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16と17。
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「初めまして、ヤノシマから引っ越してきました。浜辺海都です。東京は初めてきたので分からないことだらけですが、よろしくお願いします。」
ヤノシマという遠い島国から東京に越して来た海都は、なまりを交えながら挨拶をした入学式。
シマとは違う人の多さに海都は内心驚きながら挨拶をした。
「えーヤノシマってどこにあるの?!初めて聞いたんだけど!!訛りもあるんだー!俺訛り初めて聞いたわ」
隣の席の男の子が声をかけてきてくれた。
「あ、ヤノシマは四国の下の方にある小さな島国で、島には100人くらいしか住んでないんだ」
「100人!?ここの学年の人数より少ないじゃん!!」
皆んなから驚きの声をあげられる。
「なんで学校ここに来たの?!」
皆んな興味津々のようで自分の席の周りに気付けばたくさんの人がいた。
こんなに人に囲まれたことがない海都は照れたように、髪をくしゃりとする。
耳がかすかに赤くなっていた。
「...ここには、いとこがおって、そいでここを選んだとよ」
一つ上の学年に海都のいとこが通っていた。
だからこの高校を選んだ。
何故なら、
「あ、いたー」
廊下からキャーキャー声がする。
そして、とん。と自分の机の上に手が置かれ、そちらに視線を向けると先程言ったいとこの芹だった。
「ごめーん。ちょっと海都借りんね」
そう海都が話していた男の子達に言うと、海都の腕を引っ張る。
「...まじかー!いとこってモデルのセリかよ!!」
喋っていた男の子達も驚き騒ぐ。
そのまま腕を引かれ教室を出た。
「どした?」
人が少なくなったところで芹は手を離したので、何用だったのか問う。
「....いや、大丈夫かなって」
「うん。大丈夫とよ。...シマと違って人の多さには驚いたけんどね」
「...なんか海都がこっちに来てくれて嬉しいけど、あのままあのシマにいて欲しかったような気もするから複雑だな」
そういって海都の手に少し触れ握る。
それに海都も手のひらに力を入れ握り返す。
「いっぱい芹と一緒におられるようになって、俺は嬉しい」
そう言うと芹は「俺も」と言った。
元々芹と海都は従兄弟同士で年に一回お盆に親戚の集まりで芹がシマに来ていた。
だから小さい頃はよく遊んだ。
そして、いつからだろうか。
海都と芹はお互いを意識した。
海都がいるシマは子供は片手ほどしかいない。
そして小さい頃芹が帰省するたびに話してくれる東京の話は海都にとっては別の世界の物語のようで面白かった。
自然と海都は芹がいる夏を心待ちにしていた。
それはいつからか形を変えて、2人の関係が変わった。
「今日父さんが海都の好物の夕飯だから楽しみにしててだって」
俺はこの高校に上がると同時に東京に上京し、芹の家でお世話になっている。
「わ、それは楽しみだね」
「どこが」
芹の父、相馬さんは栄養士でご飯はとても凝っている。
だから海都にとって嬉しいご飯。
けれど芹にとっては味のしないご飯らしい。
「相馬さんのご飯美味しいのに」
「じゃあ帰りも迎えにくるから教室で待ってて」
そう言って芹は自分の教室に戻って行った。
それから教室に戻ると芹の話でもちきりだった。
海都はシマ育ちで有名人に疎く、芹がモデルをやってると自身が写ってる雑誌をたくさん見せてくれていたが初めて芹の人気を知り、そんな人が自分のパートナーであることに海都は今更ながら驚いた。
そして放課後になり、芹が教室に迎えにきてくれて、芹の隣を歩くととても視線を感じた。それは学校内では勿論、校外に出てもその視線はなくならなかった。
「芹ってすごく有名人なんだね」
「あぁ、ごめんね視線」
芹はその視線に慣れているのか申し訳なさそうに海都を見た。
「全然。芹ってかっこいいと思ってたけど、やっぱり思うことは皆んな同じなんだなって思っただけだよ」
「はは、ありがと」
芹の横顔を見る。
綺麗な鼻筋、大きくぱっちりとした目、小さな顔。
女の子にモテモテだろうにどうして僕なのだろうと海都はふと思う。
「芹」
不安になり芹を呼び袖を掴む。
「ごめん、歩くの早かった?」
芹は振り向き申し訳なさそうに首を傾げた。
「ちがう、なんかシマの時はなんも思わなかったけどなんか今もやもやして」
初めての気持ちに戸惑って、咄嗟に名前を呼んでしまっただけだった。
シマでは2人の世界といっても過言ではないくらい人がいなかったため、初めて芹が他の人に見られていることを知った海都は無意識に嫉妬をした。
それに芹は気づいた。
にやけそうになる口を手で隠し、袖を握られていた手を取り、海都と手を繋いで歩く。
「俺、もうすぐモデルやめるんだ」
そう一言芹は海都に言った。
「え、どうして?」
「だってもう海都がこっちにいるから、続ける意味も無くなった」
海都は芹がモデルを始めた理由を聞いたことはなかった。
だから初めて、芹がモデルを始めたのは自分に会いに来るための交通費だったことを知った。
「え、俺に会うためだったの?」
驚いて芹を見ると芹は照れくさそうに言った。
「昔、ガキの時、自分で稼げないと海都に会いにいけないって知った時、お盆だけに会うのが物足りなくて、もっと会いたくて、ガキの俺でも稼ぐには芸能界しかないってなって、モデルを始めた」
だからもういいんだ。
そう言った芹の横顔を海都は何も言わずに見つめた。
ヤノシマという遠い島国から東京に越して来た海都は、なまりを交えながら挨拶をした入学式。
シマとは違う人の多さに海都は内心驚きながら挨拶をした。
「えーヤノシマってどこにあるの?!初めて聞いたんだけど!!訛りもあるんだー!俺訛り初めて聞いたわ」
隣の席の男の子が声をかけてきてくれた。
「あ、ヤノシマは四国の下の方にある小さな島国で、島には100人くらいしか住んでないんだ」
「100人!?ここの学年の人数より少ないじゃん!!」
皆んなから驚きの声をあげられる。
「なんで学校ここに来たの?!」
皆んな興味津々のようで自分の席の周りに気付けばたくさんの人がいた。
こんなに人に囲まれたことがない海都は照れたように、髪をくしゃりとする。
耳がかすかに赤くなっていた。
「...ここには、いとこがおって、そいでここを選んだとよ」
一つ上の学年に海都のいとこが通っていた。
だからこの高校を選んだ。
何故なら、
「あ、いたー」
廊下からキャーキャー声がする。
そして、とん。と自分の机の上に手が置かれ、そちらに視線を向けると先程言ったいとこの芹だった。
「ごめーん。ちょっと海都借りんね」
そう海都が話していた男の子達に言うと、海都の腕を引っ張る。
「...まじかー!いとこってモデルのセリかよ!!」
喋っていた男の子達も驚き騒ぐ。
そのまま腕を引かれ教室を出た。
「どした?」
人が少なくなったところで芹は手を離したので、何用だったのか問う。
「....いや、大丈夫かなって」
「うん。大丈夫とよ。...シマと違って人の多さには驚いたけんどね」
「...なんか海都がこっちに来てくれて嬉しいけど、あのままあのシマにいて欲しかったような気もするから複雑だな」
そういって海都の手に少し触れ握る。
それに海都も手のひらに力を入れ握り返す。
「いっぱい芹と一緒におられるようになって、俺は嬉しい」
そう言うと芹は「俺も」と言った。
元々芹と海都は従兄弟同士で年に一回お盆に親戚の集まりで芹がシマに来ていた。
だから小さい頃はよく遊んだ。
そして、いつからだろうか。
海都と芹はお互いを意識した。
海都がいるシマは子供は片手ほどしかいない。
そして小さい頃芹が帰省するたびに話してくれる東京の話は海都にとっては別の世界の物語のようで面白かった。
自然と海都は芹がいる夏を心待ちにしていた。
それはいつからか形を変えて、2人の関係が変わった。
「今日父さんが海都の好物の夕飯だから楽しみにしててだって」
俺はこの高校に上がると同時に東京に上京し、芹の家でお世話になっている。
「わ、それは楽しみだね」
「どこが」
芹の父、相馬さんは栄養士でご飯はとても凝っている。
だから海都にとって嬉しいご飯。
けれど芹にとっては味のしないご飯らしい。
「相馬さんのご飯美味しいのに」
「じゃあ帰りも迎えにくるから教室で待ってて」
そう言って芹は自分の教室に戻って行った。
それから教室に戻ると芹の話でもちきりだった。
海都はシマ育ちで有名人に疎く、芹がモデルをやってると自身が写ってる雑誌をたくさん見せてくれていたが初めて芹の人気を知り、そんな人が自分のパートナーであることに海都は今更ながら驚いた。
そして放課後になり、芹が教室に迎えにきてくれて、芹の隣を歩くととても視線を感じた。それは学校内では勿論、校外に出てもその視線はなくならなかった。
「芹ってすごく有名人なんだね」
「あぁ、ごめんね視線」
芹はその視線に慣れているのか申し訳なさそうに海都を見た。
「全然。芹ってかっこいいと思ってたけど、やっぱり思うことは皆んな同じなんだなって思っただけだよ」
「はは、ありがと」
芹の横顔を見る。
綺麗な鼻筋、大きくぱっちりとした目、小さな顔。
女の子にモテモテだろうにどうして僕なのだろうと海都はふと思う。
「芹」
不安になり芹を呼び袖を掴む。
「ごめん、歩くの早かった?」
芹は振り向き申し訳なさそうに首を傾げた。
「ちがう、なんかシマの時はなんも思わなかったけどなんか今もやもやして」
初めての気持ちに戸惑って、咄嗟に名前を呼んでしまっただけだった。
シマでは2人の世界といっても過言ではないくらい人がいなかったため、初めて芹が他の人に見られていることを知った海都は無意識に嫉妬をした。
それに芹は気づいた。
にやけそうになる口を手で隠し、袖を握られていた手を取り、海都と手を繋いで歩く。
「俺、もうすぐモデルやめるんだ」
そう一言芹は海都に言った。
「え、どうして?」
「だってもう海都がこっちにいるから、続ける意味も無くなった」
海都は芹がモデルを始めた理由を聞いたことはなかった。
だから初めて、芹がモデルを始めたのは自分に会いに来るための交通費だったことを知った。
「え、俺に会うためだったの?」
驚いて芹を見ると芹は照れくさそうに言った。
「昔、ガキの時、自分で稼げないと海都に会いにいけないって知った時、お盆だけに会うのが物足りなくて、もっと会いたくて、ガキの俺でも稼ぐには芸能界しかないってなって、モデルを始めた」
だからもういいんだ。
そう言った芹の横顔を海都は何も言わずに見つめた。
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