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天使と悪魔3
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僕がフリーになると元カノは、ターゲットを深夜じゃない時間帯に変えて、頻繁に電話を掛けてくる。
しかも毎度毎度の事だけど……
もっと単刀直入に話そうよ!
てゆうか先に結末から話そうよ?
前置きがあまりにも長すぎて……
「ってワケなの、ウケるでしょ~」
え、どこがオチだった!?
真剣に聞いてたのに、長すぎて内容がつかめない。
かと思えば、何か応えを返さなきゃと思った矢先。
「あっ、ウケるといえばさぁっ!
今日職場でねぇっ?」
もう次の話に変わってる。
「ちっちゃい子が迷子になったみたいで、泣きそうな顔でキョロキョロしてたからさあっ。
心配でレジしながらチラチラ見てたんだけど。
そしたらさぁ!目の前のお客さんが、
"こいつ挙動不審じゃね?ちょーウケる"
って酷くなぁい!?」
それは酷い!
てゆうか、かなり許せないんだけど!
なにそいつ、と意見を述べようとしたとこで。
「そりゃあさっ?そのお客さんにとっては、よそ見しないで早くレジしろよって感じなんだろーけどさぁ。
でも手はちゃんとテキパキ動かしてたしっ!
ねっ、こーゆう時って知らんぷりしてレジに集中するのが正解なのっ?」
そんな事ないよ!
とは思いつつも、どうなんだろう?
でも人間は機械じゃないし、目を離した隙にその子が店外にでも出ちゃったら……
「まっ、正解なんてないよね~?
私は私らしく行くしかないかっ!
てか蓮斗さっきから聞いてるっ!?」
「聞いてるよ!
むしろ、すっごく真剣に聞いてるんですけどっ」
「だったらなんで無反応なワケぇ?」
「キミの会話テンポについて行けなくて、返事が追いつかないんだよ!」
そんな僕を、キミはケラケラと楽しそうに笑い飛ばす。
「そんなトロくて、よくサッカー出来たよねぇ!」
あのさ!
頭の回転と体の俊敏性は関係ないからっ。
「ねぇねっ、蓮斗と遥さんってどっちが上手いかなぁっ!?」
「……遥さんじゃない?
僕は大学卒業してからプレーしてないし」
「でも蓮斗、もともとはいつも……
なんだっけ?
あ、トニセンってのに選ばれるほどの実力だったんでしょっ?」
「いや、トレセンね。
どっかのアイドルグループじゃないから」
「っ、どっちでもいーじゃん伝われば!
ほんっと細かっ!」
それはすいませんね……
「あっ、こんな時間!
もぉっ、10分で切ろうと思ったのに40分も話しちゃったじゃん!」
いや、キミのせいでね……
「じゃあおやすみっ」
って、相変わらず引きぎわ早っ!
いつもの事だけど、キミ旋風を巻き起こすだけ巻き起こして、後片付けもせずに帰っちゃう感じ!?
いや後片付けされると、それはそれでまた長くなってめんどくさいけどさ……
忙しげな声で言い捨てられた、悪魔のおやすみで締め括られて。
今日も僕の1日が終わる。
そんな日々が繰り返されて。
「えっ、蓮斗さんオムライスが大好物なんですかっ?
私もなんです!なんか嬉しいっ」
最近やっと、僕の事を下の名前で呼んでくれるようになった奈々ちゃん。
「そうなんだっ?
じゃあ今度、美味しいオムライスでも食べ行く?」
「ほんとですかっ!?
じゃあ早速、明日とかはっ……
って急すぎますよねっ」
「や、いいよ?明日休みだし。
何時にする?」
喜ぶ奈々ちゃんの声を聞きながら。
天使とデートもどきな状況に、僕まで胸が踊る。
「じゃあ蓮斗さん、また明日。
少し早いけど、おやすみなさい」
「ん、また明日。おやすみ奈々ちゃん」
約束を取り付けて、恋人同士のような雰囲気で電話を終える。
てゆうか"蓮斗さん"って……
その呼び方がくすぐったい。
"蓮斗ぉ?"
あの横暴な呼び方と比較してしまってなおさら。
と、そこで。
玄関チャイムが騒がしく鳴り響く。
そんな鳴らし方をするのは、僕の知り合いに1人しかいなくて……
キミはなんか皮肉センサーでもついてんの!?
「おつかれ蓮斗!
DVD借りて来たんだけどさぁ、一緒に見よっ?
この映画見たかったんだけど、コメディ系だから1人じゃつまんなくてさっ」
あの、本庄さん。
僕にもプライベートとゆうものがあって……
いくらフリーだからって、最近関わり過ぎじゃないですか?
そんな軽はずみな行動を取られると、困るんだけど……
「遥さんと見ればいいのに」
「いーじゃん!どーせヒマでしょお?
だいたい遥さんと見たらバカ笑い出来ないじゃん」
はいはい、僕ならいいワケね。
「飲む?」
あれこれケチを付けられる前に、お酒やらつまみやらを用意しながら尋ねると。
「飲むっ!」って、とびっきりの笑顔が返って来るもんだから……
まぁいいか、なんてつい絆されてしまう。
そうして、見始めようとしたそのタイミング。
僕の携帯が鳴り響く。
え、奈々ちゃん?
なんだろ……
若干気まずく思いながらも、応答ボタンを押すと……
話の内容は、明日の時間変更だった。
「全然いいよ、じゃあ明日」
「はいっ、今度こそおやすみなさい」
「ん、おやすみ」
そうやって、電話を切るや否や。
「え、だれだれっ!?」
ニヤけながら弾んだ声で擦り寄って来た本庄さん。
いや、近い近い!
そんなくっつかれてもっ……
「明日デートっ?
もう新しい彼女出来たんだっ?」
「……彼女じゃないよ」
てゆうか、なんでそんな楽しそうなワケ?
「え、そーなのぉ?
のわりには、あーんな優しい声でおやすみ~とか言っちゃって!」
「そりゃ優しくもなるよ。
そのコは汚れのない天使だからね」
「天使ぃ!?
なにそれっ!なに女に妄想抱いてんのっ?
蓮斗きもっ!」
キモくて悪かったね。
それに妄想抱いてるワケじゃなくて……
チラリとキミを横目に映すと、至近距離でバチっと目が合う。
要は、現実逃避させて下さい!!
視線を外してうなだれた。
とはいえ、コメディ映画で盛り上がって……
「ここだよねっ!こっから出てくるのがヤバいんだって!」
「も、蓮斗っ、言わないでっ!
ちょっ、ほんともうっ……
笑いすぎてお腹イタっ」
「しかも真顔だしっ!
やたらと姿勢いいしっ」
「だからもっ、やめてっ、てばっ!」
そんなふうに、2人してひとしきり笑って……
鑑賞を終えると。
「ねぇ蓮斗……
まだ居てい?」だなんて。
なんで急に、レアなしおらしい態度でくるかな!
「いいけど……
この前みたいに寝ないでよ?」
「寝ない寝ないっ!
よかったぁ~!
聞いてほしい事が山ほどあるんだよね~」
やられたっ!
今のしおらしい態度は演技だったか!
僕とした事が……
「ちょっとは遥さんに聞いてもらったら?」
「なんかそればっかでウザいんだけど……
てかいーじゃん!
蓮斗、聞き上手なんだしさぁ」
そりゃあね。
状況にはよるけど、ちゃんと聞いて的確な応えを出さなきゃ……
恐ろしくめんどくさいクレームが続くんだから。
むしろ、キミの周りがどうやってそれを回避してるのか不思議なくらいだ。
「それに、蓮斗と話すの楽しんだもーん」
キミって女わっ……!
ああもうっ、ほんとにめんどくさい!
こんなふうにいつだって、言葉ひとつで僕を惑わす……
なんてタチの悪い悪魔なんだ!
しかも毎度毎度の事だけど……
もっと単刀直入に話そうよ!
てゆうか先に結末から話そうよ?
前置きがあまりにも長すぎて……
「ってワケなの、ウケるでしょ~」
え、どこがオチだった!?
真剣に聞いてたのに、長すぎて内容がつかめない。
かと思えば、何か応えを返さなきゃと思った矢先。
「あっ、ウケるといえばさぁっ!
今日職場でねぇっ?」
もう次の話に変わってる。
「ちっちゃい子が迷子になったみたいで、泣きそうな顔でキョロキョロしてたからさあっ。
心配でレジしながらチラチラ見てたんだけど。
そしたらさぁ!目の前のお客さんが、
"こいつ挙動不審じゃね?ちょーウケる"
って酷くなぁい!?」
それは酷い!
てゆうか、かなり許せないんだけど!
なにそいつ、と意見を述べようとしたとこで。
「そりゃあさっ?そのお客さんにとっては、よそ見しないで早くレジしろよって感じなんだろーけどさぁ。
でも手はちゃんとテキパキ動かしてたしっ!
ねっ、こーゆう時って知らんぷりしてレジに集中するのが正解なのっ?」
そんな事ないよ!
とは思いつつも、どうなんだろう?
でも人間は機械じゃないし、目を離した隙にその子が店外にでも出ちゃったら……
「まっ、正解なんてないよね~?
私は私らしく行くしかないかっ!
てか蓮斗さっきから聞いてるっ!?」
「聞いてるよ!
むしろ、すっごく真剣に聞いてるんですけどっ」
「だったらなんで無反応なワケぇ?」
「キミの会話テンポについて行けなくて、返事が追いつかないんだよ!」
そんな僕を、キミはケラケラと楽しそうに笑い飛ばす。
「そんなトロくて、よくサッカー出来たよねぇ!」
あのさ!
頭の回転と体の俊敏性は関係ないからっ。
「ねぇねっ、蓮斗と遥さんってどっちが上手いかなぁっ!?」
「……遥さんじゃない?
僕は大学卒業してからプレーしてないし」
「でも蓮斗、もともとはいつも……
なんだっけ?
あ、トニセンってのに選ばれるほどの実力だったんでしょっ?」
「いや、トレセンね。
どっかのアイドルグループじゃないから」
「っ、どっちでもいーじゃん伝われば!
ほんっと細かっ!」
それはすいませんね……
「あっ、こんな時間!
もぉっ、10分で切ろうと思ったのに40分も話しちゃったじゃん!」
いや、キミのせいでね……
「じゃあおやすみっ」
って、相変わらず引きぎわ早っ!
いつもの事だけど、キミ旋風を巻き起こすだけ巻き起こして、後片付けもせずに帰っちゃう感じ!?
いや後片付けされると、それはそれでまた長くなってめんどくさいけどさ……
忙しげな声で言い捨てられた、悪魔のおやすみで締め括られて。
今日も僕の1日が終わる。
そんな日々が繰り返されて。
「えっ、蓮斗さんオムライスが大好物なんですかっ?
私もなんです!なんか嬉しいっ」
最近やっと、僕の事を下の名前で呼んでくれるようになった奈々ちゃん。
「そうなんだっ?
じゃあ今度、美味しいオムライスでも食べ行く?」
「ほんとですかっ!?
じゃあ早速、明日とかはっ……
って急すぎますよねっ」
「や、いいよ?明日休みだし。
何時にする?」
喜ぶ奈々ちゃんの声を聞きながら。
天使とデートもどきな状況に、僕まで胸が踊る。
「じゃあ蓮斗さん、また明日。
少し早いけど、おやすみなさい」
「ん、また明日。おやすみ奈々ちゃん」
約束を取り付けて、恋人同士のような雰囲気で電話を終える。
てゆうか"蓮斗さん"って……
その呼び方がくすぐったい。
"蓮斗ぉ?"
あの横暴な呼び方と比較してしまってなおさら。
と、そこで。
玄関チャイムが騒がしく鳴り響く。
そんな鳴らし方をするのは、僕の知り合いに1人しかいなくて……
キミはなんか皮肉センサーでもついてんの!?
「おつかれ蓮斗!
DVD借りて来たんだけどさぁ、一緒に見よっ?
この映画見たかったんだけど、コメディ系だから1人じゃつまんなくてさっ」
あの、本庄さん。
僕にもプライベートとゆうものがあって……
いくらフリーだからって、最近関わり過ぎじゃないですか?
そんな軽はずみな行動を取られると、困るんだけど……
「遥さんと見ればいいのに」
「いーじゃん!どーせヒマでしょお?
だいたい遥さんと見たらバカ笑い出来ないじゃん」
はいはい、僕ならいいワケね。
「飲む?」
あれこれケチを付けられる前に、お酒やらつまみやらを用意しながら尋ねると。
「飲むっ!」って、とびっきりの笑顔が返って来るもんだから……
まぁいいか、なんてつい絆されてしまう。
そうして、見始めようとしたそのタイミング。
僕の携帯が鳴り響く。
え、奈々ちゃん?
なんだろ……
若干気まずく思いながらも、応答ボタンを押すと……
話の内容は、明日の時間変更だった。
「全然いいよ、じゃあ明日」
「はいっ、今度こそおやすみなさい」
「ん、おやすみ」
そうやって、電話を切るや否や。
「え、だれだれっ!?」
ニヤけながら弾んだ声で擦り寄って来た本庄さん。
いや、近い近い!
そんなくっつかれてもっ……
「明日デートっ?
もう新しい彼女出来たんだっ?」
「……彼女じゃないよ」
てゆうか、なんでそんな楽しそうなワケ?
「え、そーなのぉ?
のわりには、あーんな優しい声でおやすみ~とか言っちゃって!」
「そりゃ優しくもなるよ。
そのコは汚れのない天使だからね」
「天使ぃ!?
なにそれっ!なに女に妄想抱いてんのっ?
蓮斗きもっ!」
キモくて悪かったね。
それに妄想抱いてるワケじゃなくて……
チラリとキミを横目に映すと、至近距離でバチっと目が合う。
要は、現実逃避させて下さい!!
視線を外してうなだれた。
とはいえ、コメディ映画で盛り上がって……
「ここだよねっ!こっから出てくるのがヤバいんだって!」
「も、蓮斗っ、言わないでっ!
ちょっ、ほんともうっ……
笑いすぎてお腹イタっ」
「しかも真顔だしっ!
やたらと姿勢いいしっ」
「だからもっ、やめてっ、てばっ!」
そんなふうに、2人してひとしきり笑って……
鑑賞を終えると。
「ねぇ蓮斗……
まだ居てい?」だなんて。
なんで急に、レアなしおらしい態度でくるかな!
「いいけど……
この前みたいに寝ないでよ?」
「寝ない寝ないっ!
よかったぁ~!
聞いてほしい事が山ほどあるんだよね~」
やられたっ!
今のしおらしい態度は演技だったか!
僕とした事が……
「ちょっとは遥さんに聞いてもらったら?」
「なんかそればっかでウザいんだけど……
てかいーじゃん!
蓮斗、聞き上手なんだしさぁ」
そりゃあね。
状況にはよるけど、ちゃんと聞いて的確な応えを出さなきゃ……
恐ろしくめんどくさいクレームが続くんだから。
むしろ、キミの周りがどうやってそれを回避してるのか不思議なくらいだ。
「それに、蓮斗と話すの楽しんだもーん」
キミって女わっ……!
ああもうっ、ほんとにめんどくさい!
こんなふうにいつだって、言葉ひとつで僕を惑わす……
なんてタチの悪い悪魔なんだ!
応援ありがとうございます!
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