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3-25崖からのような恋に落ちる
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「こうやって僕が歌っているうちは、連続殺人犯は僕だけを狙うはずだ」
「リタ様、お気を付けください」
「ああ、でも今は連続殺人犯の興味を僕だけに集中させたい」
「それは成功しています、あれから殺人が起こっていませんから」
「もしくは犯人がこの地から逃げてしまった、そうなったらどうしようもないな」
「それが無いことを祈るしかないです、でも仕返しにきそうな犯人だと思います」
僕とソアンは昼間はそんなふうに時々話したりして、客からの要望があれば僕は広場で歌っていた。ミーティアが一度そんな僕の様子を見に来たが、歌を聞くとまだまだ修行不足やわと反省していた。それからこんな珍しい客もきた、ミーティアに惚れていたアウフが来たのだ。また無理難題を持ちかけられるのか、そう思っていたら彼は意外なことを言った。
「俺は新しい恋に夢中です!! 銀の髪に緑の瞳のあの姿、よく見ると好みだったのです!!」
「…………それは良かったね、君の恋が叶うことを祈るよ」
「俺の恋の邪魔をしたのに良いことを言うです!! あっ!? あふえらふはるふああああ!?」
「ん? どうかしたのかい」
アウフの様子が急におかしくなったので僕が周囲を見回したら、イデアがこっちに向かってきていた。イデアの髪の色は銀で瞳は緑色だ、僕とソアンは嫌な予感がして顔を見合わせた。イデアは相変わらず周囲の視線を全く気にせずに堂々と歩いてきた、アウフはそんなイデアを見て顔を真っ赤にしていた。確かにイデアは線が細くて女性に見えなくもない、いや男性としてアウフは好きになったのかもしれない、そういった恋する者への相手の性別の偏見はよくなかった。
「リタ、まだその曲を歌っているのか?」
「まだ今はこの曲が歌いたいんだ、もっとも犯人は最近出ないから良いけどね」
「同じエルフとして忠告する、その曲を歌い続けていると犯人に殺されるぞ」
「その時は堂々とエルフらしく戦うさ、最期の時まで命をかけてね」
「…………リタは本当に勇気がある、お前なら犯人に勝てるかもしれない」
「そうでないと困るよ、僕の大事なソアンも一緒にいてくれるんだ」
イデアは僕とソアンを見て頷いた、それは彼なりに何か納得したようだった。そんな会話をする僕たちの後ろではアウフがまだ真っ赤な顔のままで立っていた、そしてどうやら決心を固めたようで僕たちの会話に割り込んできた。イデアはそんなアウフの姿を見て驚いていた、この前は決闘をしたような仲だから無理もなかった。
「イデアさん、あの決闘から失恋を経て!! 俺は真実の愛に目覚めました、どうか俺と付き合ってください!!」
「一体何を言っている、俺は……男だ!?」
「それは承知の上でっす!! 真実の愛の前には男も女も無いんです!!」
「男も女もないだと、そんなわけがないだろう!?」
「とにかくお願いするです!! 俺は本気で恋してるんです!!」
「お断りだ、他を探せ」
アウフはとうとうイデアに告白をした、恋に落ちるのには男も女も本当に関係ないようだ。だが告白されたイデアは凄く嫌な顔をしていた、彼にとっては男性は恋の対象にならないようだった。だからすぐにイデアはアウフの告白を断ったのだが、ミーティアにつきまとったこともあるように、アウフという少年は一途というか、しつこいというか、とにかくなんにでも全力でぶつかるようだった。
「話にならない!! 俺は、俺は、誰とも恋愛などできない!!」
「そうは言わずにお試しだけでも!?」
「くどい!! しつこい!! うっとおしい!!」
「ああ、その冷たい緑色の綺麗な瞳、その視線もまた美しいです!!」
「リタ、また必ず会おう。俺は今日は帰る!!」
「あああああ、待って欲しいです。イデアさーん!!」
アウフのしつこい求愛行動に負けてイデアは僕たちから去っていった、最後の方は全力で走っていたが、アウフの身体能力も獣人族らしく愛しい人に負けまいと素速かった。僕とソアンはそんな二人を見て、なんだか心が和んでしまった。このところ連続殺人犯のことだけ考えていたが、ちょっと思考がそこに集中し過ぎていたようだ。
「本当に恋には落ちるんだね、母の言ってたことが分かった」
「あの恋の落ち方はまぁ、崖から落っこちるようなものですけどね」
「アウフが一途なのは分かっていたが、これからイデアは大変だろうなぁ」
「ちょっとやそっとじゃ、あの男の子は諦めそうにないですからね」
「でも……」
「どうかなさいましたか、リタ様」
僕はイデアが思わずアウフという少年に向かって言った、誰とも恋愛などできないという言葉が気になった。恋愛を自らに禁止しているのか、それはエルフとしては珍しかった。エルフは長く生きる分どこかのんびりしていて恋愛でもそんな傾向があるから、長などは出生率が下がるとむしろ積極的な恋愛を薦めていた。
エルフの間では同性愛でさえも、以前にソアンに言ったように禁止されていなかった。そんな恋愛に寛容なエルフにしてはイデアの反応は頑なだった、誰とも恋愛できないなんてそんなことがあるだろうか、まぁ僕も今のところ付き合ったのはティスタだけなのだ。僕のようにイデアものんびりした性格なのかもしれなかった、決闘などを申し込むあたりは血の気が多かったが、恋愛面は違うのかもしれないのだ。
「イデアさん、好きです!! 愛してます!!」
「煩い!! しつこい!! いい加減にしろ!?」
それからしばらく僕は毎日『飛翔』を練習する以外、街のどこかの広場で歌っていたがそこではイデアとアウフ、全く性格が合わなさそうな二人の恋愛模様が繰り広げられることになった。僕とソアンはそんな二人を微笑ましく見ていた、まだ成人したてくらいの二人だからこれからどうなるか分からなかった。
イデアはひたすら迷惑だと繰り返していた。だがアウフの方は好きです、恋です、愛してますの三拍子だった。そんな二人は嫌でも広場の中で目立ってしまった、それが周囲を気にしないイデアにもようやく分かったのか、僕たちのところに来る時にはローブを深く被ってくるようになった。僕はその姿にドキリとした、連続殺人犯の背格好とよく似ていたからだ。
「でもエルフは簡単に他者を害さない、他種族を見下さない、もちろん人間を下にも見ない。だから、イデアが連続殺人犯ではないはずだ」
「リタ様、お気を付けください」
「ああ、でも今は連続殺人犯の興味を僕だけに集中させたい」
「それは成功しています、あれから殺人が起こっていませんから」
「もしくは犯人がこの地から逃げてしまった、そうなったらどうしようもないな」
「それが無いことを祈るしかないです、でも仕返しにきそうな犯人だと思います」
僕とソアンは昼間はそんなふうに時々話したりして、客からの要望があれば僕は広場で歌っていた。ミーティアが一度そんな僕の様子を見に来たが、歌を聞くとまだまだ修行不足やわと反省していた。それからこんな珍しい客もきた、ミーティアに惚れていたアウフが来たのだ。また無理難題を持ちかけられるのか、そう思っていたら彼は意外なことを言った。
「俺は新しい恋に夢中です!! 銀の髪に緑の瞳のあの姿、よく見ると好みだったのです!!」
「…………それは良かったね、君の恋が叶うことを祈るよ」
「俺の恋の邪魔をしたのに良いことを言うです!! あっ!? あふえらふはるふああああ!?」
「ん? どうかしたのかい」
アウフの様子が急におかしくなったので僕が周囲を見回したら、イデアがこっちに向かってきていた。イデアの髪の色は銀で瞳は緑色だ、僕とソアンは嫌な予感がして顔を見合わせた。イデアは相変わらず周囲の視線を全く気にせずに堂々と歩いてきた、アウフはそんなイデアを見て顔を真っ赤にしていた。確かにイデアは線が細くて女性に見えなくもない、いや男性としてアウフは好きになったのかもしれない、そういった恋する者への相手の性別の偏見はよくなかった。
「リタ、まだその曲を歌っているのか?」
「まだ今はこの曲が歌いたいんだ、もっとも犯人は最近出ないから良いけどね」
「同じエルフとして忠告する、その曲を歌い続けていると犯人に殺されるぞ」
「その時は堂々とエルフらしく戦うさ、最期の時まで命をかけてね」
「…………リタは本当に勇気がある、お前なら犯人に勝てるかもしれない」
「そうでないと困るよ、僕の大事なソアンも一緒にいてくれるんだ」
イデアは僕とソアンを見て頷いた、それは彼なりに何か納得したようだった。そんな会話をする僕たちの後ろではアウフがまだ真っ赤な顔のままで立っていた、そしてどうやら決心を固めたようで僕たちの会話に割り込んできた。イデアはそんなアウフの姿を見て驚いていた、この前は決闘をしたような仲だから無理もなかった。
「イデアさん、あの決闘から失恋を経て!! 俺は真実の愛に目覚めました、どうか俺と付き合ってください!!」
「一体何を言っている、俺は……男だ!?」
「それは承知の上でっす!! 真実の愛の前には男も女も無いんです!!」
「男も女もないだと、そんなわけがないだろう!?」
「とにかくお願いするです!! 俺は本気で恋してるんです!!」
「お断りだ、他を探せ」
アウフはとうとうイデアに告白をした、恋に落ちるのには男も女も本当に関係ないようだ。だが告白されたイデアは凄く嫌な顔をしていた、彼にとっては男性は恋の対象にならないようだった。だからすぐにイデアはアウフの告白を断ったのだが、ミーティアにつきまとったこともあるように、アウフという少年は一途というか、しつこいというか、とにかくなんにでも全力でぶつかるようだった。
「話にならない!! 俺は、俺は、誰とも恋愛などできない!!」
「そうは言わずにお試しだけでも!?」
「くどい!! しつこい!! うっとおしい!!」
「ああ、その冷たい緑色の綺麗な瞳、その視線もまた美しいです!!」
「リタ、また必ず会おう。俺は今日は帰る!!」
「あああああ、待って欲しいです。イデアさーん!!」
アウフのしつこい求愛行動に負けてイデアは僕たちから去っていった、最後の方は全力で走っていたが、アウフの身体能力も獣人族らしく愛しい人に負けまいと素速かった。僕とソアンはそんな二人を見て、なんだか心が和んでしまった。このところ連続殺人犯のことだけ考えていたが、ちょっと思考がそこに集中し過ぎていたようだ。
「本当に恋には落ちるんだね、母の言ってたことが分かった」
「あの恋の落ち方はまぁ、崖から落っこちるようなものですけどね」
「アウフが一途なのは分かっていたが、これからイデアは大変だろうなぁ」
「ちょっとやそっとじゃ、あの男の子は諦めそうにないですからね」
「でも……」
「どうかなさいましたか、リタ様」
僕はイデアが思わずアウフという少年に向かって言った、誰とも恋愛などできないという言葉が気になった。恋愛を自らに禁止しているのか、それはエルフとしては珍しかった。エルフは長く生きる分どこかのんびりしていて恋愛でもそんな傾向があるから、長などは出生率が下がるとむしろ積極的な恋愛を薦めていた。
エルフの間では同性愛でさえも、以前にソアンに言ったように禁止されていなかった。そんな恋愛に寛容なエルフにしてはイデアの反応は頑なだった、誰とも恋愛できないなんてそんなことがあるだろうか、まぁ僕も今のところ付き合ったのはティスタだけなのだ。僕のようにイデアものんびりした性格なのかもしれなかった、決闘などを申し込むあたりは血の気が多かったが、恋愛面は違うのかもしれないのだ。
「イデアさん、好きです!! 愛してます!!」
「煩い!! しつこい!! いい加減にしろ!?」
それからしばらく僕は毎日『飛翔』を練習する以外、街のどこかの広場で歌っていたがそこではイデアとアウフ、全く性格が合わなさそうな二人の恋愛模様が繰り広げられることになった。僕とソアンはそんな二人を微笑ましく見ていた、まだ成人したてくらいの二人だからこれからどうなるか分からなかった。
イデアはひたすら迷惑だと繰り返していた。だがアウフの方は好きです、恋です、愛してますの三拍子だった。そんな二人は嫌でも広場の中で目立ってしまった、それが周囲を気にしないイデアにもようやく分かったのか、僕たちのところに来る時にはローブを深く被ってくるようになった。僕はその姿にドキリとした、連続殺人犯の背格好とよく似ていたからだ。
「でもエルフは簡単に他者を害さない、他種族を見下さない、もちろん人間を下にも見ない。だから、イデアが連続殺人犯ではないはずだ」
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