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2-27シャールから助けてと頼まれる
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「帰れる場所がある、それは幸せなことなんだ」
僕は朝日がゆっくりと顔をだしはじめる前に借りている客室に戻った、ソアンがスヤスヤとよく眠っていてその安らかな寝顔は僕の心を癒してくれた。たとえ、プルエールの森に帰れなくても、今はソアンのいるところが僕の帰れる場所なのだ。僕はベッドに戻り愛しい養い子を抱き抱えて、朝食まで少しだけ体を休めることにした。
「リタさん、ソアンさん、ジーニャス兄さまも、皆一緒のお食事でしゅ!!」
「ええ、シャール様。そうですね」
「シャールよ、二人はしばらくここに通ってくれるぞ」
「はい? いつの間にそんなことに……」
僕たちは領主の館にある食堂で朝食を振る舞われた、僕たち4人だけの食事だったがとても楽しく食べることができた。そこで食べ終わると紅茶が出されたが、それを飲みながらジーニャスはこう言った。
「フォルク兄上を助けられるのは一度きりの機会だ、リタもソアンも兄上のことは苦手だろうが、できれば救出に参加してもらいたい」
「ジーニャス、参加してもかまいません。ですが、貴方の身を一番に考えてどうしても無理そうなら諦めてください」
「リタ様が行くなら当然私も行きますが、確かにあのデビルベアの王がいるのなら諦めたほうが良いですよ」
「今回ばかりは騎士道精神などと言ったものは捨てる、とにかくあの化け物に勝てばいいからなんでもありだ」
「ということはデビルベアを倒した時に使ったように、あのデビルベアの王にも毒を使うつもりなんですね」
「その毒はどうやって用意するんですって、領主さまならいろんな薬師さんを知っていますね」
「ああ、そうだ。それにリタにもこの領主の館にある薬草園を開放する、薬を作る道具もあるから好きになんでも作って良い、それに報酬の前払いになるが欲しい薬草を持っていけ」
「それは助かります、では一度宿屋に帰って宿の延長をして必要なものをとってきます」
「それではすぐにはあの人を助けに行かないんですね、しっかりと準備してから行くのはとっても賢明だと思います」
「あのデビルベアの王は強い、この大魔法使いである俺が絶好調でも、もしかしたら倒し損ねる恐れがある。兄上には悪いが一週間ほど、それくらいなら兄上も水の初級魔法が使えるから大丈夫だろう」
「一週間、長いようで短い時間です。あのデビルベアの王を倒す用意、それをするのなら短いくらいですね」
「うわわわっ、あのザワザワって感じを思い出しちゃった。アレと戦うなんて危険過ぎませんか!?」
朝食の後にそうやってフォルクを助ける話をジーニャスからされた、気はすすまないところがあるが彼にも正当な裁きを受けてもらいたいものだ、だから危険はあるが軍もいることだし参加することにした。そうやって助けても彼が貴族から平民になって幸せになれるとは思えなかった、昨日は領主にああ言ったが人とはそう簡単には変わらないものだ。
そんなフォルクが水の魔法が使えるとジーニャスは言った、それなら何も食べるものがなくても三週間くらいは生きていられるはずだ。逆に水が飲めない状況だったなら三日も過ぎればもう命が危ない、フォルクが水の魔法を使えるのはお互いにとって良いことだった。そうしているとシャールがきょとんとした顔をして、僕たちに向かってこう言いだした。
「あのね、フォルク兄さまが危ないのなら、どうか助けてでしゅ」
「シャール様、それは……、それも皆にとってとても危ない事なんですよ」
「ええとね、でもでしゅ。きっと一人は寂しいはずなんでしゅ」
「そうですね、シャール様。たった一人ということはとても寂しいことですね」
「はいでしゅ、だから皆で一緒にいるのがいいのでしゅ」
「ええ、あの人も貴女のその言葉をもっと早く、本当にもっと早くよく聞くべきでした」
状況は分かっていないがとても優しいことを言うシャールに僕は微笑んだ、こんな幼い子どもでも知っていることをフォルクという男は理解しなかった。たった一人でいるというのはとても寂しいことだ、僕も村で若長候補をしている時は仲間であるエルフ、彼らはたくさんいるのに何故か一人きりのような気持ちだった。
どんなに人やエルフがいても、その心を想いやってくれるシャールのような人がいなければ、それはたった一人でいるのと同じことなのだ。僕にはソアンがいてくれた、彼女が僕が一人で間違ったことをしていることに気づいてくれたから、僕は村の外に出て心の病気という僕の本当の状態を知ることができた。ソアンがいなければ今も僕は村にいただろう、そしてもしかしたら間違ってしまったままで死んでいたかもしれないのだ。
そうやってたった一人でいる者は間違ってしまった時に気がつけない、そのまま間違いを正しいことだと信じてフォルクは道を踏み外してしまった。今頃、フォルクは祠にたった一人でどうしているのだろうか、少しはジーニャスに悪いことをしたと思っているだろうかそれは分からなかった。彼が少しは反省ということをしていてくれたらいい、だがそれどころではないかもしれない、安全な祠の外にはデビルベアの王がうろついているからだ。
「シャール、フォルク兄上のことは俺に任せろ。きっと助け出してみせる、誰の犠牲も出さずにな」
「はいでしゅ、ジーニャス兄さまだいしゅき!!」
「そうか、そうか、俺もシャールのことが大好きだぞ!!」
「えへへへっ、嬉しいでしゅ!!」
ジーニャスが優しいシャールを抱きしめていた、この兄妹はお互いに相手が大事だと思っている、こうやってお互いを思いやる心が大切なのだ。フォルクはこんな気持ちを誰にも抱けなかった、父親である領主ですらきっと大事に思っていないのだ。それはとても傲慢で酷く寂しいことだった、シャールの言う通りだった。
そんなフォルクを助け出すまで一週間、だがフォルクにとっては長い一週間になるだろう、命をあんな化け物のようなデビルベアの王に狙われる一週間だからだ。ジーニャスは誰の犠牲も出さないとシャールに向かって言っていた、それは本心だろう既にフォルクによって剣士や魔法使いが多く死んでいるからだ。
誰の犠牲もださずにデビルベアの王を倒す、とても危険なことだができないことでない、そう信じて僕たちは行動を開始した。僕とソアンはとりあえず宿屋に戻り、そこで冒険者ギルドから伝言を受け取った。
「ジーニャスと領主自身から冒険者ギルドを通して依頼がきた、内容はフォルクを助ける軍に参加することだけ」
「お二人とも気をつかわれたんですね、絶対にあの男を助けてこいとは書かなかった」
「なにせ相手がデビルベアの王だ、普通のデビルベアよりかなり大きかったし、仲間がやられてから出てくるあたりが狡猾だ」
「うう、ますます戦いたくなくなってきました」
「大丈夫だよ、ソアン。きっと今回は遠距離戦になるだろう、ジーニャスが犠牲は一人も出さないと言ったからね」
「それでは魔法と弓矢が主な攻撃手段でしょうか、私も弓を習っておくべきでした。ハーフでもエルフなのに……」
「それを言ったらエルフの僕だって弓は初心者程度にしか使えない、狩人の両親からも習わないで小さい頃はハープばかり触っていたよ」
「でもリタ様は魔法が使えるじゃないですか、私はせめてお使いになる魔法薬を作る手伝いをします」
そうして僕は領主の館にある薬草園を見せて貰えた、するとダンジョンにいかないと見つからないような、そんな貴重な薬草がかなりたくさんあった。何代か前の当主が元冒険者でその人が集めた薬草を、今も代々栽培して普段は何かあった時のために乾燥させてとってあるそうだ。乾燥させてある薬草の状態もとても良かった、僕の持っている物より薬作りの道具も立派だった。
「この薬草が普通においてあるなんて、人間は時々本当にとんでもないことをするな」
僕は朝日がゆっくりと顔をだしはじめる前に借りている客室に戻った、ソアンがスヤスヤとよく眠っていてその安らかな寝顔は僕の心を癒してくれた。たとえ、プルエールの森に帰れなくても、今はソアンのいるところが僕の帰れる場所なのだ。僕はベッドに戻り愛しい養い子を抱き抱えて、朝食まで少しだけ体を休めることにした。
「リタさん、ソアンさん、ジーニャス兄さまも、皆一緒のお食事でしゅ!!」
「ええ、シャール様。そうですね」
「シャールよ、二人はしばらくここに通ってくれるぞ」
「はい? いつの間にそんなことに……」
僕たちは領主の館にある食堂で朝食を振る舞われた、僕たち4人だけの食事だったがとても楽しく食べることができた。そこで食べ終わると紅茶が出されたが、それを飲みながらジーニャスはこう言った。
「フォルク兄上を助けられるのは一度きりの機会だ、リタもソアンも兄上のことは苦手だろうが、できれば救出に参加してもらいたい」
「ジーニャス、参加してもかまいません。ですが、貴方の身を一番に考えてどうしても無理そうなら諦めてください」
「リタ様が行くなら当然私も行きますが、確かにあのデビルベアの王がいるのなら諦めたほうが良いですよ」
「今回ばかりは騎士道精神などと言ったものは捨てる、とにかくあの化け物に勝てばいいからなんでもありだ」
「ということはデビルベアを倒した時に使ったように、あのデビルベアの王にも毒を使うつもりなんですね」
「その毒はどうやって用意するんですって、領主さまならいろんな薬師さんを知っていますね」
「ああ、そうだ。それにリタにもこの領主の館にある薬草園を開放する、薬を作る道具もあるから好きになんでも作って良い、それに報酬の前払いになるが欲しい薬草を持っていけ」
「それは助かります、では一度宿屋に帰って宿の延長をして必要なものをとってきます」
「それではすぐにはあの人を助けに行かないんですね、しっかりと準備してから行くのはとっても賢明だと思います」
「あのデビルベアの王は強い、この大魔法使いである俺が絶好調でも、もしかしたら倒し損ねる恐れがある。兄上には悪いが一週間ほど、それくらいなら兄上も水の初級魔法が使えるから大丈夫だろう」
「一週間、長いようで短い時間です。あのデビルベアの王を倒す用意、それをするのなら短いくらいですね」
「うわわわっ、あのザワザワって感じを思い出しちゃった。アレと戦うなんて危険過ぎませんか!?」
朝食の後にそうやってフォルクを助ける話をジーニャスからされた、気はすすまないところがあるが彼にも正当な裁きを受けてもらいたいものだ、だから危険はあるが軍もいることだし参加することにした。そうやって助けても彼が貴族から平民になって幸せになれるとは思えなかった、昨日は領主にああ言ったが人とはそう簡単には変わらないものだ。
そんなフォルクが水の魔法が使えるとジーニャスは言った、それなら何も食べるものがなくても三週間くらいは生きていられるはずだ。逆に水が飲めない状況だったなら三日も過ぎればもう命が危ない、フォルクが水の魔法を使えるのはお互いにとって良いことだった。そうしているとシャールがきょとんとした顔をして、僕たちに向かってこう言いだした。
「あのね、フォルク兄さまが危ないのなら、どうか助けてでしゅ」
「シャール様、それは……、それも皆にとってとても危ない事なんですよ」
「ええとね、でもでしゅ。きっと一人は寂しいはずなんでしゅ」
「そうですね、シャール様。たった一人ということはとても寂しいことですね」
「はいでしゅ、だから皆で一緒にいるのがいいのでしゅ」
「ええ、あの人も貴女のその言葉をもっと早く、本当にもっと早くよく聞くべきでした」
状況は分かっていないがとても優しいことを言うシャールに僕は微笑んだ、こんな幼い子どもでも知っていることをフォルクという男は理解しなかった。たった一人でいるというのはとても寂しいことだ、僕も村で若長候補をしている時は仲間であるエルフ、彼らはたくさんいるのに何故か一人きりのような気持ちだった。
どんなに人やエルフがいても、その心を想いやってくれるシャールのような人がいなければ、それはたった一人でいるのと同じことなのだ。僕にはソアンがいてくれた、彼女が僕が一人で間違ったことをしていることに気づいてくれたから、僕は村の外に出て心の病気という僕の本当の状態を知ることができた。ソアンがいなければ今も僕は村にいただろう、そしてもしかしたら間違ってしまったままで死んでいたかもしれないのだ。
そうやってたった一人でいる者は間違ってしまった時に気がつけない、そのまま間違いを正しいことだと信じてフォルクは道を踏み外してしまった。今頃、フォルクは祠にたった一人でどうしているのだろうか、少しはジーニャスに悪いことをしたと思っているだろうかそれは分からなかった。彼が少しは反省ということをしていてくれたらいい、だがそれどころではないかもしれない、安全な祠の外にはデビルベアの王がうろついているからだ。
「シャール、フォルク兄上のことは俺に任せろ。きっと助け出してみせる、誰の犠牲も出さずにな」
「はいでしゅ、ジーニャス兄さまだいしゅき!!」
「そうか、そうか、俺もシャールのことが大好きだぞ!!」
「えへへへっ、嬉しいでしゅ!!」
ジーニャスが優しいシャールを抱きしめていた、この兄妹はお互いに相手が大事だと思っている、こうやってお互いを思いやる心が大切なのだ。フォルクはこんな気持ちを誰にも抱けなかった、父親である領主ですらきっと大事に思っていないのだ。それはとても傲慢で酷く寂しいことだった、シャールの言う通りだった。
そんなフォルクを助け出すまで一週間、だがフォルクにとっては長い一週間になるだろう、命をあんな化け物のようなデビルベアの王に狙われる一週間だからだ。ジーニャスは誰の犠牲も出さないとシャールに向かって言っていた、それは本心だろう既にフォルクによって剣士や魔法使いが多く死んでいるからだ。
誰の犠牲もださずにデビルベアの王を倒す、とても危険なことだができないことでない、そう信じて僕たちは行動を開始した。僕とソアンはとりあえず宿屋に戻り、そこで冒険者ギルドから伝言を受け取った。
「ジーニャスと領主自身から冒険者ギルドを通して依頼がきた、内容はフォルクを助ける軍に参加することだけ」
「お二人とも気をつかわれたんですね、絶対にあの男を助けてこいとは書かなかった」
「なにせ相手がデビルベアの王だ、普通のデビルベアよりかなり大きかったし、仲間がやられてから出てくるあたりが狡猾だ」
「うう、ますます戦いたくなくなってきました」
「大丈夫だよ、ソアン。きっと今回は遠距離戦になるだろう、ジーニャスが犠牲は一人も出さないと言ったからね」
「それでは魔法と弓矢が主な攻撃手段でしょうか、私も弓を習っておくべきでした。ハーフでもエルフなのに……」
「それを言ったらエルフの僕だって弓は初心者程度にしか使えない、狩人の両親からも習わないで小さい頃はハープばかり触っていたよ」
「でもリタ様は魔法が使えるじゃないですか、私はせめてお使いになる魔法薬を作る手伝いをします」
そうして僕は領主の館にある薬草園を見せて貰えた、するとダンジョンにいかないと見つからないような、そんな貴重な薬草がかなりたくさんあった。何代か前の当主が元冒険者でその人が集めた薬草を、今も代々栽培して普段は何かあった時のために乾燥させてとってあるそうだ。乾燥させてある薬草の状態もとても良かった、僕の持っている物より薬作りの道具も立派だった。
「この薬草が普通においてあるなんて、人間は時々本当にとんでもないことをするな」
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