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036話

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レインから着替え終わった服を渡され、それを畳んでカゴに入れる。次の着替えはチカが渡し、俺は着替え終わった状態の感想を聞かれていた。

「どう……?」

「いいんじゃないか?けど、ズボンばっかりだけどスカートとかワンピースとかは良いのか?」

「…恥ずかしい」

「お待たせー!レインちゃんに似合う服持ってきたよー!」

ローリィがカゴいっぱいに新たな服を持ってきた。

「今まではズボンばっかりだったからスカートを持ってきた!」

「おいおい…。これすげー短くないか?」

「チッチッチ。分かってないなーご主人様は!露出は最大のファッションなんだよ!ご主人様も露出度高いの好きでしょ?」

「それはまぁ…。男だし…」

「レインちゃんも女の子だし、ヘレナさんも露出は武器だって言ってたよ!」

ヘレナさん…変な事教えないでくれよー頼むよぉー。

「でもレインはスカートは恥ずかしいって言ってたよ?」

「えっ!?そうなの!?」

レインがカーテンから顔を覗かせ答える。

「…うん。ちょっと恥ずかしい…」

「…そっかー。苦手だったのかー。…ご主人様もこのくらいの露出具合が好きだと思ったんだけどなー」

「は?…待てローリィ。どういう事だ?」

「え?レインちゃんに着せようと思ったの結構短いのが多いんだよねー。ご主人様はあたしの服はこういうのばっかり持ってるから、レインちゃんに着せたいなーって」

「…?なんで俺が出てくるの?」

「そりゃあレインちゃんが---

ローリィが続きを口にしようとした時、勢いよくカーテンを開けレインが慌てて出てきた。

「ローリィお姉ちゃん!!!!」

顔を真っ赤にしながらローリィの口を小さな手で抑える。そのままごにょごにょと何か2人で話していた。

「なぁ、チカ。聞くのもなんだけど、こっちの試着済みのやつは購入するの?」

「もちろんですよ!……あ、少な過ぎましたかね?」

「少な過ぎって事は無いけど…見た感じ試着済みは戻してないよね?」

「はい!どれもレインに似合っているので買おうと思ってます!」

カゴとごっそり服を抜かれている棚を交互に見る。まさか夢にまで見た大人買いを子供服でするとは思いもよらなかった。

「…そんなに服が沢山あったらタンスとかめちゃくちゃ必要じゃないか?いずれ孤児院に預ける予定なんだし、もう少し減らした方が良いと俺は思うんだけど…」

「大丈夫です!その時は収納袋をプレゼントする予定ですから!」

…頭いーな!!確かに収納袋があればタンスは必要ないな。でも…その収納袋は俺が買うのか?

「収納袋って結構値が張ったぞ?どーするんだ?」

「昨日話したんですけど、私達3人でお金を貯めて買おうと思ってます。冒険者ランクも高いので、報酬の良い依頼を沢山受けようと考えてます!」

「へぇー!それは良い考えだな!きっとレインも喜ぶだろうよ」

「それでですね…。その資金が貯まるまでアルス様の収納袋を貸して頂けないかと…」

「ああ、それなら良いよ。でも、あれ100品しか入らないからこの服全部は無理だぞ?」

「100品までなら厳選しようと思います。レインも大きくなっていくと思うので、そこも考えながら選びますわ」

「そ。ならチカ達に任せるよ。…あ、そういえばさっきナナが言ってたんだけど、チカ達も服を買いたいんだって?」

「えっ!?ナナが!?……買いたいなーって思ってはいます…」

「買えば良いじゃん。俺がいた方が参考になるってナナが言ってたし」

「アルス様が選んで下さるんですか!?」

「い、いや…俺は選ばないよ?ただ、似合ってるかどうかは言うつもりだったけど…」

「そ、そうですか!なら、レインの服を急いで選びますわ!!」

そう言うとチカはナナとローリィの所へ急いで行き、怒涛の勢いでレインの服を選んでいった。レインも試着しなくて済むと思ったのか、嬉しそうに気に入った服を選んでいく。

チカ達が服を選んでいる間、俺はかなり暇を持て余していた。服の量を見る限り、すぐには決まらないと思うのでその時間を新しく出たジョブについて考える事にした。

まず俺とナナだけが新しいジョブを習得したという事。つまりは俺とナナが共通の何かをしたということ。多分ではあるが、俺とナナは『狩猟』と『調理』のジョブを使用したからではないかと推測する。自分で魔物を狩り、それを調理した事で新しいジョブが出現したのだと思う。

さて、それを踏まえて『なぜ新しいジョブが?』というのを考えてみる。今までゲームではこの様なジョブの見つけ方は無かった。攻略サイトも見ていたが、そこにもこの様な事例は書かれていなかった。

以上の2つの事柄で考えられる事は『大型アップデートで追加された』と考える。

俺が死ぬ前、『Destiny』は確か大型アップデート目前だったはずだ。今では調べる事が出来ないのでどうなっているかはわからないが、あの糞運営ならこういう追加コンテンツをぶち込んでくるだろう。

だが、もしかしたら大型アップデートでは無く『この世界に限った新しいジョブ』かもしれない。どっちなのかは確証が持てないが、とりあえずは『出現条件』を確認しておいた方が良いだろう。ギルドで依頼を受けた時に、複数のジョブを使って実験してみようと思う。幸いにも、俺と同等量のジョブを持っているのが3人も居るし時間はそこまでかかる事は無いだろう。

次に考えたのは『ジョブのLv.UP』についてだ。この世界でも『Destiny』と同じ様な作りだと思っていたのだが、全然Lv.UPしていない。ということは、放置していても勝手に熟練度が上がるという訳では無さそうだ。普通のRPGの様に使用していかなければ、上がらないのだろう。

現に『美食家』の熟練度はまだまだだ。1週間以上経っているのに、熟練度は上がりきっていない。という事は、熟練度を上げるには『食べる』という行為が必要なのでは?と考えた。『美食家』という名前の通り、高く美味しいもの食べていけばそれが経験値となり上がるのであろう。今まで俺が食べてきたのは極端に言えばジャンクフードばかりだ。安くて早いものでは経験値は少ないのだろう。この問題については、王都にある『アルテファンス』という店で食べてみればわかるだろう。

考えた事を整理していると、服の厳選が終わったチカが話しかけてきた。

「アルス様、レインの服を選び終わりましたわ。支払いをお願いしても良いですか?」

「ん?…ああ、了解。んじゃ、レジに向かうぞ」

ローリィとナナが大量の服を持ち、レジへと向かう。レジには男がぼけーっと座っていた。

「すいません。この服を購入したいんですが…」

「はいはい。………え?これ全部ですか?」

「はい。今持っている服全部です」

「……ち、ちょっとお時間下さい!」

男はソロバンを持ち出し、服の値段を全て足していく。やがて、合計金額が出たのか俺にオロオロと話しかけてくる。

「お、お待たせしました。合計が…2万と7300Gになります。……お支払いは現金でですか?」

「え?現金ですよ?…カードとかあるんですか?」

「カード??それが何なのかはわかりませんが、大量に購入されるので掛け払いかなぁと思いまして…」

「ああ、そういう事ですか。俺は冒険者なんで、商売とかは考えてないですよ。………はい、2万と7300Gです」

「は、はい!!えーっと……丁度お預かりします!ありがとうごさいました!この服は持ち帰りますか?よろしければ、こちらでご自宅まで送る事が出来ますけど…」

「あ、収納袋に入れてもらって良いですか?多分全部、入ると思うんで」

「こちらの収納袋ですね?あ、申し遅れました。私この店の主人のフライと申します。今後ともご利用をお願いします」

「こちらこそよろしくお願いします。……あ、そうだ。フライさん、この近くに後ろにいる女性が着れるような服が売っているお店はありませんか?アルテファンスに着ていこうと思ってるんですが…」

「アルテファンスは礼装が必要ですからね…。でしたら、私の姉が近くで店を出していますよ。丁度この店の裏側ですね。……私の紹介という事を言ってくだされば多少はサービスしてもらえると思います」

「ありがとうごさいます。それじゃ、その店に行きます」

フライさんから情報を得て、俺達はその店に向かった。フライさんの紹介でと店にいた女性に伝え、アルテファンスに着て行く服をお任せで見繕ってもらった。

ただ、チカ達は全員スタイルが違うので色々と手直しが必要らしく、既存品を買うよりもオーダーメイドしたほうが早いとの事だった。いつ頃出来上がるかと聞くと、今日の夕方までには仕上がるとの事。なら、オーダーメイドで頼む事にした。

採寸も終わり、色等についても話し終わり俺達は店を後にする。ご満悦なチカ達を連れ、俺達は宿屋へ戻るのであった。

♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「お姉ちゃん達凄いキレーイ!!!」

時刻は夕方18時。宿屋に服が届き、チカ達は早速着替えていた。ちなみに、レインの服も頼んどいた。

「ありがと。レインもとっても可愛いわよ?」

チカは黄緑をベースとしたドレスを着ている。金髪の髪とドレスの色がとても合っている。

「…ちょっと着慣れない」

ナナは黒を基調としたワンピースだ。普段は子供っぽい背丈だが、ワンピースを着ると大人の女性という印象を受ける。

「むぅー。ちょっと胸がキツイなぁ…」

ローリィは暗めの赤を基調としたドレスだ。露出は武器と言うだけあって、本当に目のやり場に困る。サイズが少しキツかったのか、只でさえデカイ胸が溢れそうになっている。

「みんなとっても似合ってるぞ?凄く綺麗だよ」

「えへへっ」
「…えっへん」
「照れるなぁー」

「…アルスお兄ちゃん。僕は似合ってる?」

「おう!レインもすげー可愛いぞ!お姫様みたいだな!」

「嬉しいっ!」

いやー、目の前の光景はまさに眼福だなぁ。大人の魅力がビシビシと伝わりますよっ!!

ちょっとだけ、そうちょっとだけ変な事を想像しているとローリィが話しかけてきた。

「ご主人様は着替えないのー?」

「お、おう。俺はコスチュームがあるからすぐに着替え終わるよ」

「なら早く着替えて行こうよー!あたしお腹減ったー!」

「はいはい。…えーっと、あったあった。これだ」

目当ての服を見つけ着替える。何故か運営から配布された服なのだが、このように役に立つとは思いもよらなかった。

「ふわああああああ!ご主人様カッコいい!!!」
「……誰かティッシュ取って。鼻血が出た」
「はい、ナナ。…私も使うわ」
「アルスお兄ちゃんかっこいい!!凄く似合ってる!!!」

俺が着ているのはただの執事服だ。昔、どこぞのゲームとコラボして女性ユーザーを獲得しようとしたのだろう。この服は男女兼用で、短髪女性に限り着用可であった。

「そ、そう?そんなに似合ってるかな?」

「とってもおにあいですわアルスさま!」
「これはしつじふく…。ということはマスターはボクたちのしつじということになる」
「きゃーっ!!ご主人様にエスコートされちゃうの?凄い嬉しいんだけどっ!!」
「えすこーとって何?教えてチカお姉ちゃん」

「て、照れるなぁ。…よし、さっき店には予約入れたしそろそろ行くか」

着飾った俺達は『アルテファンス』目指して宿屋を出る。外に出ると、住民から凄く見られる。男はチカ達、女は俺といった具合でそれはアルテファンスまで続くのであった。
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