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とある魔王の場合
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ボクはマモノ
マオウさまのおシロでゴミをタべてる
タマにホカのツヨいマモノにツブされたりモやされたりするケド
ボクはイタイとかいうのにならないからカンケイナイ
ボクはミンナにキラわれてる
でもボクだってボクをキラいなヤツはキラい
だからナニかされてもキにしない
シバラクほっとけばイなくなるから
おシロのナカでボクにヤサしいのはマオウさまとヨワいマモノたち
トキどきナでてくれるからスキ
マエのマオウさまはキラいだった
マオウさまにはツヨいマオウさまとヨワいマオウさまと
あとツヨすぎるマオウさまがいる
ツヨいマオウさまはいつもナガイキでボクにはあんまりハナしカケてこない
ツヨすぎるマオウさまはナガイキしない
テシタもツヨいけどユウシャにコロされるから
イジワルだしボクはキラい
イマのマオウさまはヨワいマオウさま
スキだけどマエのマオウさまのハンブンくらいしかツヨくない
ヨワいマオウさまもナガイキしない
だからボクはおシロがザワザワしだしたらココでマってる
イツモとオナジだから
━━━━━━━━━━━━━
私は今代の魔王として失格だったのだろう……
魔人種の王、暴虐の王と呼ばれ、十人もの勇者を返り討ちにした父は、しかし十一人目の勇者に敗れて果てた。
その血を引きながらも遠く及ばない私に、何よりも力を尊ぶ魔族が不満を抱くのは、仕方がなかったのかも知れない。
それでも母方の祖父であり、父の代の四天王の中で唯一生き残った赤竜王が後ろ盾になってくれていたから、何とかなっていた……筈だった。
先代四天王の後継達が力をつけて来ている事は知っていたし、それでも、私の乏しい力でも抑えられると思っていた。
実際、祖父が
赤竜王が敵にならなければ
床に転がり呻くのは奴等だっただろう
「……お祖父様…なぜ……」
「何故?何故かだと!?」
紛う事無き怒りと嫌悪
その激しさが全身から立ち昇り、半ば炎となって周囲を焼き始める。
水、土、風の四天王は辛そうだな
もう少し祖父が激昂すれば、脆弱な守りが破れて道連れに出来そうだ……
「その捻れた角!赤い髪!血の様な色の瞳!短い尾も貧弱な翼も!何もかもが気に入らん!!」
父譲りの角と、色彩
母譲りだが、半端で役に立たない竜の特徴
「我が最愛の娘の血を引きながら、何と惨めな!!」
……ああ、そうか
「……母上に似なかった事が許せないと」
「そうだ!その小賢しさすらアイツに似おって!」
なるほど、思い返せば祖父にはまともに撫でて貰った事も無かったな……
「貴様の様な出来損ないが、我が娘の命と引き換えに産まれた事など赦せるものか!」
……母上は氷雪竜……その類稀な美貌に火と闇の魔人である父上が魅せられ、半ば強引に娶ったのだとは聞いていた。
火の力を宿す私が産まれた事で、命を落としたのだとも。
他ならぬ父に散々殴られながら、聞かされていた事だ。
「……お祖父様も、父上と同じか……」
「なんだと!?」
少し収まっていた熱気が、じわりと上がる。
「何時までも亡くなった母上が忘れられず、ただ産まれただけの私を責める……まるで駄々っ子じゃないか」
「キサマ!!」
キレたな
「ひっ「ヤバ……「にげ」逃さんよ三バカ共
貴様らは地獄への道連れだ……
祖父には通じないが、私の蛇炎もまた祖父の熱気程度では掻き消されはせん。
━━━━━━━━━━━━━
「半身残りおったか……忌々しい……」
目も見えないが、微かに聞こえる祖父の声
そして浮遊感
これはゴミ穴に投げられたな……
僅かなりとも命が消え残るとは思わなんだ。
まあ、でも時間の問題か……
ベシャリと、何か湿ったものに包まれた
これは掃除用のスライムか……
これが最期か
『……ぇ…』
まあ、この無言の働き者に食われるなら、この身も無駄にはなるまい。
心残りは小間使いや料理番達が無事かを確かめられなかった事くらいかな
まあ、いくら祖父でもあの子らにまでは手を出すまい。
『……ねえ……』
三バカが生き残っていたら危なかったが、奴等だけは祖父の炎で焼き尽くされるのを見たからな……
『キいてる?』
……声?
『マオウさまキこえてる?』
「……」
声は出ないな……
『そっか』
思考を読まれた?
『うん』
凄いな……キミはスライムか?
『そうだね』
話せたとは知らなかった
『マオウさまはボクのナカにイるからね』
なるほど、食われないと分からない訳か
『タべてホしい?』
……そうだな。無駄に死ぬよりは、食べられた方が良いだろう
『そうなの?』
死にたくない訳では無いが、即死していないだけ奇跡みたいなものだ。高望みしても……
『シにたくナいならタスけるよ?』
………は?
『チカラもあげる』
……何を言って……
『マエとマエのマエのマオウさまのチカラくらいでイい?』
父上と先々代……叡智の賢竜王の、チカラ?
『あとホしいチカラはある?』
━━━━━━━━━━━━━
優しき魔王、賢竜王の再来、炎と氷の支配者と謳われ、勇者と和解し、世界の安寧に尽力した百四代目魔王は魔法に優れた魔人種と、強大な肉体を誇る竜族の血を引いていたと言われる。
かの魔王の統治は実に五千年に及び、寿命を迎えた際には天が泣き、全ての魔族のみならず人族を含めたあらゆる種族が悼み、惜しんだという。
現在の平和を築いた事で神格化も進み、世界各地に『聖魔竜王神』を祀る祠が造られた。
その亡骸が、納められた霊廟に存在しない事が発覚したのは、亡くなってから百数十年も後の事だが、本人直筆の『この身は還すべきもの故、探すに及ばず』との遺言があり、研究者の間では様々な説が唱えられている。
魔王国記録編纂室
記録主任 バートン・ロギア
マオウさまのおシロでゴミをタべてる
タマにホカのツヨいマモノにツブされたりモやされたりするケド
ボクはイタイとかいうのにならないからカンケイナイ
ボクはミンナにキラわれてる
でもボクだってボクをキラいなヤツはキラい
だからナニかされてもキにしない
シバラクほっとけばイなくなるから
おシロのナカでボクにヤサしいのはマオウさまとヨワいマモノたち
トキどきナでてくれるからスキ
マエのマオウさまはキラいだった
マオウさまにはツヨいマオウさまとヨワいマオウさまと
あとツヨすぎるマオウさまがいる
ツヨいマオウさまはいつもナガイキでボクにはあんまりハナしカケてこない
ツヨすぎるマオウさまはナガイキしない
テシタもツヨいけどユウシャにコロされるから
イジワルだしボクはキラい
イマのマオウさまはヨワいマオウさま
スキだけどマエのマオウさまのハンブンくらいしかツヨくない
ヨワいマオウさまもナガイキしない
だからボクはおシロがザワザワしだしたらココでマってる
イツモとオナジだから
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私は今代の魔王として失格だったのだろう……
魔人種の王、暴虐の王と呼ばれ、十人もの勇者を返り討ちにした父は、しかし十一人目の勇者に敗れて果てた。
その血を引きながらも遠く及ばない私に、何よりも力を尊ぶ魔族が不満を抱くのは、仕方がなかったのかも知れない。
それでも母方の祖父であり、父の代の四天王の中で唯一生き残った赤竜王が後ろ盾になってくれていたから、何とかなっていた……筈だった。
先代四天王の後継達が力をつけて来ている事は知っていたし、それでも、私の乏しい力でも抑えられると思っていた。
実際、祖父が
赤竜王が敵にならなければ
床に転がり呻くのは奴等だっただろう
「……お祖父様…なぜ……」
「何故?何故かだと!?」
紛う事無き怒りと嫌悪
その激しさが全身から立ち昇り、半ば炎となって周囲を焼き始める。
水、土、風の四天王は辛そうだな
もう少し祖父が激昂すれば、脆弱な守りが破れて道連れに出来そうだ……
「その捻れた角!赤い髪!血の様な色の瞳!短い尾も貧弱な翼も!何もかもが気に入らん!!」
父譲りの角と、色彩
母譲りだが、半端で役に立たない竜の特徴
「我が最愛の娘の血を引きながら、何と惨めな!!」
……ああ、そうか
「……母上に似なかった事が許せないと」
「そうだ!その小賢しさすらアイツに似おって!」
なるほど、思い返せば祖父にはまともに撫でて貰った事も無かったな……
「貴様の様な出来損ないが、我が娘の命と引き換えに産まれた事など赦せるものか!」
……母上は氷雪竜……その類稀な美貌に火と闇の魔人である父上が魅せられ、半ば強引に娶ったのだとは聞いていた。
火の力を宿す私が産まれた事で、命を落としたのだとも。
他ならぬ父に散々殴られながら、聞かされていた事だ。
「……お祖父様も、父上と同じか……」
「なんだと!?」
少し収まっていた熱気が、じわりと上がる。
「何時までも亡くなった母上が忘れられず、ただ産まれただけの私を責める……まるで駄々っ子じゃないか」
「キサマ!!」
キレたな
「ひっ「ヤバ……「にげ」逃さんよ三バカ共
貴様らは地獄への道連れだ……
祖父には通じないが、私の蛇炎もまた祖父の熱気程度では掻き消されはせん。
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「半身残りおったか……忌々しい……」
目も見えないが、微かに聞こえる祖父の声
そして浮遊感
これはゴミ穴に投げられたな……
僅かなりとも命が消え残るとは思わなんだ。
まあ、でも時間の問題か……
ベシャリと、何か湿ったものに包まれた
これは掃除用のスライムか……
これが最期か
『……ぇ…』
まあ、この無言の働き者に食われるなら、この身も無駄にはなるまい。
心残りは小間使いや料理番達が無事かを確かめられなかった事くらいかな
まあ、いくら祖父でもあの子らにまでは手を出すまい。
『……ねえ……』
三バカが生き残っていたら危なかったが、奴等だけは祖父の炎で焼き尽くされるのを見たからな……
『キいてる?』
……声?
『マオウさまキこえてる?』
「……」
声は出ないな……
『そっか』
思考を読まれた?
『うん』
凄いな……キミはスライムか?
『そうだね』
話せたとは知らなかった
『マオウさまはボクのナカにイるからね』
なるほど、食われないと分からない訳か
『タべてホしい?』
……そうだな。無駄に死ぬよりは、食べられた方が良いだろう
『そうなの?』
死にたくない訳では無いが、即死していないだけ奇跡みたいなものだ。高望みしても……
『シにたくナいならタスけるよ?』
………は?
『チカラもあげる』
……何を言って……
『マエとマエのマエのマオウさまのチカラくらいでイい?』
父上と先々代……叡智の賢竜王の、チカラ?
『あとホしいチカラはある?』
━━━━━━━━━━━━━
優しき魔王、賢竜王の再来、炎と氷の支配者と謳われ、勇者と和解し、世界の安寧に尽力した百四代目魔王は魔法に優れた魔人種と、強大な肉体を誇る竜族の血を引いていたと言われる。
かの魔王の統治は実に五千年に及び、寿命を迎えた際には天が泣き、全ての魔族のみならず人族を含めたあらゆる種族が悼み、惜しんだという。
現在の平和を築いた事で神格化も進み、世界各地に『聖魔竜王神』を祀る祠が造られた。
その亡骸が、納められた霊廟に存在しない事が発覚したのは、亡くなってから百数十年も後の事だが、本人直筆の『この身は還すべきもの故、探すに及ばず』との遺言があり、研究者の間では様々な説が唱えられている。
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