ポーロさんにバレないようにな」

「わかりました」

「ポーロさん、少し速度あげますよ。警戒は万全ですので、さっさと進みましょう」

しれっと速度上昇をかけて、馬の速度を上げる。俺達は普通に着いていけるので、ポーロさんは気付かないと思う。

「…ポーロさん、一応戦闘中の場所は抜けましたけど、次の町までこのまま進みませんか?」

「ええ、安全という事も実感しましたし、そうしましょう」

「…チカ、あの冒険者達に攻撃力上昇かけといて」

「…いいんですか?」

「あのままじゃ、多分全滅すると思う。知らない奴だけど、死なれるのは嫌だからな」

「わかりました。バレないようにかけときますね」

ま、あのまま全滅したら他の人達も巻き添えになるかも知れないしな。ポーロさんの知り合いもいるみたいだし、それくらいはしておこう。……バレなきゃセーフだもんね。

そうして、俺達は速やかに次の町へと向かうのであった。

余談ではあるが、魔物と戦っていた冒険者達は見事殲滅に成功し、その一部始終を見ていた商人達から護衛の依頼が引っ切り無しになったとか。ま、自惚れなければいいけどね。


♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「アルスさん、お疲れ様です。先に宿屋に行きましょうか」

無事に次の町へと着いた俺達は宿屋へと直行する。あそこで立ち往生してた人達が多かったのか、宿屋は空室が多く見られた。

「うーん…どれもこれも同じ様な雰囲気だなぁ。何か違う部分があるのかな?」

宿場町にある宿は全部が同じ様な作りであった。最初の町の宿は個性的な物が多かったからだろうか。

「アルスさん、こことあそこは気をつけて下さいね。ぼったくり宿ですから、無駄金を使う事になりますよ」

ぼったくりとかあるのかよ…。よく潰れないな。

「私のオススメは奥にある宿ですよ。料金はまぁ、普通ですが料理がとても美味しいんです。昼間も営業してるみたいなので、寄った時にでも食べてみてください」

さすがポーロさん。色々と情報持ってんなー。俺もこんな風に旅とかしてみたいな。

ポーロさんに連れられオススメの宿屋へと到着した。入ると同時に、良い匂いが充満している。

「あらあらあら。ポーロさん、久しぶりですねぇ」

女将さんと言えば良いのだろうか。人当たりの良い笑顔を浮かべた恰幅の良い女性が話しかけてきた。

「こんばんは。2部屋ほど借りたいんですが空いてますかね?」

「ええ、いつもポーロさんが使ってる部屋も空いてますよ。隣同士で良いですかね?」

「それでよろしくお願いします。あと、今日のメニューは何ですか?」

「今日はねぇ、珍しくジパングから海産物が届いたので海鮮料理となってますよ」

「おお、それは丁度良かった。なら、人数分よろしくお願いしますね」

「今日はお酒は?いつもので大丈夫かしら?」

「それも人数分で。…それじゃ、行きましょうか」

ポーロさんの荷物を持って部屋へと向かう。男女別に泊まるみたいで、チカ達は少し寂しそうだった。

「おおー……。意外と広い部屋だ…」

サガンの宿屋程、豪勢ではないがなんか落ち着く感じがする。調度品とかも無いし、本当に身近な宿屋って感じだ。

「この部屋は町の眺めが綺麗なんですよ。私のお気に入りなんです」

窓から外を覗くと、二階とあってか見晴らしがいい。町並みもごちゃごちゃしてないし、家々の灯りが幻想的な雰囲気を出している。

「…なんか風情がありますね。俺もこの景色好きです」

「気に入りましたか?それは良かったです」

「あ、ポーロさん宿屋の代金を支払いますよ」

「気にしないでください。護衛を頼んでるんですから、この代金も経費のうちです。…ま、アルスさんだからってのもありますがね」

先程からポーロさんは俺をべた褒めしてくれる。それだけ気に入られているという事だろうか。それとも、別の意味なのだろうか。……前者だったら有難いな。

「それでは、食事をしに行きましょう。いやー、今日は本当にラッキーですよ。何せ海鮮料理が食べられるんですから」

「俺も楽しみです!…魚卵が出たらちょっと遠慮したいですけど…」

「おや?アルスさん魚卵が苦手なんですか?」

「ええ…。あの食感や味がどうしても苦手で…」

「なら、魚卵は抜きでお願いしておきましょう。お酒は大丈夫ですか?」

「ええ、大好きです」

「私のオススメのお酒がありますからね。楽しみにしててください」

俺達は食堂へと移動する。どうやら良い匂いはここからしていたようだ。

「さぁ、早速席に着きましょう。チカさん達は飲み物はどうされますかな?」

「ポーロさんにお任せしますわ」
「オススメで」
「ジュース以外がいいなぁ!」

「なら、私のオススメにしておきましょう」

食卓にポーロさんオススメのお酒が置かれる。みんなで乾杯をしてから一口飲むと、芳醇な香りが鼻腔一杯に広がる。

「ふわぁ……。なんて美味しいの…」
「…美味」
「んーーーっ!美味しいっ!」

「本当だ。ワイン飲んだ事無かったけど、これすげー美味い」

「これは王都で作られたワインなんですよ。でも、高級って訳じゃ無いんです。値段もかなりお手頃ですからね」

「……うん。美味しい。目の前に太陽と葡萄畑の絵が広がるよ」

「良い例えですね。まるで評論家みたいです」
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