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4-22どうしても欲しかったものがある
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「三つ目の腕輪の役割は二つの腕輪を管理するだけなんだろうか、あっちとこっちをある程度は繋げるだけなのだろうか」
僕はマーニャが一番に大切にしていて、体内に埋め込んでまで守った三つ目の腕輪について考えていた。そこまでして大事にしているには理由があるに違いない、右手の腕輪はかの地へ向かうもの、左腕の腕輪はかの地からこの地へ戻るもの、では三つめの腕輪の役割とはなんなのだ。僕は自分が腕輪を使う側になって考えてみた、二つの腕輪を決して失くしてはならないから三つ目が必要だ。
それでは三つ目にはどんな力がいるか、干渉する力が弱くても他の二つの腕輪を取り戻す力が必要だ。だから今ではフェイクドラゴンは領主の館の近くにしか現れない、他の二つの腕輪がそこにあるからだ。だからマーニャはその近くにしか干渉できない、逆を言えば他の腕輪の近くでなら力を使うことができるのだ。
「ジーニャスに腕輪を持っていてもらうのは危険だ」
「でも、リタ様。上級魔法を使えるのはリタ様とジーニャスさんだけです」
「ドラゴンの二人には迷惑をかけられない、上級魔法を使える者が他にいないのが辛いな」
「一時は商隊の人間が持っていたくらいです、私がその左手の腕輪をお預かりしましょうか」
「いやマーニャの狙いがなんなのか分からないと、これ以上はジーニャスに意見を聞いてみよう」
「ジーニャスさん、マーニャさんの異常な執着に負けず、それに打ち勝って立ち向かえるでしょうか」
ジーニャスに左手の腕輪を預かって貰うのは危険かもしれない、マーニャはゼーエン家にひいてはジーニャスに執着しているからだ。僕はソアンともよく話してからジーニャスに話を聞いてみることにした、マーニャにも何かしら行動の指針としているものがあるはずだ。それが何なのか分からないと次の行動が読めない、次に彼女が何をして何が起きるか分からなかった。
ソアンは僕の仮説を聞いて意見をくれた、そして僕たちはジーニャスに話を聞くことにした。ジーニャスは顔色が優れなかったが、まだ戦う意志があるのだと僕たちに向かって普通に笑いかけた。僕は自分の仮説を関係している皆に話してみせた、ジーニャスも思い当たるところがあるのか静かに聞いていた。そのうえで僕はジーニャスに何があったのか、マーニャと何が起きたのかを聞いてみた。
「ジーニャス、あのマーニャさんと何がありましたか、彼女は何を狙っていると思います?」
「正直なところあの女の話はしたくないが、あいつが取り戻したいのは過去の亡骸だ」
「過去の亡骸? それは一体どういう意味なんです?」
「あの女は俺を向こうの世界に引き入れたら、まるで妻のように振る舞い俺に夫になるように求めた」
「かつての婚約者のように、そのようにマーニャはゼーエン家に、迎い入れられることを望んでいる」
「それが全てだと思う、あの女は誰かのせいで失ってしまったものを、もう一度どうにかして取り戻したいんだ」
マーニャが望んでいるのは無理なことだった、ゼーエン家がこんなに殺人に関わったマーニャ、彼女を受け入れることはあり得ないのだ。そもそも彼女は最初から婚約者だと名乗り出ればよかった、そうしたら最初は詐欺師扱いされても、本物の婚約者だと認められる可能性があった。でもマーニャはそうしなかった、ジーニャスに声をかけながら一方でフェイクドラゴンを放置した。
「マーニャさんはジーニャスさんを望みながら、もっと違うこともきっと望んでいますわ」
そう言いだしたのはエリーさんだった、ジェンドはもちろん僕たちもそんなエリーさんに注目した。エリーさんはマーニャが人間の枠組みから外れていると言った、確かにマーニャのしていることは普通の人間ならしないことだ。でもエリーさんが言っているのはそんなことじゃなかった、もっと邪悪で恐ろしいことを彼女は感じ取っていた。エリーさんが話して、僕とソアンがそれに問いかけた。
「以前はこんなに強くなかったけれど、向こう側からフェイクドラゴンと人間の入り混じった気配がしました」
「フェイクドラゴンが入り混じった気配、確かに彼女はフェイクドラゴンを操れるようだった」
「そうですね、リタ様。魅了か何かの魔法かと思っていましたが、そうじゃないとしたら……」
「マーニャさんはドラゴンの研究家だと言いました、多くのそんな人間が望むことは一つです」
「ドラゴンに憧れる人間が望むことは一つ、ということはまさか!?」
「ええっと冗談ですよね、まさか人間をやめてドラゴンになりたいとか」
「そのまさかです、マーニャさんはもう純粋な人間ではないと思いますわ」
「マーニャは自分の体を改造している、だからフェイクドラゴンを操れたのか」
「ええっ!? でもマーニャさんはジーニャスさんと結婚したいんでしょう。それなのに人間を辞めてしまうのですか!?」
僕たちはエリーさんの仮説に背筋が凍るような思いをした、ジェンドも人間がそこまでドラゴンに憧れているとは思わなかったようだ。エリーさんは長く生きている経験から、純粋な人間とは違う気配をマーニャから感じ取ったのだ。そうだとすればマーニャは次に会う時は人間である可能性も低かった、人間社会から隔離したから余計に彼女自身を人から遠ざける恐れがあった。
「ジェンド、私も気をつけますがマーニャさんに、決して自分の正体を知られてはなりません」
「うん、分かった。俺もドラゴンだからだな、俺の力を盗られるかもしれない」
「そうです、ジェンド。貴方が本物のドラゴンだと知られれば、必ず命や身体を狙われるでしょう」
「俺の命はエリーのものだ、他の女なんかには渡さない」
「そう思っていても奪っていくのが人間なのです、人間の恐ろしいところはそんなところにあるの」
「うっ、エリーどうして泣きそうなんだ。俺は元気だ、決して人間に攫われたりしない!!」
エリーさんはどうして泣きそうなのかジェンドに話した、ジェンドの母親のドラゴンも人間に近づき過ぎて、そうして最後には命を落とすことになったそうだ。ジェンドの母親は人間が大好きで友もいた、だがその友人だと思っていた友に裏切られた。人間は一人ではとても弱い種族だ、だけどその弱さゆえに強さを求めて、時には恐ろしいことをするのだ。
「ジェンド、今の貴方には人間の本物の友人ができました。だけど忘れないで、マーニャさんのような人間もいるのよ」
「…………分かった、決して忘れない。母さんのことは卵の頃しか知らないけど、俺は母さんみたいにはならない」
エリーさんはジェンドをこれ以上、マーニャに関わらせたくないようだった。だがジェンドは最後まで見届けるという意志を持っていた、ドラゴンに憧れる愚かな人間が最後にどうなるのか知りたいと望んだ。エリーさんはそんなジェンドを止めなかった、ジェンドはもう一人前のドラゴンなのだ。自由に思いのままに生きるのがドラゴンだった、そうして命を落としても自由を愛し誇り高く生きるのがドラゴンなのだ。
「あの女はドラゴンになりたがっている、そんな愚かな人間がどうなるのか最後まで見てみたい」
「ジェンド、これ以上はエリーさんが言っているように危険です」
「リタ、俺はシャールやジーニャスという友達ができた。ドラゴンは決して友を見捨てたりしない」
「最後までつきあってくれるというのですか、それでは何か遭った時は自分とエリーさんを一番に思ってください」
「分かっている、俺はエリーと共に生きていく。だから、自分もエリーも大事にするんだ」
「その言葉を忘れないでください、自分の一番に大切なものを間違えないで」
ドラゴンは誇り高い生き物だが、ジェンドには時にはその誇りを捨てて、逃げることの大切さも覚えて欲しかった。それはエリーさんも同じだったようだ、なによりも大事なのは自分と愛する者だった。だから時には逃げる勇気も必要だった、これはエリーさんが時をみてジェンドに教えてくれるだろう。皆の話を聞いていたジーニャスは不敵に笑った、彼はいつも自分を他人を鼓舞するのがうまいのだ。
「ジェンド、一人前の男として他の何を捨てても、自分と大切な女だけは守り抜けよ」
僕はマーニャが一番に大切にしていて、体内に埋め込んでまで守った三つ目の腕輪について考えていた。そこまでして大事にしているには理由があるに違いない、右手の腕輪はかの地へ向かうもの、左腕の腕輪はかの地からこの地へ戻るもの、では三つめの腕輪の役割とはなんなのだ。僕は自分が腕輪を使う側になって考えてみた、二つの腕輪を決して失くしてはならないから三つ目が必要だ。
それでは三つ目にはどんな力がいるか、干渉する力が弱くても他の二つの腕輪を取り戻す力が必要だ。だから今ではフェイクドラゴンは領主の館の近くにしか現れない、他の二つの腕輪がそこにあるからだ。だからマーニャはその近くにしか干渉できない、逆を言えば他の腕輪の近くでなら力を使うことができるのだ。
「ジーニャスに腕輪を持っていてもらうのは危険だ」
「でも、リタ様。上級魔法を使えるのはリタ様とジーニャスさんだけです」
「ドラゴンの二人には迷惑をかけられない、上級魔法を使える者が他にいないのが辛いな」
「一時は商隊の人間が持っていたくらいです、私がその左手の腕輪をお預かりしましょうか」
「いやマーニャの狙いがなんなのか分からないと、これ以上はジーニャスに意見を聞いてみよう」
「ジーニャスさん、マーニャさんの異常な執着に負けず、それに打ち勝って立ち向かえるでしょうか」
ジーニャスに左手の腕輪を預かって貰うのは危険かもしれない、マーニャはゼーエン家にひいてはジーニャスに執着しているからだ。僕はソアンともよく話してからジーニャスに話を聞いてみることにした、マーニャにも何かしら行動の指針としているものがあるはずだ。それが何なのか分からないと次の行動が読めない、次に彼女が何をして何が起きるか分からなかった。
ソアンは僕の仮説を聞いて意見をくれた、そして僕たちはジーニャスに話を聞くことにした。ジーニャスは顔色が優れなかったが、まだ戦う意志があるのだと僕たちに向かって普通に笑いかけた。僕は自分の仮説を関係している皆に話してみせた、ジーニャスも思い当たるところがあるのか静かに聞いていた。そのうえで僕はジーニャスに何があったのか、マーニャと何が起きたのかを聞いてみた。
「ジーニャス、あのマーニャさんと何がありましたか、彼女は何を狙っていると思います?」
「正直なところあの女の話はしたくないが、あいつが取り戻したいのは過去の亡骸だ」
「過去の亡骸? それは一体どういう意味なんです?」
「あの女は俺を向こうの世界に引き入れたら、まるで妻のように振る舞い俺に夫になるように求めた」
「かつての婚約者のように、そのようにマーニャはゼーエン家に、迎い入れられることを望んでいる」
「それが全てだと思う、あの女は誰かのせいで失ってしまったものを、もう一度どうにかして取り戻したいんだ」
マーニャが望んでいるのは無理なことだった、ゼーエン家がこんなに殺人に関わったマーニャ、彼女を受け入れることはあり得ないのだ。そもそも彼女は最初から婚約者だと名乗り出ればよかった、そうしたら最初は詐欺師扱いされても、本物の婚約者だと認められる可能性があった。でもマーニャはそうしなかった、ジーニャスに声をかけながら一方でフェイクドラゴンを放置した。
「マーニャさんはジーニャスさんを望みながら、もっと違うこともきっと望んでいますわ」
そう言いだしたのはエリーさんだった、ジェンドはもちろん僕たちもそんなエリーさんに注目した。エリーさんはマーニャが人間の枠組みから外れていると言った、確かにマーニャのしていることは普通の人間ならしないことだ。でもエリーさんが言っているのはそんなことじゃなかった、もっと邪悪で恐ろしいことを彼女は感じ取っていた。エリーさんが話して、僕とソアンがそれに問いかけた。
「以前はこんなに強くなかったけれど、向こう側からフェイクドラゴンと人間の入り混じった気配がしました」
「フェイクドラゴンが入り混じった気配、確かに彼女はフェイクドラゴンを操れるようだった」
「そうですね、リタ様。魅了か何かの魔法かと思っていましたが、そうじゃないとしたら……」
「マーニャさんはドラゴンの研究家だと言いました、多くのそんな人間が望むことは一つです」
「ドラゴンに憧れる人間が望むことは一つ、ということはまさか!?」
「ええっと冗談ですよね、まさか人間をやめてドラゴンになりたいとか」
「そのまさかです、マーニャさんはもう純粋な人間ではないと思いますわ」
「マーニャは自分の体を改造している、だからフェイクドラゴンを操れたのか」
「ええっ!? でもマーニャさんはジーニャスさんと結婚したいんでしょう。それなのに人間を辞めてしまうのですか!?」
僕たちはエリーさんの仮説に背筋が凍るような思いをした、ジェンドも人間がそこまでドラゴンに憧れているとは思わなかったようだ。エリーさんは長く生きている経験から、純粋な人間とは違う気配をマーニャから感じ取ったのだ。そうだとすればマーニャは次に会う時は人間である可能性も低かった、人間社会から隔離したから余計に彼女自身を人から遠ざける恐れがあった。
「ジェンド、私も気をつけますがマーニャさんに、決して自分の正体を知られてはなりません」
「うん、分かった。俺もドラゴンだからだな、俺の力を盗られるかもしれない」
「そうです、ジェンド。貴方が本物のドラゴンだと知られれば、必ず命や身体を狙われるでしょう」
「俺の命はエリーのものだ、他の女なんかには渡さない」
「そう思っていても奪っていくのが人間なのです、人間の恐ろしいところはそんなところにあるの」
「うっ、エリーどうして泣きそうなんだ。俺は元気だ、決して人間に攫われたりしない!!」
エリーさんはどうして泣きそうなのかジェンドに話した、ジェンドの母親のドラゴンも人間に近づき過ぎて、そうして最後には命を落とすことになったそうだ。ジェンドの母親は人間が大好きで友もいた、だがその友人だと思っていた友に裏切られた。人間は一人ではとても弱い種族だ、だけどその弱さゆえに強さを求めて、時には恐ろしいことをするのだ。
「ジェンド、今の貴方には人間の本物の友人ができました。だけど忘れないで、マーニャさんのような人間もいるのよ」
「…………分かった、決して忘れない。母さんのことは卵の頃しか知らないけど、俺は母さんみたいにはならない」
エリーさんはジェンドをこれ以上、マーニャに関わらせたくないようだった。だがジェンドは最後まで見届けるという意志を持っていた、ドラゴンに憧れる愚かな人間が最後にどうなるのか知りたいと望んだ。エリーさんはそんなジェンドを止めなかった、ジェンドはもう一人前のドラゴンなのだ。自由に思いのままに生きるのがドラゴンだった、そうして命を落としても自由を愛し誇り高く生きるのがドラゴンなのだ。
「あの女はドラゴンになりたがっている、そんな愚かな人間がどうなるのか最後まで見てみたい」
「ジェンド、これ以上はエリーさんが言っているように危険です」
「リタ、俺はシャールやジーニャスという友達ができた。ドラゴンは決して友を見捨てたりしない」
「最後までつきあってくれるというのですか、それでは何か遭った時は自分とエリーさんを一番に思ってください」
「分かっている、俺はエリーと共に生きていく。だから、自分もエリーも大事にするんだ」
「その言葉を忘れないでください、自分の一番に大切なものを間違えないで」
ドラゴンは誇り高い生き物だが、ジェンドには時にはその誇りを捨てて、逃げることの大切さも覚えて欲しかった。それはエリーさんも同じだったようだ、なによりも大事なのは自分と愛する者だった。だから時には逃げる勇気も必要だった、これはエリーさんが時をみてジェンドに教えてくれるだろう。皆の話を聞いていたジーニャスは不敵に笑った、彼はいつも自分を他人を鼓舞するのがうまいのだ。
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