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4-25悍ましい過去を操る
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「ソアン、どこだ!?」
「あはははっ、無駄なことね。……あたしの闇からは逃げ出せない」
僕の周囲を闇の世界が支配していた、でもこれは見せかけのマーニャの世界だ。仮初の世界であるはずだ、ソアンも僕と一緒にいた。きっとまだ傍にいる、マーニャが姿を現さないのは何か理由があるのだ。それはきっと僕とソアンがそれぞれの腕輪を手放していないからだ、だからマーニャは二つの腕輪を取り戻すことができないでいるのだ。
「『大いなる浄化の光』」
僕はだめもとで浄化の光の魔法を使った、すると周囲の闇が急に薄らいでいって消えた。闇が消えたらソアンが僕のすぐ傍にいた、彼女は左手の腕輪をしっかりと握りしめていた。僕も右手の腕輪があることを手を懐に入れて確認した、そうしてから僕とソアンはお互いの無事が分かって喜んだ。だがしかし、今の僕たちは近づき過ぎてはいけなかった。
「ソアン、その腕輪とこの腕輪を近づけてはいけない」
「はい、リタ様。さっきの闇は、マーニャさんの過去は、それで見せられたものですか」
「きっとそうだ二つの腕輪が揃っているほうがマーニャの力が強まるんだ、三つ目の腕輪が干渉しやすくなるんだろう」
「マーニャさん、まさかこっちには来ていませんよね」
「それはないと思うが浄化の光が効いたことからして、この腕輪は闇系統の力を使っている」
「ゾンビやゴーストと同じってことですか、まさかマーニャさん死んでないですよね」
僕もマーニャが既に亡くなっている可能性を一瞬考えた、浄化の光は闇系統や不浄なものに効く魔法だからだ。だが彼女はまだきっと生きているはずだ、ジーニャスを手に入れるまで死ぬわけがない、ただフェイクドラゴンとの融合でおかしくなっている可能性はあった。僕とソアンは一定の距離を保ったまま、ジーニャスが慰霊祭から帰ってくるのを待った。
「二人とも睨み合って一体何の遊びだ? リタとソアンよ」
「ジーニャス、これは遊びじゃすみませんよ」
「この左手の腕輪を返します、ジーニャスさん、そしてリタ様から離れてください」
僕たちはジーニャスが帰ってくると左手の腕輪を彼に返した、そしてジーニャスをソアンが連れて僕から距離をとって貰った。声だけが聞こえる隣の部屋まで距離をとってから、ソアンが僕たちに起こったことを説明していた。僕はそれを聞きながらどうしたものかと考えた、ジーニャスに腕輪を預けて僕たちは離れる、その方がマーニャの二つ腕輪への力は及ばなかった。
だがジーニャスに腕輪を預けて一人にするのは心配だった、マーニャが腕輪が二つ揃っていると危険だとみせかけて、実は腕輪が一つだけでもマーニャがこっちに来れるのかもしれなかった。ソアンはマーニャの過去には詳しくは触れずに、腕輪が二つ揃っていると彼女から闇で干渉されるとだけ、それだけをジーニャスに伝えていた。
「闇に包まれてマーニャさんの声を聞きました、もう少しで腕輪を彼女にとられるところでした」
「あの女の声をか!? ……腕輪同士を近づけてはいかん、でも離し過ぎても危険だとは厄介だな」
「ジーニャスさん、その腕輪も持って一人にならないでください」
「分かった、ソアンよ。護衛を呼んできてくれ、俺とリタはこの距離で待っている」
ソアンは慌ててジーニャスの護衛の者を本宅へ呼びにいった、僕とジーニャスは声は聞こえるが近づき過ぎず離れたまま会話した。マーニャの過去までは僕も伝えられなかった、彼女が辛い過去を持っているのは分かった。彼女が大切にしてきたものがこの腕輪たちと、それにジーニャスとの思い出だというのも分かった。でも、それで彼女が引き起こした出来事は酷過ぎた。
「ジーニャス、どうしますか。この腕輪、持っているだけでも危険です」
「最初から俺が言っているように破壊する、やはりそれが一番に安全だ」
「破壊する方法は? どうやって壊すんです?」
「リタ、ソアンの話を聞いたが闇魔法を使っているのだろう」
「ええ、おそらくはそうです。浄化の光が効きましたから、その系統の魔法です」
「それならば神殿が専門家だ、朝になったら神殿に相談する」
ジーニャスの言っていることは冷静で正しかった、闇系統の魔法を使っている物なら神殿が専門家だった。神殿は基本的に光系統の回復や浄化の魔法を得意としていて、闇系統の魔法は封じてしまうように考えていた。ジーニャスと僕は朝になったら神殿に相談に行くことにした、やがて護衛の者もやってきたので僕はソアンと、ジーニャスは護衛の人たちと過ごすことになった。
「…………あたしの闇よ、暗く深く心を沈めなさい」
そう方針を決めて一瞬だけ僕とジーニャスが少し近づいた時、二つの腕輪からまたマーニャの声と闇が溢れ出てきた。僕は浄化の魔法を使おうとしたが、今度は声が出なくなっていた。いや声は出ているはずなのだが、僕には音として何も聞こえないのだ。反射的にソアンの手を握っていたから、何も見えない聞こえない闇の中でその手だけを握り締めていた。
そうしてマーニャの過去をまた見せられた、だが今度はもっと酷かったし辛かった、僕自身がマーニャになっていて彼女の悲しくて辛い過去を味あわされた。女性が男性を見たら恐怖を覚えずにはいられないような過去だ、男性の僕でも辛いのだから女性のソアンのことが心配だった。だからソアンの小さな手を握り締めてその温かい手の感触だけに集中した、そしてこれは幻なのだからと僕はまた浄化の魔法を使った。
「『大いなる浄化の光』」
僕が浄化の魔法を使った途端にまた闇が散っていった、そこにはソアンと顔色が悪くなったジーニャスそれに護衛の者たちがいた。だが護衛の者たちはマーニャの経験に耐えられずに気絶していた、僕とソアンは一度見ていたから何が起きるか分かっていて覚悟があった。ジーニャスは初めてでよくこの酷い経験に耐えた、彼は顔色は悪くなっていたが腕輪を決してマーニャに渡さなかった。
「リタ、ソアンよ。よく耐えたな、こんな悍ましい過去に」
「僕たちは二度目です、でももうこんな経験はしたくないです」
「だんだん私はムカついてきました、過去の出来事だから相手をぶん殴れないのが残念です」
「リタの浄化の魔法は有効だ、だが護衛はまた呼んでこんといかんな」
「僕たちは離れてもいけないし、近づき過ぎても危険です」
「いっそ、こっちからマーニャさんに殴り込みをかけますか?」
「ソアンよ、一時の感情で動くな。この腕輪を破壊することが、あの女への一番の仕返しだ」
「落ち着いて行動しましょう、ソアンもね。……でもソアンの言うことも正しいかも」
「え!? リタ様、そんな正気ですか!? 私は思わず言っただけです!!」
ジーニャスは汗をかいて大きく息を吐いていた、あんな経験をしたら誰だって気分が悪くなるものだ。僕はソアンの言ったことをよく考えていた、ジーニャスの言う通りにこの腕輪が破壊できる、それがもちろん一番良いのだ。だがこの会話をおそらく聞いているマーニャが簡単にそれを許すだろうか、神殿の誰にこの腕輪を預ければ安全に破壊できるのかが分からなかった。
神殿の人間が腕輪をきちんと扱えるとは限らない、いっそマーニャだけがこっちに来たほうが決着は早く着いた。彼女にフェイクドラゴンたちがいないのなら、マーニャは上級魔法は使えない魔法使いなのだ。僕はそうした方がもっと安全だと思った、一番に危険なのは誰かがこっちの腕輪を起動させることだ、そうしてその人間がマーニャのいる空間に攫われることが危険だった。
「ジーニャス、神殿には相談しましょう。でも、僕たちもマーニャに聞かれないところで話が必要です」
「あはははっ、無駄なことね。……あたしの闇からは逃げ出せない」
僕の周囲を闇の世界が支配していた、でもこれは見せかけのマーニャの世界だ。仮初の世界であるはずだ、ソアンも僕と一緒にいた。きっとまだ傍にいる、マーニャが姿を現さないのは何か理由があるのだ。それはきっと僕とソアンがそれぞれの腕輪を手放していないからだ、だからマーニャは二つの腕輪を取り戻すことができないでいるのだ。
「『大いなる浄化の光』」
僕はだめもとで浄化の光の魔法を使った、すると周囲の闇が急に薄らいでいって消えた。闇が消えたらソアンが僕のすぐ傍にいた、彼女は左手の腕輪をしっかりと握りしめていた。僕も右手の腕輪があることを手を懐に入れて確認した、そうしてから僕とソアンはお互いの無事が分かって喜んだ。だがしかし、今の僕たちは近づき過ぎてはいけなかった。
「ソアン、その腕輪とこの腕輪を近づけてはいけない」
「はい、リタ様。さっきの闇は、マーニャさんの過去は、それで見せられたものですか」
「きっとそうだ二つの腕輪が揃っているほうがマーニャの力が強まるんだ、三つ目の腕輪が干渉しやすくなるんだろう」
「マーニャさん、まさかこっちには来ていませんよね」
「それはないと思うが浄化の光が効いたことからして、この腕輪は闇系統の力を使っている」
「ゾンビやゴーストと同じってことですか、まさかマーニャさん死んでないですよね」
僕もマーニャが既に亡くなっている可能性を一瞬考えた、浄化の光は闇系統や不浄なものに効く魔法だからだ。だが彼女はまだきっと生きているはずだ、ジーニャスを手に入れるまで死ぬわけがない、ただフェイクドラゴンとの融合でおかしくなっている可能性はあった。僕とソアンは一定の距離を保ったまま、ジーニャスが慰霊祭から帰ってくるのを待った。
「二人とも睨み合って一体何の遊びだ? リタとソアンよ」
「ジーニャス、これは遊びじゃすみませんよ」
「この左手の腕輪を返します、ジーニャスさん、そしてリタ様から離れてください」
僕たちはジーニャスが帰ってくると左手の腕輪を彼に返した、そしてジーニャスをソアンが連れて僕から距離をとって貰った。声だけが聞こえる隣の部屋まで距離をとってから、ソアンが僕たちに起こったことを説明していた。僕はそれを聞きながらどうしたものかと考えた、ジーニャスに腕輪を預けて僕たちは離れる、その方がマーニャの二つ腕輪への力は及ばなかった。
だがジーニャスに腕輪を預けて一人にするのは心配だった、マーニャが腕輪が二つ揃っていると危険だとみせかけて、実は腕輪が一つだけでもマーニャがこっちに来れるのかもしれなかった。ソアンはマーニャの過去には詳しくは触れずに、腕輪が二つ揃っていると彼女から闇で干渉されるとだけ、それだけをジーニャスに伝えていた。
「闇に包まれてマーニャさんの声を聞きました、もう少しで腕輪を彼女にとられるところでした」
「あの女の声をか!? ……腕輪同士を近づけてはいかん、でも離し過ぎても危険だとは厄介だな」
「ジーニャスさん、その腕輪も持って一人にならないでください」
「分かった、ソアンよ。護衛を呼んできてくれ、俺とリタはこの距離で待っている」
ソアンは慌ててジーニャスの護衛の者を本宅へ呼びにいった、僕とジーニャスは声は聞こえるが近づき過ぎず離れたまま会話した。マーニャの過去までは僕も伝えられなかった、彼女が辛い過去を持っているのは分かった。彼女が大切にしてきたものがこの腕輪たちと、それにジーニャスとの思い出だというのも分かった。でも、それで彼女が引き起こした出来事は酷過ぎた。
「ジーニャス、どうしますか。この腕輪、持っているだけでも危険です」
「最初から俺が言っているように破壊する、やはりそれが一番に安全だ」
「破壊する方法は? どうやって壊すんです?」
「リタ、ソアンの話を聞いたが闇魔法を使っているのだろう」
「ええ、おそらくはそうです。浄化の光が効きましたから、その系統の魔法です」
「それならば神殿が専門家だ、朝になったら神殿に相談する」
ジーニャスの言っていることは冷静で正しかった、闇系統の魔法を使っている物なら神殿が専門家だった。神殿は基本的に光系統の回復や浄化の魔法を得意としていて、闇系統の魔法は封じてしまうように考えていた。ジーニャスと僕は朝になったら神殿に相談に行くことにした、やがて護衛の者もやってきたので僕はソアンと、ジーニャスは護衛の人たちと過ごすことになった。
「…………あたしの闇よ、暗く深く心を沈めなさい」
そう方針を決めて一瞬だけ僕とジーニャスが少し近づいた時、二つの腕輪からまたマーニャの声と闇が溢れ出てきた。僕は浄化の魔法を使おうとしたが、今度は声が出なくなっていた。いや声は出ているはずなのだが、僕には音として何も聞こえないのだ。反射的にソアンの手を握っていたから、何も見えない聞こえない闇の中でその手だけを握り締めていた。
そうしてマーニャの過去をまた見せられた、だが今度はもっと酷かったし辛かった、僕自身がマーニャになっていて彼女の悲しくて辛い過去を味あわされた。女性が男性を見たら恐怖を覚えずにはいられないような過去だ、男性の僕でも辛いのだから女性のソアンのことが心配だった。だからソアンの小さな手を握り締めてその温かい手の感触だけに集中した、そしてこれは幻なのだからと僕はまた浄化の魔法を使った。
「『大いなる浄化の光』」
僕が浄化の魔法を使った途端にまた闇が散っていった、そこにはソアンと顔色が悪くなったジーニャスそれに護衛の者たちがいた。だが護衛の者たちはマーニャの経験に耐えられずに気絶していた、僕とソアンは一度見ていたから何が起きるか分かっていて覚悟があった。ジーニャスは初めてでよくこの酷い経験に耐えた、彼は顔色は悪くなっていたが腕輪を決してマーニャに渡さなかった。
「リタ、ソアンよ。よく耐えたな、こんな悍ましい過去に」
「僕たちは二度目です、でももうこんな経験はしたくないです」
「だんだん私はムカついてきました、過去の出来事だから相手をぶん殴れないのが残念です」
「リタの浄化の魔法は有効だ、だが護衛はまた呼んでこんといかんな」
「僕たちは離れてもいけないし、近づき過ぎても危険です」
「いっそ、こっちからマーニャさんに殴り込みをかけますか?」
「ソアンよ、一時の感情で動くな。この腕輪を破壊することが、あの女への一番の仕返しだ」
「落ち着いて行動しましょう、ソアンもね。……でもソアンの言うことも正しいかも」
「え!? リタ様、そんな正気ですか!? 私は思わず言っただけです!!」
ジーニャスは汗をかいて大きく息を吐いていた、あんな経験をしたら誰だって気分が悪くなるものだ。僕はソアンの言ったことをよく考えていた、ジーニャスの言う通りにこの腕輪が破壊できる、それがもちろん一番良いのだ。だがこの会話をおそらく聞いているマーニャが簡単にそれを許すだろうか、神殿の誰にこの腕輪を預ければ安全に破壊できるのかが分からなかった。
神殿の人間が腕輪をきちんと扱えるとは限らない、いっそマーニャだけがこっちに来たほうが決着は早く着いた。彼女にフェイクドラゴンたちがいないのなら、マーニャは上級魔法は使えない魔法使いなのだ。僕はそうした方がもっと安全だと思った、一番に危険なのは誰かがこっちの腕輪を起動させることだ、そうしてその人間がマーニャのいる空間に攫われることが危険だった。
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