アヤカシ学園 N o.1

白凪 琥珀

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夏: 初めて編

EP2 友達

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「お、冬馬と清水ちゃんだ。」
「お、ニロ。」
私達の進行方向から歩いてくる「ニロ」と呼ばれた女の子が手を振りながら近づいてきた。
「清水、これ二口瑠夏。」
「いや、これ言うなーってか何してんの
 ?もう下校時刻過ぎてるけど」
「かくかくしかじかでして…」
私が事情を説明すると、ポンと手を叩いて二口さんが言った。
「だったらアタシらの部活来ない?
 面白いもんいっぱいあるよー」
ということで二口さんが所属する吹奏楽部の見学に行くことになりました。
「ここが第一音楽室ね。吹部はここで活 
 動してんの。」
さすがに人数が多くてビックリする。人型じゃない妖怪も多い。
(なんか生物部の後に来ると、余計に
 多く見える…)
「ニロの楽器はあれだろ。あれ…
 ラッパ。」
「ラッパじゃないし、トランペットだし
 。あと、サックスな。流石にサックス
 は分かるでしょ?」
私の名前といい、トランペットといい、冬馬くんには少し大雑把なところがあるようだ。
「二口さんって楽器二つ担当してる
 の?」
「まぁね。そっか私のことまだ話して
 なかったね。」
そういえば二口さんがなんの妖怪か知らない。すると、どこからか声がした。
「おいこら、小娘。妾の紹介がまだ
 じゃ。ぶち殺すぞ。」
私が目を白黒させていると、二口さんが説明してくれた。
「アタシ、二口女っていう妖怪だからさー、頭の後ろにも口があるんだよね。」
指を刺されて後頭部を見てみると、確かに口がある。
「コイツ自我持って勝手に喋っちゃうし
 、なんか態度デカいし。まぁ、二重
 人格みたいなもんだよ。」
二口女も何かと苦労が多いようだ。
「でも、これがいるおかげで楽器二つ
 吹けるから、それは満足。髪の毛動か
 すこともできるから、何かと便利だし
 。」
ニコッと笑って二口さんが言った。
「ってか『さん』づけ辞めてよー
 アタシ『さん』づけ慣れてないから
 なんかヤダ」
「そんな恐れ多いよぅ」
今まで友達付き合いなんて夢のまた夢だと思ってた。なのに、いきなり『さん』なしはハードルが高すぎる。
「いいから、『るか』って呼んでよ
 ー」
「あの…じゃあ、るか…ちゃん、で」
「まぁいっか。よろしく、葵。」
名前で呼び合える友達が出来るなんて今日は本当にいい日だ。今なら死んでもいい…
「って冬馬は?」
「冬馬くんならあそこに…」
私が指を刺した先ではドラムをめちゃめちゃに叩いてる冬馬くんがいた。すると、もの凄い勢いでるかちゃんが走って行った。
「おいこら、冬馬ぁ。テメー何回言った
 ら分かんだコラァ?勝手にドラム触ん
 なつってんだろ。打楽器に湿気は命
 なんだよぉ。オメーが溶けた水で濡れ
 たらどうしてくれんだぁ?」
突然口調が変わったるかちゃんに流石の冬馬くんもたじたじである。
「わ悪かったって。清水もう行こうぜ…
 」
るかちゃんは頭の口のこと二重人格って言っていたけど、怒ったるかちゃんの口調はあのもう一つの口さんと同じような口調だった。二重人格じゃなく、
案外似たもの同士…?
 
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