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第39話 ボディペイントと筆おろし その1
しおりを挟む039
「あっくん、その、ごめんなさい」
ユリスの匂いに包まれながら気持ちよく眠っていると、申し訳無さそうな声と同時に、申し訳程度に身体が揺らされた。
目を開くと、薄暗い中に眉尻を下げたユリスが覗き込んでいる。
「……ユリス?」
「あっくん……お願いがあります」
目を泳がせて身体をもじもじと揺らしているから、一緒にたぷたぷしているタンクタップの胸元に目を奪われる。
少し屈んでいる体勢なので、重そうなふたつの丸いおっぱいが窮屈そうに身を寄せ合っている様は圧巻だ。
谷間は少しだけ汗ばんでいる。
なるほど。良い匂いはそこから漏れ出ていたのか。
「うう……すごい見てます。でも、おっぱい見ていいですから、お願いします」
ぺこりと頭を下げてくる。珍しくもユリスからのお誘いだった。
ベッドには愛し合った微かな熱気が残っているが、少し物足りなかったのだろうか?
女の性欲は若いときよりもむしろ年を経た方が上がっていくと聞く。
清楚な人妻が間男に身体の昂ぶりを鎮めて欲しいと願い出る場面に、目眩がしそうな感動を覚える。
「ユリス、恥ずかしいのは分かるが、はっきりと言ってもらえないと分からない」
おっぱいに手を伸ばして、ふにふにとやわらかい感触を楽しみながら、人妻の誘惑の言葉を待つ。
ユリスは俯いてしまう。
「……はい。あっくんの意地悪……でも、もう、我慢が……」
切羽詰まるユリスの表情にドキドキする。妖しくも淫らな人妻は唇をそっと開く。
「おトイレ……ついてきて下さい」
ある意味、恥ずかしいお誘いの言葉だった。
「……お、おう」
ツギハギ屋はご存じの通り大邸宅というわけでもない。
寝室を出て浴室の隣にあるトイレまでは目と鼻の先。
子供のように暗がりを怖がりながら、合わせた手をしっかりと握ってくるユリスがとても愛おしい。
トイレ事情は生活環境の改善の一環で対処済みとはいえ、淑女が間男をトイレに同行を願うのはさぞ勇気がいる。
羞恥心を押し殺してまでの事情があるのだろう。
扉の向こうでゴソゴソという音がする。
妙に緊張感がある。
夜中になると静まりかえる異世界だ。
聞いてはいけない音が聞こえてくる。
ぶふっという下品な音がして「うう……あっくんのが……でてきました」というつぶやきまで聞こえてきた。
寝る前の成果物が奥から漏れ出たらしい。否応なく興奮してしまう。
これは、遠回しに誘われているのだろうか?
エッチ初心者を脱した途端にアブノーマルなプレイの要求とは、さすが淫乱な人妻はひと味違う。
未だに拒絶をされるアナルプレイの垣根が、案外下がってきているのかもしれない。
「あっくん……ちゃんと、いますよね? 先に行っちゃ嫌ですよ?」
「ああ、問題ない」
だが扉越しに確認してくるユリスの声は、恥ずかしさより焦りと安堵が混じっていた。
よほど何かが怖いらしい。
「お待たせしました。あなた、夜中に起こして本当にごめんなさい」
少し余裕が出来たのだろう。落ち着いた様子で手を洗っている。
すぐにぴたりと身体を寄せてくる。
腕にすがりついて、やわらかいおっぱいを押しつけてくるのはサービスだろうか。
「ああ、問題ない」
ユリスは再び俺の手をしっかりと握り、そわそわと周囲を警戒しながら寝室に戻る。
ベッドに入ってからしばらくの間、ユリスは誘うように身体を押しつけてきた。
大方、怖い夢でも見たのだろう。
しっかりと抱きしめてやるとうふふと嬉しそうに笑っていた。
*
「あなた、幽霊って知ってますか?」
ユリスは朝食の場で、眉を寄せて口にした。
口にするのも憚るように、そっと口元を隠しながらユリスは俯く。
「死んだ方が、死にきれずに魂だけになって彷徨うらしいのですけど……」
「ああ、知っている」
異世界でも幽霊という存在は、前世とそう変わらないらしい。
だが、なるほど。
誰しも苦手な物はあるものだが、ユリスはお化けの類いが苦手らしい。
とても困った表情がキュートだった。
「昨日は、その……」
耳まで顔が赤いのは、夜中にトイレの付き添いを願ったことを思い出したからだろう。
しっかりと俺の面倒を見たがる姉ぶったユリスの意外な弱点だ。
「……年甲斐もなく怖がったりして、ごめんなさい」
「問題ない。遠慮は不要だ、怖いならトイレの中まで同行しよう」
「中までこなくていいよ!? でも、ありがとうございます」
幼子のようでとてもかわいらしいが、からかったりはしない。
性的に弄る調教は別として、ユリスを大事にしない行為はポリシーに反するからな。怖がるならいくらでも付き合ってやる。
「これは常連の奥様から聞いたお話なのですが、隣の空き家で幽霊が出たらしいのです……」
怪談話を聞かされて、夜中になってふと思い出し、怖くなったのか。
子供の頃に怖い話を見たり聞いたりして、寒気を覚え布団から出られなくなった覚えがある。
恐怖心というのは中々コントロールが難しい。
しかも隣家とは、意外と現場が近い。
ピンとくる。
当家のトイレからは、塀を挟んだくだんの家が見えたな。ユリスが怖がるはずだ。
アレクの記憶を探ると、2年ほど前に隣の家はボヤ騒ぎを起こしていた。
何か店だったような気がする。食事処だったか?
その後空き家となった、いわゆる事故物件というやつだ。
幽霊か。
冒険者をしている短い期間に出会うことはなかったが、魔物が跋扈する世界観なのだから、意外と身近な存在なのだろう。
魂の抜けたゾンビが存在していそうだから、ゴーストが存在することに違和感はない。
前世の胡散臭い幽霊話とは違い、実害のある存在だ。用心に越したことはない。
「そういえば、前に火事があったな。その時に隣で誰か亡くなったのか?」
「いえ、お隣さんは全員無事でしたよ? ボヤ程度でしたし」
違うのか。
「なんでも幽霊というのは、空家を根城にするらしいのです。本当に迷惑ですね」
それはただの不法侵入者ではないのか?
幽霊の正体見たり枯れ尾花。ではなく。
しかし、ユリスの不安は取り除いてやりたい。
店を開けるタイミングで買い出しを装い、ユリスには内緒で隣家を観察してみる。
「おぅ、ツギハギ屋じゃねぇか」
隣家から、ダンガが現れた。
これはとんだ盲点だったな。
「ダンガ、なにか未練があるなら言ってくれ。俺に出来る範囲で叶えてやる」
「はぁ? なんだよ藪から棒に」
ダンガはお得意の、なに言ってんだ、こいつという顔になった。
お前こそ、この世で何をやっているんだと言いたい。
「しかし、この世界の幽霊は短いとは言え足がしっかりと付いているのだな」
「なんだとコラ、朝からご挨拶だな、泣くぞ! ていうかよぉ、お前きぃつけろよ? 最近女房に似てきたぞ? その話聞かないところなんかそっくりだぜ!」
そういえば、足がない幽霊というのは前世の天才絵師の影響だったな。
異世界では通用する筈もないか。
「それにしても失敬な幽霊だ」
「だから! なんで朝っぱらから人を幽霊扱いしてんだよ、俺はナマモノだっつうの!」
なるほど、幽霊を干物と表現するのは中々言い得て妙だ。
「というかツギハギ屋、お前ぇ幽霊知ってんのかよ? たしか知られたのは引退した後だぜ?」
ユリスが疑問を投げかけてきた理由がわかった。
幽霊という存在はまだこの異世界では新参者で、冒険者がらみの案件らしい。
一気にきな臭くなった。
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