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2-29デビルベアの王が咆哮する
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「さぁ、デビルベアの王。その首をとってみせるぞ、そのついでに兄上を連れ帰る」
そう言ってジーニャスは僕たちに笑ってみせた、そのくらい強気でいかないとあのデビルベアの王には敵わない。そうして僕たちは明日へ備えてそれぞれが休息をとることにした、僕は宿屋から持ってきた眠り薬を飲んで領主の館の客室で、いつものようにソアンと一緒にベッドで寝ることにした。ソアンは珍しく緊張していて眠れないようだった、だから子どもの時のように子守唄を歌って寝かしつけた。
「ふあぁ~、私は~、もう子供じゃ~、ないのです~。ふぁ~あ……」
「ゆっくりとお休み、僕の大切な優しい養い子」
その翌日は僕も良く眠れたおかげで朝から起き上がることができた、いつもの病気の症状もでなくて一安心した。そうして夕方まで僕たちは最後の準備をして、いよいよエテルノのダンジョンに入ることになった。エテルノのダンジョンからは随分と人が減っていた、そこにいる人にその理由を聞いてみると、やはり巨大なデビルベアが出現したそうだ。
それは巨大なデビルベアで何人もの冒険者が犠牲になった、さすがにエリクサーを手に入れたくても、そんな恐ろしい敵の話を聞けば行きたくなくなる者もでるわけだ。僕たちはジーニャスが率いる100名ほどの軍と一緒にエテルノのダンジョンに入った、この瞬間が中に何があるのか分からなくて一番危ないのだから緊張した。
幸いなことに最初に様子を見に兵士が中を見てみたが、デビルベアの王らしきものは現れなかった。そのまま軍と一緒に中に入っていったが、森と夕暮れの空が広がっているだけだった。僕たちはジーニャスの指揮のもと、森は避けて見通しの良い草原を通って、フォルクがいる目的の祠を目指した。強敵がいるかもしれないと思いながら歩くのは気を使った、一歩ずつ進んでいったが常に周囲に注意を払った。
「これから森に入る、目的の祠はそこにある。兄上を救出したら脱出するが、皆の仇であるデビルベアに気をつけろ!!」
ジーニャスが短く命令して軍は森に入っていった、ごく普通の森だが茂みの中などに何がいるか分からない。長く続く緊張は僕たちの神経をすり減らしていった、そうしてようやく祠についた時、僕は森がまたざわめくのが分かった。だからソアンとジーニャスに素早く合図して注意を促した、何もいないように思えたがそれは祠の上から僕らの頭上から現れた。
「デビルベアだ!! なんて大きい!?」
「くるぞ!! 陣形を崩すな!!」
「なんて大きさだ!?」
「ひぃ、こんな奴がいるのか!?」
「槍を構えろ!! 弓矢で狙え!!」
頭上から現れたデビルベアの王は地響きのような咆哮をし、その巨体で僕たちの方に祠から落下するように突っ込んできた。僕は用意していた薬をどうにか飲みこんだ、でもその前にジーニャスが僕たち皆を守って上級魔法を使った。
「『完全なる聖なる守り!!』」
ジーニャスが使ったのは広範囲の防御魔法だった、おかげでデビルベアの王に皆は踏みつぶされずにすんだ。そして魔法に守られていると余裕ができた兵たちは攻撃を開始した、するとだ森の奥から普通のデビルベアが何頭も現れた。僕たちは祠を背にしながらデビルベアたちと戦うことになった、デビルベアの王は狡猾だった、一度僕たちを襲った後は森の中に隠れてまた姿を消した。
「『強雷撃!!』」
「『火炎嵐!!』」
「『風斬撃!!』」
ジーニャスの防御魔法が効いている間に配下の魔法使いがデビルベアに攻撃した、兵士たちも毒をつかった弓矢や槍などでデビルベアに抵抗した。やはり魔法が一番に効果を発揮した、雷に打たれて脳を焼かれたり、鋭い風の一撃で体を二つにされたり、炎の嵐に襲われて炭になったデビルベアもいた。僕はまだ魔法を温存していた、ジーニャスも同じようで兵士たちに指示を出しつつ、デビルベアの王を警戒して探していた。
「フォルク様だ、フォルク様がいらしたぞ」
「おお、無事でいらした」
「フォルク様、大丈夫ですか」
「誰か、すぐに治療班を!!」
「怪我はございませんか?」
やがて僕たちが背にしていた祠からフォルクが出てきた、少しばかりふらついていたがそれは一週間も食事をとっていないからだろう、それでも信じられないくらいの強気で彼はこう言いだした。
「ジーニャス!! 貴様、さっさと俺様と指揮を代われ!!」
「お断りします、兄上。今回の指揮権は俺にあります」
そこで僕はフォルクにこっそりと近づいて、小さな声ででも効果範囲は狭く威力は最大で『気絶』の魔法をかけた。フォルクはその場でいきなり倒れこんだ、僕はあまり近づきたくなかったが、一応はその健康状態を観察し確かめた。いくらか衰弱はしているものの、一週間も何も食べていないにしては元気そうだった。フォルクが倒れたことに兵士たちは少し動揺したが、ジーニャスがこう言っておさめていた。
「兄上は一週間も何も口にしていない、気を失われたままでよいからお運びしろ!!武器などもとりあげておけ、今は弱った体の重みにしかならん」
これでジーニャスの目的は達成された、無力化したフォルクを彼は捕まえた、あとはフォルクをこのまま無事に連れ帰れれば彼の勝ちだ。だがデビルベアの王はいまだに姿を見せなかった、他のデビルベアも警戒して魔法や弓矢の効果範囲にこなくなった。僕はまだ森から背中をひんやりと氷が滑るような、そんな恐ろしい感じがしてならなかった。ソアンも槍を硬く握りしめて、森をじっと見つめていた。
だがいつまでもこの祠の森にいても仕方がない、ジーニャスの指揮で陣形を崩さないように移動が始まった。フォルクは治療をする兵士が担いで連れていっていた、僕たちはじりじりと進んで森をぬけようとしていた。そんな一瞬の気の緩んだところに一斉に十数頭のデビルベアが突進してきた、兵士たちの弓矢も槍もあたらず、魔法使いたちはおもわず魔法を外してしまった。
「『完全なる聖なる守り!!』」
今度は僕が上級の防御魔法を使った、それで兵士たちを一人も傷つけることなく守れた、続いてジーニャスが攻撃の上級魔法を使った。
「『抱かれよ煉獄の熱界雷!!』」
十数頭いたデビルベアたちは強力な雷に打たれて焼け死んでいった、ジーニャスは大魔法使いだというだけあって、味方は誰も傷つけずに敵であるデビルベアだけを雷で殺してみせた。もう安全かと誰もが気を抜いた時にまた咆哮がした、耳を塞ぎたくなるような激しい怒りの咆哮だった。そしてデビルベアの王がまた十数頭のデビルベアを引き連れて現れた、兵士と魔法使いの間に動揺が起こったがその時だった。
「いい加減にうるっさいのです!!」
そう言ってジーニャスは僕たちに笑ってみせた、そのくらい強気でいかないとあのデビルベアの王には敵わない。そうして僕たちは明日へ備えてそれぞれが休息をとることにした、僕は宿屋から持ってきた眠り薬を飲んで領主の館の客室で、いつものようにソアンと一緒にベッドで寝ることにした。ソアンは珍しく緊張していて眠れないようだった、だから子どもの時のように子守唄を歌って寝かしつけた。
「ふあぁ~、私は~、もう子供じゃ~、ないのです~。ふぁ~あ……」
「ゆっくりとお休み、僕の大切な優しい養い子」
その翌日は僕も良く眠れたおかげで朝から起き上がることができた、いつもの病気の症状もでなくて一安心した。そうして夕方まで僕たちは最後の準備をして、いよいよエテルノのダンジョンに入ることになった。エテルノのダンジョンからは随分と人が減っていた、そこにいる人にその理由を聞いてみると、やはり巨大なデビルベアが出現したそうだ。
それは巨大なデビルベアで何人もの冒険者が犠牲になった、さすがにエリクサーを手に入れたくても、そんな恐ろしい敵の話を聞けば行きたくなくなる者もでるわけだ。僕たちはジーニャスが率いる100名ほどの軍と一緒にエテルノのダンジョンに入った、この瞬間が中に何があるのか分からなくて一番危ないのだから緊張した。
幸いなことに最初に様子を見に兵士が中を見てみたが、デビルベアの王らしきものは現れなかった。そのまま軍と一緒に中に入っていったが、森と夕暮れの空が広がっているだけだった。僕たちはジーニャスの指揮のもと、森は避けて見通しの良い草原を通って、フォルクがいる目的の祠を目指した。強敵がいるかもしれないと思いながら歩くのは気を使った、一歩ずつ進んでいったが常に周囲に注意を払った。
「これから森に入る、目的の祠はそこにある。兄上を救出したら脱出するが、皆の仇であるデビルベアに気をつけろ!!」
ジーニャスが短く命令して軍は森に入っていった、ごく普通の森だが茂みの中などに何がいるか分からない。長く続く緊張は僕たちの神経をすり減らしていった、そうしてようやく祠についた時、僕は森がまたざわめくのが分かった。だからソアンとジーニャスに素早く合図して注意を促した、何もいないように思えたがそれは祠の上から僕らの頭上から現れた。
「デビルベアだ!! なんて大きい!?」
「くるぞ!! 陣形を崩すな!!」
「なんて大きさだ!?」
「ひぃ、こんな奴がいるのか!?」
「槍を構えろ!! 弓矢で狙え!!」
頭上から現れたデビルベアの王は地響きのような咆哮をし、その巨体で僕たちの方に祠から落下するように突っ込んできた。僕は用意していた薬をどうにか飲みこんだ、でもその前にジーニャスが僕たち皆を守って上級魔法を使った。
「『完全なる聖なる守り!!』」
ジーニャスが使ったのは広範囲の防御魔法だった、おかげでデビルベアの王に皆は踏みつぶされずにすんだ。そして魔法に守られていると余裕ができた兵たちは攻撃を開始した、するとだ森の奥から普通のデビルベアが何頭も現れた。僕たちは祠を背にしながらデビルベアたちと戦うことになった、デビルベアの王は狡猾だった、一度僕たちを襲った後は森の中に隠れてまた姿を消した。
「『強雷撃!!』」
「『火炎嵐!!』」
「『風斬撃!!』」
ジーニャスの防御魔法が効いている間に配下の魔法使いがデビルベアに攻撃した、兵士たちも毒をつかった弓矢や槍などでデビルベアに抵抗した。やはり魔法が一番に効果を発揮した、雷に打たれて脳を焼かれたり、鋭い風の一撃で体を二つにされたり、炎の嵐に襲われて炭になったデビルベアもいた。僕はまだ魔法を温存していた、ジーニャスも同じようで兵士たちに指示を出しつつ、デビルベアの王を警戒して探していた。
「フォルク様だ、フォルク様がいらしたぞ」
「おお、無事でいらした」
「フォルク様、大丈夫ですか」
「誰か、すぐに治療班を!!」
「怪我はございませんか?」
やがて僕たちが背にしていた祠からフォルクが出てきた、少しばかりふらついていたがそれは一週間も食事をとっていないからだろう、それでも信じられないくらいの強気で彼はこう言いだした。
「ジーニャス!! 貴様、さっさと俺様と指揮を代われ!!」
「お断りします、兄上。今回の指揮権は俺にあります」
そこで僕はフォルクにこっそりと近づいて、小さな声ででも効果範囲は狭く威力は最大で『気絶』の魔法をかけた。フォルクはその場でいきなり倒れこんだ、僕はあまり近づきたくなかったが、一応はその健康状態を観察し確かめた。いくらか衰弱はしているものの、一週間も何も食べていないにしては元気そうだった。フォルクが倒れたことに兵士たちは少し動揺したが、ジーニャスがこう言っておさめていた。
「兄上は一週間も何も口にしていない、気を失われたままでよいからお運びしろ!!武器などもとりあげておけ、今は弱った体の重みにしかならん」
これでジーニャスの目的は達成された、無力化したフォルクを彼は捕まえた、あとはフォルクをこのまま無事に連れ帰れれば彼の勝ちだ。だがデビルベアの王はいまだに姿を見せなかった、他のデビルベアも警戒して魔法や弓矢の効果範囲にこなくなった。僕はまだ森から背中をひんやりと氷が滑るような、そんな恐ろしい感じがしてならなかった。ソアンも槍を硬く握りしめて、森をじっと見つめていた。
だがいつまでもこの祠の森にいても仕方がない、ジーニャスの指揮で陣形を崩さないように移動が始まった。フォルクは治療をする兵士が担いで連れていっていた、僕たちはじりじりと進んで森をぬけようとしていた。そんな一瞬の気の緩んだところに一斉に十数頭のデビルベアが突進してきた、兵士たちの弓矢も槍もあたらず、魔法使いたちはおもわず魔法を外してしまった。
「『完全なる聖なる守り!!』」
今度は僕が上級の防御魔法を使った、それで兵士たちを一人も傷つけることなく守れた、続いてジーニャスが攻撃の上級魔法を使った。
「『抱かれよ煉獄の熱界雷!!』」
十数頭いたデビルベアたちは強力な雷に打たれて焼け死んでいった、ジーニャスは大魔法使いだというだけあって、味方は誰も傷つけずに敵であるデビルベアだけを雷で殺してみせた。もう安全かと誰もが気を抜いた時にまた咆哮がした、耳を塞ぎたくなるような激しい怒りの咆哮だった。そしてデビルベアの王がまた十数頭のデビルベアを引き連れて現れた、兵士と魔法使いの間に動揺が起こったがその時だった。
「いい加減にうるっさいのです!!」
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