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第40話 ボディペイントと筆おろし その2
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ダンガに話を聞けば隣家の事情が手に入るが、買い出しに出かけるとユリスに伝えた手前、手ぶらで帰るわけにいかない事情があった。
あまり気が進まないが、冒険者ギルドに顔を出すというダンガに同行する。
「ダンガ、あの家に何の用だ?」
「ああ? 調査だぜ。ギルドからのな」
聞けば、幽霊が出るという噂はそれなりに広がっていたらしい。
この場合も灯台下暗しという諺が当てはまるのか不明だが、世事に疎い引きこもりには青天の霹靂だ。
だが、噂程度で調査が入るものなのか?
冒険者は市民の味方で万屋的な側面もあるから、暇なメンバーにお使いを任されることもあると聞くが。
「幽霊ごときでギルドの調査だと? 少し大袈裟じゃないか」
「馬鹿お前ぇ、魔物は剣でぶった切れるがよぉ、幽霊は切れねぇんだぞ? いたら一大事だろうが」
と言われてもな。
こちらの剣が通らないなら、あちらの攻撃も通らないだろう。
この異世界にはスキルはあるが、魔法めいた技はない。
幽霊みたいなものは、いたら怖いが怖いだけだ。
死に対する怯えが妄想を拡大させてしまうのだろう。
いずれにしても、ユリスの不安は払拭したい。
「結果はどうだった?」
「いねぇみたいだが、詳細は不明だ。幽霊ってのは昼間にゃでねぇんだろ?」
そんなに器用ではないだろう。
昼間は見えていないか、見えても怖くないかのどちらかだ。
もう少し知能が高ければ、効率的に未練だの要求だのをするだろうしな。
「まあ、あの家は近々売りに出されるって話だ、買ったやつが真相を暴いてくれんだろうよ」
なるほど。
大方、所有者が売る前に程度を確かめにでも来たのだな。
空き家に人影を誰かが見て勘違いという所か。
売る方としては価値を下げたくないはずだから、依頼も所有者からという線が硬い。
取り越し苦労か。枯れ尾花だ。
だが、見間違いだ気のせいだと、怖がる者に言っても埒が明かない。
ユリスも強がるだけなのが目に見えている。夜中のトイレに付き合うのは大歓迎だが、気に病んで体調を崩されてはたまらない。
形だけでも安心が欲しい。
「ダンガ、ギルドに魔除けの札は売っているのか?」
「なんだそりゃ、アーティファクトか?」
話にならない。
幽霊が若い文化の異世界だから仕方がないな。
自作用に紙とペンを買って帰るとしよう。
冒険者ギルドには寄らず、市に向かう。
帰りに端切れとくず鉄を仕入れて、ついでに紙とペンを探す。
軽く見て回ったが、異様に高く使いづらそうな紙しか見つからなかった。
紙というのはテンプレ通り貴重品なのだな。
油性でも水性でも問わないが、マーカーやフェルトペンは紙以上に見当たらない。
万年筆のようなペンもどきと、筆の二択だ。
魔除けの札は、素材から自作になるらしい。面倒な。
いや、待てよ?
確か幽霊から身を隠す画期的な昔話があったな。あれなら紙はいらないはずだ。
頭の中でアイテム作成の素材を検索する。
ツギハギ屋の倉庫にありそうなものばかりだ。
魔除けもどきでユリスの不安を鎮め、調教も行える一石二鳥のアイデアの閃きに、ついニヤついてしまう。
*
夜のことだ。
「あっくん……これは、どういうことか聞いてもいいかな?」
幽霊から身を護る方法と聞いて目を輝かせたユリスだが、内容を聞くと目を曇らせ、今はその目も塞がれている。
ベッドで仰向けになったユリスは、タンクトップをおっぱいが見えるギリギリまでたくし上げられ、下半身はぴんく色のしましまぱんつのみ。両手を頭の上に上げている無防備な体勢だ。
更に目元は黒いアイマスクが装着され、視界を遮られていた。
目隠しプレイの扇情的な格好に、心を落ち着かせるのが難しい。
「すまないが、これが作法だ」
「絶対、碌でもない作法だよね!?」
「いや、古典にも紹介される由緒正しいものだと記憶している」
「うう……わかりました」
相変わらず素直に受け入れる人妻が愛おしい。
ユリスは伸ばされた肉感的な脚をきゅっと閉じる。下着が食い込みさらにエロ度は上昇。
たゆんと胸が揺れ、緊張と羞恥のために滲んだ汗が甘酸っぱく香る。
もちろん出任せでも嘘でもない。
「出典は、琵琶秘曲泣幽霊。幽霊から身を守った正式な作法だ」
「……聞いたことありません」
俺も読んだことはない。
そう、今回参考にさせていただくのは、耳なし芳一の怪談だ。
かの有名な体中に般若心経を記し、幽霊から姿を隠す昔話。
耳にお経を書き忘れて幽霊に奪われてしまうオチは大変有名だった。
魔除けの御札は手に入らなかったが、直接書き記すことで効果が期待できる。
「……どうして目隠しが必要なんですか?」
芳一は目が見えなかったと、無理矢理こじつけることは可能だが、単なる趣味の部分が大きい。
返事の代わりに、ツギハギ屋のガラクタで作成した筆をそっとユリスの耳に当てる。
形の良い人妻の耳が、幽霊ごときに盗られては癪だからマーキングだ。
「ひゃん! な、なに、あっくん」
「筆だ。これでユリスの身体に呪言の言葉を記して、幽霊に見つからないようにする」
くすぐったさに、ユリスはぞくぞくと身体を震わせていた。
「これで、夜中に一人でトイレに行っても安心だな」
「うう……我慢します」
弱い所を突かれて観念する人妻にほくそ笑む。
筆を首筋に滑らせる。そのまま少し凹みのある鎖骨付近に。
「うっ……ちょ……んんっ……」
ユリスはくすぐったさと快感の狭間に、切なげに身体を揺らした。
初めて使用されるキャンバスが人妻の柔肌とは果報者だな。
まさに文字通りの筆おろしだ。
滾ってくる。
ボディペイントとは意味が異なるかもしれない。だが身体落書きというには卑猥過ぎる。
筆を慣らしす間、ユリスは肌を火照らせていた。
視界が遮られている分、身体が敏感になっている。
呼吸はすこしずつ早くなり、全身がしっとりと湿り始める。
天然着色料を混ぜた肌に優しい塗料を作成して、筆を浸す。
いざ、ユリスの白い肌に直接呪言を書き込む。
手が止まる。
この世界の識字率は知らないが、商家の娘であるユリスは、読み書きができる。
アレクの記憶にも多少の文字の扱いは残っている。
しかし、読めては神々しさもなく味気ない。ここは、前世の言語を使用するか。
漢字だ。
さて、なんと書く?
怨霊退散か?
うろ覚えだから漢字がわからない。常用とは言えない言葉だから無理もない。
物語通りに般若心経を……。いや、それこそ覚えているわけがない。一度も書いたことがないからな。
「あの、あっくん……終わりましたか?」
「まだ始まったばかりだ」
「うう……なるべく早くお願いします」
ユリスは恥ずかしそうに泣き言を口にした。
あまり間を開けてもユリスに不信感をあたえてしまう。
まずは、筆の思うままに試し書きを行うことにする。
「ふあ……ああ……ぞくぞく……します……やだぁ、あっくん、待って」
清楚だが、けしからん豊満な体の腹部に文字が浮かぶ。
肉便器。
ぐはっ。駄目だ! この呪言は強烈すぎる。
慌てて文字の上に大きく×印をつけるが、それすらも淫靡な雰囲気になってしまった。
人妻の白い身体は想像以上に淫らな装置だ。
アレクから奪った肉体が、一筆で間男専用の肉穴になるとは侮れない。
もう少し精神面を考慮したソフトな内容にする。
「あ……身体が……震えます……んふっ……あっくん……もう、堪忍して……」
1回1銅貨。
ぐふっ。ただの文字が、これほどの破壊力とは想像以上だ。
この男受けする身体が、マッサージチェアの10分間と同じ値段という安売り。
頭がくらくらする興奮は久しぶりだ。
「ひゃ……うっ……んッ、あっくん……もう少し、ゆっくり……ああっ……だめっ、だめっ」
ユリスはビクビクと身体を波立たせる。
気がつけば、うちまたになり割れ目を刺激するように脚をうねらせ、しましまぱんつはぐっしょりと愛液で濡らしていた。
公衆便所。
中出しOK。
正の字。
NTRおま○こ。
ご自由にお使いください。
生ハメ希望。
肌に淫らな言葉が次々と記され並んでいく。
ユリスを貶める言葉の列挙で、これほど心が動揺して昂ぶるとは。
いやらしい文字と淫らな身体の相性が抜群すぎる。
試し書きのつもりが、別のプレイに変化してしまった。
人妻の身体はどこまで男を誘うのか空恐ろしい。
「あの、あなた? もう出来ましたか? 少し息が荒いみたいですけど、そんなに消耗してしまう辛い作業なのですか?」
アイマスクをつけたユリスが、不安そうに言う。心配までされてしまう。
さすがに少し胸が痛んだ。
興奮で返事が出来なかった。
そっとユリスはアイマスクを外す。
心配そうに窺ってくる表情は、筆で散々弄られて赤く火照り、目は潤んでいた。
素顔がさらされた人妻の身体には、数々のいやらしい卑猥な落書きがされてる。
このインパクトに筆が手から落ちてしまう。
ああ、大丈夫だ。般若心経も御札もどきも失敗したが、ユリスを幽霊に盗られたりしない。
「心配するな、ユリス、お前は俺が絶対に守る」
「え? はい、ありがとうございます、あなた」
少しだけ、照れて嬉しそうなユリスの顔が引き金だった。
まるで、体中にエロい文句を書かれてうっとりと欲情するマゾ体質の雌豚に見えた。
「きゃっ……あっくん!? んっ……もう! そんなに慌てなくても、逃げたりしませんよ?」
ユリスは襲いかかった俺をよしよしと抱きしめた。
応援ありがとうございます!
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