9 / 21
8 目覚め
しおりを挟む
目が覚めるといつもの寝室の天井ではありません。
あ、と意識が飛ぶ前のことを思い出し、起き上がろうとますが、背中に激痛が走り出来ません。
なんとか状況だけでも把握しようと横になったまま頭だけを右に向けると、薬品の瓶や薬などが棚に整然と並べられています。どうやら病室のようです。私を誰かがここまで運んできてくれたのでしょう。とりあえず、襲われることはないと安堵します。
今度は頭を左に向けてみると、椅子に座ってベッドに突っ伏しているアノンさんがいました。
よかった、アノンさんが無事で、とまた安堵し、そのさらさらとした髪を撫でます。
しばらく彼の髪の毛で遊んでいると、彼はむくりと顔をあげました。半開きになった口からはよだれが垂れていて、おでこには赤く跡がついています。全く可愛らしいです。
「おはようございます…アノンさん」
私は彼にいつものように挨拶をしました。
彼ははじめ寝惚けていましたが、一瞬でその目から眠気を取り払うと、彼の顔に触れていた私の左手をとり、「はああ」と長いため息をつきました。
「生きてる…よかった…」
彼は喉の奥から絞り出すような声を出すと、私の手をとっていた小さな手に力をいれ、ギュッと握り締めました。
「どうしたのですか…アノンさん?」
こんなに取り乱したアノンさんはみたことがありません。
私の言葉に対してアノンさんは堰がきれたようにまくしたてました。
「どうしたもこうしたもないよ!僕を庇って背中に刺さった矢尻に毒がついていたんだ。そのせいでラミナは意識を失って…あれから3日間も寝てたんだぞ!」
「3日も…?」
どうやらかなりの重傷だったようです。
「お前が…全然目を覚まさないから…このまま…いなくなったら…と思うと…」
アノンさんは咽びながらも続けます。
「だから…ずっとそばにいて…ほんとにいよかった…目が覚めて……」
彼に握られている手が涙で濡れます。
「アノンさんは私が目を覚ますまでずっとここにいたのですか?」
彼はうなずきます。
「私のこと大事に思ってくれていてありがとうございます」
私は彼に思われていることにうれしくなり、微笑みました。
「何言っているんだ。感謝するのはこっちのほうだ。あんだけひどいことしておいて、生命まで助けられた。」
「医者によると、もし僕が矢を受けていたら、毒に耐えられずに死んでいたらしい。本当にありがとう、ラミナ。」
彼は目に涙をためながらも私の目をまっすぐ見ながらそう言うのでした。
しばらく彼は私の手を握ったままでしたが、だいぶ落ち着いたのか
「そうだ、医者を読んでくるよ。詳しい話しはまた後にしよう」
と立ち上がります。
「ちょっと待ってください」
私は彼を呼び止めると
「その…私に…してくださらないのですか?」
と聞きます。
アノンさんはピンとこないようで不思議そうな目でこちらを見ています。
これはこちらから言わなきゃ一生気付かなそうですね。仕方ありませんね、ヒントを差し上げましょう。
「アノンさんが結婚式の時に大勢の人の前で私にしてくれたことです。」
彼はやっと気づいたようで顔を赤らめます。初々しくて可愛いです。
「えっと、それはその…」
なんだかもじもじしています。どうしたのでしょうか?
「あの時は結婚するのは政治のためだと思って、誰でもいいと思っていたんだけど、今は…その、違うから…」
「やっと、あの時の私の気持ちがわかってくれましたか?」
私は悪戯っぽく言います。
「ごめん…」
彼はバツのわるそうな顔をしています。もっといじめてもいいのですが、今日はこれくらいにしておきましょう。
「そう思っているのだったら、もう一度初めてのキスをしましょう」
アノンさんはその言葉に覚悟を決めたのか枕元に立ち、腰をかがめて顔を近づけます。
彼の目は涙で赤く腫れていました。
「ラミナ、愛してるよ」
「私も愛してます、アノンさん」
私がそう囁くと、アノンさんはぎこちなく唇を私の唇に重ねたのでした。
あ、と意識が飛ぶ前のことを思い出し、起き上がろうとますが、背中に激痛が走り出来ません。
なんとか状況だけでも把握しようと横になったまま頭だけを右に向けると、薬品の瓶や薬などが棚に整然と並べられています。どうやら病室のようです。私を誰かがここまで運んできてくれたのでしょう。とりあえず、襲われることはないと安堵します。
今度は頭を左に向けてみると、椅子に座ってベッドに突っ伏しているアノンさんがいました。
よかった、アノンさんが無事で、とまた安堵し、そのさらさらとした髪を撫でます。
しばらく彼の髪の毛で遊んでいると、彼はむくりと顔をあげました。半開きになった口からはよだれが垂れていて、おでこには赤く跡がついています。全く可愛らしいです。
「おはようございます…アノンさん」
私は彼にいつものように挨拶をしました。
彼ははじめ寝惚けていましたが、一瞬でその目から眠気を取り払うと、彼の顔に触れていた私の左手をとり、「はああ」と長いため息をつきました。
「生きてる…よかった…」
彼は喉の奥から絞り出すような声を出すと、私の手をとっていた小さな手に力をいれ、ギュッと握り締めました。
「どうしたのですか…アノンさん?」
こんなに取り乱したアノンさんはみたことがありません。
私の言葉に対してアノンさんは堰がきれたようにまくしたてました。
「どうしたもこうしたもないよ!僕を庇って背中に刺さった矢尻に毒がついていたんだ。そのせいでラミナは意識を失って…あれから3日間も寝てたんだぞ!」
「3日も…?」
どうやらかなりの重傷だったようです。
「お前が…全然目を覚まさないから…このまま…いなくなったら…と思うと…」
アノンさんは咽びながらも続けます。
「だから…ずっとそばにいて…ほんとにいよかった…目が覚めて……」
彼に握られている手が涙で濡れます。
「アノンさんは私が目を覚ますまでずっとここにいたのですか?」
彼はうなずきます。
「私のこと大事に思ってくれていてありがとうございます」
私は彼に思われていることにうれしくなり、微笑みました。
「何言っているんだ。感謝するのはこっちのほうだ。あんだけひどいことしておいて、生命まで助けられた。」
「医者によると、もし僕が矢を受けていたら、毒に耐えられずに死んでいたらしい。本当にありがとう、ラミナ。」
彼は目に涙をためながらも私の目をまっすぐ見ながらそう言うのでした。
しばらく彼は私の手を握ったままでしたが、だいぶ落ち着いたのか
「そうだ、医者を読んでくるよ。詳しい話しはまた後にしよう」
と立ち上がります。
「ちょっと待ってください」
私は彼を呼び止めると
「その…私に…してくださらないのですか?」
と聞きます。
アノンさんはピンとこないようで不思議そうな目でこちらを見ています。
これはこちらから言わなきゃ一生気付かなそうですね。仕方ありませんね、ヒントを差し上げましょう。
「アノンさんが結婚式の時に大勢の人の前で私にしてくれたことです。」
彼はやっと気づいたようで顔を赤らめます。初々しくて可愛いです。
「えっと、それはその…」
なんだかもじもじしています。どうしたのでしょうか?
「あの時は結婚するのは政治のためだと思って、誰でもいいと思っていたんだけど、今は…その、違うから…」
「やっと、あの時の私の気持ちがわかってくれましたか?」
私は悪戯っぽく言います。
「ごめん…」
彼はバツのわるそうな顔をしています。もっといじめてもいいのですが、今日はこれくらいにしておきましょう。
「そう思っているのだったら、もう一度初めてのキスをしましょう」
アノンさんはその言葉に覚悟を決めたのか枕元に立ち、腰をかがめて顔を近づけます。
彼の目は涙で赤く腫れていました。
「ラミナ、愛してるよ」
「私も愛してます、アノンさん」
私がそう囁くと、アノンさんはぎこちなく唇を私の唇に重ねたのでした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
11
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる