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4-17お互いに想えば結ばれている

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「ジェンド、貴方が私は好きです。でも、私は貴方の子どもを産めません」
「エリー、どうして? 俺のことが好きなのに、子どもは欲しくないのか?」

「私の寿命に関わるからです、多分子どもを産めば私は長くは生きられないでしょう」
「そんな!? エリーが死ぬ? 本当に?」

「どんな生き物にも寿命があります、ドラゴンも例外ではないのです。さぁ、ジェンド。今度は貴方が考える番です、私と一緒に生きるか。それとも私と子どもを作り、一人でその子を育てるか」
「俺は……、俺は……、どっちも選ぶ!!」

 エリーさんがジェンドを今まで受け入れなかった大きな理由は寿命だった、エリーさんはジェンドの母親の友達だからそれなりの年齢だったのだ。出産は大きな力を使ってしまう、だからエリーさんとジェンドが結ばれれば終わりは二つしかなかった。できるだけエリーさんと長く一緒に生きるか、エリーさんとの間に子供を作ってジェンドが一人でその子を育てるかだ。

 でもジェンドはどっちも選ぶと言った、彼はエリーさんの生命力を信じて、彼女と子どもを作り短い間でも三人で生きると言うのだ。ジェンドはエリーさんを抱きしめた、もう二度と離さないように抱きしめた。彼は幸せな時間が短いことを知った、それでもそれがかけがえのない時間になると信じて、そう信じて生きていくことにしたのだ。

「エリーとできるだけ長くいる、俺はまだ若いからエリーがいないと駄目だ」
「私がいなくなったら、新しい相手を見つけるのですよ」

「いいや、俺はそんな相手は探さない。エリーとの子どもを立派に育てる、そうして生きていく」
「あら、こんな年になって子どもを産むとは思わなかったわ」

「エリー駄目か? 俺が言っていることは不可能か?」
「何を言っているの、女性のドラゴンがどれだけ強いか見せてあげる。今からがとても楽しみよ、私も子どもを産むのは初めてだから」

 エリーさんの求婚をジェンドは受け入れた、エリーさんもジェンドからの求婚を受け入れた。今ここに一組のドラゴンの夫婦が誕生した、いずれ彼らの間には子どもが生まれ血を受け継いでいくのだ。ジェンドがエリーさんにキスをしたので、僕とソアンはサッと目をそらした。そうしながら僕はエリーさんが羨ましいと思った、僕もソアンをいつかは妻にしたいものだ。

「リタさん、ジェンドとこのフェイクドラゴン騒動が終わったら、新しい巣をみつけようと思います」
「今すぐでなくていいんですか、エリーさん貴女の寿命は……」

「そんな数年で死ぬわけではありません、子どもを産んでも何十年かは必ず生きぬいてみせます」
「それならプルエールの森はどうでしょう、以前に他のドラゴンが滞在していたこともある場所です」

「優しき緑の民よ、貴方たちの故郷なら穏やかで安全でしょう。是非、その場所を紹介してください」
「ええ、それに僕から親友へ手紙を書きましょう、僕は家出した身ですが親友は若長候補です」

 ジェンドはエリーさんにずっとくっついていた、新しい巣の話も真剣に聞いていた。彼は大人になったのだ、もう伴侶をもつ一人前のドラゴンだった。エリーさんたちはこのフェイクドラゴン騒動が終わるまで、それまでは恩人だからと言って僕たちにつきあってくれるという話だった。僕とソアンはそのことに深く感謝して、僕はプルエールの森への紹介状をディルビオ宛てに書いた。

 プルエールの森がドラゴンを拒むことはない、長にドラゴンの友達がいるくらいだからだ。ドラゴンとは世界の大きな力と繋がっている存在で、エルフにとっても友としておきたい種族だった。ドラゴンが二人くらいプルエールの森に住んでも、特に何の問題も起きるはずがなかった。ただ家出中の僕からの紹介だと印象が悪いから、親友のディルビオに向けて僕は紹介状を書いたのだ。

「私の部屋とジェンドの部屋を一緒にして貰います、少しでも傍にいて過ごしたいから」
「エリー、俺は嬉しい!! 俺の伴侶がエリーで良かった!!」

「私も嬉しいですよ、ジェンド。ふふっ、130年前に貴方を預かった時にはこうなるとは想像もしませんでした」
「俺は卵から産まれたばかりだったな、エリーを大好きなのはあの頃から同じだけどな!!」

「ジェンド、貴方のために私は強くなります。子どもを産んでも、絶対に数十年は生き延びてみせます」
「ああ、エリー。俺は信じてる、エリーが凄く強いって信じてるよ」

 人間のような派手な結婚式はないけれども、新しいドラゴンの夫婦は強い絆で結ばれていた。さてあと問題なのはフェイクドラゴンの方だった、マーニャをどうにか見つけなけばならなかった。エリーさんがそれはとても難しいと言った、おそらく転移系の道具を持っているのなら、フェイクドラゴンを放す時だけこちらに現れているのだと言われた。

「どんなにフェイクドラゴンを飼っていても、無限ではないから数には限りがあるでしょう。ちょうど良いおつまみです、今なら森の奥には人間がいませんから、ジェンドと一緒に狩りをします」

 その翌日からエリーさんとジェンドが近隣の森で狩りをはじめた、エリーさんが栄養をとるのにちょうど良いと、フェイクドラゴンたちをドラゴンの姿に戻って食べてしまった。ジェンドにとってもそれは同じだった、ドラゴンからすればフェイクドラゴンは良い栄養でしかなかった。あっという間に森の奥からフェイクドラゴンが消えていった、そして街道では人間たちがフェイクドラゴンを退治した。

 赤いドラゴンと青いドラゴンが出ると少し噂になったが、それよりもフェイクドラゴンが物凄い勢いで減っていったのが助かった。ゼーエンの街はほとんど今までどおりに通行できるようになった、偶にフェイクドラゴンが出たが商人たちは銀の冒険者を雇っていた。街にいつものような活気が戻ってきた、エリーさんも出産にそなえて良い栄養がとれたと満足気だった。ジェンドはずっとエリーさんといて、とても幸せそうに過ごしていた。

「ドラゴンというのは凄いね、ソアン」
「女性は守るものがあれば強いんですよ、リタ様」

「ソアンもよく考えておくれ、良い伴侶を君には見つけて欲しい」
「うっ、考えています。私にはやっぱり勿体ないと、そう考えているくらいです」

「勿体ない? 何が勿体ないんだい??」
「ああ、今日も私の推しが可愛い!!」

 僕とソアンの関係は変わったようで変わらない、一歩進んだかと思えば戻るような生活をしていた。ソアンが一応僕を伴侶の候補として考えてはいるようだった、それならば保護者の僕としては急かすわけにもいかない、ソアンの意志を尊重してゆっくりと今は待つべきだった。だから僕は焦らずにソアンを見守っていた、エリーさんと同じように相手のことを考えて待っていた。そんなある日、ジーニャスが僕たちのところにやってきた。

「思い出した!! あの女に確かに俺は会っている!!」
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