異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

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第五章 流通革命

掃き出し窓の能力持ちの苦難―2

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 汲広くみひろとアントネラと網弾野あびきのは、すぐに帰ってもよかったのだが、休憩室でお茶をする。


「あぁー疲れた。お偉いさんだけの会議って疲れるなぁ。高校出て数年のぺいぺいを重役会議に出すなよ」

「と、言っても岡塚さんは領主じゃないですか?」


 網弾野あびきのがイタズラっぽく言ってみる。


「まぁ、そうですけど。って言うか、網弾野あびきのさんが安請け合いするから話しが大きくなるんじゃないですか!」


 木瀬通運に『瞬達便しゅんたつびん』ができたのは、網弾野あびきのが断り切れなかったからと言うか圧力に負けたせいである。


「『掃き出し窓の能力、我々にも教えろ!』って言ってくるんでしょうね」

「それなら、まとめて教えた方がこちらとしては楽ですわね」

「じゃぁ、業種をまたいだ掃き出し窓の能力の講習、大勢集めてやっちゃう?」

「それも一つの手ですわね。でも、人選は厳密にしてもらわないと」


 掃き出し窓の能力は犯罪に使おうと思えば使える。

 何せ、探偵物でお馴染みの、密室殺人が、この能力だけで、種も仕掛けもくお手軽にできてしまうのだから。

 これが一般に知られれば、探偵物の密室殺人のお話しは、この世からくなってしまうかも知れない。


網弾野あびきのさん、不思議に思っていたんだけど、役所の他の省庁から『掃き出し窓の能力、我々にも教えろ!』って言ってこないけれど、そういった話はないの?」

「と、言うと?」


 網弾野あびきのは、首をかしげた。


「だって、緊急自動車より早く現場に到着できるでしょ?身元はしっかりしてるし、需要なら一杯ありそうでしょ?」

「あ」


 網弾野あびきのは、今気付いたようだ。

「だって、大きく掃き出し窓の能力を開けば、建造物運搬用の大きな車両も通れるから、緊急自動車なんて、渋滞関係なし、赤信号を突っ込む恐怖無しで直接現場へ行けるんだから」

「…今度、上司にプレゼンしてみます」


 網弾野あびきのは、恥ずかしかったのか、恐縮きょうしゅくしている。

 汲広くみひろはお茶を飲み干し、


「明後日は、また、お偉いさんに囲まれた会議だ。気合い入れていこう!」

「「おぉ」」


 気乗りしないせいか、「おぉ」のかけ声は小さかった。


「ただいま」

「ただ今戻りました」

「お帰りなさい。疲れたでしょ」


 汲広くみひろとアントネラは、父の修司しゅうじるリビングのソファーに腰掛ける。

 母の朋子ともこはお茶を入れてくれた。


汲広くみひろ、アントネラ、今日はどんな用事だったんだ?」

「木瀬通運の重役会議に呼ばれた。そこの話だと、月曜日には運送業全体のトップ会議、水曜日には交通業界全体の会議に出てくれだって」

「オレ、トップ会議どころか重役会議にも呼ばれたことがない!息子に先を越されるなんて!」

「落ち着いて下さい。あなた。この子たちがおかしいだけです」


 おかしいとは失礼な!と、汲広くみひろは思った。


「で、木瀬通運だけ能力を使うのはズルい。我々にも使えるようにしろ!と言われる可能性が高い」

「で、どうするんだ?」

「教えるのは別にいいんだけど。ちゃんと人選だけ間違わなければ」

「人選とは?」

「簡単に犯罪に使える能力なんだよ」

「え?」

「掃き出し窓の能力が使えるって分からなければ、アリバイ工作、密室殺人に使えて、あとは、ウォークインのでっかい金庫なら、かぎ無しで簡単に侵入できるくらいだから家宅不法侵入なんて、簡単にできるし…」

「分かった、分かった。もういい。つまり、そんなことしないよと言う人望が必要なんだね」

「うん。で」

「で?」

「本来なら十年以上かけて習得できるかどうかっていう技術なんだけど、僕やアントネラならものの数分でたたき込める」

「…」


 修司しゅうじ呆気あっけにとられていた。


「どうしたの?」

「じゃぁ、じゃぁ、お前たちがインジスカン王国と国交を取りなしたじゃないか?」

「うん」

「それから、大学に魔術学部ってできたじゃないか?」

「うん」

「そこの先生って、そんな詰め込み方するのかい?」

「あぁ~、無理無理無理。普通の先生方は、レベルが違うから座学と実習で教える。十年以上かけて習得できるかどうかコースしかできない」

「…」

 修司しゅうじはまた呆気あっけにとられていた。


「…それは… つまり… その先生方よりお前たち二人の方が、魔法に精通していると?」

「その先生方に面と向かって言っても信じてもらえないけど、まぁ、今の僕たちは数段精通してるね。両方の星で言うと、トップクラス。レベルが違う」


 修司しゅうじはまたまた呆気あっけにとられていた。


「本当にお前たちは…」

「ん?」

「まぁいい。この話は終わりだ。会議、頑張るんだぞ」

「うん」

「はい。お義父様」

「みんな、食事ができたわよ。汲広くみひろ朝里あさりを呼んでらっしゃい」

「は~い」


 汲広くみひろたちは一家団欒いっかだんらんの夕食を摂るのであった。
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