放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

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115話 -悪夢 7-

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「ここは……?」

真っ白な世界が広がる中、ポツリと呟く。白の世界にポツンと俺だけが立っている。キョロキョロと見渡すと、隅っこの方に真っ黒な空間が広がっていた。対照的な光景に興味を持った俺は、そこへと近づいて行く。

「--!!-----!!」

何やら真っ黒な空間から怒鳴っている様な声が聞こえる。

「………誰かいるのか?」

暗闇を覗こうとした時、後ろから肩を掴まれる。驚きながら振り返ると金色の刺繍が入った水色のドレスの様なモノを着た女性が立っていた。その女性は神秘的で独特な雰囲気を持っており、哀愁を何故か漂わせていた。

「…誰--
「時期にここはヤツによって黒に染められるだろう」

誰かと聞くタイミングで女性は話し始める。

「ここを侵略されればも消えてしまうだろう。それだけはあってはならぬ」

「我が娘??」

「ヤツに呑み込まれてしまうと、全てが終わってしまう。この世界の民達は悪夢にうなされ、寝ることすらままならなくなるだろう」

女性は淡々と話しながらも俺の目を見続ける。

「……次で最後だ。私ももうチカラが枯渇するだろう。……アルスよ。再三言っているが全てを救え。そして我が娘を助け出して欲しい」

「? それってどういう--
「良いな?次で最後だ。全てを救ってくれ。そして、私と娘をヤツから救い出して欲しい」

女性が力強く目で訴えると眩しく光る。そして視界はコテージへと戻り、俺の近くにはチカ達が立っていた。

「アルス様!!」

「???」

状況が分からず目を泳がせていると、チカが口を開く。

「早くレインの記憶に戻りましょう。もう時間が無いみたいです!」

「マスター。チカから話は聞いた」

「アタシも手伝うー!」

「????」

「さぁ!早くレインの手を!!」

チカの迫力に負けレインの手を握る。するとまたもや砂漠へと視界が変わる。

「ナナ、ローリィ。手筈はさっき話した通りよ」

「はいはぁーい!」
「任せて」

砂漠に降り立つと同時にチカがナナ達に指示を出す。そして俺の方を見るとこう言った。

「アルス様。村人達の救出は私達にお任せを。アルス様はレインをお救い下さい」

「……! オッケー!」

チカの意志ある目力に俺は頷きで返しレインの元へと急ぐ。村人達はチカ達が救う手筈だろう。それならば俺のする事はただ一つ。

「血漿乱破!!」
「血界旋風」
「冥府の手招き」

レイン達の元へと駆け出しているとチカ達の声が届く。魔法ではなくスキルで闘っているのでちゃんと説明してあるようだ。

「レイン!早くこっちに!」

レイン達と出会う場所の手前辺りで声が聞こえた。いつもであればここで声が聞こえるのだが、どうやらまだ敵から逃げているようだった。

「こっちだ!!」

物陰から突如現れた俺に驚いた女性であったが、俺が手招きしているのと表情を見てか急いでこちらへと方向を変えた。

「………何故だ。何故貴様がここに?」

女性の背後から黒モヤの何かが現れる。女性とレインの手を引っ張り背後へと隠すと黒モヤに対峙する。

「またも……って事は、ムマだな?」

先程の登場シーンとは違うが、腐敗した様な臭いが鼻腔を刺激する。

「…………貴様。*****のシモベか?」

「あ?何つった?」

ムマが何やら尋ねてきたが聞き取れなかった。

「…まぁ良い。貴様を殺さなければワタシは帰れぬのだから」

パチンと指を鳴らした様な音が響くと暗闇が広がる。そして俺の前にはムマが姿を現した。

「『夢魔の聖域』」

夢馬はアルスと会話せずに素早く有利な状況を創り出す。そしてバトルアックスでは無く、鉤爪を伸ばし背中から翼を生やすとアルスへと攻撃をする。

「フンヌッ!!!」

アルスは鉤爪を剣で受けると前蹴りを入れ、女性から距離を取る。

蝙蝠こうもりよ!」

アルスの前蹴りを受けた夢馬はその攻撃を利用し更に距離を取ると、蝙蝠を召喚しアルスへと襲わせる。大量に召喚された蝙蝠達がアルスへと超音波を発しながら突っ込んでくるが、アルスはスキルを使用し蝙蝠達を地へと落としていく。

「『地烈覇斬』」

アルスは夢馬へと斬撃を放つ。夢馬はそれを辛うじて避けるとまたもや蝙蝠達をアルスへと放つ。だが、今回の蝙蝠は先程のとは少し違う。先程の蝙蝠はキィキィと鳴く普通の牙の鋭い蝙蝠であったが、今回の蝙蝠には吸血性があった。夢馬とその蝙蝠達は主従関係があり、吸血した場合、対象の力を自分の物にする事が出来る。擦りでもすればその血が夢馬へと伝わり、夢馬は更なる攻撃を使用出来る。これは夢馬にとって自身の力が弱まっている時に使う常套手段であり、それがあるからこそ、を任されていた。

「ッ?! 何故だ!?」

蝙蝠達がアルスに撃退されながらも命の灯火が消えるまで抗い、牙をアルスへと突き立てる。それを目視した夢馬はニヤリと微笑むが、力が伝わらないことに驚愕する。

「ッ!! 破邪一閃!!」

僅かな隙を見逃さなかったアルスの斬撃が夢馬へと直撃する。辛うじて胴体への直撃を免れた夢馬であったが左肘から下は斬撃により地へと落ちてしまう。

「何故効かぬ!?」

夢馬が驚くのも無理は無い。蝙蝠が掠った時点で夢馬は有利だと確信していた。だが、掠った筈のシモベからは力が伝わらなかったからだ。

「効くわけねぇだろ!こんな攻撃!!」

アルスは夢馬へと斬撃を無数に放つ。夢馬は『地上にいてはダメだ』と考え宙へと羽ばたく。だが、それを分かっていたかの様にアルスは斬撃を宙へと放ち、肩翼を切断する。

「クッ!!」

肩翼が切断された夢馬であったが、すぐさま新しい翼を生やし滞空する。

「『淫魔の守壁』」

夢馬は自身の前に見えない壁を展開する。耐久力に優れた壁であり、仲間であるにも破られたことのない誇れる技であった。

(何故アイツの攻撃が通用する!?)

夢馬は壁を展開した事で若干冷静になる事ができた。そして、現在直面している問題を解決するべく頭を回転させていた。

…夢馬が使用した聖域は自分が有利になる技である。だが、前回の対戦でアルスが自分の事を見えているのは知っていた。しかし、その時にアルスの攻撃を防ぐ事が出来た。それは即ちアルスの攻撃は自身には効かないと判断していた。だからこそ、左手と肩翼を飛ばされた事に驚愕したのだ。

(今のうちに回復を---

夢馬が回復しようとした時、直感が危険だと警告し、その直感に従い夢馬は降下する。その直感は正しく、降下すると共に上空で炸裂音が響いた。

「……貴様は一体…」

地に降りた夢馬は怖れを抱いた目をアルスへと向ける。この時の感情はに『僕の物になれ』と誘われた時と同じ物であった。夢馬は魔の中でも上に位置する実力者であった。それ故に『下になれ』と言われた時、『生意気な小僧め』と、主人を殺すつもりであった。しかし、結果は完全なる敗北。夢馬の全力を持ってしても主人には傷一つ付けられなかった。逆に一太刀受けてしまい、その攻撃に怖れを抱いた夢馬は軍門へと降ったのだった。

「あ?」

夢馬の問いにアルスは睨みを効かせながら答える。だが、夢馬の姿から怯えている様な雰囲気が出ている事にアルスは疑問を抱いていた。

「……とりあえず死ね」

何故か攻撃をしてこない夢馬に対しアルスはスキルを放つ。そのスキルはアルスが装備している剣に備わっている固有技だった。

「『神聖一刀』」

アルスが振り下ろした剣から光り輝く斬撃が放たれる。その一撃は夢魔の聖域を斬り裂き、一直線に夢馬へと届く。

「ウ、ヴァアアアアアッ---

迫り来る斬撃に夢馬は絶叫を上げる。普段ならばどうにか躱そうとする夢馬であったが、怖れを抱き、アルスの攻撃を見て本能が事により、夢馬は片手で顔を覆う。そして、何をするでもなかった夢馬は斬撃を真正面から受け止めた。

………コトのカラクリは簡単だ。夢馬がいくら自分の有利にしようと策を練ってもアルスには通用しない。可能性があるとすれば、ソーシャルゲームの様に何かしらの制限を設ければ確率は上がるだろう。だが、その様なことわりは夢馬には出来ない。そして何よりも、があり過ぎた。夢馬は確かにこの世界では上位に入る強者だが、アルスは頂点に立つ実力者だ。アルス自身はと言うものに慣れていないので、どんなに強かろうと恐怖が先行する。しかし、腹を括るか目標を定めるかをすれば怖いもの無しだ。どんなに状況が悪かろうとステータスが上回る事がない限りアルスは最強なのだ。

「ま、まおうざ---

消えゆく意識の中、夢馬は主人へと最後の力を飛ばす。そして自分の視界が二等分になるのをスローモーションで見ながら、ゆっくりと地へと別れ落ちるのであった。
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