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3-17連続殺人犯を追いかける
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「上級魔法を使える者か、そんな者がやけになると何百人も殺すかもしれない」
「そうさせないように、早くその者を捕まえましょう」
そうソアンは僕に言った、僕もその言葉に笑って頷いた。ソアンはいつだって前向きで優しい、僕の大切な養い子であり妹のような存在だ。ソアンは最近は僕が贈った桜の髪留めをつけていた、二つにくくった髪をそれぞれ髪留めでまとめている。ソアンの薄茶色の髪に白い桜はとてもよく似合った、いやこれが養い子への欲目というものかもしれなかった。数日後、僕の体調が良くなるとソアンは言った。
「さぁ、リタ様。あまり気が進みませんけど、今までの被害者をもう一度調べなおしてみましょう」
「そのためには遺族と会わないと、僕たちに話をしてくれるかな」
「ジーニャスさんがその為に、証書を書いてくれました。この二人の殺人鬼を調べる行動に、すすんで協力することだそうです」
「ああ、本当だ。ジーニャスは人を使うのが上手いな、これなら遺族から無視されることもないだろう」
「まずは最初の殺人と言われてる娼婦の方からです、彼女が働いていた娼館に行きますよ。リタ様」
「彼女は娼館で働いていたのか、それじゃあ行ってみるとしよう」
僕たちは最初の被害者から連続殺人犯を追いかけていくことにした、最初の被害者は娼婦で娼館で働いていた。子どもがいる女性でとても美しかったと娼館の誰もが言った、娼館で働いているだけあって男性の扱いも上手くて、そんな彼女が殺人鬼に油断するわけがなかった。というのが娼館の女将の話だった、大体の他の娼婦の子も同じ話をした。
彼女の部屋は別の娼婦がもう使っていたが、特別に昼間だったが部屋の中に入れて貰えた。僕は綺麗な部屋だと思ったと同時に錯覚を見たような気がした、あの恐ろしい夢の美しい夫婦の部屋にとても内装が似ていたのだ。僕はそれで連続殺人犯も同じように思ったのかもしれない、そうしてそこにいた美しい者に何かが起こり反射的に殺してしまったのだ。
「最初の殺人がある意味で一番手がかりになるんです、犯人が何に怒りを感じてどんな行動をとったのか、どうして女性を殺そうと思ったのかが分かりやすいんです」
「ソアン、君にも嫌だろうけどこれから恐ろしい夢の話をするよ。僕はおそらく犯人と心の共有をして夢を見た、この部屋はその中に出てきた部屋にそっくりだ」
ソアンは僕が見た夢の話を熱心に聞いていた、そうしてから改めて部屋を見て気がついた。果物と一緒にナイフが置かれていたのだ、もし連続殺人犯がこの部屋を奴隷だった時の夫婦の部屋だと錯覚した時に、そこに偶々果物を剥こうと刃物を持った美しい者がいた。これだけの夢と似ている要素が揃ったら、それは殺人が起きても不思議ではなかった。だから、部屋を出て娼館の女将に僕とソアンは聞いてみた。
「事件が起こった時、その部屋にあった果物ナイフは見つかりましたか」
「ああ、あの時のね。それは惨い仕打ちだったわ、殺された彼女の片目に突き刺してあったのよ」
「そうですか、確かにリタ様が言った通りのようですね」
「ここは娼館だから、来た客は男性だったのかな。ソアン」
「それが分からないのさ、黒いローブで全身を隠していた。だから他の子は相手をするのを嫌がったの、あの子は優しい子だったから相手をするって言ってしまったのさ、背は低かったからきっと少年ような気がするわ」
「貴重な情報をありがとうございました、お休み中の昼間に失礼しました」
僕とソアンは娼館を出て話し合った、娼館は基本的に女性を男性が買いに来る、稀にそうでない場合もあった。でも今回は夢でみたとおりなら少年が犯人だ、いや時間が経って成長しているはずだから、もう大人になっているはずだった。きっと成長期になる前に去勢されたせいで、十分に成長できなかったに違いなかった。
「リタ様の夢のお話はとても怖いことですが、貴重な犯人の手がかりになります」
「殺された娼婦も可哀そうだが、殺した連続殺人犯も気の毒な相手だね。ソアン」
「リタ様、殺した者に同情してはいけません。殺人は殺人なのです、被害者は生き返らないんです」
「それはそうなんだが、あの夢を見た後だと連続殺人犯も、とても辛い思いをしたんだと思うんだ」
「辛い思いをしたら殺人をしてもいいのですか、殺された罪もない人たちは生き返りますか」
「分かったよ、ソアン。君が言っていることが正しい、確かに酷い目に遭ったからといって人を殺してはいけない」
僕は随分と連続殺人犯に同情をしているようだった、ソアンとの会話でそれはいけないと気づかされた。確かに酷い目に遭ったからといって、別の人間相手に殺人を犯してはいけないのだ。最初の殺人を調べなおしてみて分かったのは、連続殺人犯にとって精神的苦痛になるものが揃ってしまっていた。でも最初から黒いローブで姿を隠していたり、その後の逃走の早さからこれが最初の殺人ではないということだった。
既に殺人に手慣れている者の犯行じゃないとおかしい、最初から姿を隠して誰かを殺す気で連続殺人犯はやってきたのだった。だとしたら連続殺人犯はこの街の人間とは考えにくかった、最近になってこの街に来た者のように思えた。そうして別の街でもきっと同じような犯行を起こしているはずだ、そうやって殺し続けて移動しているのかもしれなかった。
「確かにこれが最初の殺人じゃないですね、意図的に自分の姿を隠して獲物を探していたようです」
「それならば最近街に来た者、街の住人以外を調べて貰った方がいいね」
「浮浪者、吟遊詩人、冒険者、遊び人、商人、いろんな人間が出入りするのがこのゼーエンの街です」
「もう少し連続殺人犯を詳しく調べる必要がある、そういうことか次の殺人はどこであったんだい」
「次に殺されたのは浮浪者ですね、男性ですが綺麗な顔で女性にたかっていたりしていたそうです」
「それじゃ、その男性の住んでいたあたりを調べてみるとしよう」
次に殺されたのは男性でよく女性に養ってもらっていた、それ以外の時は浮浪者として過ごしていた。『貧民街』の住人だったから、なかなか証言をしてくれる者がいなかった。そこでソアンが美味しいお菓子を買ってきて、浮浪者の子どもたちにそれをあげる代わりに話を聞いてみた。男性の被害者は顔は良かったが、暴力を振るうこともあったそうだ、それで女性と長続きしなかった。
「少年はどうやって男性に近づいたんだろう、何故この人を殺そうと思ったんだろうか」
「リタ様、人間から襲われた夢を見たと言いましたね。それはこんな『貧民街』の人間だったかもしれません」
「夢の中で奴隷の頃は鞭打ちなどの暴力に怯えていた、殺された男の暴力が犯行の引き金だろうか」
「その可能性は高いと思います、美男であったことも恐らく殺された理由でしょう」
「辛い事ならば忘れればいいのにどうして殺すんだろう、どうして前を向いて歩こうとしないんだ」
「あまりにも辛過ぎて忘れられないんです、きっと今でもそんな恐ろしい過去の夢を見ているのでしょう」
僕はやるせない気分になった、たとえ憎い相手に似ている人を殺しても、過去は変えられないのだ。でも連続殺人犯にとってはそれは違う、過去をこうして相手を変えて殺すこと、それで快感を覚えてしまったのだ。それは連続殺人犯にとっても、犠牲になった人にとっても、どちらにとっても不幸なことでしかなかった。
そう僕が思っている間にソアンは考えをまとめていた、美しい者で刃物を持つ者や暴力を振るう者が危ない、だからそういった者に警告を出せないかとソアンは言っていた。だがそれはいろいろと難しい何も証拠となるものがないからだ、だから娼婦や浮浪者がそう簡単に役人の命令に従うとは思えなかった。なかなか進まない捜査に、ついにソアンはイライラしてこう言いだした。
「いっそ、街中の男性のパンツを脱がせてみればいいんですよ!!」
「そうさせないように、早くその者を捕まえましょう」
そうソアンは僕に言った、僕もその言葉に笑って頷いた。ソアンはいつだって前向きで優しい、僕の大切な養い子であり妹のような存在だ。ソアンは最近は僕が贈った桜の髪留めをつけていた、二つにくくった髪をそれぞれ髪留めでまとめている。ソアンの薄茶色の髪に白い桜はとてもよく似合った、いやこれが養い子への欲目というものかもしれなかった。数日後、僕の体調が良くなるとソアンは言った。
「さぁ、リタ様。あまり気が進みませんけど、今までの被害者をもう一度調べなおしてみましょう」
「そのためには遺族と会わないと、僕たちに話をしてくれるかな」
「ジーニャスさんがその為に、証書を書いてくれました。この二人の殺人鬼を調べる行動に、すすんで協力することだそうです」
「ああ、本当だ。ジーニャスは人を使うのが上手いな、これなら遺族から無視されることもないだろう」
「まずは最初の殺人と言われてる娼婦の方からです、彼女が働いていた娼館に行きますよ。リタ様」
「彼女は娼館で働いていたのか、それじゃあ行ってみるとしよう」
僕たちは最初の被害者から連続殺人犯を追いかけていくことにした、最初の被害者は娼婦で娼館で働いていた。子どもがいる女性でとても美しかったと娼館の誰もが言った、娼館で働いているだけあって男性の扱いも上手くて、そんな彼女が殺人鬼に油断するわけがなかった。というのが娼館の女将の話だった、大体の他の娼婦の子も同じ話をした。
彼女の部屋は別の娼婦がもう使っていたが、特別に昼間だったが部屋の中に入れて貰えた。僕は綺麗な部屋だと思ったと同時に錯覚を見たような気がした、あの恐ろしい夢の美しい夫婦の部屋にとても内装が似ていたのだ。僕はそれで連続殺人犯も同じように思ったのかもしれない、そうしてそこにいた美しい者に何かが起こり反射的に殺してしまったのだ。
「最初の殺人がある意味で一番手がかりになるんです、犯人が何に怒りを感じてどんな行動をとったのか、どうして女性を殺そうと思ったのかが分かりやすいんです」
「ソアン、君にも嫌だろうけどこれから恐ろしい夢の話をするよ。僕はおそらく犯人と心の共有をして夢を見た、この部屋はその中に出てきた部屋にそっくりだ」
ソアンは僕が見た夢の話を熱心に聞いていた、そうしてから改めて部屋を見て気がついた。果物と一緒にナイフが置かれていたのだ、もし連続殺人犯がこの部屋を奴隷だった時の夫婦の部屋だと錯覚した時に、そこに偶々果物を剥こうと刃物を持った美しい者がいた。これだけの夢と似ている要素が揃ったら、それは殺人が起きても不思議ではなかった。だから、部屋を出て娼館の女将に僕とソアンは聞いてみた。
「事件が起こった時、その部屋にあった果物ナイフは見つかりましたか」
「ああ、あの時のね。それは惨い仕打ちだったわ、殺された彼女の片目に突き刺してあったのよ」
「そうですか、確かにリタ様が言った通りのようですね」
「ここは娼館だから、来た客は男性だったのかな。ソアン」
「それが分からないのさ、黒いローブで全身を隠していた。だから他の子は相手をするのを嫌がったの、あの子は優しい子だったから相手をするって言ってしまったのさ、背は低かったからきっと少年ような気がするわ」
「貴重な情報をありがとうございました、お休み中の昼間に失礼しました」
僕とソアンは娼館を出て話し合った、娼館は基本的に女性を男性が買いに来る、稀にそうでない場合もあった。でも今回は夢でみたとおりなら少年が犯人だ、いや時間が経って成長しているはずだから、もう大人になっているはずだった。きっと成長期になる前に去勢されたせいで、十分に成長できなかったに違いなかった。
「リタ様の夢のお話はとても怖いことですが、貴重な犯人の手がかりになります」
「殺された娼婦も可哀そうだが、殺した連続殺人犯も気の毒な相手だね。ソアン」
「リタ様、殺した者に同情してはいけません。殺人は殺人なのです、被害者は生き返らないんです」
「それはそうなんだが、あの夢を見た後だと連続殺人犯も、とても辛い思いをしたんだと思うんだ」
「辛い思いをしたら殺人をしてもいいのですか、殺された罪もない人たちは生き返りますか」
「分かったよ、ソアン。君が言っていることが正しい、確かに酷い目に遭ったからといって人を殺してはいけない」
僕は随分と連続殺人犯に同情をしているようだった、ソアンとの会話でそれはいけないと気づかされた。確かに酷い目に遭ったからといって、別の人間相手に殺人を犯してはいけないのだ。最初の殺人を調べなおしてみて分かったのは、連続殺人犯にとって精神的苦痛になるものが揃ってしまっていた。でも最初から黒いローブで姿を隠していたり、その後の逃走の早さからこれが最初の殺人ではないということだった。
既に殺人に手慣れている者の犯行じゃないとおかしい、最初から姿を隠して誰かを殺す気で連続殺人犯はやってきたのだった。だとしたら連続殺人犯はこの街の人間とは考えにくかった、最近になってこの街に来た者のように思えた。そうして別の街でもきっと同じような犯行を起こしているはずだ、そうやって殺し続けて移動しているのかもしれなかった。
「確かにこれが最初の殺人じゃないですね、意図的に自分の姿を隠して獲物を探していたようです」
「それならば最近街に来た者、街の住人以外を調べて貰った方がいいね」
「浮浪者、吟遊詩人、冒険者、遊び人、商人、いろんな人間が出入りするのがこのゼーエンの街です」
「もう少し連続殺人犯を詳しく調べる必要がある、そういうことか次の殺人はどこであったんだい」
「次に殺されたのは浮浪者ですね、男性ですが綺麗な顔で女性にたかっていたりしていたそうです」
「それじゃ、その男性の住んでいたあたりを調べてみるとしよう」
次に殺されたのは男性でよく女性に養ってもらっていた、それ以外の時は浮浪者として過ごしていた。『貧民街』の住人だったから、なかなか証言をしてくれる者がいなかった。そこでソアンが美味しいお菓子を買ってきて、浮浪者の子どもたちにそれをあげる代わりに話を聞いてみた。男性の被害者は顔は良かったが、暴力を振るうこともあったそうだ、それで女性と長続きしなかった。
「少年はどうやって男性に近づいたんだろう、何故この人を殺そうと思ったんだろうか」
「リタ様、人間から襲われた夢を見たと言いましたね。それはこんな『貧民街』の人間だったかもしれません」
「夢の中で奴隷の頃は鞭打ちなどの暴力に怯えていた、殺された男の暴力が犯行の引き金だろうか」
「その可能性は高いと思います、美男であったことも恐らく殺された理由でしょう」
「辛い事ならば忘れればいいのにどうして殺すんだろう、どうして前を向いて歩こうとしないんだ」
「あまりにも辛過ぎて忘れられないんです、きっと今でもそんな恐ろしい過去の夢を見ているのでしょう」
僕はやるせない気分になった、たとえ憎い相手に似ている人を殺しても、過去は変えられないのだ。でも連続殺人犯にとってはそれは違う、過去をこうして相手を変えて殺すこと、それで快感を覚えてしまったのだ。それは連続殺人犯にとっても、犠牲になった人にとっても、どちらにとっても不幸なことでしかなかった。
そう僕が思っている間にソアンは考えをまとめていた、美しい者で刃物を持つ者や暴力を振るう者が危ない、だからそういった者に警告を出せないかとソアンは言っていた。だがそれはいろいろと難しい何も証拠となるものがないからだ、だから娼婦や浮浪者がそう簡単に役人の命令に従うとは思えなかった。なかなか進まない捜査に、ついにソアンはイライラしてこう言いだした。
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