放置ゲー廃課金者、転生する!

にがよもぎ

文字の大きさ
133 / 135

131話 -違和感-

しおりを挟む
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎

「アルス様、ベリルはどうでしたかな?」

風呂から上がり、少し熱気を冷ましてから夕食を取ることになった。ベリル様は風呂の時から夕食までの道のりまでひたすらに喋り続けていた。まぁ話の中身はどんな魔物と戦ったのかとか、どんな剣技が使えるのかなど、質問責めに近かった。しかし、無邪気さからくる質問に嫌な感じはしなかった。普通ならお喋りな人と居ると疲れるというが、そんな気は一切しなかった。

そして、チカ達も風呂から上がりそれぞれ服を着替えてから部屋へと移動する。食事を取る部屋は前回来た部屋とは違った。前回は部屋の中央に長いテーブルが置かれていたが、今回は丸い大きなテーブルで、それぞれの顔が見渡せる感じであった。

食卓に料理が並べられていると、奥さんからもうそろそろでターコイズ様が帰ってくると言われた。先に食べてるのもなんだし、ターコイズ様が帰ってくるのを待つことにした。10分ぐらいしてからターコイズ様が帰ってきて空いていた席にササっと腰を下ろすと食事を始める。そして、冒頭の台詞へと戻る。

「まだちょこっとしか見てないので何とも言えませんが、才能はあると思いますね」

「そうですか!いやぁ、良かったなベリル!」

「はい!…でも、アルス先生すっごく強いんだよ?ボク、先生と手合わせしたんだけど一発も当てられなかった!」

「ハハハッ!そりゃアルス様はこの国の英雄なんだぞ?」

「それでね?先生に他にどんな魔物と戦ったのか聞いたんだけど、砂漠大蜘蛛デザートスパイダーをやっつけたんだって!」

砂漠大蜘蛛デザートスパイダーをかい!?そりゃ……まぁドラゴンを倒せる方なら……」

ターコイズ様はベリル様と仲良さげに話している。その様子から見て親子の仲は良好だと分かるものだった。

「アルス様、ベリルに才能があると仰ってましたが、どんな才能ですの?」

「剣…いや、模写の才能ですかね?兵士達の稽古の型を真似してたんで。ベリル様曰く、その稽古は体験してないと仰ってました」

「模写…ですの?」

「はい。言葉は軽そうに思えますけど、それを実際に真似するってのは難しいと思います。それもベリル様のような子供が」

「………そうなんですの。じゃあ剣の才能は無いという事ですか?」

「いや、剣の才能が無いとは思ってませんよ。ただ、まだベリル様は子供ですしこれから成長していくにつれ力をつけると思います。私がお手伝い出来るのは基礎を教えるぐらいですね」

「………基礎?」

「はい。まぁ私も人様に教えれる程学んだ訳では有りませんので……」

もっともらしいことを言いつつもこれ以上喋るとボロが出そうだと思った俺は話題をナナへと振ることにした。

「そういやナナは見えるはずだよな?ベリル様は魔法とか使えそうか?」

「見える??」

俺の言葉に疑問を持ったのか奥さんはナナへと視線を動かす。

「モルガ、ボクは魔法使いだ」

「え、ええ……それはミレーユ様からも聞いているけど…」

「ただし、ただの魔法使いでは無く魔法を極めた者だ」

話を振られたナナは淡々とした口調で奥さんに話し始める。

「魔法を極めた者にはとあるボーナスが付く。そのボーナスとは相手の弱点などを見抜く『慧眼けいがん』という能力を得ている」

「ぼ、ぼーなす????」

「…特殊能力の事だ。ただ、ジュエリア王国にはボクの高みまで登り詰めている者はマスターを除けば誰一人として居ない。だからボクの様な能力は知らないと思う」

「は、初めて聞いたわ…」

「その話を前提とした上で言わせてもらうが、ベリルには魔法の才もある。ただし、努力は必要だが」

「…ベリルは魔法が使えるの!?」

「使える。とても質の良い魔力を持っている。それは恐らくモルガ達の血筋だと思う」

「……それってつまり、私達も使えるの?」

「魔力は持っている。だが、今から習得しようと考えるならば非常に時間が掛かる」

「……アナタ、ナナさんの話を聞いてたかしら?」

ベリル様と夢中で話しているターコイズ様へと奥さんが話しかける。

「ん?どうかしたのかい??」

「ナナさんが言うにはベリルには魔法の才能があるらしいのよ!」

「………それは本当かい??」

穏やかな表情から物を定めるかの様な表情へと一変させるとターコイズ様はナナへと視線を動かす。

「嘘は言わない。だが、魔法を使えるかどうかは本人次第。ただ、才能はあるとだけ伝えておく」

ナナの話を聞いていた俺はどう説明するかを考える。

(ボーナスとか言うなよなぁ……。まぁそれは置いておいて、ナナの特殊能力は魔法職を極めても出来ないと思うんだよなぁ…)

ナナが言っていた慧眼とは、ナナというでの特殊能力だ。『Destiny』ではキャラ毎に『極限解放』というモノがあった。最高レベルで『通常攻撃150%増加』とかそんな感じね?もちろんレアリティにもよるが、『Destiny』の良い所はレアリティが低いキャラでもその『極限解放』が唯一無二という事だ。……まぁ簡単にいうなら固有スキルという訳だ。

もちろん、チカやローリィにも『極限解放』はある。チカの場合は治癒に特化した『森妖精の加護』、ローリィは攻撃回数に特化した『不動明王』がある。他にも『解放』は沢山あるのだが、とりあえずの説明はここまでにしておく。

「……アナタ」

「うむ………我が子ながらそんな才能があるとは……」

ナナの言葉を信じたターコイズ様達は感慨深くベリル様を眺めていた。

「? どうかしたの??」

「ベリル……ナナ様が言うにはベリルには魔法の才能があるらしいぞ?」

「えっ!?魔法!!???」

魔法と聞いてベリル様は高い声を出す。もちろん表情は太陽の様に明るい。

「もし、モルガ達がボクの言葉を信じると言うのならちゃんとした魔法を扱える者を教師にした方が良い」

「……ナナさんに頼むと言うのは?」

「それは無理な話だ」

「何故でしょうか?」

「ボクとベリルでは差があり過ぎる」

「どういうこと?」

「……ナナが言いたいのは、ベリル様にはナナの魔法が使えないということだと思います」

「使えない?…どういうことチカさん?」

「私達はそれぞれの魔法を極めた者です。ナナの場合は攻撃特化、私の場合は回復特化と言った具合に。私達が教えるとなると偏ると言いたいのだと思います」

「流石チカ。ボクの気持ちをよく分かっている」

満足げに頷くナナにチカは笑みで返す。チカの話を聞いて何となく理解した俺はターコイズ様達に話しかけた。

「まぁ剣以外にも才能があるって事ですよ。良い事じゃないですか!」

人様の教育に口出しするのはいけない事だと思うのでそれから先は言わない。子供のうちは自分がやりたいことをやれば良いと思うんだよね。親が押し付けるんじゃなくて、親が協力するって感じだ。

「むむむ……しかし、ベリルに魔法の才能があるとは…」

「……アナタ。もし、ベリルが勇者になりたいって言ったらどうしましょう?」

「……その時はやらせるだけさ。夢はいくつあってもいいんだよ」

(…余計な事言わなくて良かったー!!うんうん、俺もターコイズ様の意見に賛成だ!)

ナナの発言でちょっと食事の雰囲気が変わってしまったが、ターコイズ様達は何か嬉しそうな感じだった。ミレーユからどんな話を聞いているのかは知らないけど、自分の子供を褒められたら嬉しいもんな。

それからの食事は世間話を交えながら進んでいった。料理もしっかりと味わえたので俺としては大満足であった。

「アルス様はお酒は呑めますかな?」

デザートを食しているとターコイズ様から聞かれた。

「ええ。呑めますよ」

「それは良かった。私のお気に入りの酒がありましてね、よろしければご一緒に呑みませんか?」

「良いんですか?」

「ええ。……私の書斎にあるので行きましょうか。ちょっとお話がありますので」

「ご主人様ズルイー!!」

「フフフッ。ローリィさん、安心して?こっちはこっちで準備してあるから。さっきの女子会の続きをしましょ?」

(女子会とか仲良くなってんなー。うんうん、良い事だ。………ところで話って何だろ?)

そんなことを考えながらターコイズ様の後をついて行く。ターコイズ様の書斎はシックな雰囲気で、分厚い本が幾つも本棚に収まっていた。

「どうぞアルス様」

ゆったりと座れるソファーに腰を下ろすとターコイズ様がお酒とグラスを持ってくる。トクトクと果実の様な甘い香りを漂わせながらグラスへと注ぐと俺に手渡し乾杯する。

「……お話って何でしょう?」

「…ベリルには聞かれたくない大人の話ですね」

「大人の話?」

そう言われてピンクな事を想像した俺だったが、ターコイズ様から出た言葉はそれとは全く違う別な話なのであった。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...