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3-2綺麗な者たちが狙われる
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「リタ様みたいに綺麗なエルフもいるんですね、いやでもリタ様が少年の頃はもっと美少年だったです」
「そうだったかな? あの頃はハープばかり演奏していて、まだ魔法も上手く使えなかった」
「リタ様に初めてお会いした時にあんまり綺麗な男の子だったから、私は自分のみすぼらしい容姿が恥ずかしくてまともに話もできませんでした」
「ソアンと初めて会った時か、僕は君が女の子だって気がつかなくて、男の子相手のような失礼なことを言ってしまった」
「仕方がありません、あの頃の私は髪も短かくてそれに凄く痩せてて、とても女の子には見えませんでした」
「最初はよく君にうなられたのを覚えてる、あれは話がしたくても上手くできなかっただけなんだね」
ソアンとその母のファインさんは僕が成人する頃に村に帰ってきた、ソアンはその当時は髪が短くて痩せていて男の子のように見えた。だから僕は男の子の友達ができると思って話しかけたんだ、返事は唸り声とそれにいきなり頬をひっぱたかれてびっくりした。でも可愛い女の子を男の子扱いしたから僕が悪かった、それからは根気強くソアンとはお話して、今のようにとても仲良くなったんだ。
ソアンは僕の自慢の養い子だ、僕が教えたこと以上のことをよく知っているし、それに誰よりも優しくて行動力がある女の子だ。僕を村から助け出してくれたのもソアンだし、それからの冒険だっていつもソアンがいてくれたから生き延びられてきた。僕はそう思ってソアンに感謝している、そんなふうにいつも頼ってしまっているから、できるだけ彼女の願いは叶えてやりたいと思っているんだ。
「さて試験に合格したお祝いをしよう、それじゃあソアンの今のお願いはなんだい」
「えへへへっ、無事に鉄の冒険者になりましたし、リタ様こそなにかお願いがありますか」
「僕? うーん、それじゃ僕はソアンと美味しいご飯が食べたいかな」
「いいですね、鉄の冒険者の合格祝いに宿屋の酒場でいい肉を食べましょう!!」
「そうだね、もう時間も夕方になったし、宿屋に帰って豪華な食事を楽しもう」
「わーい、お肉だ、お肉!! 今日は美味しいステーキが食べたいです」
街に食べに行っても良かったが、鉄の冒険者の試験にほぼ一日かかったので、大人しく夕暮れの中を宿屋に帰ることにした。僕は合格して機嫌が良いソアンと一緒に歩けて幸せだった、ソアンも僕と同じで笑顔で楽しそうにしていた。そうやってとても楽しく過ごしていたのに、僕たちは帰り道で大変なものを見つけてしまった。
この街に慣れていたから宿屋への近道の裏路地に入った時のことだった、血の匂いがして僕は思わず首を傾げた。この辺りには肉屋も魚屋もなかったはずだからだ、だから誰か喧嘩でもしたのかと思って歩いていた。そうして裏路地を歩いていて角を曲がったら、顔も体も血まみれの女の人が倒れていたのだ。僕とソアンは慌ててかけよって、そうして二人で声をかけた。
「大丈夫ですか、どうしたんです!!」
「リタ様、この方はもう息をしていません!?」
「どうしようか、クレーネ草の薬で回復魔法を!!」
「いえ、無理です。もう体がひどく冷たいし、死後硬直がおきかけています」
「…………そうか助けられなくて残念だ、それじゃ警備隊に連絡しないといけない」
「はい、リタ様ここを任せていいですか? 私が役所まで警備隊を呼びに行ってきます!!」
僕はソアンにこの殺人の犯人がいて危険かもしれないから気をつけるように言った、それからソアンは街の役場に走って行って何人か警備隊を呼んできた。僕はそれまでの間に女性の遺体を観察させてもらった、顔も酷く血で汚れていて誰だか分からなかった、それに体には何十回も刺された惨い傷跡が残っていた。
やがてソアンが呼んできた警備隊に僕たちも詳しく発見した時の話を聞かれた、でも僕たちは昼間は冒険者ギルドにいたので偶々見つけたとしか話せなかった。
「こりゃ、誰だ?」
「ここいらで商売をしてたレーチェだよ」
「ああ、あの綺麗な娼婦か」
「すっげぇ美人だったよな、まったく勿体ねぇ」
「じゃあ、客ともめたのか」
「それにしてはよ、最近多くないか」
「そうだ今月で、もう5人目だ」
僕たちの前で警備隊は遺体を改めて見て、それから色々と仲間同士で話をしていた。遺体は死後硬直がはじまっていることから一刻は経っているし、僕たちはその頃は冒険者ギルドで試験を受けていた。だからすぐに警備隊から解放された、殺されたらしい女性のことが気にはなったがこれ以上できることもなかった、だから世界の大きな光に彼女の魂が無事にかえることを僕は密かに祈った。
思わぬ出来事に出会ったので宿屋に帰る頃には真っ暗になっていた、やがて宿屋の酒場から陽気なミーティアの歌声が聞こえてきて、それでやっと日常に帰ってきたのだという気がした。僕たちは血まみれの遺体を思い出すと食欲がわかなかった、だから鉄の冒険者になったお祝いはまた後日することにして、いつもの肉と野菜のスープと硬めのパンで夕食にした。
「さっきの女性、何故殺されたんでしょうね」
「警備隊は娼婦だ言っていた、客ともめたのかもしれない」
「それは随分と恨まれてたんでしょう、刺し傷が無数にありました」
「そうだね、それに顔も血だらけでよく分からなかった」
「……生きていた頃は、とても綺麗な人でしたよ」
「え? ソアン、君の知っている人間だったのかい」
食事が終わると自然とさっきの遺体の話を僕たちはしていた、あまりにも衝撃的な出来事ですぐには忘れられそうになかった。別に遺体をみるのは初めてではない、村のお葬式に何度も立ち会ったことがあった。少し前にはデビルベアに殺されてバラバラになった遺体も見た、だから初めてではないのだが今回の遺体はまた変わっているような気がした。すると、ソアンが僕が知らないことを言いだした。
「私は生きてる頃のレーチェ、彼女に会ったことがあります」
「ええともしかして、親しい友達だったのかな」
「いえ、ただ会えば挨拶をするくらいの仲でした。気さくで綺麗な、とても美しい女性でしたよ」
「その顔も執拗に傷つけられていた、どこかで酷く恨まれていたのかな」
「商売は褒められるものじゃないですけど、挨拶をしたら笑顔で言葉を返してくれる良い人でした」
「……ソアン。それじゃ辛い別れになったね、彼女の魂が世界の大きな光に帰れるように祈ろう」
僕とソアンはその会話の後、しばらくお互いにレーチェという女性が、世界の大きな光に魂が無事にかえれるようにと祈った。それからあとはせっかく合格した鉄の冒険者証の話になった、ちなみにミーティアは銀の冒険者証をもっているから、僕たちより冒険者としてランクが上なのだ。そんな彼女の歌を聞きながら、さっきの残酷な出来事を僕たちはしばらく忘れていた。
でもミーティアにいつもの音楽の指導を始めたら、またさっきの遺体の話に戻ることになった。ミーティアは最近どんどん歌もリュートを弾くのも上手くなっている、だから僕が指摘して直すことも減ってきていた。さすがに僕は約250歳で年上なので歌と音楽ではミーティアに負けないが、同じ人間同士だったならもう負けていたかもしれなかった。そんなミーティアが、さっきの遺体の話に興味を持ったのだ。
「へぇ~、師匠らはまた見つかった娼婦の遺体を見たんか?」
「ああ、5人目だと言っていたけど、そんなに娼婦とは殺されるものなのか」
「危険な仕事でしょうけど、死ぬまで関係がこじれるものでしょうか」
「ほやな、色恋沙汰は難しいことやからな。こじれる時はこじれるもんや、でもちょっと多いなぁ」
「今月も終わりに近いけれど、一週間に一人は死んでいることになる」
「ゼーエンの街は大きいですけど、ちょっと異常な数字な気がしますね」
「それにな、綺麗で美人の娼婦ばかり狙われてるんやて」
「さっきの女性も生きていた頃は、凄い美人だと言われていたな」
「むうぅ、もしかして連続殺人犯でもいるんでしょうか?」
僕はソアンの言葉に首を傾げた、連続殺人犯という単語に心当たりがなかったからだ。連続殺人犯、つまりは連続で人を殺す犯人ということだろうか、そんな犯行をする人間がいるとは本には載っていなかった。ミーティアも初めて聞く言葉のようで、ソアンの言うことに僕と同じく首を傾げていた。ソアンはちょっと考えをまとめようとしているのか黙った、そしてしばらくして僕とミーティアにこう言ってきた。
「本当に連続殺人犯かもしれません、綺麗な方が狙われるならお二人とも気をつけてください」
「そうだったかな? あの頃はハープばかり演奏していて、まだ魔法も上手く使えなかった」
「リタ様に初めてお会いした時にあんまり綺麗な男の子だったから、私は自分のみすぼらしい容姿が恥ずかしくてまともに話もできませんでした」
「ソアンと初めて会った時か、僕は君が女の子だって気がつかなくて、男の子相手のような失礼なことを言ってしまった」
「仕方がありません、あの頃の私は髪も短かくてそれに凄く痩せてて、とても女の子には見えませんでした」
「最初はよく君にうなられたのを覚えてる、あれは話がしたくても上手くできなかっただけなんだね」
ソアンとその母のファインさんは僕が成人する頃に村に帰ってきた、ソアンはその当時は髪が短くて痩せていて男の子のように見えた。だから僕は男の子の友達ができると思って話しかけたんだ、返事は唸り声とそれにいきなり頬をひっぱたかれてびっくりした。でも可愛い女の子を男の子扱いしたから僕が悪かった、それからは根気強くソアンとはお話して、今のようにとても仲良くなったんだ。
ソアンは僕の自慢の養い子だ、僕が教えたこと以上のことをよく知っているし、それに誰よりも優しくて行動力がある女の子だ。僕を村から助け出してくれたのもソアンだし、それからの冒険だっていつもソアンがいてくれたから生き延びられてきた。僕はそう思ってソアンに感謝している、そんなふうにいつも頼ってしまっているから、できるだけ彼女の願いは叶えてやりたいと思っているんだ。
「さて試験に合格したお祝いをしよう、それじゃあソアンの今のお願いはなんだい」
「えへへへっ、無事に鉄の冒険者になりましたし、リタ様こそなにかお願いがありますか」
「僕? うーん、それじゃ僕はソアンと美味しいご飯が食べたいかな」
「いいですね、鉄の冒険者の合格祝いに宿屋の酒場でいい肉を食べましょう!!」
「そうだね、もう時間も夕方になったし、宿屋に帰って豪華な食事を楽しもう」
「わーい、お肉だ、お肉!! 今日は美味しいステーキが食べたいです」
街に食べに行っても良かったが、鉄の冒険者の試験にほぼ一日かかったので、大人しく夕暮れの中を宿屋に帰ることにした。僕は合格して機嫌が良いソアンと一緒に歩けて幸せだった、ソアンも僕と同じで笑顔で楽しそうにしていた。そうやってとても楽しく過ごしていたのに、僕たちは帰り道で大変なものを見つけてしまった。
この街に慣れていたから宿屋への近道の裏路地に入った時のことだった、血の匂いがして僕は思わず首を傾げた。この辺りには肉屋も魚屋もなかったはずだからだ、だから誰か喧嘩でもしたのかと思って歩いていた。そうして裏路地を歩いていて角を曲がったら、顔も体も血まみれの女の人が倒れていたのだ。僕とソアンは慌ててかけよって、そうして二人で声をかけた。
「大丈夫ですか、どうしたんです!!」
「リタ様、この方はもう息をしていません!?」
「どうしようか、クレーネ草の薬で回復魔法を!!」
「いえ、無理です。もう体がひどく冷たいし、死後硬直がおきかけています」
「…………そうか助けられなくて残念だ、それじゃ警備隊に連絡しないといけない」
「はい、リタ様ここを任せていいですか? 私が役所まで警備隊を呼びに行ってきます!!」
僕はソアンにこの殺人の犯人がいて危険かもしれないから気をつけるように言った、それからソアンは街の役場に走って行って何人か警備隊を呼んできた。僕はそれまでの間に女性の遺体を観察させてもらった、顔も酷く血で汚れていて誰だか分からなかった、それに体には何十回も刺された惨い傷跡が残っていた。
やがてソアンが呼んできた警備隊に僕たちも詳しく発見した時の話を聞かれた、でも僕たちは昼間は冒険者ギルドにいたので偶々見つけたとしか話せなかった。
「こりゃ、誰だ?」
「ここいらで商売をしてたレーチェだよ」
「ああ、あの綺麗な娼婦か」
「すっげぇ美人だったよな、まったく勿体ねぇ」
「じゃあ、客ともめたのか」
「それにしてはよ、最近多くないか」
「そうだ今月で、もう5人目だ」
僕たちの前で警備隊は遺体を改めて見て、それから色々と仲間同士で話をしていた。遺体は死後硬直がはじまっていることから一刻は経っているし、僕たちはその頃は冒険者ギルドで試験を受けていた。だからすぐに警備隊から解放された、殺されたらしい女性のことが気にはなったがこれ以上できることもなかった、だから世界の大きな光に彼女の魂が無事にかえることを僕は密かに祈った。
思わぬ出来事に出会ったので宿屋に帰る頃には真っ暗になっていた、やがて宿屋の酒場から陽気なミーティアの歌声が聞こえてきて、それでやっと日常に帰ってきたのだという気がした。僕たちは血まみれの遺体を思い出すと食欲がわかなかった、だから鉄の冒険者になったお祝いはまた後日することにして、いつもの肉と野菜のスープと硬めのパンで夕食にした。
「さっきの女性、何故殺されたんでしょうね」
「警備隊は娼婦だ言っていた、客ともめたのかもしれない」
「それは随分と恨まれてたんでしょう、刺し傷が無数にありました」
「そうだね、それに顔も血だらけでよく分からなかった」
「……生きていた頃は、とても綺麗な人でしたよ」
「え? ソアン、君の知っている人間だったのかい」
食事が終わると自然とさっきの遺体の話を僕たちはしていた、あまりにも衝撃的な出来事ですぐには忘れられそうになかった。別に遺体をみるのは初めてではない、村のお葬式に何度も立ち会ったことがあった。少し前にはデビルベアに殺されてバラバラになった遺体も見た、だから初めてではないのだが今回の遺体はまた変わっているような気がした。すると、ソアンが僕が知らないことを言いだした。
「私は生きてる頃のレーチェ、彼女に会ったことがあります」
「ええともしかして、親しい友達だったのかな」
「いえ、ただ会えば挨拶をするくらいの仲でした。気さくで綺麗な、とても美しい女性でしたよ」
「その顔も執拗に傷つけられていた、どこかで酷く恨まれていたのかな」
「商売は褒められるものじゃないですけど、挨拶をしたら笑顔で言葉を返してくれる良い人でした」
「……ソアン。それじゃ辛い別れになったね、彼女の魂が世界の大きな光に帰れるように祈ろう」
僕とソアンはその会話の後、しばらくお互いにレーチェという女性が、世界の大きな光に魂が無事にかえれるようにと祈った。それからあとはせっかく合格した鉄の冒険者証の話になった、ちなみにミーティアは銀の冒険者証をもっているから、僕たちより冒険者としてランクが上なのだ。そんな彼女の歌を聞きながら、さっきの残酷な出来事を僕たちはしばらく忘れていた。
でもミーティアにいつもの音楽の指導を始めたら、またさっきの遺体の話に戻ることになった。ミーティアは最近どんどん歌もリュートを弾くのも上手くなっている、だから僕が指摘して直すことも減ってきていた。さすがに僕は約250歳で年上なので歌と音楽ではミーティアに負けないが、同じ人間同士だったならもう負けていたかもしれなかった。そんなミーティアが、さっきの遺体の話に興味を持ったのだ。
「へぇ~、師匠らはまた見つかった娼婦の遺体を見たんか?」
「ああ、5人目だと言っていたけど、そんなに娼婦とは殺されるものなのか」
「危険な仕事でしょうけど、死ぬまで関係がこじれるものでしょうか」
「ほやな、色恋沙汰は難しいことやからな。こじれる時はこじれるもんや、でもちょっと多いなぁ」
「今月も終わりに近いけれど、一週間に一人は死んでいることになる」
「ゼーエンの街は大きいですけど、ちょっと異常な数字な気がしますね」
「それにな、綺麗で美人の娼婦ばかり狙われてるんやて」
「さっきの女性も生きていた頃は、凄い美人だと言われていたな」
「むうぅ、もしかして連続殺人犯でもいるんでしょうか?」
僕はソアンの言葉に首を傾げた、連続殺人犯という単語に心当たりがなかったからだ。連続殺人犯、つまりは連続で人を殺す犯人ということだろうか、そんな犯行をする人間がいるとは本には載っていなかった。ミーティアも初めて聞く言葉のようで、ソアンの言うことに僕と同じく首を傾げていた。ソアンはちょっと考えをまとめようとしているのか黙った、そしてしばらくして僕とミーティアにこう言ってきた。
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