毒華王女伝

荒谷創

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毒華の微笑み

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「それにしても、このお粗末な銃弾は一体何処から納入されたのかしら?どなたかご存知の方はいらっしゃいますの?」
「弾薬の納入は『アーヴェルマ商会』の筈だが……」
「アーヴェルマ……アーヴェルマ……」
何かを思い出そうとするかの様に軽く目を閉じ、小首を傾げて自らの人差し指でこめかみをトントンと叩く王女。
やがてハッと目を開けると、何かの報告書らしいものを凄い勢いで捲りだす。
……その報告書、どこから……
つっこみ不在のまま思わず見守ってしまう革命軍。
予測不能な王女の言動に、先程まで確かに抱えていた義憤や王族への憎しみはすっかり成りを潜めてしまった。
「……アーヴェルマは光神人教の使徒の名前ですわ。つまりはエルトアル神聖王国の商会……してやられましたか」
「何だって!?」
「御前会議で決められた弾薬その他の納入業者はバートン商会。剣や槍などはロギアル商会が主の筈ですわ」
この二つの商会はもう何十年という間、変わることの無かった、所謂『御用達』だ。
「どこでアーヴェルマ商会が入れ替わったのか、早急に調べないといけませんわね」
それから
腰に手を当てて、王女は再び革命軍に向き直る。
食中りしょくあたりの方も、お話しを聞かせて下さいな?」
大丈夫。わたくし、忘れておりませんわよ?
王女は柔らかく微笑んでいる
老若男女を問わず見るもの全てが頬を赤く染めるであろう笑みに、なぜか革命軍は鳥肌が立つ思いだった。


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