アヤカシ学園 N o.2

白凪 琥珀

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EP6 実技訓練開始!!

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「それじゃあスタート」
パンと黒江先生がピストルを打った。
その音と同時にみんなが一斉にフィールドに入った。
「清水さん、よろしくお願いします。」
同じE班の雲英さんが挨拶してくれた。
雲英さんは、腕が6本付いている。絡新婦という妖怪らしい。
「天海くんもよろしく…」
「ああよろしくな、ブルーよ。」
「ブルー…?」
突然私を変な呼び方をする天海くんに困惑していると、
「あ、清水さん、天海の言うことは
 無視してよろしいので。」
雲英さんが教えてくれた。どうやら天海くんの扱いには慣れているらしい。
天海くんは天邪鬼っていう妖怪で幻を見せることが出来るらしい。
「何をいう、ロータス。」
「変な呼び方しないでくださる?」
とりあえず私達は木の影に隠れて作戦を練ることにした。
「3つの赤いボールを見つけに行くん
 だったら、一人一人分散する?」
「いや、他の班に妨害されたときに
 数の有利を失ってしまいます。
 ここは3人でまとまって行動し、
 他の班に妨害された際の戦術を考え
 るべきかと。」
(すごい…この短時間でここまで
 考えられる頭脳の持ち主…)
「まず、注意すべきは3人。B班の
 紅羽さん、E班の八神さん、F班の
 木葉くんです。
 紅羽さんは髪を伸ばすことができて
 遠距離攻撃が出来ます。
 木葉くんは木の妖怪なので森という
 フィールドでは恐らく最強だと思いま
 す。」
どちらも顔は知ってるぐらいで話したことはない。
「八神くんは百目鬼という妖怪です。
 直接的な攻撃手段はないようですが、
 私達の居場所を知ることくらい
 簡単なはずです。」
「ナイトは確かに俺たちの脅威となるだ
 ろう。だが、我々が力を合わせれば
 道は開く!!」
(さっきから天海くんの呼び名の
 法則が掴めない…)
私はウォーターブルー、雲英さんはロータス、八神くんはナイト…発想が豊かだなぁ。
「清水さん、避けてください!!」
雲英さんの叫び声に反応し、僅かに首を右に傾けた。すると、私の頬の真横を鋭い何かが通り、後ろの木の幹に刺さった。
「これは、氷柱か…!?」
(氷柱…ということは…)
氷柱が飛んできた方を見ると、
「清水達のチームか…ハズレだな…」
冬馬くん達B班が現れた。烏天狗の烏丸くんが冬馬くんと小清水さんの襟を掴んで飛んでいる。
「油断しないでくださいよ、渚くん。
 あっちの班には雲英と例の転校生が
 いる。」
「オーケーオーケー。小清水、
 お前は先にボール探しに行きな。
 こいつらが終わったら合流する。」
「合点!」
烏丸くんが小清水さんを離し、小清水さんは1人で深い森の方へ走って行った。
冬馬くんが着地すると、雲英さんが伺うように言った。
「よろしいのですか?ミラを先に行かせ
 て。3対2で我々に勝てるとでも?」
「何言ってんだ。お前ら3人くらい
 俺1人で十分だ。」
冬馬くんが鼻で笑いながらいった。
「!?清水!蓮!避けろ!」
その瞬間私達の足元に氷山が飛び出てきた。天海くんの言葉で私達2人は間一髪で避けることが出来た。
(っていうか天海くん、普通の呼び方も
 出来るやん…)
「2人共、今は一旦逃げましょう。」
私達は木々を避けながら一目散に逃げた。
「この狭いところでは私の妖術は効き
 にくいです。」
「俺の妖術もだ…クソっ」
「一先ず広いところに出ましょう。」
「ちょっと待った。」
後ろから冬馬くんの声がし、振り向くと
天海くんの首に手を回し、いつでも締め落とせるような体制で立っていた。
「天海くん!」
「いいんですか。そんなことをしたら
 生徒への暴行と見なされ即刻退学です
 が。」
「ハッそんな野蛮なことするわけ
 ねーだろ」
そういうと冬馬くんはガサゴソとポッケをあさり始めた。
そして取り出したのは…ブドウジュース…?
「これは俺の飲みかけのジュースだ。
 こいつの頭にぶっ掛けられたくなけれ
 ば、お前らが持ってる球を寄越しな
 。」
…。
「ひ…冬馬、辞めてくれ…
 俺は毎日椿油で髪セットしてんだ…
 毎朝何時間かけてセットしてると
 思ってんだ…」
本人にとっては重要なことかも知れないけど、どうしようもなくしょうもない…
「どうぞどうぞ。天海の髪がベタベタに
 なろうが、ハゲようが関係ありません
 。掛けたいならご自由に。」
「おい、ロータス…」
天海くんが涙目で嘆いた。雲英さんの
言葉が刺さったようだ。
「チッこいつに人質の価値は
 無かったか…」
すると、冬馬くんは無慈悲にもジュースのパックを握りつぶし、天海くんの頭に
ジュースを掛けた。
「貴様…後世まで呪ってやる…」
「ジュースかけただけで呪われる俺の
 子孫が不憫すぎるだろ…」
空気を変えるように咳払いをついて雲英さんが言った。
「というか、私達はまだボールを持って
 いませんが。」
「は?嘘つけ。もうすぐ始まってから
 20分経つけど。」
「探し始める前に冬馬くん達が来たから
 …」
すると、冬馬くんは何ともいたたまれないような顔で
「なんか…悪かったな…頑張れよ…」
と言った。その言葉は応援というより同情に近かった。
「!?おい、とりまる!」
目で追いつけない程速く、烏丸くんが
駆けつけた。
「お前ら、近くに多分誰かいる。
 気をつけろよ。」
烏丸くんが冬馬くんの裾を掴み、浮上する。
「よし、とりまる!小清水のところまで
 ダッシュだ!」
「全く、人使いが荒いんだから…」
そういうと2人は風のように飛んでいってしまった。

その頃、F班とC班は…
「がぁぁごぉぉ」
全員が爆睡していた。その中でたたずむ女性が一人。
「ふぅ、職務完了っと。あ、もしもし
 黒江くん。F班とC班に妖術かけまし
 た。多分、30分くらいで起きると
 思います。私、剣竜くんのとこ応援
 行きましょうか?」
「いや、ネムは南西の方に行けば
 八神達D班がいるはずだから、そっち
 に向かってくれ。」
「いいんですか?」
「ああ。清水・天海・雲英、あと近くに
 冬馬達B班のところに光樹が
 向かってる。」
「了解です。」
通話を切り、スマホをポケットにしまう。
「えーと南西、南西…
 南西ってどっちだろう…」



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