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熊害問題について
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この所、にわかに熊害に関するニュースが多くなった。
北海道はヒグマ
本州四国にはツキノワグマが生息している。
古来より『山の神』とも称された肉食/腐肉食を行う雑食性の大型陸上生物である。
虎という大型猫科生物が居らず、競合するニホンオオカミが絶滅している現在においては、(日本で)最大の野生動物だ。
その身体ポテンシャルは非常に高く、つまり人間などものともしない。
性格は総じて臆病で慎重であり、広く緩い縄張りの中で主としてドングリや蜂の巣、木の実、魚等を捕食。稀に鹿や猪を食べるが、狩りそのものは何らかの事情で動きの鈍った、例えば年老いた個体や怪我をした個体を狩れる程度の事が多く、自然死を含む死骸を食べる腐肉食の側面を持つ。
雄は単独、雌は子持ちの場合1年半~2年程度小熊と行動を共にする。
基本的にはこんな所だろうか。
とにかく昔から神に例えられる程強い獣として知られており、時に重大な熊害を齎す存在である。
三毛別羆事件や札幌丘珠事件、福岡大学ワンダーフォーゲル部事件などが有名だ。
そんな熊だが、その生息圏は意外と都市部近郊にまで及ぶ。
なにせ、首都東京近郊でさえ生息しているのだ。
人間の生活圏が無闇に広がった結果とも言える。
なので、駆除が必要になってくる。
私は無類の動物好きであり、寧ろ嫌いな動物は人間位のもんではあるが、しかし、駆除と頭数管理は必要と考えている。
可哀想と思わない訳では無いが、同時に生存競争の理念から仕方がないと考えているし、人間が保護してあげるというのが傲慢に思えてならない。
人間に被害が出る以上、どこかで線引きしてコントロールする事は避けられないのだから。
最近、熊害が増えた原因としてよく言われるのがドングリ不足、メガソーラー、耕作放棄地である。
『杉の植林山地が増加した結果、主食のドングリが不足した』
『山奥にメガソーラーを設置する為に大規模な開発が行われ、熊の生息圏が崩壊した』
『過疎化により耕作放棄された畑や果樹園が増え、そこに鹿や猪が来る為に熊が山奥から裾野に出て来ている』
という感じの主張だ。
確かにそれも原因の一端であろう。
他にも原因はある
『駆除するハンターが高齢化して、熊を追いながらの狩猟が出来なくなっている』
『行き過ぎた鳥獣保護により鹿の頭数が増え、食害で山の食物が減ってしまう』
『人間の出す生ゴミの増加や、無責任な餌付けで人里を餌場と認識した』
『市街地での駆除の難しさ』
等も一因だろう。
家畜を襲った事で有名なOSO18は、その性質が『雑食から肉食へ偏位していた』と、最近になって解明された。
そしてこれはOSO18単体の変化ではなく、その近い血統全てに起きている傾向なのだという。
畜産が広がった結果、飼育下の牛豚を襲えば労少なくして身入りが良いと学習したという事らしい。
そして、そこから更に面倒な事になってきている。
人に対する熊害
昭和の頃は、大抵が『出会い頭の事故』だった。
福岡大学ワンダーフォーゲル部事件等の例外はあったが、あれは『自分が餌とした物に執着する』熊の習性をよく知らない青年達の行動が問題を大きくしてしまった事例であり、熊は人間を捕食しようとしていた訳では無かったとされる。興味がある方は調べてみると良い。
とにかく、熊には積極的に人間を捕食しようという意思は少なく、ばったりであった相手が大声で叫んだり、走って逃げようとするので興奮してしまったというのが大半だった。
なので、熊よけ鈴を着けたり、ポケットラジオを鳴らして『ここに人が居るよ』と認識させると効果があったという寸法だ。
現在はこれが変わりつつあり、下手をすると『餌』認定される。
前述の通り、熊の身体ポテンシャルは非常に高い。
走れば時速40キロにも到達するし、その外皮と骨は半端な口径の拳銃弾では時に弾かれてしまう程だ。
成体のヒグマとなれば爪は5~8センチにも及び、咬合力は数百キロにも及ぶ。
泳ぎも達者で、木登りもお手の物だ。
なんの武装もしていない人間とは、比べ物にならない。
一旦餌認定されれば、人間は動きが鈍く、一度の狩りでそれなりの肉を確保出来る弱い動物なのだ。
他に食べ物があれば人間を襲わないかと言えば、そうでも無い。
よく知られるのは子連れの母熊だ。
熊は子育て中には妊娠しない。
それ故に雄熊は雌が育てている子熊を殺す事が多い。
なので、母熊は子育て中には攻撃性が高くなるのである。
また、熊には餌に執着する習性がある。
これは雌雄関係がなく、自分の餌が持ち去られると何処までも追いかけるし、餌に近付くものを攻撃する。
熊は狩りをした際に、その場で全部食べずに埋めたり薮に隠したりして、数日掛けて食べる習性もあり、熊の被害者の遺体や食べ残しを回収すると『餌を取られた』と認識する傾向が強い。
前述の熊害も含め、これに起因している事件は多い。
つまり熊が食べている、或いは食べ残しがある場所に近付くだけでも危険なのだ。
先頃、イタリアかどこかの環境保護活動をしている男性が『熊に餌付けしてご満悦になっている最中に襲われて死亡した』というニュースがあった。如何せんフェイクの溢れるネット界隈での情報なので、丸っと信用は出来ないが、あり得る話ではあるだろう。
相手は野生動物である。
熊に限ったものではなく、無責任な餌付けはやってはいけない。
日本でも、とある熊擁護団体が山裾の山林(人里)にドングリを撒く行動をしているそうだが、迷惑な話だ。この団体は以前、捕獲された熊の管理を名乗り出て引き受けた挙げ句に、自治体にも告げずに勝手に放獣した前科のある団体らしいので、身勝手ここに極まれりである。
『捕獲して放獣すれば良い』
という意見も良く聞くのだが、これもなかなか難しいというのが現実。
まず、熊は基本的に慎重で学習能力が高い。
つまり、箱罠等にはそうそう掛かってくれない。
だから捕獲は難しい。
麻酔銃で撃てば良いじゃないか、と思いがちだが、こちらも色々と制約が多い。
まずは銃刀法
猟銃を所持しなくてはならないのだから当然。
次に鳥獣保護法
野生動物を狩猟する許可が要る。これも当然。
麻酔を取り扱う免許
麻酔銃は、当然ながら麻酔という薬剤を用いるのだから、これを取り扱う免許が必要。
ハンターの殆どは狩猟だけをしている訳では無く、趣味や正業が農家や林業、畜産業を営む為に獣害対策として狩猟を行っている。
その中で、この条件を満たす人物が日本全体で約14万人弱いるというハンターの内に果たして何人居るのか。
そして緊急要請に応えられる所に居てくれるのかは分からない。
全員が全員、熊を駆除する為だけに待機状態でいてくれる筈も無い。
麻酔銃の射程距離の短さも問題。
相当、熊に近付かなくてはいけない。
そして、麻酔薬の量が少なければ効かないし、多ければ死んだり、障害が残って放獣出来なくなったりもする。
当たりどころによっては刺さらないなんて事も起こり得る。
またゲームやアニメと違って、麻酔銃で撃たれたら、即その場で倒れて捕獲出来る訳じゃない。
上手く麻酔銃が命中しても、麻酔が効果を発揮するまでには時間が掛かる。
熊が興奮していない状態で10分以上~下手すると数時間。
興奮状態だと完全に眠らず、いわば酩酊に近い状態で暴れる可能性もある。
それから、麻酔銃を使用する際には事前の申請が必要で、何処そこで何を目標にして使用するのかを明確にしなくてはいけない。
さりとて、相手は野生動物である。
例えばだが
昨日、許可が出て現場に行ったが、熊が見当たらなかった。
今日、昨日の現場から500メートル先で、多分、昨日の個体が発見された
昨日の許可は役に立たない。改めて今日の分の許可を取る必要がある。
その上で
今日も現場に行ったら居なかった、ならば許可の申請やり直しだ。
そして、あれこれ色んな手を講じて、やっとこ被害なく捕獲した熊を山に返したとして
それでその熊が二度と人里に近寄らなくなるかというと、決してそうでは無い。
熊は広く緩い縄張りを持ち、餌場と餌に固執する。
要するに、人里を餌場と認識した個体は戻って来る可能性が高いのだ。
最近のデータでは、48%の熊が放獣後数年以内に戻ってきてしまった(広島)
現役のハンターが同じ個体を何回も捕獲して、とうとう殺処分せざるを得ない状態になってしまったという話もある。
放獣するにあたり、放獣先を元の生息地にすると言ってもこれまた色々問題があって不可能な場合が多い。
山の地権者が熊を戻す事に同意していなければならないし、周辺住民への周知やいざという時の避難が可能で無ければ難しい。
放獣される個体が健康であるかも条件の一つで、病気を蔓延させるキャリア状態等であるなら放獣は出来ない。
市街地に出没する個体はゴミを漁る事も多く、寄生虫等にやられている場合があり、その個体を水源などもある山に放つ事で周囲に汚染を広げる事態を防ぐ必要があるからだ。
放獣体制が整うまでは当然、人間の飼育下に置く訳だが、ここでは費用の問題が出てくる。
単に餌代だけの話では無い。
前述の健康問題に対処する(検査含む治療全般)為の費用
管理と監視に費やされる費用
運搬に掛かる(諸々の手続き込み)費用
その他の雑費に至るまで、これは自治体負担となり、要は税金という事になる。
タダでは無いのだ。
年に何頭捕獲されるか定かでも無い、しかも放獣したら早々に戻って来る可能性のある熊に対して、そこまでして放獣するべきか。
動物園やクマ園の様に高い塀で囲まれた所に入れておけば良いというものでもない。
野生のクマは群れを形成しないので、迂闊に接触させると56し合う可能性がある。
動物園やクマ園の個体は、生まれた時から一緒に育てられたものが殆どで、飼育下の状況がデフォルトになっているから成り立っているだけだ。
広いテリトリーを持つ野生の熊は、ある程度以上の広さが無い所に居るだけでストレスになり、攻撃性が強くなりやすくなる。
生物なのだ。それも宜なるかな、である。
上記の理由などから、放獣は可能なら行っても良いが、不可能な場合が多いと考える。
そしてよく言われる事に『警察や自衛隊が対処すれば良い』というのがある。
そもそも民間人である猟友会含むハンターに駆除を要請するのではなく、自治体や政府が対処するべきであるという事だ。
それが可能になれば大変結構だが、実際には(少なくとも早急な対処は)不可能と言える。
実は警察も自衛隊も害獣駆除の名目で火器を使えない。
警察官は市街地での駆除発砲に関してハンターに発砲の号令を掛ける指揮権を有するが、自ら発砲する事は基本的に出来ない。
これは現行の警察官職務執行法に基づくそうだ。
勿論、自身を含む人命保護の為の発砲は別だが、それでも急迫不正の侵害が『他人』定義なので『動物』相手の場合は抵触する恐れすらある。
自衛隊の場合はもっと根本的な理由になる。
自衛隊は『日本国を侵略する意思のある外国等戦力と戦う為に存在する』ので、野生動物相手に火器使用出来る法的根拠を持たないのだ。
黙って食われろという訳では無いが、危険な生物(熊)が出没する所に、わざわざ武器を担いていって発砲する行為は許しませんよ。
という事になっている。
加えて自衛隊の武器弾薬は徹底的に管理しなくてはならず、訓練目的で事前申請してある以上の弾薬を使用する事は難しい。
たまに警察官が職務でやむを得ず発砲するだけで大騒ぎする政治団体やらマスコミやらが居るが、そういった手合いが『戦争準備だ!軍靴の響きが聞こえる!』と発狂するのも目に見えている。
特措法等で法的な問題をクリアするのに、果たして何十年掛かるか……そもそもクリア可能なのか。
期待薄、どころの話じゃない。
法的なものをクリア出来たとして、じゃあ熊の駆除が可能か、というとこれも些か疑問である。
現役の猟友会、個人ハンターさんで熊を駆除している人達は熊を熟知し、熊の生息域をよく知っているから比較的事故が発生し難いのであって、強力な武装を持ち、普段から対人対軍隊の戦闘を訓練している自衛官であっても、野生動物への対処は勝手が違う為に危険が大きいというのは、ちょっと考えれば当たり前の事だ。
警察なり自衛隊なりに野生動物駆除のノウハウが蓄積されていない以上、何処までも民間人ハンターに頼らざるを得ないのである。
民間人ハンターなのだから、専門の業者として警備会社がサービスを展開出来るのではないか?という意見もある。
シロアリ駆除業者の熊版といった所か。
自治体と契約して、現場警察官監督の下で駆除を行うというなら或いは可能なのかも知れないが、猟友会とどこが違うのかという話になってしまうし、常に地元で活動するので無いなら危険度はどうしても高くなるので、余程上手くやれないと難しいだろうなぁと感じる。
さて
実はここまでは前フリといった所である。
昨年、北海道札幌高等裁判所において熊駆除に関係するとある裁判が行われ、ある判決が下ったのをご存じの方もいらっしゃるだろう。
現在多発している北海道熊害事案に大きく影を落としている裁判である。
2018年
北海道砂川地区において、一頭の子熊が駆除された事に端を発する。
熊の出没通報によって地元警察と自治体から要請を受けたハンターが、駆除発砲を行った。
当該ハンター(以降ハンターA)は現着し、熊を目視で確認したが子熊であった為、駆除発砲の必要性は無いと警察官及び自治体職員に意見したが、警察官と自治体職員は『地元住民の不安払拭の為に駆除発砲を依頼した』
ハンターAは同行したもう一人(以降ハンターB)とフォローしあえる位置取りをして、一発の発砲を行い駆除した。
この際、熊の背後は斜面となっており、弾丸が貫通しても背後に被害が出ないであろう事を確認しての発砲を行っている。
倒れた熊に対して、ハンターBがトドメ刺しとしてもう一発射撃を行い、警察官、自治体職員立ち会いで完全に絶命した事を確認している。
様子がおかしくなったのは、この後からだ。
駆除実行から一時間以上経ってから、ハンターBより『ハンターAの駆除発砲した弾丸が自分の銃のストック部分に当たり、銃が破損した』と言い出したのだ。
現場での確認が行われたが、銃弾が当たったという割に焦げ跡もなく、位置取り的にも跳弾が当たるとは思えない場所だった為、銃弾が当たったものでは無いと判断された。
その破損した銃でトドメ刺しの発砲を行ったというのも不自然だし、その時に言えば良いのに、どうして後から言い出すのかも疑問である。
ハンターAとハンターBは同じ地区の猟友会に所属しており、普段からあまり良い関係性でなかったという事らしく、結局、言い掛かりとして修理代請求を断っている。
その2週間後、ハンターAは地元警察に逮捕された。
ハンターBが被害届を提出したからである。
この逮捕に際しハンターAは憤慨しており、事情聴取で無実を主張している。
この件ではハンターAは不起訴処分となる。
明確な理由は提示されていないが、後になって提出された『現場で回収されたとされる銃のストックとされる木片に、弾丸が命中擦過した形跡が無い』事や『貫通した熊の細胞等が付着していない』事は確認されており、また証拠として破損した銃の提出を求められたハンターBが『既に自費で修理したとして提出を拒んだ』事などから事実無根であると判断されたのでは無いかと言われている。
ともあれ、不起訴処分で決着した筈
そう思われた事態が終わらないという、わけの分からない事態に発展していく。
ハンターAの銃砲所持許可が北海道公安委員会によって取り消されたのだ。
理由は『市街地で建造物に向けて発砲した』である。
後にこれは地元警察の一部署が公安委員会に訴え出た為と判明している。
先の事情聴取の際に『被疑者の態度が悪かった』という理由も書き添えられていたという。
また、これは事実かどうか分からないが、事情聴取を行った警察官はハンターBと親しかったという話もある。
ともあれ、訴えを出された公安委員会は事情聴取の記録や現場周辺の平面図、状況を鑑みてハンターAの銃砲所持許可を取り消した。
ハンターAは到底承服しかねるとして、北海道公安委員会を被告に処分取り消しを求めて民事訴訟を行った。
一次にあたる地方裁判所での判決はハンターA勝訴。
この裁判において、担当判事は異例とも言える現場視察を行い、立体的地形を直に確認して『背後の土手斜面が弾丸ストップとして適合している』事を確認している。
駆除発砲に関しても、ハンターAは不必要であると主張していたが、警察官と自治体職員の強い意向で行ったと認定している。
現場警察官も駆除発砲に問題は無かったと証言しており、これで丸く収まると思われていた。
しかし、北海道公安委員会はこれを不服としたのだ。
舞台は札幌高等裁判所に移る。
事のあらましと地裁での判決を知る人の多くは、ハンターAの勝訴を疑わなかったが、下った判決は公安委員会の全面勝訴である。
理由は
『発砲時に現場警察官は周辺の被害抑制(避難誘導等)にあたっており、発砲の瞬間を目視していない』
『現場後方には直線上に家屋が存在しており、弾丸が到達する可能性があった』
『背後の土手には石などが多く存在しており、跳弾が発生した』
『その状況で発砲を行ったハンターAは不要な発砲を好む性癖があると、事情聴取した警察官の所見がある』
『ハンターBの銃を破損せしめている事が跳弾が発生した証左』
どうだろうか
この判決が公正で問題無いという人も居るが、私はその様に思えない。
かろうじて納得しうるのは『警察官が発砲の瞬間を目視していない』という所と、『背後斜面に石や木の枝等が多く存在している』という事だけである。
それとて、常に動いている熊を撃つタイミングはハンター自身に任せるしか無い。
素人である警察官が側で見続ける事も急迫不正の事態を招きかねず、邪魔になるよりは、周辺住民や通りすがりの通行車両等を制する任務に注力していて何が問題なのか。
土手に関しては熊を見上げる形で発砲しており、貫通した銃弾が空中でカクンと曲がりでもしない限り住宅に当たる可能性は無い。この事は地裁の裁判官が実地で確かめた事だ。
銃弾の最大到達距離と有効射程距離の差も考慮されていない。
元より市街地での駆除発砲要請なのだから、銃弾の最大到達距離内に建造物があるのは当然であり、これを違法にされてはそもそも駆除発砲そのものが出来ない。
弾丸が石等に当たる可能性は否定出来ないが、それと同等程度に当たらないという可能性がある。なにより、貫通した銃弾が絶対に跳弾しない状況というのは、背後が海などでも無い限りあり得ない状況であり、考慮するに値しないし、まして跳弾が発生したと断じられる証拠は何もない。
不要な発砲を好むというのは、事情聴取した担当者の無責任で勝手な印象であり、事実最初に発砲不要を具申しているのはハンターAの方である。
そして極めつけにおかしいのは『不起訴処分』となったハンターBの主張が『何の関係もないのに判決理由として事実認定された』点にある。
判決支持者の中には『不起訴処分』ではなく『処分保留』だったと騒いだ人も居たが、この件は不起訴処分であり、かつ、この民事訴訟内容とは別の事案である。
この民事訴訟はあくまでも『市街地で建造物に向かって発砲したとして、銃砲所持許可が取り消された事に対する取り消し』訴訟であって、ハンターBによる跳弾で銃が破損したという訴えに対する裁判では無い。
にも関わらず、これを判決理由に上げるのは筋違い以外のなにものでも無いと考える。
そして、この判決の影響はハンターA個人に留まらない。
この判決が確定した場合、猟友会/個人ハンターを含む全ての民間のハンター全員に『自治体(警察)からの要請で駆除したら逮捕され、前科を付けられ、銃砲所持許可を取り消される可能性が出てくる』という所にある。
前述の通り、害獣駆除は現在民間ハンター頼りにならざるを得ないのに、である。
一部で駆除依頼の金額が低いから、上げれば問題無いという能天気な意見もあるが、一頭当たりの金額が上がっても『逮捕されて銃砲所持許可取り消しにされる』リスクを無視出来る人は少ないだろう。
害獣の駆除は、熊だけじゃない。
鹿や猪は全国に居る。熊が居ない九州でも猪は居るのだ。
その駆除に際してもこの判決が『前例』として適用される可能性はあってはならない。
必ず逮捕されたりする訳では無いと言う人も居るのだが、逮捕される可能性があるというだけで問題なのだ。
熊が可哀想
それはそうだ。
全ては人間主体である。
被害は人獣双方で少ない方が良いに決まっている。だが、これは人と獣の生存競争でもある。
負ける訳にはいかない戦いなのだ。
皆様は如何お考えだろうか。
北海道はヒグマ
本州四国にはツキノワグマが生息している。
古来より『山の神』とも称された肉食/腐肉食を行う雑食性の大型陸上生物である。
虎という大型猫科生物が居らず、競合するニホンオオカミが絶滅している現在においては、(日本で)最大の野生動物だ。
その身体ポテンシャルは非常に高く、つまり人間などものともしない。
性格は総じて臆病で慎重であり、広く緩い縄張りの中で主としてドングリや蜂の巣、木の実、魚等を捕食。稀に鹿や猪を食べるが、狩りそのものは何らかの事情で動きの鈍った、例えば年老いた個体や怪我をした個体を狩れる程度の事が多く、自然死を含む死骸を食べる腐肉食の側面を持つ。
雄は単独、雌は子持ちの場合1年半~2年程度小熊と行動を共にする。
基本的にはこんな所だろうか。
とにかく昔から神に例えられる程強い獣として知られており、時に重大な熊害を齎す存在である。
三毛別羆事件や札幌丘珠事件、福岡大学ワンダーフォーゲル部事件などが有名だ。
そんな熊だが、その生息圏は意外と都市部近郊にまで及ぶ。
なにせ、首都東京近郊でさえ生息しているのだ。
人間の生活圏が無闇に広がった結果とも言える。
なので、駆除が必要になってくる。
私は無類の動物好きであり、寧ろ嫌いな動物は人間位のもんではあるが、しかし、駆除と頭数管理は必要と考えている。
可哀想と思わない訳では無いが、同時に生存競争の理念から仕方がないと考えているし、人間が保護してあげるというのが傲慢に思えてならない。
人間に被害が出る以上、どこかで線引きしてコントロールする事は避けられないのだから。
最近、熊害が増えた原因としてよく言われるのがドングリ不足、メガソーラー、耕作放棄地である。
『杉の植林山地が増加した結果、主食のドングリが不足した』
『山奥にメガソーラーを設置する為に大規模な開発が行われ、熊の生息圏が崩壊した』
『過疎化により耕作放棄された畑や果樹園が増え、そこに鹿や猪が来る為に熊が山奥から裾野に出て来ている』
という感じの主張だ。
確かにそれも原因の一端であろう。
他にも原因はある
『駆除するハンターが高齢化して、熊を追いながらの狩猟が出来なくなっている』
『行き過ぎた鳥獣保護により鹿の頭数が増え、食害で山の食物が減ってしまう』
『人間の出す生ゴミの増加や、無責任な餌付けで人里を餌場と認識した』
『市街地での駆除の難しさ』
等も一因だろう。
家畜を襲った事で有名なOSO18は、その性質が『雑食から肉食へ偏位していた』と、最近になって解明された。
そしてこれはOSO18単体の変化ではなく、その近い血統全てに起きている傾向なのだという。
畜産が広がった結果、飼育下の牛豚を襲えば労少なくして身入りが良いと学習したという事らしい。
そして、そこから更に面倒な事になってきている。
人に対する熊害
昭和の頃は、大抵が『出会い頭の事故』だった。
福岡大学ワンダーフォーゲル部事件等の例外はあったが、あれは『自分が餌とした物に執着する』熊の習性をよく知らない青年達の行動が問題を大きくしてしまった事例であり、熊は人間を捕食しようとしていた訳では無かったとされる。興味がある方は調べてみると良い。
とにかく、熊には積極的に人間を捕食しようという意思は少なく、ばったりであった相手が大声で叫んだり、走って逃げようとするので興奮してしまったというのが大半だった。
なので、熊よけ鈴を着けたり、ポケットラジオを鳴らして『ここに人が居るよ』と認識させると効果があったという寸法だ。
現在はこれが変わりつつあり、下手をすると『餌』認定される。
前述の通り、熊の身体ポテンシャルは非常に高い。
走れば時速40キロにも到達するし、その外皮と骨は半端な口径の拳銃弾では時に弾かれてしまう程だ。
成体のヒグマとなれば爪は5~8センチにも及び、咬合力は数百キロにも及ぶ。
泳ぎも達者で、木登りもお手の物だ。
なんの武装もしていない人間とは、比べ物にならない。
一旦餌認定されれば、人間は動きが鈍く、一度の狩りでそれなりの肉を確保出来る弱い動物なのだ。
他に食べ物があれば人間を襲わないかと言えば、そうでも無い。
よく知られるのは子連れの母熊だ。
熊は子育て中には妊娠しない。
それ故に雄熊は雌が育てている子熊を殺す事が多い。
なので、母熊は子育て中には攻撃性が高くなるのである。
また、熊には餌に執着する習性がある。
これは雌雄関係がなく、自分の餌が持ち去られると何処までも追いかけるし、餌に近付くものを攻撃する。
熊は狩りをした際に、その場で全部食べずに埋めたり薮に隠したりして、数日掛けて食べる習性もあり、熊の被害者の遺体や食べ残しを回収すると『餌を取られた』と認識する傾向が強い。
前述の熊害も含め、これに起因している事件は多い。
つまり熊が食べている、或いは食べ残しがある場所に近付くだけでも危険なのだ。
先頃、イタリアかどこかの環境保護活動をしている男性が『熊に餌付けしてご満悦になっている最中に襲われて死亡した』というニュースがあった。如何せんフェイクの溢れるネット界隈での情報なので、丸っと信用は出来ないが、あり得る話ではあるだろう。
相手は野生動物である。
熊に限ったものではなく、無責任な餌付けはやってはいけない。
日本でも、とある熊擁護団体が山裾の山林(人里)にドングリを撒く行動をしているそうだが、迷惑な話だ。この団体は以前、捕獲された熊の管理を名乗り出て引き受けた挙げ句に、自治体にも告げずに勝手に放獣した前科のある団体らしいので、身勝手ここに極まれりである。
『捕獲して放獣すれば良い』
という意見も良く聞くのだが、これもなかなか難しいというのが現実。
まず、熊は基本的に慎重で学習能力が高い。
つまり、箱罠等にはそうそう掛かってくれない。
だから捕獲は難しい。
麻酔銃で撃てば良いじゃないか、と思いがちだが、こちらも色々と制約が多い。
まずは銃刀法
猟銃を所持しなくてはならないのだから当然。
次に鳥獣保護法
野生動物を狩猟する許可が要る。これも当然。
麻酔を取り扱う免許
麻酔銃は、当然ながら麻酔という薬剤を用いるのだから、これを取り扱う免許が必要。
ハンターの殆どは狩猟だけをしている訳では無く、趣味や正業が農家や林業、畜産業を営む為に獣害対策として狩猟を行っている。
その中で、この条件を満たす人物が日本全体で約14万人弱いるというハンターの内に果たして何人居るのか。
そして緊急要請に応えられる所に居てくれるのかは分からない。
全員が全員、熊を駆除する為だけに待機状態でいてくれる筈も無い。
麻酔銃の射程距離の短さも問題。
相当、熊に近付かなくてはいけない。
そして、麻酔薬の量が少なければ効かないし、多ければ死んだり、障害が残って放獣出来なくなったりもする。
当たりどころによっては刺さらないなんて事も起こり得る。
またゲームやアニメと違って、麻酔銃で撃たれたら、即その場で倒れて捕獲出来る訳じゃない。
上手く麻酔銃が命中しても、麻酔が効果を発揮するまでには時間が掛かる。
熊が興奮していない状態で10分以上~下手すると数時間。
興奮状態だと完全に眠らず、いわば酩酊に近い状態で暴れる可能性もある。
それから、麻酔銃を使用する際には事前の申請が必要で、何処そこで何を目標にして使用するのかを明確にしなくてはいけない。
さりとて、相手は野生動物である。
例えばだが
昨日、許可が出て現場に行ったが、熊が見当たらなかった。
今日、昨日の現場から500メートル先で、多分、昨日の個体が発見された
昨日の許可は役に立たない。改めて今日の分の許可を取る必要がある。
その上で
今日も現場に行ったら居なかった、ならば許可の申請やり直しだ。
そして、あれこれ色んな手を講じて、やっとこ被害なく捕獲した熊を山に返したとして
それでその熊が二度と人里に近寄らなくなるかというと、決してそうでは無い。
熊は広く緩い縄張りを持ち、餌場と餌に固執する。
要するに、人里を餌場と認識した個体は戻って来る可能性が高いのだ。
最近のデータでは、48%の熊が放獣後数年以内に戻ってきてしまった(広島)
現役のハンターが同じ個体を何回も捕獲して、とうとう殺処分せざるを得ない状態になってしまったという話もある。
放獣するにあたり、放獣先を元の生息地にすると言ってもこれまた色々問題があって不可能な場合が多い。
山の地権者が熊を戻す事に同意していなければならないし、周辺住民への周知やいざという時の避難が可能で無ければ難しい。
放獣される個体が健康であるかも条件の一つで、病気を蔓延させるキャリア状態等であるなら放獣は出来ない。
市街地に出没する個体はゴミを漁る事も多く、寄生虫等にやられている場合があり、その個体を水源などもある山に放つ事で周囲に汚染を広げる事態を防ぐ必要があるからだ。
放獣体制が整うまでは当然、人間の飼育下に置く訳だが、ここでは費用の問題が出てくる。
単に餌代だけの話では無い。
前述の健康問題に対処する(検査含む治療全般)為の費用
管理と監視に費やされる費用
運搬に掛かる(諸々の手続き込み)費用
その他の雑費に至るまで、これは自治体負担となり、要は税金という事になる。
タダでは無いのだ。
年に何頭捕獲されるか定かでも無い、しかも放獣したら早々に戻って来る可能性のある熊に対して、そこまでして放獣するべきか。
動物園やクマ園の様に高い塀で囲まれた所に入れておけば良いというものでもない。
野生のクマは群れを形成しないので、迂闊に接触させると56し合う可能性がある。
動物園やクマ園の個体は、生まれた時から一緒に育てられたものが殆どで、飼育下の状況がデフォルトになっているから成り立っているだけだ。
広いテリトリーを持つ野生の熊は、ある程度以上の広さが無い所に居るだけでストレスになり、攻撃性が強くなりやすくなる。
生物なのだ。それも宜なるかな、である。
上記の理由などから、放獣は可能なら行っても良いが、不可能な場合が多いと考える。
そしてよく言われる事に『警察や自衛隊が対処すれば良い』というのがある。
そもそも民間人である猟友会含むハンターに駆除を要請するのではなく、自治体や政府が対処するべきであるという事だ。
それが可能になれば大変結構だが、実際には(少なくとも早急な対処は)不可能と言える。
実は警察も自衛隊も害獣駆除の名目で火器を使えない。
警察官は市街地での駆除発砲に関してハンターに発砲の号令を掛ける指揮権を有するが、自ら発砲する事は基本的に出来ない。
これは現行の警察官職務執行法に基づくそうだ。
勿論、自身を含む人命保護の為の発砲は別だが、それでも急迫不正の侵害が『他人』定義なので『動物』相手の場合は抵触する恐れすらある。
自衛隊の場合はもっと根本的な理由になる。
自衛隊は『日本国を侵略する意思のある外国等戦力と戦う為に存在する』ので、野生動物相手に火器使用出来る法的根拠を持たないのだ。
黙って食われろという訳では無いが、危険な生物(熊)が出没する所に、わざわざ武器を担いていって発砲する行為は許しませんよ。
という事になっている。
加えて自衛隊の武器弾薬は徹底的に管理しなくてはならず、訓練目的で事前申請してある以上の弾薬を使用する事は難しい。
たまに警察官が職務でやむを得ず発砲するだけで大騒ぎする政治団体やらマスコミやらが居るが、そういった手合いが『戦争準備だ!軍靴の響きが聞こえる!』と発狂するのも目に見えている。
特措法等で法的な問題をクリアするのに、果たして何十年掛かるか……そもそもクリア可能なのか。
期待薄、どころの話じゃない。
法的なものをクリア出来たとして、じゃあ熊の駆除が可能か、というとこれも些か疑問である。
現役の猟友会、個人ハンターさんで熊を駆除している人達は熊を熟知し、熊の生息域をよく知っているから比較的事故が発生し難いのであって、強力な武装を持ち、普段から対人対軍隊の戦闘を訓練している自衛官であっても、野生動物への対処は勝手が違う為に危険が大きいというのは、ちょっと考えれば当たり前の事だ。
警察なり自衛隊なりに野生動物駆除のノウハウが蓄積されていない以上、何処までも民間人ハンターに頼らざるを得ないのである。
民間人ハンターなのだから、専門の業者として警備会社がサービスを展開出来るのではないか?という意見もある。
シロアリ駆除業者の熊版といった所か。
自治体と契約して、現場警察官監督の下で駆除を行うというなら或いは可能なのかも知れないが、猟友会とどこが違うのかという話になってしまうし、常に地元で活動するので無いなら危険度はどうしても高くなるので、余程上手くやれないと難しいだろうなぁと感じる。
さて
実はここまでは前フリといった所である。
昨年、北海道札幌高等裁判所において熊駆除に関係するとある裁判が行われ、ある判決が下ったのをご存じの方もいらっしゃるだろう。
現在多発している北海道熊害事案に大きく影を落としている裁判である。
2018年
北海道砂川地区において、一頭の子熊が駆除された事に端を発する。
熊の出没通報によって地元警察と自治体から要請を受けたハンターが、駆除発砲を行った。
当該ハンター(以降ハンターA)は現着し、熊を目視で確認したが子熊であった為、駆除発砲の必要性は無いと警察官及び自治体職員に意見したが、警察官と自治体職員は『地元住民の不安払拭の為に駆除発砲を依頼した』
ハンターAは同行したもう一人(以降ハンターB)とフォローしあえる位置取りをして、一発の発砲を行い駆除した。
この際、熊の背後は斜面となっており、弾丸が貫通しても背後に被害が出ないであろう事を確認しての発砲を行っている。
倒れた熊に対して、ハンターBがトドメ刺しとしてもう一発射撃を行い、警察官、自治体職員立ち会いで完全に絶命した事を確認している。
様子がおかしくなったのは、この後からだ。
駆除実行から一時間以上経ってから、ハンターBより『ハンターAの駆除発砲した弾丸が自分の銃のストック部分に当たり、銃が破損した』と言い出したのだ。
現場での確認が行われたが、銃弾が当たったという割に焦げ跡もなく、位置取り的にも跳弾が当たるとは思えない場所だった為、銃弾が当たったものでは無いと判断された。
その破損した銃でトドメ刺しの発砲を行ったというのも不自然だし、その時に言えば良いのに、どうして後から言い出すのかも疑問である。
ハンターAとハンターBは同じ地区の猟友会に所属しており、普段からあまり良い関係性でなかったという事らしく、結局、言い掛かりとして修理代請求を断っている。
その2週間後、ハンターAは地元警察に逮捕された。
ハンターBが被害届を提出したからである。
この逮捕に際しハンターAは憤慨しており、事情聴取で無実を主張している。
この件ではハンターAは不起訴処分となる。
明確な理由は提示されていないが、後になって提出された『現場で回収されたとされる銃のストックとされる木片に、弾丸が命中擦過した形跡が無い』事や『貫通した熊の細胞等が付着していない』事は確認されており、また証拠として破損した銃の提出を求められたハンターBが『既に自費で修理したとして提出を拒んだ』事などから事実無根であると判断されたのでは無いかと言われている。
ともあれ、不起訴処分で決着した筈
そう思われた事態が終わらないという、わけの分からない事態に発展していく。
ハンターAの銃砲所持許可が北海道公安委員会によって取り消されたのだ。
理由は『市街地で建造物に向けて発砲した』である。
後にこれは地元警察の一部署が公安委員会に訴え出た為と判明している。
先の事情聴取の際に『被疑者の態度が悪かった』という理由も書き添えられていたという。
また、これは事実かどうか分からないが、事情聴取を行った警察官はハンターBと親しかったという話もある。
ともあれ、訴えを出された公安委員会は事情聴取の記録や現場周辺の平面図、状況を鑑みてハンターAの銃砲所持許可を取り消した。
ハンターAは到底承服しかねるとして、北海道公安委員会を被告に処分取り消しを求めて民事訴訟を行った。
一次にあたる地方裁判所での判決はハンターA勝訴。
この裁判において、担当判事は異例とも言える現場視察を行い、立体的地形を直に確認して『背後の土手斜面が弾丸ストップとして適合している』事を確認している。
駆除発砲に関しても、ハンターAは不必要であると主張していたが、警察官と自治体職員の強い意向で行ったと認定している。
現場警察官も駆除発砲に問題は無かったと証言しており、これで丸く収まると思われていた。
しかし、北海道公安委員会はこれを不服としたのだ。
舞台は札幌高等裁判所に移る。
事のあらましと地裁での判決を知る人の多くは、ハンターAの勝訴を疑わなかったが、下った判決は公安委員会の全面勝訴である。
理由は
『発砲時に現場警察官は周辺の被害抑制(避難誘導等)にあたっており、発砲の瞬間を目視していない』
『現場後方には直線上に家屋が存在しており、弾丸が到達する可能性があった』
『背後の土手には石などが多く存在しており、跳弾が発生した』
『その状況で発砲を行ったハンターAは不要な発砲を好む性癖があると、事情聴取した警察官の所見がある』
『ハンターBの銃を破損せしめている事が跳弾が発生した証左』
どうだろうか
この判決が公正で問題無いという人も居るが、私はその様に思えない。
かろうじて納得しうるのは『警察官が発砲の瞬間を目視していない』という所と、『背後斜面に石や木の枝等が多く存在している』という事だけである。
それとて、常に動いている熊を撃つタイミングはハンター自身に任せるしか無い。
素人である警察官が側で見続ける事も急迫不正の事態を招きかねず、邪魔になるよりは、周辺住民や通りすがりの通行車両等を制する任務に注力していて何が問題なのか。
土手に関しては熊を見上げる形で発砲しており、貫通した銃弾が空中でカクンと曲がりでもしない限り住宅に当たる可能性は無い。この事は地裁の裁判官が実地で確かめた事だ。
銃弾の最大到達距離と有効射程距離の差も考慮されていない。
元より市街地での駆除発砲要請なのだから、銃弾の最大到達距離内に建造物があるのは当然であり、これを違法にされてはそもそも駆除発砲そのものが出来ない。
弾丸が石等に当たる可能性は否定出来ないが、それと同等程度に当たらないという可能性がある。なにより、貫通した銃弾が絶対に跳弾しない状況というのは、背後が海などでも無い限りあり得ない状況であり、考慮するに値しないし、まして跳弾が発生したと断じられる証拠は何もない。
不要な発砲を好むというのは、事情聴取した担当者の無責任で勝手な印象であり、事実最初に発砲不要を具申しているのはハンターAの方である。
そして極めつけにおかしいのは『不起訴処分』となったハンターBの主張が『何の関係もないのに判決理由として事実認定された』点にある。
判決支持者の中には『不起訴処分』ではなく『処分保留』だったと騒いだ人も居たが、この件は不起訴処分であり、かつ、この民事訴訟内容とは別の事案である。
この民事訴訟はあくまでも『市街地で建造物に向かって発砲したとして、銃砲所持許可が取り消された事に対する取り消し』訴訟であって、ハンターBによる跳弾で銃が破損したという訴えに対する裁判では無い。
にも関わらず、これを判決理由に上げるのは筋違い以外のなにものでも無いと考える。
そして、この判決の影響はハンターA個人に留まらない。
この判決が確定した場合、猟友会/個人ハンターを含む全ての民間のハンター全員に『自治体(警察)からの要請で駆除したら逮捕され、前科を付けられ、銃砲所持許可を取り消される可能性が出てくる』という所にある。
前述の通り、害獣駆除は現在民間ハンター頼りにならざるを得ないのに、である。
一部で駆除依頼の金額が低いから、上げれば問題無いという能天気な意見もあるが、一頭当たりの金額が上がっても『逮捕されて銃砲所持許可取り消しにされる』リスクを無視出来る人は少ないだろう。
害獣の駆除は、熊だけじゃない。
鹿や猪は全国に居る。熊が居ない九州でも猪は居るのだ。
その駆除に際してもこの判決が『前例』として適用される可能性はあってはならない。
必ず逮捕されたりする訳では無いと言う人も居るのだが、逮捕される可能性があるというだけで問題なのだ。
熊が可哀想
それはそうだ。
全ては人間主体である。
被害は人獣双方で少ない方が良いに決まっている。だが、これは人と獣の生存競争でもある。
負ける訳にはいかない戦いなのだ。
皆様は如何お考えだろうか。
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