異世界マゼマゼ奮闘記

ぷい16

文字の大きさ
148 / 167
第六章 神様を起こしに

もう一回分身する?

しおりを挟む
 アカツキ伯爵が領地へ来たのが春先、冬になる前にまた王都へ戻らなければならない。

 それまでにできることは全てやっておかなければならない。

 先日農夫と掃き出し窓の魔法の能力保持者を募集したのだが、集まっているだろうか?


「ミラト、先日人材募集した件、誰か応募してきたか?」

「はい。もう募集人員は集まっております。いつでも面接できますよ」


 こういうことはインジスカン王国では執事に聞くことである。

 代官のミラトに管理させるものではない。アカツキ伯爵は従者を使うのが下手なのである。


「それではあさって面接をしよう。ミラト、応募してきた人に集まってもらってくれ」

「かしこまりました」


 そして二日後、面接の日となった。面接官は、アカツキ伯爵、ステファニア、ミラトの3人である。


「オレ、三男で、土地がもらえなかったかった。でも、農業が好きだ。是非雇ってくれ!」


 そう切実に訴えてくるのは今回面接に来たジャコフ・アイザックだった。他に、


「私、何の取りもなくて、どこからも採用をもらえなくて。雇ってくれたら一生懸命働きます。是非雇ってください!」


 と、訴えかけた、リリー・マッカーソンだった。


 今回採用したのは、ビニールハウスを担当するのはジャコフ・アイザック他3名、掃き出し窓を担当するのはリリー・マッカーソン他3名だった。

 とりあえず、ビニールハウスを担当する者は、特にやることがないため、従者の新人教育を受けてもらう。掃き出し窓の担当者4名には、


「ほら4人、1列に並んでしゃがんで」

「「「はい」」」


 アカツキ伯爵は頭に手をかざし、記憶に名前を付ける能力と、各村々の位置、掃き出し窓の能力、そして、土のう袋の能力を授けた。


「それでは一人一人今授けた掃き出し窓の能力の練習だ。まずはオバーヘ村だ」

「「「はい」」」


 そうして練習は始まった。


     *


「そりゃ教えるのはかまいませんが、人数によります」


 ここは日本、岡塚おかつか邸、汲広くみひろの私室。

 掃き出し窓の能力集中講習センターで、講師をして帰って来て一服していたら、インジスカン王国の一工業団地に医院を構える多々身たたみ省語しょうごから電話がかかってきたのだ。


 何でも、医療雑誌に治癒魔法に関する記事をせてもらったら反響が大きくて、我も我もと教えて欲しい人間が殺到。電話やらメールが結構かかってきているらしいのだ。


「こちらでも教える人員を調べますから、問い合わせがあったリスト、とりあえず現時点で、メールでいいので送って下さいな」

「分かりました。問い合わせがあった人間はメモしてます。メモがあちこちに散乱してますからちょっとお時間をいただきますが、必ずメールします」

「お願いします。こちらでも治癒魔法が広がればいいと思っているのはこちらも同じですから」


 と言って電話を切った。掃き出し窓の能力集中講習センターは、1ヶ月期間を取っているわりには数日期間を残してみな、掃き出し窓の能力などを習得して巣立ってしまうため、月末、数日休みになることが多い。

 その期間を使えば時間は作れるし、教えることもやぶさかではない。

 しかし、いっぺんに多数来られるとこちらも対応できない。

 人数をかなりしぼる必要がある。汲広くみひろはステファニアの部屋をノックし、


「ステファニア、るか?」

「はぁい。開いてますよ」


 汲広くみひろは今、省語しょうごからかかってきた電話の内容を話す。


「…と言われても、こちらも対応できる人数が限られてくるだろ?だからリストをもらってかなり人数をしぼりたいと思ってるんだ」

汲広くみひろさん、こんな時こそ分身の術なんじゃないですか?」

「分身の術?ステファニア、本気か?これ以上僕たちを増やしてどうするのさ?」

「人の命がかかってるんです。ためらっている場合じゃないですよ」


 汲広くみひろは考えた。汲広くみひろとステファニアが二組もる異常事態。本当にもう一組増やして果たして大丈夫なものか。


「ちょっと考えさせてくれ」

「数日くらいびたって大丈夫ですよ。でも、後悔こうかいしない選択をして下さいね」


 それから汲広くみひろは考えた。いや、こちらだけで考えて勝手にやったら怒られる。

 アカツキ伯爵夫妻に一度連絡だ。


(アカツキ伯爵、今大丈夫です?)

(大丈夫だ。要件は何だ?)

(省語しょうごさんとこで、医療雑誌に載って、治癒魔法について教えを請いたい人が大勢増えたのは知ってますか?)

(知ってる)

(それをステファニアに話したら、分身の術を使ってでも教えるべきだって)

(分身の術ってお前!)

(さすがにこちらの一存では決められないし、僕も迷ってるし、一度連絡を入れておこうと思いまして)

(分かった。こちらもこちらのステファニアと相談して対応を考えたいと思う)

(そうしてもらえると助かります)


 汲広くみひろは念話を終えて、考え込んだ。


「同じ人間が3人もるっておかしいよなぁ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

毒舌アイドルは毒の魔物に転生する。

馳 影輝
ファンタジー
毒舌を売りにして芸能界で活躍できる様になった。 元々はアイドルとしてデビューしたが、ヒラヒラの衣装や可愛い仕草も得意じゃ無かった。 バラエティーの仕事を貰って、毒舌でキャラを作ったらこれがハマり役で世間からのウケも良くとんとん拍子で有名人になれた。 だが、自宅に帰ると玄関に見知らぬ男性が立っていて私に近づくと静かにナイフで私を刺した。 アイドル時代のファンかも知れない。 突然の事で、怖くて動けない私は何度も刺されて意識を失った。 主人公の時田香澄は殺されてしまう。 気がつくとダンジョンの最下層にポイズンキラーとい魔物に転生する。 自分の現象を知りショックを受けるが、その部屋の主であるリトラの助言により地上を目指す。 ダンジョンの中で進化を繰り返して強くなり、人間の冒険者達が襲われている所に出くわす。 魔物でありながら、擬態を使って人間としても生きる姿や魔王種への進化を試みたり、数え切れないほどの激動の魔物人生が始まる。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界もふもふ食堂〜僕と爺ちゃんと魔法使い仔カピバラの味噌スローライフ〜

山いい奈
ファンタジー
味噌蔵の跡継ぎで修行中の相葉壱。 息抜きに動物園に行った時、仔カピバラに噛まれ、気付けば見知らぬ場所にいた。 壱を連れて来た仔カピバラに付いて行くと、着いた先は食堂で、そこには10年前に行方不明になった祖父、茂造がいた。 茂造は言う。「ここはいわゆる異世界なのじゃ」と。 そして、「この食堂を継いで欲しいんじゃ」と。 明かされる村の成り立ち。そして村人たちの公然の秘め事。 しかし壱は徐々にそれに慣れ親しんで行く。 仔カピバラのサユリのチート魔法に助けられながら、味噌などの和食などを作る壱。 そして一癖も二癖もある食堂の従業員やコンシャリド村の人たちが繰り広げる、騒がしくもスローな日々のお話です。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

処理中です...