お疲れエルフの家出からはじまる癒されライフ

アキナヌカ

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4-5ドラゴンを見つけてみる

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「もし本物のドラゴンなら、敬意をもって相手をしないと大変なんだけど……」
「リタ様、そんなに本物のドラゴンって強いんですか?」

「フェイクドラゴンとじゃ話にならない、人間より知能も高く上級魔法も使ってくる」
「今度の街道を塞いでいるのが、本物のドラゴンでないことを祈りたいです」

「全くだ、でも本物のドラゴンならわざわざ、街道を塞いだりしないんだけど」
「そうですね、ドラゴンさんにとって良い事があるわけでもないですし」

 僕たちはそう話し合って不思議がっていた、ドラゴン退治に行かない代わりに僕たちはいつもどおり、薬草採取やワイルドボアの駆除などをして過ごした。そうして一週間後にようやく街道にいたドラゴンは退治された、退治されてみるとやっぱり今度もフェイクドラゴンだった。フェイクドラゴンもそんなにあちこちにいるわけがない種族だ、誰かが意図的に放っているのかと僕は思った。

 でもフェイクドラゴンを飼育できるような場所、そんなところはゼーエンの街付近にはなかった。だから飼育されたフェイクドラゴンという考えも難しかった、あとは偶々フェイクドラゴンの出現が重なったとしか考えようがなかった。珍しい話だがそういうこともあるのだろうと、僕はそんな風に思っていた。だが次の週になって冒険者ギルドの掲示板、そこにまた『ドラゴン退治』と貼ってあった。

「またか、一体何が起きているんだろう。ソアン」
「そうですね、リタ様。もしかして、異常発生でしょうか」

「フェイクドラゴンもそんなに簡単にいる種族じゃない、成長は早いがそれにしても出現が多すぎる」
「それじゃあ、なんなんでしょう。どうしますか、今度は退治しに行かれますか」

「またフェイクドラゴンかもしれない、けど行くだけいってみようか」
「分かりました、冒険者ギルドの職員さんに手続きをします」

 また僕たちはドラゴン退治にでかけようとした、でも僅差で他のパーティに仕事をとられてしまった。ソアンがそれでちょっと落ち込んでいたが、僕はまぁ大丈夫だろうと彼女を励ました。誰が行こうと大事なのは街道を塞ぐドラゴンらしきものを退治することだ、それが僕たちでなくても別に構わなかった。

「大丈夫だよ、ソアン。本物のドラゴンがそこらにいるわけないさ」
「そうでしたらいいですけど、フェイクドラゴンもわりと強いので、無事に退治されて欲しいですね」

「うーん、銀の冒険者が行ったようだから大丈夫だとは思う。駄目なら逃げ帰ってくるだろう」
「銀の冒険者くらいなら、引き際も心得ていますよね」

「そうだよ、本当に注意しないといけないのは本物のドラゴンだ。例えばあんな……ってあれ!?」
「リタ様?」

 僕はドラゴン退治という仕事がとれなくて、それで落ち込むソアンを慰めていた。そうしたら冒険者ギルドの中に一人の男性が入ってきた、見た目は真っ赤な髪に深い赤の瞳の美しい青年だった。見た目だけならただの人間に見えた、でも僕には違うと分かった。以前に本物のドラゴンに会っているから分かったのだ、膨大な魔力を身にまとっていておそらく本物のドラゴンだった。

 冒険者ギルドの中を珍しそうに見回す青年は冒険者証も持っていなかった、まだ人里に出て間もないドラゴンに違いないので僕は慌ててその青年に声をかけた。

「はじめまして、赤き太古からの隣人に、大いなる力の加護があらんことを」
「ええと、はじめまして。赤き太古からの隣人に、大いなる力の加護があらんことを」
「おお、エルフか。古き良き隣人に、大いなる力の加護があらんことを」

「僕はクアリタ・グランフォレ、皆はリタといいます」
「私はリタ様の養い子のソアンです」
「おう、俺はジェンド!! 街には出てきたばかりの冒険者候補だ!!」

 僕が慌てて挨拶した赤い髪の青年は気さくに挨拶を返してくれた、少なくとも敵意があるようには見えなかったので僕は安心した。ジェンドはいろいろと僕たちに話しかけてきた、冒険者になる方法や街の宿屋の借り方などを聞いてきた。僕たちは最初は緊張したが相手が少年のように無邪気なので、緊張もとけて冒険者ギルドや街の宿屋を案内した。

 まずは最初に冒険者ギルドで銅の冒険者証を作った、これ自体は作ることは難しくなかった。ジェンドは珍しそうに銅の冒険者証を眺めて、それから首に大事にかけていた。僕たちは簡単に冒険者ギルドを案内すると、更にゼーエンの街を案内しながらジェンドを宿屋が並ぶ場所に連れていった。ジェンドは珍しそうに人間の街を見ながら、大人しく僕たちについてきた。

「これが銅の冒険者証か、これで俺も冒険者だ!!」
「ええ、それで宿屋はどこにします? これは予算しだいですよ?」
「私たちの宿屋は安くて、食事もそこそこ良いですよ」

「おう、それならそこの宿屋でいいや。気に入らなかったら、別の宿屋を探せばいい」
「それならそうしましょう、部屋で聞きたいこともありますし」
「そうです、どうしてドラゴンさんが人間の街に?」

「あー、もういい加減に洞窟生活も飽きた。生き物を丸かじりするばっかりの食事も嫌だ、俺は文化的でもっと自由な生活が送りたいんだ」
「はぁ、なるほどそうですか」
「それは、ちょっと分かる気がします」

 ジェンドという青年は若いドラゴンだった、森の奥での暮らしに飽きて飛び出してきたのだ。そうあはははっと笑いながら言っていた、持っている金銭は森で拾った物だった。盗賊などが入ってきたら退治していたので、ジェンドはかなりの金額を持っていた。もっと良い高級宿にも泊まれただろうが、ジェンドはエルフの僕たちを面白がってついてきた。

「エルフと人間が仲良くしているのは珍しい」
「僕はエルフで、ソアンはハーフエルフですよ」
「はい、私はドワーフとエルフのハーフです」

「おおっ、そうなのか。それはますます興味深い!!」
「これからはもっと、きっとハーフエルフは増えていきますよ」
「同じ集落で近親婚を繰り返していては、種族としては危ないですからね」

「そうだよな、もっと種族で交流すべきだよな!!」
「ええ、他種族とも交流を持つのは良いことです」
「難しい問題ですけど、今は希望を持っています」

 プルエールの森などエルフだけが住む場所は多い、でもソアンの言う通りそこだけで近親婚を繰り返すと、その両親の間に生まれた子どもが弱くなっていくのだ。だからエルフの村や里は定期的に交流を持って、住むところを交換するエルフたちもいた。エルフという純粋な血筋を守っていくのなら必要なことだが、ソアンのようにハーフエルフが増えていけば無くなっていく習慣かもしれなかった。

 僕はそんなことを考えていたが、ドラゴンであるジェンドの思考は更にぶっ飛んでいた。彼はハーフエルフだというソアンをじっと見つめた後、こう何でもないことのように言いだしたのだ。

「なぁなぁ、ソアン。なんなら俺の子どもを一人くらい産んでみないか?」
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