異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

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第四章 世界の工場

火力発電所の事故

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 汲広くみひろとアントネラがアカツキ伯爵邸のあるハーパヤの街の治療院に顔を出しているある日、流通部門の佐藤さとう頓馬とんまは偶然火力発電所の前を通りかかった。

 すると、1台の車が急発進したのだが、頓馬とんまを見つけると、声をかけてきた。


「お前、領主んところの佐藤さとうだよな?」

「はい。佐藤さとうです」

「今、火力発電所で蒸気漏れがあって6人火傷やけどった。俺はこっちに来ている医者のところまで行くから、このことを領主に伝えておいてくれ」

「分かりました」


 頓馬とんまは急いで治療院に顔を出すと、治療院の医師に、汲広くみひろとアントネラがいた。

 頓馬とんまは3人に事情を話す。

 幸い、治療院には急ぎの患者は来ていない。

 汲広くみひろたちは急いで火力発電所へ行き、


「負傷した患者はどこですか?」

「こっちだ!付いて来い!」


 急いで汲広くみひろたちは負傷者の元へ走る。

 着いてみると、男5人に女1人が倒れていた。

 意識はない。

 汲広くみひろたち3人は急いで服を切り、傷の具合を見ようとした。

 アントネラが女性の服を切ろうとしたとき、火力発電所の作業員が食ってかかった、


「何考えているんだ!ここには男もいるんだぞ!」

「命がかかっているかも知れないんです!恥ずかしさより命を優先すべきでしょ!そんなことが気になるなら処置が終わった後にかける毛布でも持って来なさい!」


 作業員は渋々しぶしぶ下がり、どこかへ走って行った。

 火傷やけどを負った作業員は、今すぐは命に別状べつじょういものの、放っておくと危ない。

 3人は、6人の負傷者に、治癒魔法をかけ始めた。

 ただれた皮膚ひふの内側から新たな皮膚ひふが再生を始め、ただれた皮膚ひふは、がれ落ち、赤い内側の皮膚ひふが現われる。汲広くみひろは、


「もう少しだ!」


 と言いながら、なおも治癒魔法をかける。

 赤い内側の皮膚ひふが、みるみる間に肌色に変わり、普通の皮膚ひふ大差たいさがなくなってきた。

 そうすると、1人、また1人と、意識が戻り始め、


「あれ、俺はここで、どうなったんだ?」

「蒸気れの事故で、火傷やけどを負ったんです。すぐに地元の治癒魔法師が来て、皮膚ひふを再生させました。痛いところ、違和感のあるところはありませんか?」

「頭がぼやっとしていてちょっと判断できない」


 3人は、他に火傷やけどを負ったところはないか入念に調べたが、もう治癒し終わっているようである。


「自分で歩けますか?」

「あぁ、ちょっと待ってくれ。立ってみる」


 すると、負傷者の1人は立てた。


「ちょっとフラフラするが、歩けそうだ」

「誰か!ベッドのある部屋にこの人を支えながら連れて行って!」


 1人、また1人と、他の作業員に支えられながら、歩いて行く。

 すると、さっき食ってかかった作業員が来て、


「シーツを持って来た。彼女にかけてやってくれ」


 最後の1人、服を切られて下着だけの裸になった女性にシーツをかぶせて、アントネラはベッドのある仮眠室へ連れて行くのであった。

 仮眠室へ着くと、汲広くみひろは、


「誰か!温かい飲み物6人分!」

 と叫び、他の作業員は慌ただしく動いた。

 飲み物を飲ませて落ち着かせようというのである。

 6人とも毛布にくるまれ、他の作業員が持って来た暖かい緑茶を飲み、一息つく。

 すると、そこに、医者が飛び込んできた。


火傷やけどを負った者がいると聞いて来た。負傷者はどこだ?」

「この毛布にくるまった6人です」

「傷の具合を見せてもらうよ」


 飛び込んで来た医者は、インジスカン王国出身の者ではなく、日本の西洋医である。

 入念に体を観察し、


火傷やけどはない。が、数週間って、快方かいほうに向かったような肌をしているではないか!火傷やけどを負ったのはいつのことだ?」

「つい1時間前のことです」

「そんなはずはない!もう快方かいほうに向かっている!1時間やそこらのあとではない!これならあとも残らず綺麗きれいな元通りな皮膚ひふになるだろう」

「治癒魔術師の力です」

「そんなこと信じられるか!」


 アントネラは念のため、がれた皮膚を持っていた。

 それを西洋医に見せ、


「回復前の皮膚ひふです。これをどう見ますか?」

「こ、これは、新しい火傷やけどの跡!本当にこんな短時間で皮膚ひふを再生させたのか?」

「さっきからそう言っているじゃないですか」


 西洋医は愕然とした。

 自分が来た意味はないと。

 すると汲広くみひろは、


「あなたが来て、入念にチェックしてくれたお陰で、火傷やけどあとの見落としはなくなりました。ありがとうございます」


 西洋医は、ちょっと持ち直し、


「インジスカン王国は、遅れた国だと今まで馬鹿にしていた。しかし、違うのだな。優れた面も持っているのだな?」


 すると、汲広くみひろは、


「そうですね。優れた面もちゃんと持っています。知れば知るほど不思議な世界です」


 汲広くみひろは満面の笑みでそう答えるのであった。
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