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4-26疑心暗鬼にさせる

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「ジーニャス、神殿には相談しましょう。でも、僕たちもマーニャに聞かれないところで話が必要です」
「どうやって話をする、リタ」

「ソアンに手伝ってもらいます、まずこのまま別々の部屋に僕たちはいること」
「わかった、ソアンよ。頼んだ」

 そこから僕たちは筆談で話をした、マーニャはおそらくこっちの情報をある程度知っているはずだ。エリーさんとジェンドがドラゴンであること、それももう知られているかもしれないから、まず表立ってあの二人は巻き込めないのだ。だがさすがに使用者の視界まで共有していないだろう、だから僕とソアンとジーニャスは筆談で会話をした。

『指輪を壊すのには賛成します、でも簡単にそれができるとは思えない』
『確かに今までの会話を聞いている可能性がある、あの女がこれで何もしないとは思えない』
『マーニャさん、確実に妨害しようとすると思います』

『マーニャだけをこちらに誘き出す、それが一番手っ取り早く方がつく方法です』
『フェイクドラゴンたちとあの女を切り離す、それができれば戦力としてはこちらが上だが』
『どうやってマーニャさんを誘き出します? リタ様』

『マーニャがこちらにこないといけない、そんな理由を作ってしまうことです』
『あの女を誘き寄せられる理由などあるか? どんな理由にするんだ?』
『ああ、リタ様。分かりました、ジーニャスさんが全ての鍵ですね』

 僕は必要なものとマーニャをこちらに誘き寄せるもの、それを用意するようにジーニャスに頼んだ。マーニャが何よりも執着しているのはジーニャスだ、だったらそれを盗られそうになったら彼女はどうする、そんな女性の心理は僕よりソアンの方が詳しかった。だからソアンにもよく意見を聞いて、そうして僕らは話をなんとかまとめた。

 正直うまくいかなくてもこちらは損はしないはずだ、そんなふうに作戦を考えておいた。もし成功したら良いくらいにいしておかないと、マーニャにこれ以上殺人を許してはならないのだ。ジーニャスも失う者がいないからこの作戦にのった、失敗しても失くすものはないのだ。一番に良いのはやはり腕輪を封印すること、それが第一の目的でマーニャを確実に誘き寄せれるとは限らなかった。

 そうして準備をしてから僕たちは朝まで交代で少し休んだ、ソアンがいてくれて本当に良かった。僕とジーニャスの二人では交代することもできなかった、今は腕輪を持ったまま意識を落とすことすら危険になっていた。マーニャの力は強くなっている、そうでなかったら腕輪が二つ揃ったからといって、ここまでこちらの地にまで干渉できないはずだ。

「それでは俺が先に神殿に行くぞ、リタ」
「はい、ジーニャス。先に行って詳しい説明を頼みます、僕は腕輪を持って後から行きます」
「ジーニャスさん、絶対に護衛の方と離れないでください」

「そっちもな、リタとソアン。この屋敷のことはエリーとジェンドに頼んでおいた」
「くれぐれも気をつけて、絶対に一人にならないでください」
「私たちも離れません、必ず二人でいるようにします」

 まずはジーニャスが神殿に行くことになった、護衛を何名かつけて絶対にジーニャスを一人にしないで行って貰った。僕が神殿に行く頃にはジーニャスが必要な話をしていてくれるはずだ、神殿にも先に領主から許可を貰って連絡を入れておいた。呪われている腕輪の解呪、もしくは破壊をお願いしたいと言ってあるのだ。

「ソアン、神殿には色々と大事なものがある」
「リタ様を絶対一人にはしません!!」

「ああ、僕もそのつもりだ。大事な人もいるから一人になって、マーニャを呼び出したくはない」
「ジーニャスさんも一人じゃないし、護衛の方と離れないはずです」

「あとは見落としがないか、何かを忘れていたりしないかが心配だ」
「大丈夫です、……マーニャさんにはきっと理解できません」

 僕はソアンと一緒にいて自分の考えたことに穴が無いかと探した、僕の作戦はとても簡単で誰でも思いつくようなものだ。でもだからこそマーニャは信じると思った、これはあると思っているから信じてしまうのだ。半分はマーニャの思い込みだった、あとの半分はこちらでうまく作りだす、だがそれができなくても失うものはないのだ。

 ジーニャスが出発してからある程度の時間が経って、僕が出発しようとしていた時に知らせが来た。ジーニャスは無事に神殿に着いて、解呪を得意としている神官に会ったそうだ。神殿に呪われた物を置いておくのは不敬だから、ジーニャスもこっちに帰ってくるという話だった。僕たちは離れたままで領主の別宅で待った、やがて神官がこちらに到着した。

「それでは……、呪われているという腕輪をこちらの机へ」
「ええ、これです」

 神官である男性は慎重に僕の前で腕輪を調べた、そうしてから僕たちは筆談で会話をした。神官の男性はしばらく腕輪を調べると、闇の力が強すぎて封印するのも難しいと書いてきた。ジーニャスの言う腕輪の破壊はできるならそれが良かった、でも現実には難しいという話になった。そうなったらもう選ぶ道は二つしかない、マーニャを倒しに行くかそれともこちらへ誘き寄せるかだ。

「あの方は神殿ですか?」
「ええ、この事態でずっとそこにいらっしゃいます」

 僕は一言だけそう聞いた、神官は静かにそう答えた。それでジーニャスの腕輪を壊すという考えは失敗した、一応は腕輪に封印の魔法をかけてくれることになった。だがそれがどこまで機能するかは分からない、それが筆談で交わした神官の意見だった。僕はマーニャが引っかかってくれることを望んだ、だがそう簡単でもないと思っていた。

「この腕輪は封印できますか?」
「一応は、できる限りの光の封印を施します」

「では封印をお願いします」
「はい、神の名において封印を」

「……マーニャ、それじゃあ。さようなら」
「『聖なる封印ホーリーシール』」

 神官が魔法を唱えると腕輪が僅かに震えた、だがそれ以上は動かなかった、だが持ち上げてみるとかなり重くなっていた。神官は念の為にとジーニャス家の別宅に滞在することになった、ジーニャスがやがて帰ってきた。僕はソアンと護衛の人たちに腕輪を預けて少しだけ彼に会った、自分の考えていた腕輪の破壊が上手くいかずに不安だろう、でもジーニャスは努めていつもどおりの顔をしていた。

「ジーニャス、神殿はどうでしたか」
「一度襲われたこともあるが、やはりあそこが一番安全そうだ」

「そうですか、腕輪の封印も上手くいきましたか」
「都の神官がいたからな、腕は保証できるだろうな」

「あの方とも会いましたか」
「……今は遠くから顔を見るくらいだ、詳しく話しはできん」

 そうして二つの腕輪は封印された、だが近くにはおかずに僕たちそれぞれが持っていた。僕はジーニャスが危険だからそちらの警備を優先した、僕の傍よりもジーニャスの方に人を配置した。ソアンは不安そうにしていた、僕は極力マーニャにもらす情報は少なくした。ソアンの意見ではそれでも一言があれば充分だった、僕はだからソアンにこう言ってみた。

「大丈夫だよ、ソアン。どうせ、もうすぐジーニャスには伴侶ができる」
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