無限の精霊コンダクター

アキナヌカ

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008激雷

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 男は弱い電撃のせいで動かなくなった、息はしているから死んではいなかった。俺はフィールを縛っていた縄でその男を縛った、足は縛らずに両手を何もできないように縛っておいた。そして、俺はフィールに言った。

「寝衣からいつもの服に着替えろ、俺も着替えてくるからこいつはその辺に転がしておけ」
「待ってリード、今すぐ着替えるから。お願い、傍にいて」

 フィールは俺の目の前で寝衣から普段の平民服に着替えた、俺の着替えにもついてきてフィールに見られたがそれは別に良かった。そこから気絶している男を起こして、縄を引っ張って街の警備隊のところに連れていった。そこに行くまでに皆が何事かと俺たちを見た、フィールは俺に一生懸命にしがみついていた。そして、ようやく街の警備隊につくと俺はこう言って男を引き渡した。

「強姦の現行犯だ、捕まえてくれ」
「そんな強姦じゃない!! フィールちゃんも同意してた!!」
「私は絶対に貴方に同意なんかしません!?」

 そこからは男がいかにフィールから愛されてるかという戯言を聞かされた、街の警備隊も呆れた表情だったが一応は証言として記録をしていた。男はフィールの働いている酒場の常連で、そこでフィールに惚れて自分は彼女から特別に愛されていると思ったそうだ。俺は長く続く戯言に頭が痛くなったが、一つ聞き逃してはいけないところがあった。

「今夜だってそうだ!! フィールちゃんは部屋の鍵をかけないで僕を誘ったんだ!!」
「フィール、女の一人暮らしだ。気をつけろって言っただろう!?」
「うぅ、リードが帰った後に閉め忘れてた。ごめんなさい!!」

 それは男の聴取は街の警備隊に任せて、女の一人暮らしなのに部屋の鍵もかけないで寝るとは、そのフィールの不用心さを俺は思いっきり叱った。フィールもしゅんとして心から反省しているようだった。そんなフィールに男はなおも声をかけてきた。

「僕はフィールちゃんが大好き!! フィールちゃん!! 僕たち愛し合ってるよね!!」
「私は貴方のこと何にも知らないし、知りたいとも思わない!! 気持ち悪い、どこかへ行って!!」

 そうして男は強姦罪と住居侵入罪で捕らえられた、街の警備隊に聞くとおそらく鉱山で一、二年の強制労働の刑になるだろうと答えがあった。少なくとも一年はこの男は出てこないわけだが、俺は再犯の可能性が極めて高いだろうと思った。そこで俺は男を殺してしまおうかと迷った、これからのフィールの安全の為には殺してしまったほうが良かった。でもフィールが俺の肩をポンポンッと叩いて首を横に振った、だから俺は秘密裡に男を殺してしまうことを止めた。街の警備隊からの帰り道、俺はフィールにいいのかと聞いた。

「あいつは再犯をする可能性が高い、鉱山に一年いったって人が変わるとは思えない」
「いいんです、リードがそこまでしなくていいんです」

「今夜だって怖かっただろうに、フィールは優し過ぎるぞ」
「私はリードに手を汚して貰いたくないだけです」

「……今度から部屋の鍵は必ずかけろよ」
「はい、そうします。二、三回確認もします」

 そうして俺たちは真夜中の街を手をつないで帰った、俺はフィールが心配でこの手を放すのが惜しいくらいだった。そうしてお互いの部屋に着くと手を放して、おやすみと言いあってお互いに眠った。翌日の朝のフィールもいつもどおりだった、だから朝飯を一緒に食べてフィールは酒場の仕事に、俺は森の中に行って賞金首探しをすることにした。昨日と同じように街道近くの樹に登って隠れていると、盗賊たちがぞろぞろとやってきた。賞金首もいたので俺はさっさと片付けることにした。

「”かまいたちの三撃”」

 俺がそう風の精霊に指示した途端に、三人の賞金首の首が鎌で切られたようにごろりと下に落ちた。それを見て盗賊たちはパニックになって、その場から逃げ出していった。盗賊のアジトを確かめる良い機会だったが、俺が盗賊退治をしていいのかどうか分からなかったから止めた。俺は盗賊の首の切ったところを炎の精霊に焼いてもらった、そうして血が出なくなった三つの首を、あらかじめ買っておいた袋につめて持って帰った。また冒険者ギルドの受付の列に並んで俺は順番を待った、そうして順番がきたわけだが生首を転がしていいのか迷ったので聞いた。

「賞金首だぞ、ここに転がしていいのか?」
「そんなまさか、坊やったら揶揄わないで」

「本物だ、もう一度聞くぞ。ここに転がしていいのか?」
「ちっ、ちょっと待って。別室に行きましょう」

 そうして俺は別室で賞金首を確認してもらった、たしかに手配されている賞金首に間違いはなかった。それで俺は合計して金貨三十枚を手に入れた、それから、盗賊のアジトを見つけたら俺がそいつらを皆殺しにしていいのかと聞いた。冒険者ギルドの職員は驚きと恐れの目で俺を見て、それから迷いながらこう答えた。

「ご自分の身が危ないと感じたら、相手を殺しても仕方ないでしょう」
「随分とこれは曖昧な答えだな、それだと街中でも殺意を感じたら、人を殺していいことになる」

「盗賊を見つけたら、街の警備隊に言ってください。それが一番確実です、でもお礼は僅かでしょう」
「盗賊退治は儲からなそうだな、あの森には盗賊がいるぞ。それだけは伝えておく」

「冒険者ギルドの依頼になったら話は別です、その時はそれなりのお金をお支払いします」
「ふーん、なるほど覚えておく」

 俺は儲からないなら盗賊退治をすることを止めた、冒険者ギルドの依頼を確認しておくことにした。そこに盗賊退治の依頼が出たら、そうしたら盗賊退治に行くつもりだった。それから俺は財布の金貨が重くなってきたので、アクセサリ屋で金の輪にそれを変えた。

「その金の輪をくれ、値段は金貨四十五枚か。ちょうどいい、これにする」

 当分の生活費はぬいて購入したから大丈夫だった、こうしておかないと公衆浴場などでの盗難が怖かった。左手につけた金の輪を重く感じた、良い筋力トレーニングにもなりそうだった。そうして俺は昼を過ぎていたから、適当に昼飯を店で食べた。フィールと食べる朝飯は美味しいのに、彼女がいないと食事もあまり楽しいものではなかった。

「まぁ、誰かと食べる方が飯は美味いよな」

 そうして午後はシュティックのおっさんの剣術訓練を受けて過ごした、俺はだんだんと強くなりシュティックのおっさんにも勝てそうなところまできていた。

「坊主は本当に化け物だな、まだ数日でこの成長力とは」
「その化け物って言うの止めろ、不愉快だ」

「それじゃあ、剣術で俺に勝ってみな!!」
「……そうする」

 俺は集中してシュティックのおっさんの剣筋をみてギリギリでかわした、そうして懐に入りシュティックおっさんの首筋に剣を当てた、するとシュティックのおっさんは嬉しそうに笑った。

「おおっ、とうとう俺を超えたか。もう坊主とも呼べないな、リード」
「そうだ、これで俺を化け物と呼ぶのは止めろ」

「化け物じゃないなら、そろそろリードらしい二つ名も考えなきゃだな。俺が思うに”激雷のリード”だな」
「なんだそれは中二病か!? 二つ名なんていらん!!」

「チュウニビョウ? なんだか分からんがこの二つ名は良いと思う」
「思わねぇよ!? 絶対に俺は使わないからな!!」

 二つ名付きの冒険者がいることは知っていた、でも自分がそうなるとは思わなかった。しかも”激雷のリード”最高に中二病くさい、そんな黒歴史はたくさんだ。でもこの時から俺のこの二つ名は密やかに冒険者の間から広まっていくのだった。

「激雷、激しく鳴る雷か。ったく冗談じゃねぇ」
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