【R18】異世界エロアイテムショップ「ツギハギ」

あらいん

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第45話 縄下着と鏡プレイ その3

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 045

 扉の向こう立っていた粗忽者は4人だった。

 いつもの元気娘と、腰に剣を下げた物々しい男が2人。
 そして、3人を家臣のように従えて真ん中に立つ、目が覚めるような真紅のドレス姿の女性に目を奪われる。

 美しい顔立ちと金髪の派手な縦ロール。
 歳は二十歳前後。
 いやらしいほど白い肌。鋭い目つき。結んだ赤い唇。女として美しく開花した輝きだ。
 すらりとした体型なのにやたら豊満なふくらみの下で腕を組む、とびきり尊大な態度が良く似合う。
 それは、まんま悪役令嬢だった。

「来訪ご苦労だが、見ての通り今日は定休日だ、買い取りも買い上げも明日にしてくれ」

 扉に引っ掛けた閉店の札を、立てた親指で差し示す。

「ご主人! お休みの日に申し訳ないです! この方は領主のご令嬢であらせられる、エトワール様でございます!」

 元気娘の空気を読まない紹介に、ツンと澄ました表情のエトワールが、無機質なブラウンの瞳を向けてきた。虫を見るときでももう少し感情をのせるだろうに。

「さ、エトワール様、お伝えしたようにツギハギ屋はお休みでございます、御用は明日伺うとのことですので!」

 これで満足しましたか? 元気娘は目で訴える。
 その扱いで、悪役令嬢の我儘な性格が垣間見えた。

「わたくしは、この町を預かるガトール男爵家の長女ですわ、いいから、はやくお開けなさいな?」

 すっと目を細めると、エトワール嬢は面倒そうに命令を下した。
 貴人らしく、話を聞かないタイプらしい。俺が勝手に持っている偏見だがな。
 エトワールか。たしかフランス語で星の意味を持っていたな。

 エトワール嬢は、一歩もひくつもりはないという不動の姿勢。
 親の地位を口にして特権上等と、押し通すつもりらしい。
 間に入る元気娘が、たははと項垂れる。

 なんの因果で元気娘が巻き飲まれているのか不明だが、後で嫌がらせでもされたら寝覚めが悪い。
 黙って縦ロールを睨みつけながら扉を開ける。

「よろしくてよ。お前たちはここで待機なさい。ああ、出口を固めておくこと」
「へいへい」

 やる気半分な護衛を外で待たせると、エトワール嬢は中にズカズカと入って行った。
 逃走するとでも思っているのか?
 まるで御用改な雰囲気だな。

 空いた少しの時間でアレクの記憶を探る。中世モデルの異世界だから、いずれ貴族と遭遇すると想像していた。
 予想の中でも最悪の出会いとシチュエーションだがな。

 該当するメモリーは無し。
 庶民に貴族との繋がりなど皆無だ。
 前世で国会議員に生で出会ったことがないのと同じだな。

 項垂れたままの元気娘の頭を撫でておく。お前は頑張った。悪いのはあの女だから、そう落ち込むな。

「……ご配慮痛み入ります」

 気が進まないが店に入る。

「噂通りですわ!」

 店内をぐるりと見回して、目を吊り上げるとエトワール嬢は両手を広げて声を上げる。
 近所迷惑な高い声だ。
 芝居がかった動きで店内の棚を1つ1つ物色していく。さすがスターダンサーに与えられる称号を名前にする女だ。

「聞きしに勝るおぞましさですわね。汚らわしい物しか置いてませんの?」

 なるほど、客ではないらしい。
 厄介事が大きすぎてため息が漏れる。

 珍しく元気娘が項垂れていた意味がよく理解できた。

「あの、あなた、お客様ですか?」

 そっと居住区からユリスが顔を出す。

「奥方様かしら? ごきげんよう」
「あ、はい……ご丁寧に、ありがとうございます。いらっしゃいませ、どうぞゆっくり見ていってくださいね」
「あら、ありがとう。でも、すぐにすみますわ!」

 ユリスは営業スマイルのまま目を丸くした。店員の鏡だった。
 あなた、どういうこと!?
 俺のほうが聞きたいくらいだから、説明を求めるような目で見ないでほしい。

 少しだけ耳元の髪が濡れている。
 精液まみれの顔をさっと洗い、慌てて制服を着たのだろう。

 首に赤い縄が巻いたままだ。
 つまり、ツギハギ屋がはじまって以来のビッグゲストを前にして、制服の下にエロい縄下着を隠して着用している。
 さすが、エロアイテム屋の看板人妻だ。

「子供ができたら、武勇伝を聞かせるとしよう」
「なんのことがわからないけど、絶対嫌です!?」

「むむむ、ユリスさん!」

 物色を続けるエトワール嬢を泳がせて、元気娘はユリスを捉える。

「素敵且つ奇抜なファッションでございますね!」
「ええ……まあ」
「これは、匂いますよ!」
「え!? え!?」

 元気娘、それは禁句だ。
 ユリスは途端にあたふた始める。
 つい数分前まで精液まみれのエロ人妻だったからな。

 そんなことはいいから、あれは誰なんですか!? 片目を瞬かせて口パクで元気娘に必死に合図を送っているのが、喜劇のようで面白いな。
 もちろん、首のものに首ったけの元気娘は気づかない。

「どのような聖遺物なのですか!?」
「いえ、そんな大層なものでは……」

 ユリスは微妙に首元を気にしている。
 首に巻かれた赤い縄は、ネックレス……いや、チョーカーと言うべきか。
 ユリスの尊厳を守るために、首輪とは呼ばないでおこう。

 ツギハギ屋のトレードマークになりつつある、清楚だがおっぱいが強調された制服によくマッチしている。
 
 驚くほどに違和感がない。
 赤縄下着の着用義務を定めて、ユリスを弄るのも一興だ。

「この棚にある赤い縄が、非常に気になるのですが、いかなる道具なのでしょう?」

 さすがにお目が高い。
 入浴待ちの時間で作成した、ユリス用とは別の縄下着を発見したか。
 ユリスの首に巻いたものと同じ色、同じ質感から探り当てたらしい。鼻の効く奴め。

「色付きロープと思いましたけど……輪っかがいくつもありますね、むむむ」
「出来れば、あまり詮索はしないでください」

 ユリスは作り笑いをしようとして失敗して、舌を噛んだみたいに顔をしかめる。

「……また妙なものをこしらえやがって」

 ダンガがのしのしと入ってくる。
 どういうことだ!?

「おい! 護衛は何をしていたんだ! こんなにあっさりと賊を侵入させて!」

 入口を固めていた護衛たちを怒鳴りつける。
 仕事を何だと思っているんだ?

「……おい、ありゃ、ギルドの仲間だぜ」
「つまり、お前とグルということなのか……」

 ここまで用意周到に罠を張り巡らせていたとは、迂闊だったな。

「……ダンガ、信じていたのに」
「ばっ、お前ぇ違ぇよ、何のことだかさっぱりだが、顔見知りだから中に入れてもらったって、言ってんだよ!?」

 冗談だから、そんなことで泣くな。男のくせにみっともない。

「ったくよお! で、定休日だってのになんで店を開けてんだ?」
「あの、ダンガさん、今日はお忙しいのでは?」

 顔見知りが増えたユリスはソワソワとダンガに暗に帰れと言った。
 いつ服の下に卑猥な縄を着けていることがバレるのかと、中々スリリングな心境なのだろう。
 そういえば、今日は隣の家にダンガが越してくる日だったな。

「引っ越し作業は終わったのか?」
「……追い出された」
「新居に越して、1日目でですか! 浮気ですか?」

 元気娘はやれやれと首を振る。

「違ぇよ! 細かな作業とか掃除とかするから、表で時間つぶしてこいって追い出されたんだよ!」

 木偶の坊扱いか。粗大ゴミ扱いじゃない分、優しいかみさんなのだろう。

「大体、どうしてお前ぇまでいるんだ?」
「ダンガさんには関係ありませんから!」

 ダンガは元気娘といがみ合う。

 挨拶みたいなものだから俺もユリスも慣れたものだが、護衛の男と店内を物色していたエトワールは目を丸くしている。

「もういいですから! 私が求める探求の邪魔をしないでください!」

 ユリスは珍しく、ダンガにもっとやってくださいと、手でゼスチャーをしている。
 もっとも、鈍いダンガは露ほども気付かない。
 喜劇の役者が揃いはじめたな。

「ご主人! お休みの日に大変申し訳無いですが、これを売ってください!」

 元気娘は縄を掲げる。
 家に持って帰って存分に探求とやらをするのだろう。

「あの! それは……お嬢さんには早いといいますか……」
「装備レベルがたりないと!?」

 足らないのはデリカシーだ。
 恥じらいを持たない女が、おっぴろげても男はただ冷めるだけだからな。

「ではでは! これは、何なのでしょう? せめて名前だけでも教えて下さい!」

 ユリスは窮地に立たされた。
 休みの日まで元気娘に迷惑をかけられるとは、苦労性な星を背負った人妻だ。

「それは、あれ、です……下着……です」
「はい? 縄ですよ?」

 私だって縄って言いたいです!
 ユリスは唸る。それから俯く。

「……下着です」
「はあ……あの、もしかして、着けてます?」

 元気娘にしては珍しく声を潜めたおかげで、ユリスは一命をとりとめた。
 店内で耳を済ましている貴族のお嬢を気にしたからだ。ここまで見事な怪我の功名を見ることが出来たのは僥倖だな。
 
「……やはり、このような女性を貶めるいかがわしいものを売る店を、これ以上見逃すわけにはまいりませんわね!」

 エトワール嬢は高らかに宣言する。

「あなた、あの方は、どなたなのですか?」
「町の領主のご令嬢ですよ、ユリスさん」

 俺の代わりに元気娘が紹介をする。

「えっと、あの、どうしてそんなに近づいているのかな?」

 ユリスは後退る。

「是非、服の下を拝見できないかと思いまして」
 
 元気娘は、ユリスにピタリと張り付き、縄下着の真相を究明しようとしていた。
 おっぱいの周りに巻かれた縄が薄っすらと透ける瞬間がある。
 あの清楚なスカートの下は、ハイレグも真っ青のVの字が隠されている。

「……、……え? 待って待って、領主のお嬢様って言いました?」
「いかにも、ささ、少しスカートを」

 ユリスは伸びた手を無意識に払っている。
 混乱が上書きされて茫然自失だ。

 確認を取るように虚ろな目を向けてきたので、とりあえず頷いておいた。

 ユリスは口元を出て隠して驚愕していた。ビッグゲストの正体に戦いていた。

「あん? ああ、あいつが噂の孫娘かよ。なんでこんな湿気た店にいるんだ」

 湿気たは余計だ。
 
「さすが、お祖父様の反対を押し切って、破廉恥な服装を強要させる売国奴のお店ですわね」

 エトワール嬢が睨んでくる。

「誰の孫だ?」

 ダンガは肩をすくめる。

「冒険者ギルドマスターだ」

 ギルドマスターの孫らしい。
 なるほど、色々なものが繋がってくる。
 つまり、エトワール嬢が口にしたのは、ビキニアーマー関係だということか。

 反対を押し切ったのは女冒険者とそこの粗忽物で、うちは強要などしていないぞ?
 冤罪も良いところだ。
 ギルドマスターの逆恨みで、孫をけしかけてきた?
 いや、十中八九孫娘の勇み足という暴走だな。

「即刻閉店ですわ! こんな汚らしい店は!」

 高揚してきたのか、エトワール嬢は声を張り上げる。

「え!? へ、閉店!? あっくん、どういうことですか!?」

 だから、俺に聞いても無駄だ。

「ま、当然ですわね、このようなものを取り扱うなど言語道断ですわ!」

 エトワール嬢は、ピンク色のバイブを指差し、汚物を見るように目を細める。
 つまり公序良俗に反しているという理由でこの店を潰すのが、来店の目的らしい。

 店内は嫌な静まり方をした。
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